恋愛かくれんぼ

恋愛かくれんぼ・デートノート2012⑬

投稿日:2021年8月13日 更新日:

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【デートノート⑪ 2012.2.19〜2.21 43時間】

(T子記す)

(電話あり)

どう?と私

どうって、いま金沢文庫にいる、横須賀の図書館へ調べ物に行った、とK。

ふうん。

じゃあ、行くね、とK。

うちに来るの? えー。

気が乗らないときはやめておこうか。

だっていきなりなんだもん。

それじゃやめとくよ。

うん、そうね。

☆☆

(だけどすぐに電話かけなおした)

井土ヶ谷の例の中華料理屋で待っているなら迎えに行ってもいいよ、と私。

了解、とK。

☆☆

(急いで支度をした。書きかけのライトノベルを中断し、PCを閉じた)

(駅前に向かう途中、コンビニあたりでKに遭遇。中華料理屋は貸し切りだったとのこと。ではカレーにしようと、ネパール人のやっている店へ)

カレーディナーセット(キーマカレーとベジタブルカレー、ナン、ライス、タンドリーチキンなど)のほか、スパイシィなサラダ、インドワインとインドウィスキーで食事。

体が弱っているときはカレーが食いたくなるとKがいつも言っていたので。

私もこの店のランチテイクアウトを試してみたら元気が出たので、Kに勧めようと思っていた。

店主ネパール人との会話は日本語と英語チャンポンで。

面白がって英語で話す私を、「いきいきしてる、きれい」とKは言う。

知ってる、と私。

下高井戸にもちょっといい女はいる、きれいかなと思うけど、すぐに見飽きる。

そりゃ橫浜の女のほうがいいに決まってるじゃん。

あのネパール人、なかなかインテリだな。

若葉町あたりの中南米人は別として、橫浜の外国人はわりとインテリだよ。

☆☆

外国人と英語で話をすると楽しい、気持ちが広がる、開放感がある、外国に行ったみたいな気分になる。

Tちゃん白髪が1本あるよ、と手を伸ばすK。

抜いてよ。

ネパールへも行ってみたい。

私も、生きてるうちにいろいろ行きたいよ。

連れてってやる。

何もかも生きてるうちだと思って、今日はあんたを迎えに来た、だけどうちに直接来られるのはいや、いきなりピンポーンって来られるのは嫌いなの。

☆☆

今日で3日、家族は留守だ、上の子が卒業だから、たぶん北海道のおばあちゃんのとこへみんなで行ったんだと思う、とK。

(私はあとで気づいたが、横須賀のおばあちゃんのとこには行ってやらないのか。経済的にずいぶん世話になったはずなのに不義理、不人情じゃないか)

☆☆

誰もいないなら、こういうときこそ家で休めばいいのに。

だけどいつ帰ってくるかわからないもん。

娘さんたちも、あんたに黙って行っちゃったの? 奥さんが怒ってるのはわかるけど、娘さんたちも怒ってるのかな。

そうなんじゃねえの、うちじゃゆっくりできないんだ俺。

(ともかく家に帰りたくなくて私のところに来たわけだ。私に会いたくてという気持ちはどのくらいあるのか)

☆☆

昔の人は手紙だったが今はメールだから、記録が残らない、とK。

私はPC長文メールを残してるよ。

☆☆

会計をして店を出るとき、「キッチンにいたネパール人もみんな出てきて挨拶したぞ」とKが喜んでいた。

へんなやつらだと思ったんだろうな、とも言う。

いいじゃん、変でも。

☆☆

外人相手におぼえたものは、まずい英語と酒の味、いつか陽の目がみれるなら、こんな暮らしも楽しいけれど。

と、ベースキャンプブルースの歌詞が口をついて出る。

ドブ板にいた頃はほんとにそういう感じだった。

帰宅後すぐにその曲をかけて聴いた。

やっぱりいいな、すごい、とK感激。

☆☆

歌詞がいいんだ、阿木燿子がすごいってことか。

だけどこの曲は宇崎の作詞だよ、と私。

私ものって、「橫浜ホンキートンクブルース」を宇崎バージョン、石黒ケイバージョンと続けてかける。

そしてまた宇崎の「恋のかけら」をかける。

オハラでの日々を彷彿とさせる。

これはおまえと俺のあの頃の歌、とK。

そうよ、だけど「遅すぎた」じゃなくて「若すぎた、ばかすぎた」なんだよ、あとこれもね、と私はマスカレードをかけて歌う。

これを茅ヶ崎のカラオケで歌ったとき、あんた泣いてた、私を抱きしめにきた、びっくりしたよ、なぜ泣いてるのか聞くと、おまえのこといろいろいじめて悪かったと、あんた言ったんだよ。

ああ、平塚でのことな。

平塚じゃなくて茅ヶ崎だよ、で、横須賀ではいじめたんだよね私のこと。

どう扱っていいかわかんなかったんだよ、とK。

「シークレットラブ」はね、「音を立てて絆は切れた」ってところが痛切なの、私が横須賀の日活でバイトしてるとき偶然あんたが来て、ふたりでパンフレットか何か見てるときにこの曲がかかった、もうだめかなと私は思った、だってあんた、私がほかの男といるのに何も言わなかったんだもん。

☆☆

カレーの店でおみやげに包んでもらったピクルスとタンドリーチキン、それから買い置きのくるみ食パン、牡蠣フライ、ポテトフライ、ソーセージなどを出す。Kにたくさん食べさせたくて。

Kは牡蠣フライサンドイッチを口に運ぶ。

☆☆

武山のこと、その他あれこれ、文筆の話題が中心になるのはいつものこと。

その内容はここでいちいち記さない。

☆☆

今日は昼頃ウーチャンの電話で起きた。

ウーチャンに電話しようぜ、とK。

だめだよ、もう寝てるよ、昔ウーチャンが言ったのは「T子あんな男やめなよ、あいつT子のことであたしに相談したくて電話してきたくせに、あたしにもいやらしいことしましょうって言ったんだよ」だってさ。

俺そんなこと憶えてない。

浮気するなら私と関係ないところでやってよね、これ基本ルールでしょ、前の男はそれを破った、○の○さんに横恋慕してたんだよ、とんでもないよ。

Kは無反応。

☆☆

この夜、Kは日本酒を飲まなかった。

インドネパール料理店だったので日本酒を置いていなかったし、コンビニにも寄らなかったから。

だけどうちにはカナディアンクラブとバランタインがある。

☆☆

Kは日頃の無理がたたって、だいぶ疲れているらしい。

あんな生活してたら、私だったらとっくに倒れてるよ。

俺もかわいそうだよな、自業自得か、自業自得だから武山書いて抜け出すんだ。

☆☆

さっそくKを寝かせる。

ゆっくり休んでいけばいいよ、と言葉にして告げた。

☆☆

私はシャワーを浴びる。

風呂上がりにウイスキー水割り。

Kを休ませるために、音楽もかけずに静かにしている。

だけどマッサージしてあげたくなる。

そっと、やさしく撫でた。

洗い髪が乾くまで、というつもりだった。

☆☆

私もしばらく寝た。

聞き慣れない音がした。

わりと静かな曲が、小さく、短い間、鳴った。

Kの携帯着信音だった。

Kを起こす。

ぱっと起きて歩く姿が素敵だった。

娘さんから、かな?

違う、友達だった。

☆☆

またしばらく寝た。

やがてKは目が覚めたのか、水を飲み、水割りにも手を出す。

私も起きて飲んだ。

酔いがまわりだし、このあとの記憶が定かでない。

たぶん、夜のうちにセックスをしたのだと思う。

眠れないよ。

寝ろよ。

じゃ眠れるようにしてよ。

なに、もっとはっきり言ってごらん。

Kは自分のものを握らせる。

硬く大きくなっている。

すごいじゃん、昔みたい。

そしてKは指を入れようとした。

が、私のは固く締まっていて入らない。

中学の頃もこうだった。

だからインサートまでいかず、いつもペッティングどまりだった。

キスとペッティングを何度もしているうちに、身体の中で回路がつながった。

キスするだけであそこに血が集まってじんとするようになった。

☆☆

今書いているライトノベルはウィタ・セクスアリスみたいなもの、全部フィクションだけど、と私は話し出す。

はじめて男の子を好きになったのは幼稚園のとき、その子は小中高まで一緒だった唯一の同級生、あんたも知ってる子。

誰?

○○○。

☆☆

あんた私と別れてしばらくすると、一緒になろうと思う子ができたでしょ。ある女の子の母親とジョイナスで鮨食ってどうのこうのという短歌があったよ。

いや(とKは否定する)。

ほんと?

ここも安住の地ではないようだ。

わかった、もう言わないよ、違うならいいよ。

☆☆

三崎口から逗子までバスで行ったとき楽しかったよね、貸し切りでさ、あんたと私「裏切り者のテーマ」を一緒に歌ったんだよ。

あのバスはいつも貸し切り状態。

☆☆

高校時代、逗子で一緒に過ごしたはじめての夜も入らなかったよね、あのときは逗子の花火を見に行ったのだった。

俺それ憶えてない。

私のことで頭いっぱいで、花火が印象に残らなかったんじゃない?

Kはあのとき私たちが手をつないで逗子の海岸を歩いたこと、そこで八○子先輩と彼氏に会ったこと、その彼氏が後に八○子先輩にふられて手の甲にナイフ突き刺したことも憶えていないらしい。

砂浜にふたり寝転がっていて、若いチンピラ風の男に「煙草の火貸してくれませんか」と言われたこともKは忘れていた。

☆☆

逗子の社員寮(お父さんの勤務先の社員寮)にお父さんがいきなり来たことは、さすがにKも憶えていた。

あんたは私の膝枕で寝ていて、お父さんが来たとたんガバッと起き上がったんだよ、お父さんは私に言った、あいつは甘えん坊で無鉄砲なところがあるから君がうまくセーブしてやってくれと。

☆☆

逗子ではあんた、1日に5回も6回もしたよ、でも入らないから、私のお腹の上で出した、5回も6回も。

60の男にそんなこと言うなよ。

若い頃はみんなそうだよね、前の男も最初の頃は毎日5、6回してたよ、いや毎日じゃなく1日おきだったかな。

☆☆

Kはあの夏、受験勉強をするために逗子へ行き、滞在中に数回私を呼んだと言うが、私は最初の晩のこと以外はあまり憶えていない。

☆☆

俺のおやじもおまえのこと好きだったと思うよ。

私もお父さん好きだった、死んじゃう前にもう一度会いたかった。

(と言うと、Kは父親が最期を迎えた病院での様子を再び話し出す)

男性って最期は、おちんちんが干からびた梅干しみたいになっちゃうんだってね、やっぱり男のシンボルなんだねえ、と私。

そうなったらもう、俺だったら生きていたくない、おやじのときも、男として見ていられなかった、早く死なせてやりたかった。

☆☆

お父さんは横須賀の○に住んでいながら逗子に住民票を移していた時期があるとのことで、その理由は謎。

やはりほかに女がいたからなのか?

お父さんは先妻との間に一男一女がいるんでしょ。

子供の頃、俺だけは会わせてもらったことがある、だから葬式のときに呼んだ、兄にあたる人はいい男だった、姉のほうは、おまえに似てる。

えっ、そんなことってあるのかしら、もしかすると先妻さんが私に似たタイプの女だったのかも、だからお父さんは私のこと気に入ってくれたのかも。

☆☆

おまえ、俺の実家は憶えてるだろ?

うん、でもそのあと引っ越した家には行ったことがない。

だよな。

夏休みにあんたのうちに遊びに行って、ソファで昼寝しちゃった、ひとのうちであんなにくうくう寝たのははじめてで、「Tちゃん」ってあんたに声かけられて起きたけど、恥ずかしくて、そんなことがあってからは、私がちょっと静かにしてると、お母さんが「T子ちゃんどうしたの? 寝ちゃったの?」っていつも言っていた。

おふくろは、「T子ちゃんと一緒になると思ってた」と言う。

☆☆

お母さんに会いにいこうかな。

やめとけ、おまえ幻滅する。

そんなことないと思うけど。

いや、するって、ぜったい。

☆☆

Kのお母さんは、週2回ヘルパーさんが来訪、そのほか週3回、送迎付きのデイサービスに通っているとのこと。

だったら大丈夫か、と私。

大丈夫だよ、とK。

でもあんた、なんでもう実家に行かないの?

おふくろが死ぬまで行かない。

あんたひどいことして追い出されたんでしょ、お母さんを施設に入れて実家を売ってお金にしようとした。

それは妹も同じじゃん。

あんたあのとき、長男の権利を口にした、長男としての義務や責任については考えも及ばないようだった、うちの弟ならそんなことあり得ない。

Kは無言。

☆☆

あんたの短歌が新聞に載ったとき、誰からも反応なかったんでしょ、親、親戚、友達、誰一人として気がつかなかった、でも新聞の短歌欄を読むのは関係者だけでしょ、株式欄もそうよ。

俺は新聞全部読むよ、株から見えてくることもある。

☆☆

アメリカの叔母は、日本のテレビ番組を観て俺の名前がクレジットされているのに気づき、「これターちゃんなの?」と言ってきた、それから「あたしも映画の仕事してみたかったのよ」と、平沼で一緒だった岸恵子のことも言っていた。

☆☆

観たい映画がある、ミッキー・ロークが出てる、いいと思わない?

俺似てる。

はあ?

それ言ったのは女房だけか。

(↑この会話で私は頭にきて、ベッドに入ってから仕返ししてやった。「昔、私に英語を教えてくれたインド人の女の子が、「T子のボーイフレンドはミッキー・ロークに似てる」と言ったよ。やっぱり(あんたとその男は、という意味だけど)似てるのかしら、と」。

Kは無言、無表情。

☆☆

昨夜は私、オダギリジョーに迫られてる夢をみた。

☆☆

あんた、ほかの女の話をするから嫌。

ほかの男の話するのはおまえじゃないか。

(そうだよね、反省するよ)

☆☆

私の最近の心情は、Kに飽きたというのではないが、気が済んだ、というか済みつつあるのかなという感じ。

あるいは、小さな失望が度重なると熱情も薄れていくのかなという感じ。

☆☆

こうやってあんたと一緒にいると気が済むの。

納得するってこと?

やり損ねていたことをやっているという感じかな。

☆☆

あんたは、もう飽きた?

飽きない、とK。

☆☆

ごちゃごちゃ話しながらも、結局はインサートした。

その前にちょっと、クンニリングスとフェラチオも。

☆☆

Kが私の足の指に触れて、「爪切ろうか」と言った。

私は足の爪は切りすぎないようにしている。

Kは手も足も爪は短くするのが好きなのだと。

☆☆

指はなかなか入らなくても、ペニスで突くとすぐ入っちゃうのが不思議。

せっかくインサートしたのだから、もう何も話さない、何も考えない。

Kとしてるのだと、それだけを思う。

すると感じる。

さまざまな微妙なニュアンスをすべて体で感じようとする。

だんだんよくなる。

だけどいかない。

Kもいかない。

いってほしいのに。

☆☆

ねえ好きだって言ってよ、うそでもいいから。

「好き」と言われたような気がする。

だけどよく聞いていなかった。

セックスしていたから、よく憶えていない。

☆☆

うつぶせになっていると、指が入ってきた。

私はお尻をちょっと振る。

しばらくそうしていたが、Kはやめる。

「やめるなってか?」と言いながら。

☆☆

(余韻は残るが)、セックスのあとはおしっこしなきゃ、しないと病気になるよ。

でもKはトイレに行こうとしない。

☆☆

あんたが年とっても面倒みてあげたい。

(私ったら、酔ってそんなことまで言っていた)

☆☆

ふたり、眠りについた。

もう朝方だった。

夜ひとりで寝ていてKのことを考えていると、体に力が入って緊張していることを自覚する。

でも実際にKが隣にいると、ちっとも緊張しない。

リラックスというほどではないし弛緩してもいないが、安心している。

☆☆

翌日は昼過ぎに起きた。

私はコーヒーと煙草で一服して、蜂蜜レモンをつくる。

Kは「薄い水割りでも」と言うが、やめさせた。

☆☆

玉ねぎをスライスしてスープをつくる。

今日はコンソメ。

玉ねぎがまだ少し煮足りなかったのか(私にはちょうどよい固さだったけど)、Kはスープだけ飲んで玉ねぎを残してしまう。

わがままな男だ。

それでも、「うまかった、どんな薬よりも効く」と言ってくれた。

☆☆

昨夜の残りのタンドリーチキンも食べた。

☆☆

音楽が聴きたくなって、パリのミュゼットをかけてみた。

Kのリクエストにより、イブ・モンタンの枯葉、そして私はサッチモの唄うラ・ヴィ・アンローズに耳を傾ける。

愛の嵐も聴いた。

Kはこの映画のことを知っていた。

☆☆

おまえの邪魔して心苦しいが、とK。

今日どうするの、帰るの? 帰らなくてもいいよ、私はライトノベル書いてるだけだし、あんたも帰ってもどうせ何もできないでしょ、だったら今夜早く寝て、明日早い時間に帰って執筆すればいいよ。

それでKは、いつしかまた寝てしまう。

そっとしておく。

たまにマッサージなどしながら。

☆☆

私は机に向かって英語の本を開いてみるが、頭に入らない。

書けないし、読書もだめか。

☆☆

お父さんの生誕地、帷子町へ行こうよと誘うが、Kは「外に出られる状態ではない」と言う。

だけどこのまま寝ていられるの?

寝ていられる。

☆☆

私はこんな話をした。

うちの母方のおじいさんは、久保町で豆腐屋やってたんだけど、その前は帷子町の「さくらや」という肉屋に丁稚奉公していたの。

さくらやってことは、馬肉屋だろうな。

☆☆

Kを寝かせておき、洗濯をした。

夕方、買い物に出た。

寿司、春巻き、しじみ、大根漬け物、柴漬け、菜の花おひたし、サラミ(Kはこれダメだった)、グリーンサラダ(これはオリーブオイルとビネガーの自家製ドレッシングで食す)、サンドイッチ、ロールケーキ、いちご、日本酒3合、ロングピース2箱。

買い物をして、春日神社にお詣りして帰宅。

Kはおとなしく寝ていた。

私も疲れて、しばし横になる。

☆☆

しじみの味噌汁つくるよ、そういうの食べたいよね。

で、うまくできた。

つくりたては殊においしい。

☆☆

Kが起きて読書をはじめる。

その姿勢のまま食事ができるよう、味噌汁をカップに入れて出す。

「野菜をたくさん摂らなきゃ」と言って、大根漬け物、グリーンサラダ、菜の花おひたしをKの口に入れて食べさせる。

甘やかしすぎ?

Kは寿司もつまむが、だいぶ残す。

サンドイッチとロールケーキには、ぱくつく。

ごはんは重たいのだそう。

☆☆

私はお腹がいっぱいになって眠くなる。

反対に、Kは元気盛り返す。

あんた昨夜は青白かったけど、今日はだいぶ顔色がいいよ。

寝たからだよ、よく寝た、やっぱり疲れてたんだな。

と言いながらベッドに横になって読書していたKだが、「少し寝る」とつぶやいて、また寝てしまう。

私はしばらく休んだのち、シャワーを浴びる。

髪が乾くまでの間、Kのマッサージをする。

首筋から揉んでいく。

よせ?

やって。

よし、じゃやってあげる。

全身マッサージをしてあげていると体が火照る、今日は買い出しに行っただけだからエネルギー消費が少ない、もっと動かないと、と私。

いいよ動かなくて、とK。

(セックスを催促したつもりじゃないのに)

☆☆

膝の痛みは?

バイトのときはコラーゲン飲んでた、最近は気にならない。

あの痛みは何だったんだろうね、夏だっけ?

☆☆

Kの手相を見た。

頭脳線よりも感情線のほうが濃い、生命線が長いからけっこう長生きする、結婚線はくっきり2本あるよ、と教えた。

(私は結婚線が3本あるのよね)

☆☆

マッサージして体、楽になったでしょ、お風呂ざぶんと入って温まりなよ、疲れが消えるよ。

うん、ざぶんだけにして。

風呂に湯をはる。

シャワーの湯気が立ち籠め、風呂場が暖かくなる。

☆☆

Kが入浴をすませ、出てきた。

シャンプーもしたのね。風邪ひかないようにエアコン強にしてあげる。

☆☆

ここから、ふたり飲み出した。

日本酒買ってはきたけど無理に飲まなくていいのよ。

だいじょうぶだよ、外で飲まなければ。

☆☆

Kはデスク前の椅子に座って、『日本人なら知っておきたい日本文学』をチェックしている。

私は、「子守歌がないと眠れないから」と落語をかける。

志ん朝と談志が最高だと思っていたけど、さらに上がいた、三代目金馬、広沢虎三も面白かった。

音楽も落語もいいけどね、おまえ新聞読んで勉強しないとだめだぞ。

前の男もそう言ってうるさかった、私はそれがいやで、長い時間かけて黙らせた、新聞読むのが好きなら私のかわりに読んで解説してくれればいいのよ、紙の新聞はなくなる運命かもしれない、新聞社は出版社よりも厳しい状況に立たされているらしい、だけどジャーナリストがいなくなると困るよね。

☆☆

それはともかくとして、作家としてやっていくなら勉強して視野を広げ、意識も見識も高く持たないといけない、と私もわかっている。

Kはうるさく言う。「今後書いていくためのネタ集めも必要だ」と。

あんたは書いていけるよ、その都度ネタを思いつくもん。

それでも今からちゃんと考えて準備しておかないとだめなんだ、とK。

☆☆

Kの足先に触れると冷たい。

私の手で温める。

私の厚手ソックスを出してあげたら、断られた。

「俺、靴下もサンダルも大嫌いなんだよ」

☆☆

おまえ俺の短歌集すぐ出せる?とKに言われて、PCのデータを出す。

Kはそれを見ながら、自作短歌の解説をする。

Kに体くっつけて飲みながら、解説を聞くなんて素敵。

解説してもらうと歌の意味がよくわかる、というか、やっと意味が通じる。

だから言ったじゃない、ミニ解説つければ面白くなる、出版もできそうだって、あんたが作家デビューしたらそれができるよ。

☆☆

あんた宅配バイトのときは30キロの荷物運べたのね。

今だって運べるよ。

☆☆

私はKの短歌集に、「ここはゲットバックではなくゲットレディ」「三合院ではなく四合院」と2つ訂正を指摘した。

☆☆

男と女のことを詠んだ句もあるが、意外にも個人的なことではないのだと知ってうれしかった。

「これ誰のこと?」と問いただしたものも1つか2つあったけれど。

☆☆

子供さんたちのことを詠んだ句は、私にとってなんら苦にならない。

☆☆

この短歌集に収録した句のほかに、個人的な内容の句があり、私も読んで知っているが、Kはもっぱら地理、歴史、政治紛争など社会問題に関心を向けて詠んだ句を選って集大成としようとしている。

それはまあ、もっともなことか。

☆☆

「ノーウーマンノークライ」という表現は二重否定?とKも思ったらしい。

私もこの英語を勘違いした。

実際は「No,Woman,No Cry」なのでしょう。

「でも、女はみんな、いじれば泣く」などとKは言う。

☆☆

揚子江を龍に見立てるのは中国では昔からあったこと、とのこと。

では私が横浜の大岡川に龍を感じて、そう書いたのは中国的な発想?

☆☆

Kがラピスラズリ一連の句を読みだしたので、私はベッドでしばらく眠った。

再び短歌解説になったので起きだし、Kにくっついて飲んだ。

その後また私は横になった。

☆☆

Kが声をかける。

おまえ、この『小学校で習った漢字』全部読めたのか、と。

私が寝ぼけてむにゃむにゃ答えたので、K笑う。

☆☆

古典本チェックしたけどつまんなかった、とKは言う。

それを受けて私は、『日本人が知らない日本語』について説明した。

『ダーリンは外国人』みたいなものよ、と。

あれ嫌い、つまらない、とK。

でも売れたよ、日本語本も100万部越して、印税は億だよ。

部数なんて嘘ばっかりだ、俺は毎日本屋に行ってるけどそんなの見たことない。

私が代筆した『○されてお○持ちになる』シリーズを本屋で見たことある?

ない。

だけど全国どこの本屋にも置かれていた、ほんとに売れた。

俺そういう偽物本があるコーナーには近づかないから。

☆☆

古典本の企画、通らなくてよかったよな。

ふたり爆笑。

だけど私だってやればできるよ、参考図書として慶應の古典文学の教科書があるもん、おまえパクリじゃないかって叱られそうだけど、執筆した西村亨っていう教授はもう亡くなってるし、図書館に通って古典文学全集を一生懸命やれば書ける、大学時代に学んだことを基礎に、これからちゃんと勉強しながら書くんだもん、あんたが一緒にやってくれないとやだけど。

☆☆

Kもベッドに入り、漢字本の「読み」をふたりでやる。

ふたりでやると滅法おもしろい。

私かなり読めるが、読めない漢字、間違えてしまう漢字があると熱くなる。

Kも楽しんでいるようで、私ますますうれしくなる。

頁が進むごとに、次第に難問が増えていく。

わからないところは小声でむにゃむにゃと、Kの胸に顔をうずめて誤魔化した。

地名・旧国名の頁はKに任せる。

なんでそんなにわかるの、と褒め称える。

俺、歴史の問題も地理の知識でカバーしてきた、とK。

☆☆

お酒が進む。

夜が白々と明けてくる。

あんた寝なさいよ、疲れてるんだから。

大丈夫、元気回復した。

☆☆

Kはなおもいろいろ話しかけてくる。

ウイスキーも飲む。

☆☆

俺は反原発の立場じゃない、とK。

原発、普天間、憲法九条、いろんな問題があるよね、と私。

一朝一夕に片付けられる問題じゃないから、さまざまな角度から検証する。

考えるための一石が投じられればいいんじゃないの、ドイツやフランスではたぶんそうなってると思うよ、それが文化の厚みというものでしょ、と私。

左翼がばかだから右翼にいっちゃう、だけど、おまえも左でいたいだろ。

うん。

俺が薫のこと書くときも、本当は大槻節子のことを書きたいんだと思う。

☆☆

国家ってなんだ?とK。

地理的な尺度で測れるものではなく、日本国籍を有する人がいるところ、それが外国であっても、日本国籍を持つ人々に日本の法律は適用される、被害にあえば国は救助する義務がある、国家は伸縮自在なもの、と私。

だったらパレスチナはどうなるんだよ。

それはまた別の問題、特殊だから。

☆☆

中華街のパパは無国籍も一種の国籍だと考えているそうだけど、それは違うという気がする、と私。

☆☆

私が昔つきあっていた香港人の男も、日本国籍とろうと思えばとれたと思う、8歳から日本に住んでたわけだし、仕事もしていた、それで私と結婚すれば、ほぼ確実に日本国籍取得できたでしょう。

アメリカ国籍をとるにはアメリカという国家に忠誠を誓わないとだめなんだぞ、国家に忠誠誓うなんてことできるか?とK。

友達がアメリカのグリーンカード取得したとき、そういうことはあったみたい、でもそれよりも、なぜアメリカで生活したいのか、仕事はどうする、資金計画はどうなっている、そういう現実的なことが重要視されるみたいだった、国籍ではなくて永住権?グリーンカードだけど。

☆☆

私たちだって、働いて消費して、国に税金納めて、国家の経営にこれだれ貢献しているんだし、国家は国民によって成り立っているわけでしょ、国民は生活を守られる権利があると思うよ、と私。

☆☆

フランスは生きやすい国なんだろうなと思う、週35時間労働だもん、そんな話をしたら私の主治医が「違う」と言った、「フランスは公務員の数が多すぎる。だから経済が傾いてしまう」と。

☆☆

こんな話もした。

シャドウワークというかさ、たとえば日本では女性が子供を産んでも、そうした働きは一銭のお金にもならないでしょ。

そんなことないよ、子供3人目からは学校タダ、とK。

フランスでは1人目からタダだってよ、大学出るまで。

☆☆

俺30年映画づくりをやってきて思うんだけど、本当なら国から表彰されていいはずだ。

私だって出版事業に貢献してきた、これがフランスだったら、お金になりにくい仕事でいろいろ大変でしょうということで、いろんな面で優遇措置があるらしい。

でも俺、国から金なんか受け取らないよ、国のために映画つくってるわけじゃないから。

☆☆

日本人であっても日本国籍を拒否して外国籍をとりたいと考える人も当然いるよ、と私。

それは個人の自由だからいい、だけど君が代斉唱起立を拒否する日教組、君が代を嫌悪するやつらは日本人じゃない、そばにいたらぶん殴ってやりたい、とK。

右翼みたいなこと言わないでよ。

君が代は歌詞がよくない、皇統を賛美する内容に終始している。

ラ・マルセイエーズみたいに理念を唄った国家じゃないとね。

だけど俺、心情的には右翼にならざるを得ない、野村秋介?とか、覚悟きめて生きてるやつが好きなんだ俺。

覚悟を決めて生きるって、あなた自身はどうなのよ。

☆☆

信念と生き方が一致していないと説得力ないよ、たとえば私がいくらフェミニズムを唱えたって、男の世話にならずに自力で生きていくという言葉のとおりに生きていなければ何の意味もない。

☆☆

かつては純粋な日本語があった、それを話していたのが純粋日本人。

(とKは言ったかな?)

書き言葉はなかったでしょ、漢字から真仮名、平仮名が生まれたんだから。

そういうことは俺だって全部知ってる。

日本というけど、まだ全国統一されていなかった、小国だから、朝貢して大国の権威にすがって守ってもらおうとした、倭という呼び名も中国のほうでそう呼んでいただけで、こっちでは倭の文字が気に入らなかった、だから和に変えた。

矮小、チビの意味だから。

和、やまと心に唐ごころが混じっていったのでしょ、平安時代の200年から300年は、古今集から新古今までの間に和歌は飛躍的に進化したのでしょう、比喩や見立てができるようになって思考も感情も複雑化していったのは、いいことだと思う、純粋な日本語でなくなって構わない、だからどんどん混じってしまえばいいんだよ、と私。

しかしそれ以前に日本の言葉があった。

(とKはこだわる)

☆☆

かつては私も贅沢品をたくさん持っていた、またお金まわりがよくなったら手に入れるんだ。

そんな気になれない、面倒、それほど生きていたくない、とKはぼやく。

だめよ、長生きしなきゃ。

☆☆

おまえ顔がしんでる。

どうすればいいの?

寝るの。

☆☆

人のために生きようとすると自分が幸せになれる、と私。

それ仏教か、とK。

☆☆

日本に入ってきた仏教は仏教じゃない、すでに変質している、とK。

だけど般若心経は密教でしょ、と私。

そう、密教。

☆☆

カナディアンクラブは昨夜早々に空になり、バランタインも空いた。

さらには、よく眠れるようにと安定剤をのんだ。

外はすっかり明るくなり、ふたり眠った。

☆☆

昼頃、まずKが起きた。

もっと寝ていればいいのに。

あんまりゆっくりしてると暗くなっちゃう、また帰りたくなくなっちゃう。

☆☆

二日酔いだと思うが、少し頭痛いので、頭痛によく効く風邪薬をふたりのんだ。

☆☆

早くマイこたつデスクが持てるようになるといいね、今おうちで寝ている部屋にこたつ置けばいいのに。

こたつなんか置くのはいやだと反対されてる。

ふたり笑。

だけどあんたの寝る部屋はあるんでしょ、寝ているところまで追っかけてきて文句言わないでしょ。

俺だけ居場所がない。

(いったいどこに寝ているんだ?)

☆☆

ベッドがあると、すぐ横になれるからいいな。

あんたは万年床?

(この前は「ベッドだと腰痛になるから嫌だ」と言っていたよなあ)

☆☆

こたつで書くと腰痛になるよ、あんたは昔から机で勉強していたでしょ。

机で勉強なんかしたことない。

コタツであぐらかくと疲れるよ。

バーガーキングでもあぐらかいて書いている。

☆☆

Kは、洗面して髪をオールバックに梳かして出てきた。

私が容貌の衰えを指摘したので気にしてる?

☆☆

私も出かける(図書館に行く)支度をしながら、ベッドで本を読むKの手にクリームを塗る。

Kは慣れてきたのか、もう嫌がらない。

☆☆

スジャータのアホエン(にんにくカプセル)をKのお土産にした。

元気でる?

うん、まあ効くよ、1年間モニターになったから無料なの、よさそうだったらまた分けてあげるね。

☆☆

いつになく、Kの支度が遅い。

疲れているのか、帰りたくないのか。

☆☆

外はいい天気。

だから明るくそう言った。

うん、とKも応じた。

☆☆

昨夜も眠りながら書いていた、とKは言う。

執筆期間中は原稿のことが頭から離れないのは、私もよくわかる。

私だって、夢の中で何か書いていた。

講演をするようになると寝言ではっきり何か喋るらしいよ、熱海の先生のご家族がそう言っていた。

☆☆

旧海軍の井上大将は戦後、国に請われても何もしようとしなかった、そうやって戦争の責任を一人でとった、生き方を残した、とK。

生き方を残すのは、みんなそうなんじゃないの。

(こういうことを口にするから、おまえの言うことは簡単すぎると退けられるのか)

☆☆

Kお気に入りの中華料理屋へ。

おまえともう少しいることにして、とKは酢豚と日本酒を注文する。

☆☆

ここでも終始、武山のことを話す。

資料どっさり、ノートも見せられる。

次回はもっと上手にノートをとる、今回は散らかった、とK。

大変だよね、私にはできない仕事。

ノート資料と構成案を見ながら話す。

Kがどんどん喋ることで頭の整理がつくといい。

☆☆

講○社、幻○舎、未○谷、あるいは宝○社、と私。

○島はやだ、反原発だから、とK。

もちろん講○社で決まれば何よりいい、もしかすると岩波も向いているのかも、そのあとサントリー学芸大賞でも獲れるといい、そういうノンフィクションライターが知り合いにいること話したでしょ。

俺のは、そこまでいかない。

(もっと自信もってよ。ふだん強気な発言してるんだから)

☆☆

1作書いて、次の資料集めにかかる、でも転がり出すまでに数か月かかる、だから俺も今後の予定を考えた、おまえみたいに。

(どこが私みたいによ。あんたは資金計画も立てられないじゃないのよ)

☆☆

次は原節子をやる、四方田犬彦みたいに書けないけどよ、あっちは東大出の学者、こっちは明治だから、同じ土俵でやろうとしたら負ける、俺なりに調べのついた映画製作日誌のかたちをとる、私小説風に自分に引きつけて書く。

☆☆

おまえ手伝え、いろいろ調べて整理しないといけない。

私が? 向かないでしょ、○○さんに頼めばいいよ。

あいつより俺のほうができる。

それはそうだけど。

人に頼むとギャラ払わなきゃいけない、おまえとなら、金半分こ。

☆☆

武山の話、とめどなく続く。

☆☆

俺、話す人がいないんだ、かわいそうだな。

☆☆

私のリライトについてもリクエストがあった。

ハードボイルドでいきたいから、あまり説明しすぎるな、と。

それはまあ、わかる。

☆☆

リライトされたものを読みながら、おまえが何を考えてるのかを探るわけよ、とK。

当然そうでしょ、と私。

こいつ軍転法のこと調べたな、とか。

あれは私が加筆したんだったっけ? よけいなことだったかな、でも「初出で少し説明しないとだめよ」って編集者も言うはず。

それはそうだけど、俺は軍転法に対する認識がある読者を前提に書きたい。

(その反面、「Tちゃんにもわかるように書かないとだめなんだよな。おまえに向けて書くといいのかも」とも言う)

私に話しているように、どんどん書いてしまえばいいのよ、そこが面白いんだから、やっぱり平岡流かな。

いや、司馬遼の文体が気持ちいい。

☆☆

武山文体についてふたり意見かわす。

父親、母親、私ではなく、おやじ、おふくろ、わたし、にしようかと思っている。

☆☆

しかしこのペースでいくと年に3、4冊だね。

それだと間に合わない、俺の残り時間どれくらいあるか。

☆☆

おまえは文章うまいから。

(この讃辞はアパートで聞いた。何の話をしていたときだったか忘れたけど)

☆☆

古文が読めるようになった、とK。

私は読めない、でも明治初期の戯作なら読める、仮名垣魯文とか。

あれは古典じゃないだろ。

☆☆

別れる。

(とKが突然言い出す。いよいよ家庭崩壊へのカウントダウンか)

監督とおまえに借金返して、うちにいくらか金入れて、家を出る。

そんなにいっぺんに全部はできないよ、たぶん今年中は無理、(だけど、とにかく武山を本にしてお金をつくって)、家賃3万5千円から4万くらいのところなら何とかなるんじゃないの、それで離婚かどうかわからないけど、とにかく別居するのがいいと思う、と私。

☆☆

7、8年前、私がライターの仕事を紹介したときに方向転換しておけばよかったのよ。

それができなかったんだよ。

ライターの仕事が入ると、なぜか決まって映画の仕事が入っちゃったもんね。

☆☆

読まずにいられないでしょ、書かずにいられないでしょ、だからやっていくしかないのよ。

俺は飲まずにいられない。

☆☆

サンマー麺をふたりで分け合って食べた。

紹興酒が飲みたくなって、1杯を分け合った。

(料理が美味いから)飲みたくなったんだろ、とK。

Kはすでに日本酒3合飲んでいる。

☆☆

あんたのマフラー中途半端な長さだね、もっときれいな色のにして。

いいんだ、もう捨てちゃうんだから、服も捨てる。

☆☆

私はどうなるのかな、ライトノベル売れてくれるのかな。

読んでないからわからない。

だいたいわかるでしょ、3万部はいきたい、印税10%かどうか確認していないけど、1冊1300円3万部で印税390万、以前は半年ともたなかったけど今なら1年近くもちそう。

☆☆

笑ってよ、笑顔のほうがいいよ。

おかしくもないのに笑えるかよ。

おかしいじゃん。

☆☆

さあ、行くよ。

と促しても、Kはのろのろしている。

だいじょぶ? と腕をとる。

だいじょぶだよ、このどろんとした感じがいいんだ。

疲れが出たんだよね、でも少し回復した?

した。

昨夜もっと早く寝ればよかったのに、四の五の言ってるから。

あれでいいんだ、横になってるだけで疲れがとれるから、俺はふだん横になってる時間がすごく短い。

☆☆

駅で電車を待つ間も、Kは前回よりも快調そうだった。

とりとめもない会話だったように思うが、明るい会話だったという印象が残っている。

☆☆

荷物こんなに重いんだぞ、と持ってみるように言われる。

たしかに重い。

資料だ。

だけどこんな生活いつまで続けられるかしら、体がもたないよね。

☆☆

私は図書館へ行くので弘明寺まで、Kは上大岡から地下鉄、そして小田急で梅ヶ丘まで行く。

車中、互いに寄りかかるように、くっついて座っていた。

そしてここでも他愛ない話をしていた。

いい天気だとかなんとか、そういう話。

来月は建設現場の仕事でもやろうかと思ってる、1ヶ月くらいはさ。

(そんな報告もあった)

じゃあね、バイバイ。

たしかそこでKはサングラスをかけたのだった。

じゃね、バーイ。

ありがと。

関連記事→恋愛かくれんぼ・デートノート2012⑭

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