恋愛かくれんぼ

恋愛かくれんぼ・デートノート2011⑬

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【2011 September】

●T子──身体大丈夫でありますか?

…………………………

●K君──12時間後、午前3時、意識回復。

真夜の軍都を徘徊。

フェリーで千葉へ渡ったが、もう戻る。

☆☆

「当分実家に近づくな」と妹からメールあり。

いよいよ選択肢がなくなった。

☆☆

ホテルハーバー。いいかも。

軍港の町のホテル。

サンディエゴ、ツーロン。

快晴。

…………………………

●T子──私もいつの日か、ホテルハーバーに泊まりたい。

あなたはしばらく三浦海岸の宿でしょうかね。

☆☆

母、妹、妻、昔の恋人、どの女が一番御しやすく潜りこみやすいかではなく、飢えた狼が遺伝の生命力で獲物を見つけ捕らえるように、金になる何かを呼び寄せて、成果を挙げよ。

偉そうなこと言ってすみません。

怒った?

怒ってないよね。

あんたが引き寄せた、呼び寄せた「何か」っていうのは私かな?

そんなわけないだろうと思うけど。

でも、もしも野生のシナリオがそうなっているなら、あなたは私と提携することで自ら地歩を固めることになるのだわ。

もうちょっとだから待っていて、と私は言いたい。

…………………………

●T子──起きてる?

真面目に話がある。

連絡ください。

…………………………

●T子──妹のMちゃんが「実家に近づくな」と言った件、嘘ではないのね?

それであなたは実家にも東京にも帰らないのね?

では、私のところに来ますか?

ここは狭いし、私が書いているけど、あなた書けますか?

私は質素に暮らすけど、あなたもそれで良いですか?

東京のご家族への仕送りは、今の私の力では無理です。

ま、総合的に考えてみて下さい。

…………………………

●K君──ジョージ・ワシントン

JWを代名詞で受けると「She」ですかね。

するとJWはおかまでしょうか。

おかまが東シナ海で中国を威嚇してる?

今日、JWは台風を警戒したのかベースを離れ、なんと三浦海岸沖に錨を降ろした。

初めて見る風景。

ミズーリ号も、こんな風に本牧沖に停泊したのだ。

…………………………

●K君──『無国籍』新潮文庫。

薦めます。

☆☆

やっと台風の雨が来て。

飲んでも酔うことはない。

君がいることに、酔ったのだ。

酔わない選択は、多分正しい。

今日が最後の夏の日だろう。

☆☆

今日の新宿の大江健三郎には、心動かない。

JWの偉容に感動したのが、オレ。

平和とか民主主義とか、エコとか、駄目だな。

…………………………

●T子──とりあえず、お元気そうで何よりです。

変な時間に起きてしまったのね?

☆☆

>酔わない選択は、多分正しい。

↑うちには来ないという選択かしら?

☆☆

>今日が最後の夏の日だろう。

↑明日あたり、東京に帰るという結論ですね?

…………………………

●K君──トランジット

横浜トランジットして行こうかな。

始発の次で。

…………………………

(このメールで起こされたが、1時間半は無視していた)

(でも結局、電話してしまう)

…………………………

(T子記す)

メールもらったけど、あれはうちに来るということ?

もう起きたの、早いね、南太田で降りて日ノ出町に向かっているところ、いまは黄金町あたり、井土ヶ谷で降りちゃいけないと思った、とK。

それだけのこと?

そう、それだけ。

東京に帰れるの?

昨日娘からメールが来た、おばあちゃん大丈夫?元気?って、女房からもメール、お金どうにかしてくださいと。

それで帰れると思ったわけね、でも空手で帰れるの?

そこで相談なんだが、貸してくれないか、このまえ金額の提示があったよね、それを、頼みます。

ああ、そういうこと?

(これは俺の問題だから俺が考えると言ったくせに、やっぱり私を利用するのね。ま、私のほうからそう提案したせいだけど)

【デートノート ちょっと軽めの】

井土ヶ谷駅で落ち合う。

私はKの姿を見つけるなり、「バーカ」と顔をしかめてやった。

午前8時前、店も金融機関も開いていない。

マクドナルドでコーヒー。

禁煙がつらい。

Kは私のおっぱいが写った写メールを消したと言ったのに、消してなかった。

もったいなくて、とK。

よく言うよ、と私。

いやほんと、とKは笑っていた。

ケータイを奪って私が消した。

Kは、逗子のカフェで看板娘と撮った1枚も消す。

家族に見られるの?

見るのは末の娘、あいつは嘘ばかりついている、嘘の天才。

上の娘さんはいい子みたいね、あんた、その娘からのメールを待っていたんだよね。

あいつやっぱり頭いいよ、おまえより文学的才能あるんじゃないか。

どうぞ勝手にやってください。

おまえ、メールのやりとり取ってある? そうか消しちゃったか、取っておけばけっこう面白いと思うけど。俺はなんて書いて送ったか、ちゃんとノートにつけてあるよ。

………。

(私だって本当は、メールやりとり全部とってある)

☆☆

女房は金さえ入れればしばらくは機嫌がいい。機嫌が悪いと、針のむしろ。

夫婦仲が険悪になってもう10年以上でしょ、もっと長く耐えている夫婦もいるけど、私にはとてもそんな真似できない、だけどなるようになる、なるようにしかならない、夫婦は別れのタイミングを子供の成長ではかるようだけど、ここで一区切りと思うとまた次の問題が起きて別れられないことがある、子供は無意識のうちにパパとママを別れられなくさせているのかも、しかし奥さん強気だよねえ。

強気というんじゃない、本当は弱い、だけどムキになるところがあるから。

あんたが私のところに来たら、私が奥さんに訴えられるかも。

いや、そんなことはしない。

わかんないよ、今度は奥さんに私のお金が狙われるかもしれない。

☆☆

JWは台風を警戒したのか、基地(ベース)を離れて三浦海岸沖に錨を降ろした、それを俺は千葉行きのフェリーの上から見た、これも書ける。

書くことが増えるいっぽうで結構だけど、書かないのはだめ。

☆☆

開高健の「夏の闇」、あの中にも横須賀がある、とK。

横須賀じゃなかったでしょう、フィリピンか中国か、と私。

中国が出てくるわけないだろ。

じゃ香港だったかな。

ベトナム戦なんだから、どうしたって横須賀が登場する、おまえは横浜、横浜って文字で探すけど、そう書かれていなくても横浜とわかるようでなきゃだめ。

なるほどね。

☆☆

秋になればまた仕事が動きだすだろう、とK。

ぜひそうなってほしいよね、私も講○社の仕事がうまく動いて、久々のヒットでお金まわりがよくなるかも、編集者さんから「原稿すごくよかったです!」とメールもらったし。

「スクランブル」のこと?

(とKは一瞬恐れるふう)

違う、ライター仕事の原稿のことだよ、群像に応募することも言ってあるけど、その編集者さんは部署が違うから、でもあんた、引き寄せた「何か」が私なら、私と提携して自らの地歩を固める、それはもう決まったも同然で、遺伝の生命力は野生のシナリオ、って私の言ってることわかる?

おまえ簡単に言うな、そんなふうに簡単に考えられるなんて、I envy you。

そうよ、 You shoud do!

☆☆

だけどあんた悪運が強いよね、私が起きてメール見て電話してあげなかったら、どうするつもりだったのよ。

そういうタイミングはあるよな。

私は悪運ではなく、日頃の行ないがいいから良縁と幸運を呼ぶ、だけど去年の夏は大変だった、マンション売却して実家におかせてもらったものの、母に邪慳にされて、すごいこと言われどおしで、悔しいからいっそガレージの屋根からぶら下がってやろうかと思ったこともある。

ストレンジフルーツ。

どうにもならないまま図書館に通い続けて、観音様と春日神社さまにお参りしてたら、お陰でいいアパートが見つかった、それでやっと落ち着いてまだ1年にしかならない、さんざんな目にあった、それでもマンションを手放してよかった、小説が書けるようになった、1つ手放すと1つ入ってくる。

(本当は2つ。だってKが戻ってきたもん)

☆☆

おまえのところは仕事場でもあるから、そこへは行けない、ふたりで机並べて書けるわけがない、算数の宿題やるのとわけが違う、絶対にふたりとも苦しくなる。

私だってそうしたいわけじゃないわよ。

(でもKがもうどこも行くところがないほど追い詰められていたから、なんとかしてやりたかった)

しかし、Kの言葉どおりに受け取ってはいけなかった。

実家にも東京にも帰れないというのは、実はあいつの勝手な思い込みと怯えによるものかもしれない。

相手がちょっと態度を軟化すれば、怯えつつも帰って行くのだから。

☆☆

うちに来ないのは、あなたの誠意だよね。

誠意じゃない、しんどい、女の子のうちに転がりこむと、いろいろしんどいんだぞ。

なんだ、あなた自身が嫌だったのか、でもまあなんて正直なんでしょ、たまに泊まりに来たいけど、居つくのは嫌だということね。

☆☆

ところでさ、野坂の本、もう届いたらしいけど、「カード支払いの代金を戻します」とアマゾンからメールがあった、古本とはいえ「コンディション良好」とあったのに、一部欠損があったらしい、こういうこともあるんだね、と私。

☆☆

それからね、『群像』新人賞発表の号を3冊取り寄せているから、評論の部も読んでおいてあげるね、新聞縮刷は館内閲覧だけで貸し出しはしないみたい。

あんなの重くてしょうがない、新聞は毎日読まないとだめ、とK。

だけど、あんたが探しているのは20年前のニュースだから。

☆☆

昨日は横浜でトライアスロンやっていた、とK。

知らなかった。

なんにも知らないんだな。

今はテレビもないから。

そういえば、BSで開高健の特集番組やるぞ。

釣り系のことかな、興味ないけど、でもまあ観てみようかな、あんた家に帰って録画しといてよ。

娘に頼まないとやり方わかんない。

じゃ別にいいや、開高健が見たいわけじゃない、読めばいいんだから。

でもタイミングっていうものがあるだろ。

☆☆

そしてKはこう言って私を誘う。

『無国籍』著者の店を探しに中華街へ行こう、と。

☆☆

井土ヶ谷から大岡川沿いにしばらく歩く。

今年のお盆は川にお迎えの馬と送りの牛を捨てた。

投げ入れた瞬間から桜木町の方角へ流れていった。

水は流れていないようで流れているのよ。

☆☆

地下鉄蒔田駅から関内駅へ。

本日、Kは寡黙。

なに、機嫌悪いの?

悪くないよ。

☆☆

そして中華街へと歩く。

まだ朝9時前なので、店はどこも閉まっている。

人通りがない。

やっぱりここはごつごつした石畳の道じゃなかった。

平板な石の舗道。

電信柱も新しくなり、数も少なくなった感じ。

電柱と電柱の間に街路樹がある。

市場通りに、1軒だけ開いている店を見つけて入る。

Kは酒と、お粥の朝食セット。

私は桂花陳酒の花彫。

会話の内容はほとんど雑談。

横浜では紹興酒も銘柄指定できるのよ、「はなぼり」「けいかちん」「しんるちゅう」、読み方間違っていないわよ、あってるわよ、ほら店員さんだってうなずいてるじゃないの、永楽製麺所でおみやげ買っていったらどう?

買っていっても、いつまた外へ泊まりに出るかわからない。

源豊行っていう店の鳥ガラスープの元でコーンスープつくるとおいしいのよ。

その手の調味料なら全部持っている。

あんた日本人なのに中国語がうまい、と汐入の料理店で誉められていたよね、上海にはどれくらいいたの?

通算半年もいれば中国語がわかるようになる、北京は寒いから発音が短くなる。

東北の人が「どさ?」「ゆさ」というのと同じね。

日本人は漢字がわかるというアドバンテージがある、だから中国語を習得しやすい、ハングルも漢字を復活してくれたらやりやすいのにな。

英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、あとポルトガル語かな、同時に勉強するとやりやすい、合理的。

英語と中国語を同時にやると覚えやすい、俺はどこにいても地図から入る、インドネシアでも中国人が見る地図を買って読んだ、それで言葉も地理も現地の人の考え方もわかるようになった。

☆☆

ホテルハーバーは良かった、とK。

バンドホテルみたいな感じかしら、と私。

そんな他愛ない話をしながら──

だけどやっぱり機嫌悪いのかしら、なんだか乗らないじゃん。

そんなことない、乗ってきたぞ、飲んだから、とK。

☆☆

移動の途中、私はKにオリエンタルホテルを見せる。

ここは私たちみたいな部外者はチェックインできないらしい、と教える。

☆☆

郵便局に寄る。

お金早く渡さないとね、「T子が怒って帰っちゃったらどうしよう」と心配でしょ。

K笑。

Kは外で待っている。

1桁間違えて500万でもいいよ。

1桁間違えて5万、とかね。

K笑。

50万渡す。

Kは20万を自分用に取り分けて懐へ。

そんなことしていいのか、30で勘弁してもらえるのか、ともかく落とさないでよ。

お借りします、1回50万にはならないけど、いつでも呼んでください。

逆だろ、私となら50万払ってもいいという男がいるんだぞ、約2名、あんたには、えーと、だから600万の貸しね。

☆☆

江戸清の隣の書店は土産物店に変わってしまった。

店主同級生のウーちゃんに電話して聞くが、やはり書店はもうやっていないとのことで、本を買いたいなら元町の高橋書店へ行けと教えられる。

☆☆

台湾料理の青葉という店で。

○君いる?

いません。

家にいるの?

はい。

じゃ電話して。

どうぞ座って待っててください。

そこへ○君のお姉さんが来た。

○君のお姉さん、わあ似てる。

「友達です」と言って、『無国籍』の著者の店がどこにあるのか尋ねる。

「ああこれね」と、本を見せるとすぐにわかって、関帝廟通りの華都飯店を教えてくれる。

○君の友達の○○○は、その後どうしていますか?

何の噂も聞かない、わからない、とお姉さん。

横浜に帰ってきたというようなことは?

ない、帰ってきていない。

そうですか、それならいい、ありがとう。

☆☆

関帝廟には3回お参りした、おまえとは別の女と。

ふん、私は○君とお参りしたもん。

☆☆

華都飯店には運よくマダムがいて、「娘の本を読んでくれたのね」と歓迎ムード。

著者・ララちゃんこと陳Tien-shiのママが、ここのマダム。

2番目のお姉さんのメイメイさんもいた。

この2人、主にマダムがずっと話につきあってくれた。

本の巻末に解説を書いている楊逸は、Tien-shiのいとこだとのこと。

このお二方のサイン入り著書を買う。

こんなのを読んじゃったら書けなくなるかな。

でもしょうがない。

私は私の書けるものを書く。

わからないことをわかったふりして書くのはナンセンス。

かなうものなら、ジャーナルな視点でKが加筆してくれるといい。

「中華街の解釈がおまえと陳さんでは違うのだから大丈夫だ」とKも言ってくれたし。

そしてKはマダムに、「娘さんはきっと大きな賞をとりますよ」と。

ピューリッツァー賞とかね、と私。

翻訳の話もきている、とマダム。

それはすごいですね、いとこさんは芥川賞だしね、でもそうやってみんな賞を持っていかれちゃう。

おまえ、そういうこと言ってるからダメなんだ。

☆☆

マダムにいろいろ伺った。

ご家族の歴史、マダムは湖南の生まれでパパは湖北の生まれ、そのふたりが台北で出会って結婚、そして横浜に来て著者が生まれた、日中国交回復で台湾の人々は無国籍になった、どこへ行くにもビザが必要になった、当時の中国共産党については、毛沢東は大嫌い、周恩来は良い人、一番嫌いなのは李登輝と陳水扁と、わざわざ紙に書いて教えてくれた。

「李登輝は日本人だ」とマダムは言い、その日本名を「岩里」と紙に記した。

陳水扁は台湾人の民進党とのこと。

Kは言葉とアイデンティティの関連について聞きたがり、自分と同世代のお姉さんメイメイさんと話す。

でも空振りかな。

やっぱりマダムに聞こう。

おかあさんは国慶節60周年で帰るんですか、とK。

いや帰らない、とマダム。

お金持って帰るんでしょ、と私。

違う、とマダムは言うが、故郷に立派な墓地をつくり、学校を建てたときの写真、およそ30年前のを見せてくれる。

Kもそれを見て、「みんな素敵な顔してる」と言う。

マダムはご機嫌で、緑豆の粥とジャスミン茶など出してくれる。

私は姪に「茉莉花」と命名した話を披露。

Kは子供の名を紙に書く、○紀、○記、芙○乃。

☆☆

Kはライチーが食べたいと言う。

冷凍しかないってよ、でも解凍すれば生フルーツと同じじゃん。

おまえそう簡単に言うな、おまえ中国人タイプだな。

こうして話していると、なんだかパリの中国料理店にいるみたい。

☆☆

マダムはKが痩せていていい男だと言う。

だめなの、もっと太らせたいの、と私。

お姉さんは私をきれいだと言ってくれる。

そしてマダムは私とKを見て「夫婦でしょ。お似合いだよ」と言ってくれる。

そうしか見えようがない、とKは言った。

そしてKは私を指さし、こいつも娘さんと同じような仕事してるからよろしく頼みます、また遊びに来るから覚えておいてくれ、と言ってくれる。

マダムは、「もちろん」と受けてくれる。

地元の女がいると話がスイスイ進んでいいでしょ、と私。

俺いままではいつも、そういうの無しでやってきた、おまえはいいよな(中華街の○の女だった、という切り札があるから)、それにおまえ、その男が横浜に戻らないと知って、またひとつ書けるだろ。

☆☆

○○○飯店の老マダムは、もうとっくに亡くなっているとマダムに教えられた。

青葉の○君のお父さんが20年前には台○の国会議員だったというのは本当の話だということも聞いた。

☆☆

Kはテレサ・テンの話をする。

Kの長女が学校にあがり、国語の勉強で「て」の欄に「テレサ・テン」と書いた、うれしかったと、また涙。

テレサ・テンとディートリッヒの共通点にも話が及ぶ。

☆☆

マダムの隣に私が座り、その隣にKも来て、しばらく話をしていた。

ふと話が途切れたとき、私たちは顔を見合わせ、にこっと微笑みあった。

ドブ板でも、子供のように笑みをかわしたから、これで2度目。

☆☆

帰る頃には店のパパまで現れ、「明治大学ですか、それなら大先輩だ」とKは感激の涙。

パパは私たちに名刺をくださり、2階へ連れていって書を見せてくださった。

☆☆

お子さんたちみんな優秀、すごい、追浜卒の我々とはレベルが違う、と私。

おとうさん、いい人生だったよね、とK。

80歳のマダムと90歳のパパ、ふたりとも元気で若い。

これですよ、これが中華街のパワーですよ、パパさん、君たちなんかまだまだこれからだと、この人にそう言ってやってください、と私。

3時間ほどお邪魔していただろうか。

☆☆

(市場通りでも、ここでも)お会計してよ、私現金持ってないもん、と私。

あ、そうか、とK。

と気前がいいのは良いけれど、それにしてもKは金遣いが荒い。

だから借金かさんでしまうのだ。

お金の大切さを身にしみて知らなければいかんだろう。

でもこの人には無理かな。

と考えてしまう私も甘い。

特にKに甘すぎる。

☆☆

Kは私にもよおしたのか、「おまえのアパートに行こう」と誘うが、断る。

場所を覚えられちゃうと、いつまた来るかと怯えなくちゃならないもん。

K笑。

☆☆

Kは私の煙草に火をつけてくれながら、おっぱいにさわる。

パンティ買ってあげようか、と言う。

酔っ払い。

☆☆

路上で一休みしながら、「あんたとはこれで最後」と脅してやった。

それから私はこう言った、「しばらく会わないよ、次に会うのは1年半、3年、5年後かな、これが最後だから、3時間ほど休憩していく?」

昼間からホテルやってるのかよ。

やってるよ。でも私が勤めていたホテルはまだクローズ。

☆☆

ホテル前の路上でまた一休みしながら、宇崎の歌など歌って遊ぶ。

宇崎竜童と阿木燿子。

加藤和彦と安井かずみ。

阿部薫と鈴木いづみ。

K君とT子。

私たちはドブ板派か。

インターナショナルな視座を持たねば、ね。

特に私が。

☆☆

私たち、今が一番幸せなのかしら?

幸せです、たしかに。

こんな幸せが訪れるとは予想外だった。

もっと幸せになれるはず、と今は強気になっている。

☆☆

ホテルはやっぱりやめとこうか、埒があかないから、と私。

(俺が酔っているから)期待できないと踏んだんだろ、とK。

笑。

☆☆

私に中華街を教えた香港人の男はノーインテリジェンスだった、今日は中華街の住人にいろいろ教えられたけど、あのひとたちにとってはこれまで生きてきた歴史だから隅々まですべてわかっているだろうけど、はじめて聞くこっちは頭が混乱する、と私。

おまえだってちゃんと理解すれば書ける、俺は忘れちゃう。

飲むから忘れちゃうのよ。

笑。

☆☆

ドブ板と中華街はやっぱり違う、中華街になじんでも、やっぱりよそ者という感がぬぐいきれない、ドブ板のほうが落ち着く、「ここはTちゃんのホームグラウンドだよ」と、いつもダニーにそう言われていたからかな、と私。

ヨコスカはアメリカに強姦された町、とKは言う。

でもあそこはドブ板であってヨコスカじゃない。

(なおもいろいろ話す)

一緒にいると楽しいけど、きりがない、Tちゃん帰りたがってるし、帰さなくちゃいけないとわかっている、とK。

☆☆

関内駅まで歩く。

「帰るのがこわい」とKは言う。

(つっぱってるくせに、軟弱、軟派だな)

怖がらなくてもいいじゃん、お金持ったんだから、ただし出どこは言っちゃだめよ、と私。

☆☆

駅で切符を買っているとウーちゃんから電話あり、話がちょっと長くなる。

その間に、Kは駅のトイレへ。

Kは、別れの挨拶がまだだったので、私のところに戻ってこようとする。

しかたないから私もスイカで改札をくぐって、電車で横浜までつきあうことにした。

車中、Kの顔に触れ、頭を撫でた。

Kは、私に向かって手をあわせ拝む。

手を握り合う。

でもネタは提供したよな、とK。

うん、貢献してくれた、と私。

私は横浜で降りるよ、あんたも横浜から湘南ラインで新宿に行きなさい。

いやだ、東神奈川で横浜線に乗る。

? ま、いいや、勝手にしなさい。4時すぎには家に着くでしょ、ご家族は仕事や学校で留守なんでしょ。

みんなが帰ってくる前に爆睡していたい。

私は電車を降りる直前、Kを振り返って微笑む。

手を振る。

バイバイ。

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