恋愛かくれんぼ

恋愛かくれんぼ・デートノート2012㉙

投稿日:2021年8月29日 更新日:

【デートノート⑯ 2012.5.10〜5.18 8泊190時間】(前編)

(T子記す)

2012.5.10 大桟橋、中華街海員閣、石川町駅スーパー、寿町

2012.5.11 横須賀武山図書館、横浜弘明寺図書館

2012.5.12 Kはほぼ24時間睡眠、私は校正の勉強と答案作成(この前後4日間かけた)

2012.5.13 スーパーTAIGA、作業服の店

2012.5.14 Kはコンビニとスーパーへ買い出し

2012.5.15 私が買い出し

2012.5.16 私が買い出し

2012.5.17 私が買い出し

2012.5.18 朝10時、K帰る。その後1時間、私はワインを飲んで寝た。

☆☆

2012.5.10

横浜駅の観光案内所から移動し、大桟橋デッキに出た。

橫浜で一番海に近づける場所。

ウエディングの撮影をしていた。

雲行きがあやしくなり、館内に戻ると、突然の雷雨。

デッキ休憩所で眺めながら、「美しいね」「うん、美しいね」。

霧が濃くなり、信じられないほどの濃霧が海上にたちこめ、ベイブリッジを包み込んだ。

ベイブリッジが消えました〜とK。

私はこのゾクゾクするような眺めを、橫浜で仲良くしていたクライアントの旦那方にみせてやりたい。

☆☆

売店でワンカップを買い、霧の海を眺めつつ2杯飲んだ。

雨やまず、タクシーもなし。

赤い靴号バスで県庁前まで移動。

タクシーで中華街善隣門へ。

海員閣で食事、飲む。

☆☆

傘を買い、腕を組んで歩く。

石川町駅前のスーパーで買い物。

3袋、Kに持たせる。

寿町を歩く。

タクシーで井土ヶ谷へ。

☆☆

昨日はウーチャンと過ごしたの、女同士で腕を組んで歩いたりして、と私。

Kは笑う。

そういうことがあの子のリハビリというか、リカバーになるの、と私。

あの子もこの子も、とK。

☆☆

(私のアパート前の坂道で)

もうここへは二度と来ないと思っていた、とK。

T子笑。

☆☆

Kが、転んで内出血している右脚を見せた。

最悪の連休だったとのことで、痛みがひどくて起き上がれなかった、それでも書かなくてはと追加原稿を必死に書いた、と。

☆☆

Kは日に灼けている。

公園で寝ているからだと。

☆☆

買ってきたのは、2リットルパック酒、上善水如も1瓶、ビーフシチュー、金目鯛グリル、生ハム、マフィン、サニーレタス、グレープフルーツ、バナナ、そのほか。

毎回の定番は酒パック、たばこ、ワイン(セブンイレブンで買うシャルドネは不思議な酒で、怒りながら寝ても翌朝は多幸感が湧いてくる)

Kが買ったのは、とろろ昆布、しらす、油揚げ、鮭弁当、キャベツ千切りパック、新聞、あとは忘れた。

☆☆

そば、ねぎ、鯨ベーコン(Kの大好物)、蛸(私の好物で、一部は刺身に、残りはアサリも加えてトマトソースにした)、アサリ酒蒸し、パイナップル(Kの好物とのこと。切ってごらんと言われてやってみた。翌日は鮮度が落ちたので、Kが手で絞ってジュースにして飲んだ)、ごまペースト(私はこれで1週間もったようなもの)。

きんぴらごぼう(おいしいと褒められた)、きゅうり・大根千切り塩漬けにした、油揚げとネギの味噌汁・わかめとネギの味噌汁も「うまい、どんな薬よりも効く」と言われた。

山芋千切り、大葉、塩鮭(フライパンで焼いた、網焼きよりもおいしかった、柔らかかった、塩辛いのでワイン飲みすぎたと言ったら、Kは「それいい」と笑っていた)、食パン、マーマレード、バター、ピーマン(これもKの好物とのことで、細かく刻んでハムと炒めたのを喜んで食べた。豚バラとピーマン炒めもつくった)、桃屋のいかの塩辛と永谷園のお茶漬けのり、ハムエッグも食べたいというのでつくって喜ばれた。Kはスパゲティをほんの少しゆで、残りものとあわせて食べていた。

ほかにもいろいろ買って、つくって、食べたと思う。

☆☆

この9日間で外食したのは海員閣と武山の割烹のみ。

(刺身と天麩羅の弁当、ウナギ蒲焼き、酢の物など)

☆☆

毎日よく飲んだ。

Kは朝から飲む。

飲んでは少し食べ、また眠るというサイクルの繰り返し。

それで疲れが癒されるならいい。

だがいくら眠っても、飲み過ぎるので疲れてしまうようだ。

私はKといるとあまり食べられない。

☆☆

Kがゴム草履で来たので、ホテル泊はやめた。

書道展に行くために、近所にある作業服の店で白いズック(本当はデッキシューズを履かせたかった)を購入。

書道展には結局行かなかったけど。

小ぎれいな作業服も買ってあげたかったが、Kがほしがるものはなかった。

靴だけなら500円もしない。

「買ってくれるんじゃないの?」と言いながら、Kは自分で払った。

☆☆

武山の図書館へは京急で逗子、そこからバスで林方面へ。

私が運転して車で行こうかと提案したら、即却下。

☆☆

バスの車窓から海と富士山を見た。

あんた逗子か葉山に住めばいいじゃないの。

高い。

東京橫浜よりは安いでしょ。

俺は、津波がきたらどーんと持ってかれちゃうようなところに住みたいんだよ。

海に散骨する手間も省けるし、ね。

☆☆

『武山』を完成させるには志村議員について調べることが必須とのことで、図書館へ行ったが、議事録を見ると肝心の時期だけが抜け落ちている。

調べがつかない。

☆☆

私はKに勧められて3冊、横須賀の古い写真集、横須賀が出てくる文芸(映画も?)作品紹介などを閲覧。

不入斗中学校と追浜高校の写真が見開きページに並んでいた。

武山中学校は校舎1棟だけ。

Kは武山小学校から武山中学校。

入中は百恵の出身校、と書いてあった。

「わたしも、と言え」とK。「おまえの書いた小説もこういうのに載るのかな」とも言った。

私はやだね、そんなの。

☆☆

Kのお父さんが最期を迎えた病院も見た。

☆☆

バス停で。

Kの日焼けして皮がむけた腕にクリームをすりこんだ。

私が隣に座ろうとしたら、ベンチに新聞紙を敷いてくれた。

おまえとこんなところにいるのは不思議だな、今日のことはいつか役に立つ(書く)だろう、セールスの仕事の研修を受けた1週間(研修期間の報酬は拒否した)のことも○○本で役に立った。

ばかだね、報酬もらっておけばよかったのに。

人をだます詐欺のようなことを教わって金もらうわけにいかない。

☆☆

アパートの部屋では連日、YouTubeで遊ぶ。

エリック・サティ、ほかクラシック音楽。

☆☆

中島みゆき。(大局的な視点の歌詞だと思うが、私は共感できない)

☆☆

加藤和彦。(安井かずみとの共作時代には、Kはまったく関心がない様子)

あの素晴らしい愛をもう一度、いろんな映画でラストに使われている、ふざけんなと思う、とK。

「でも、いちおう聴いてみるか?」と言われた。

名曲だが、Kと一緒に聴くのは恥ずかしかった。

だから私は「悲しくてやりきれない」のほうをリクエストした。

☆☆

テレサ・テン。(香港および台湾スタッフ撮影のビデオに感激するK、「テレサは一人で中国しょってたんだ」と言う)

☆☆

ザ・ゴールデン・カップス。(アメリカのR&Bをコピーしているらしい演奏に感心するK、「こんなのがあると知らなかった、薫の話にからめたい」と)

☆☆

平山三紀。(いろいろ聴いた)

☆☆

フェリーニ『道』のジェルソミーナ、地下鉄のザジ。

☆☆

傷だらけの天使。

ジュリー。(「そんなのやめろ」とKは寝てしまった)

☆☆

のどかな会話。

高校時代の田○君のこと、逸見から大津に通っていた女の子のことなど。

「田○の野郎」、なんて、Kは怒っていた。

☆☆

別の日、阿部薫をKが一人で聴いていた。

「薫を書くならこんなふう」と、小説構想や文体についてまくしたてる。

薫はサックスひとつで、一人で、時代と戦った、痛いよ、痛えよ、てめえ、ふざけんじゃねえぞと聞こえる、そう吹いている、喋っている、だからそこに大槻節子をからめる、殺されちまったんだ、ブロバリンはもう買えない、俺も死んでしまいたい、薫は最後の数粒まで意識があったと思う、薫にとっていづみはちっぽけな存在、みんなが言うほどでかい存在じゃない、俺は阿部薫と電話で話したことあるんだぞと(映画関係の)みんなに言いたい。

俺の女はもっと話してるぞ、鈴木いづみとダチなんだぞと言ってやれば?

あづさとの写真返さなきゃな、だけどあれ持ってるとモチベーションあがる。

だったらすぐに返さなくていいよ、あづさに会わせるのも小説書き終えてからでいいんでしょ。

12日間で一気に書く、狂ったように書く、だけどバーガーキングじゃ書けない、狂った文体、おまえが書き直しなんかできない文体、おまえに手を入れさせない。

私だってそんなことしたくないよ。

(だけどさ、なんとか譲治という監督・脚本家・小説家は書き殴って、同じく文筆家の奥さんがリライトすることで仕事になっているんでしょ。そういうのもいいじゃん。私はほかの先生の著書を代筆するよりも、あんたのリライトして仕事になるならそのほうがいい)

面白いだろ?とKは笑って言う。

俺は薫の痛みがわかる、あの時代を書く、俺の遺書だ、薫と武山を書いたらもういい。

☆☆

このあたりから雲行きがあやしくなった。

それまでずっと平穏に仲良く過ごしていたのに。

☆☆

○○本のいいかげんさについて、また文句を言われる。

私が削除した箇所をいちいち挙げて不満をぶちまける。

どうせ切るだろうと思っていた、おまえにはわからねえだろうと、だけど肝心のところを切った、あれじゃだめだ、おまえらのやっている仕事は作文ごっこだ、ライターなんてくそくらえだ、ゴーストライターは本来著者のメッセージに共感し著者になりかわって書くものだ、おまえが自己啓発本を書けば一番売れる、自分の考えを書くべきだ、くだらない自己啓発本をやるなら内部から変えていくべきだ、金になるからとか仕事だからとか言って逃げるな、俺は企画段階からもっと詰めたかった、でも○○に会ったらぶん殴っていたと思う、政治家としてなんとかしろよ、こっちは困ってんだよ、食えないんだよと、○○はふざけた野郎だと思わないか、そう思わないと言うならこれで話は終わりだ。

ふざけた野郎だと、思うよ。

Tちゃん、きれいだけどね、もうじき60になるんだから、ちゃんと勉強しないとライターとしてもやっていかれなくなるよ、こんな髪型して若いねえちゃん風にしてるけど、若いやつらがあとからどんどんくるんだから、(T子おまえ頭のてっぺんが薄くなってきてるぞ、アートネイチャーやるか、分け目を変えるかしないとだめだぞと、そんなことも言っていた)、毎日ちゃんと新聞読んで、日記をつけなさい、慶應の本を読むのもいいけど(南図書館から14冊運ぶのをKに手伝ってもらった)、おまえにはむずかしすぎるだろ、木を見るのではなく森を見ないとだめ、枝葉末節も大事だが、発想や構想が太い幹にならないなんて言っているうちはまだ木をつくろうとしてるだけ、俺は「武山」で木を植えすぎた、森を描けなかった、おまえは小説書いてもすぐに行き詰まるだろう、森を見ていないからだ、森を描こうとしないからだ、俺はこんなこと(提言)しかしてやれないけど、おまえのためを思って言っている、だけどおまえは俺の言うとおりにしないだろう、できないだろう。

三田の求めに応じてトランジット改稿するのはやめとけ、あれは一生かかるぞ、それよりもライトノベルを先に書いちゃえ。

(金になることを先にやれという意味なのかと確かめたところ、そうではないと言われた)

同じ基地の町でも、横須賀、佐世保、岩国、立川、みんな違うよ。それを描き分けられたらすごいけどな、とK。

☆☆

俺もう疲れた。

(というのは何度も聞いている。家庭から逃げ回る生活と資金繰りに、そりゃ疲れているだろうと察する)

☆☆

もうあきらめた。

(とKは独り言のように言うが、ライター稼業への転身や作家になることは無理だということなのか。自分の能力の限界を感じているのか)

☆☆

やっぱり家族を捨てられない。

(そうきたか、という感じ。その言葉の裏に、家を出て自活することはやっぱりできそうにないという諦念といおうか、言い訳のようなものを読み取る私)

☆☆

翌朝、その言葉の意味を確認してみた。

Kいわく、「俺じゃなくて家族が俺を捨てたんだ」と。

(子供たちがまだ小さかった頃は)女房と子供の弁当を俺がつくっていた、映画の現場があるときは留守にできるからいい、だが仕事せずに1ヶ月もたつと、稼いでこいと怒られる。

家で本を読んでいるから嫌がられるなんてことじゃなく、お酒飲むから怒られるんでしょ、と私。

(これは図星だったらしく、K怒った)。

子供が飲むジュースより安い百円パックだぞ、3つぐらいいいじゃねえか飲んだって。

女房は「金がない、ない」と言いながら、DHCのサプリなんか通販で買っている、それでガキどももビタミンC飲まされてる。

☆☆

俺は3億稼いだ。

(私も計算してみたら、年収600万として32年、合計2億になる)

3億稼いだならすごい。

だけど遣う人がいたから何も残っていない、稼げなくなって金がない、貧は病より重い。

☆☆

この1年仕事していない、おまえに食わせてもらっているようなもんだな。

そうでもないけど。

☆☆

女房はどこに連れていっても無反応、無感動、おまえと同じだよ。

外国へは?

グァムだけ。

☆☆

グーグルで、Kの住むマンションを見せてくれた。

前の前のマンション(持ち家のとき)は13階だったから、ベランダから橫浜みなとみらいランドマークタワーが見えた。

☆☆

息子は女房に疎まれている俺に反発した、俺も「ふざけんなよ」と喧嘩になった、あいつはもう家に戻ってこないだろう、卒業したらサッカー関連の仕事、全国どこででもできる。

☆☆

石井さんが200万貸してくれたときは涙がでるほどうれしかった、息子の学費が払えた、俺が死んだら石井さんに返してくれ。

いいよ、死んじゃったらね、Kがものすごく気にしていましたからと言って、私が返すよ。

うちの家族には金送らなくていい。

(あたりまえだ、そんなの)

☆☆

俺もう死にたい、死んじゃうしかない、生きているのが申し訳ない。

誰に対して、何が申し訳ないの?

金稼げないことが申し訳ない、借金返すためにだけ生きてる。

(あと、お酒飲むためにでしょ)

☆☆

たった200でしょ。

そのたった200万が返せない、おまえに借りたぶんは印税で埋めてくれ。

(そうなるといいけど)

☆☆

編集者に原稿の修正箇所をメールしたら、「気がつきませんでした。重版で直します」と返事をもらい、私もKも一瞬喜んだ。

「さっそく重版になるかもな、いいぞ」と思いつつ。

しかし、「座標軸の表現に誤りがあると俺が指摘したときになぜすぐに確認しなかった」と、Kは怒りだす。

だからおまえも編集者もいい加減だと言うんだ、仕事をなめてる、ああいうことやってると恥ずかしくてもう書けないだろう、俺はどんな仕事も誠実にやる、納得いかない仕事は断る、おまえも「納得いかないので出版するのはやめてくれ」と言え、俺は印税いらない、9月入金と知ってショックだった、「あんたにお金持たせると遣っちゃうから2万ずつ」と言われたときもショックだった、家に最低15万は入れないといけない、責任がある。

「あまり長生きできない」と言っていた人が、ついに「もう死にたい」と言い出したことに危機感を覚える。

鬱病なのか?

☆☆

でもこの1年ほぼ毎日やりとりをしていて、がくんと落ちこんでいる様子は見られなかった。

書く仕事をしてみて、うまくいかないので絶望したのか。

すべてがもういやになってしまったのか。

エネルギー枯渇?

それにしては生意気なことを言う元気はあるようだけど。

☆☆

買い出しに行って帰ると、私もうヘロヘロ。

おまえの疲れは、俺だよ、とK。

☆☆

ふたりとも眠りが浅い。

酔って夜9時過ぎに早寝しても、朝4時には起きてしまう。

Kは必ず6時間で目が覚める。

膀胱が一杯になるからだとのこと。

「楽に独り寝するために床で寝ようかと思った」とも言っていた。

☆☆

再び、生活苦の話。

しかし子供がいるとほんと大変だよね、と私。

その話題、俺はずっと避けてきた。

私は平気、ほんとに子供ほしくないもん、それに、あんたに関係ないじゃん、産みたいと思った時期もあるけど、いなくてよかった、子供はきらい。

独身のやつや子供いないやつらはみなそう言うけど、それは違う。

子供がいるのはいいもんだよと言いたいの? あんた子供好きだもんね。

好きじゃないよ。

そうかな、町で子供や赤ちゃん見かけると必ずちょっかい出してるじゃん。

☆☆

例外的に素敵な時間もあった。

「T子一緒に遊ぼうぜ。もう料理終わったんだろ」とKが誘い、ネットで地理、地名、漢字読み方、英語クイズなど。

Kの得意な地理・地名(歴史はてんでだめだとのこと)クイズで楽しんだ。

なんて素早い反応、なんと博識、素敵だなあ、と私しびれる。

漢字では私のほうが上、英単語では私が負け。(意外)

☆☆

セ○クスは、2晩目にしたのだったかな。

さわってやる、と言っていたっけ。

クン○リングスもイン○ートもあったけど、どんなセ○クスだったか、よく覚えていない。

☆☆

それよりも印象深いのは──

Kが私の左手をなめた(お酒買ってきてあげるよと言ったとき)。

私の右足をしゃぶった(何のときだったかな)。

私がおやすみのキスをしたときにKの口が濡れていてエ○チックに動いたこと。

朝からア○ルトビデオをネットで検索(短時間だけど)、女の膣に男の指が入って這い回る場面を見て、たちまち濡れたこと。

Kが「女にさわるかもしれないと予測して爪を切る。切りたてはまだ痛いだろうから少し時間をおく。今こうして爪を切っているこの時間は残る」と語ったときのこと。

☆☆

そのほかは、あまり接触はなかった。

おまえ、びしょびしょになったんだからいいだろ、なんてKは言っていた。

あんたどうせ勃たないんだし昔みたいに大きくないから、してくれなくていいよ。

(今のもう一度言って、とKは反応)

☆☆

倉本聰や向田邦子の台詞って効いてるよなとKは言うが、なぜそこに話がつながるのか私にはわからない。

☆☆

わからないけど、セ○クスはしなくていいけど、愛情表現はしてほしい、抱きしめてほしい。

今そんなことしたら俺はすごく悲しくなると思うよ、と言って応じてくれない夜もあった。

☆☆

おまえがレズ○アンフェミニズムにはまって原稿書いていたとき、俺は「反論」を書いた。

そんな時期もあったわね、よく覚えているじゃん、だけど私、この先もしも恋人つくるなら男よりも女がいいかなと思ったりもするよ、スーザン・ソンタグとリーボヴィッツが同性パートナーだったと知ったのは、山田詠美のあの期待はずれの小説『ジェントルマン』を読んで得た唯一の収穫。

私が小説『ジェントルマン』読んでいるのを見て、「つまらないだろ」とKは言った。

そのタイトルからの連想からか、「俺ジェントルマンじゃないから」と言ったこともあった。

☆☆

『人造美女は可能か?』という書名が頭に残っていたのか、キッチンで私と身体が触れたとき、「人造おっぱい」とも言った。

☆☆

「パン○ィ見せて」と言うので見せてあげた。

ピンクのやつはブラジャーとおそろいね、とわかっているK。

☆☆

パンティ脱がす楽しみがある、脱がせたらもうそこでおしまい、男はセックスしている自分を見ている、森を見ている、だからアダルトビデオを見るんだ、とK。

身体で感じることはできないの? 官能レベルが低いわね、好きな女のたとえば耳たぶをしゃぶってうっとりするとか、そういうことできないなんてかわいそう、こっちも、たいして好きでもない男にしつこくされてもあんまりうれしくないんだけどさ、と私。

K笑。

だけど女のセ○クスは観念的だよ、好きな相手ならたとえインポでも感じる、と私。

Kうなずく。

それでつい、中華街の彼の話をしてしまった。

テレサが歌うのを見ながら、「香港で彼を探しだして一緒に住もうかな」なんて、心にもないことまで言った覚えがある。

それがやがてKの、「そいつに全部もってかれたんだろ。中華鍋買ってやろうか。もう別れたからいいのか」などの発言につながる。

☆☆

Kがズボンを2枚重ね穿きしているのは痩せたから、あとはおもらし対策(それは冗談だけど)。

おしっこも精液ももれる、とK。

それで快感はないの?

ない。

☆☆

俺は10回こすればいっちゃう。

うそ、早すぎる。

☆☆

あんたに官能的なセ○クスを教えてくれた女はいないの?

いないねえ。

私がちょっと教えてあげた。

おまえまだ子供だった。

(昔のことじゃなくて最近のことを私は言っているのに)

☆☆

長年一緒にいた奥さんともだめなの?

K肯定。

☆☆

おまえ怒るだろうけど、トルコ上町の女とつきあっていたことがある。

(その頃は私もういなかったから怒らない)

トルコの店ではなく外で会って、サパークラブで食事した、そのあと女のアパートに行って、女の車を運転したりもした、「わたしセックスしたくなっちゃった」と言われたことが記憶に残っている、だけど女のために一生懸命やっても俺のセ○クスじゃない、後日また店に行ったら女はもういなかった、ほかの女に言われた、「あのままつきあっていれば食べさせてもらえたのに」って。

☆☆

俺はセ○クスあんまり好きじゃない。

うん、面倒だよね。

☆☆

石井作品も3作もやれば飽きる、また同じことやるのかって、この監督はなんでこんなにセ○クス描くことが好きなんだよと思う。

☆☆

仕事がうまくいってるときは女が寄ってきた、いっぱいいたよ、今じゃ猫と雀しか寄ってこない。

☆☆

Kは自作の「ザ・短歌集」を起動し、一首ずつ解説をする。

なつかしき女友達うかびくる啓蟄の夜ノーウーマンノークライ、これは私のことを詠んだ歌なのだそう。

啓蟄は膣にかけてる、T子のお○んこどんなだったかなと思い出して、そのうちほかの女と区別がつかなくなる。

そういうときは、やっててどんな感じだったかを思い出すものじゃないの?

Kしばし絶句。

☆☆

酒飲んでセ○クスするから覚えていない、何百人やっても記憶がない、それよりも、真面目な子が朝「セ○クスしたくなっちゃった」と言ったときのことなんかをよく覚えてる、「ごめん、できない」と言ったけど。

☆☆

好きだったひと極楽寺、この歌は私のことではなく別の女のことだって。(なんだ残念)

☆☆

俺の短歌は残る、見る人が見ればわかる。

解説付きのほうがいい。

説明しちゃだめなんだ、おまえ俺の短歌を50句清書して、角川書店『短歌』、ながらみ書房、砂小屋書店に送れ、受賞すれば俺、神奈川新聞あたりの投稿欄選者がやれる。

☆☆

『武山』も朝日新聞横浜支社の女性記者(みうら映画舎を取材に来た人)と組めば、データ検索が楽にできてどうにかなると思う、だけど連載だけで終わるかもしれない。

それでもいいから話を持ちかけてみればいいのに。

そんなふうに他人に頼むことが俺はできない、おまえは他人じゃないからできる。

☆☆

俺が死んだらノートどうするか、おまえに渡しても理解できないだろう、「あのひとは映画プロデューサーだったけど詩人、歌人だった」と評伝書けないだろう。

書けないよ、短歌のねえちゃんなら書けるかしら。

たぶんな、歌は理解するだろう。

じゃ連絡とればいい。

☆☆

「結婚しちゃった」と2年ぶりにメールを寄越した女性プロデューサーが、かつてはこう言っていたらしい、「Kさん一人ぐらい面倒みますよ」と。

その女の人にも連絡して、少し負担を分け持ってもらおうよ。

おまえは、実はそうは思っていない。

(おまえは思ったことをすぐ口にするからプロデューサーになれる、絶対なれる、とKは言っていたのに)

☆☆

短歌のねえちゃんは本を出した。

聞いたよ、その話。

チェックした?

しないよ。

あれは俺に向けての訣別の書、だからあとはいじってはいけない。

私には、終わったあとも連絡してきた。

俺が?

そうよ、書いたものを送ってきたりしたじゃん。

☆☆

私はどうしてあげたらいいのだろう、「死にたい」なんて家族の前では言わないでしょ、相手の気持ちをおもんぱかって。

K肯定。

それなのに、私に言うのは甘えすぎ。

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カタカナ語を日本語に変換してみよう

言葉をたくさん知っていると、話すのも書くのも自由自在。頭を整理しながら自分の思いや考えを的確に伝えられるので、いつも気分よく過ごせます。仕事や人間関係にきっと良い影響があるでしょう!!

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