【2005 April】
●T子──<新居より感謝をこめて>
新居祝い、どうもありがとう。
うれしかったよ。
最初、○○書房の本かと思いました。
☆☆
5月10日、私は新しい著者と面談のため、編集の○○さんと大阪へ行きます。
そのときに、あの本のこと聞いておきます。
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ともかく、すごくいい住まいを持ててよかった。
ここから傑作がうまれるのねっ、という感じがヒシヒシと。
しつらえは南仏・イタリア調を志したけど、なぜかもうワインはあまり飲みたくなくて、ヨコスカ時代によく飲んでたクラウン・ロイヤルというカナディアンウイスキーばかり。
いつもラジオでアメリカのオールディーズを流してるせいかも。
いずれ遊びに来てください。
って本気で言ってるけど、深い意味はないので御心配なく。
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●K君──29日、山手柏葉7、○○マンションで終日ロケ、やってます。
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●T子──<サバ?>
メール拝受、メルシィボクゥ。
一昨日、旅行から戻りました。
半月ぶりのヨコハマです。
しかし何故また柏葉でロケを?
たぶん柏葉橋バス停の近くでしょう。
やだ、あまりにローカル、しかも裏ぶれてるじゃない。
今度はいったいどんな映画かしら。
昔、私が10年住んでいたのは、トンネル前の交差点から山手の洋館通りへ向かう一方通行の坂道あたり。
住所は柏葉だけど、実質的には山手だったもんね。
今はもう取り壊してしまった、古くて雰囲気のいい一軒家にいたんだよ。
だけど当時はロケの要請などひとつもなかったわ。
残念っ。
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ともかく、映画のお仕事が忙しそうで何よりです。
そうそう、三崎を題材にしたオリジナルの短編映画も完成したでしょうか。
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ところで。
○○書房は実に鷹揚な社風です。
インドネシア教授の本も、半年遅れのゆったりペースで刊行の運びらしい。
私と連携している編集○○女史は、あの本には直接タッチしていないのですが、あなたの原稿について特に問題はないようなので安心されたし。
あなた、あの本の担当編集さんに電話を入れて、次の仕事を催促するのもよいと思います。

再び、ところで。
ルーマニアでは何処へ行ってもベッドが棺桶みたいに細長くて、私は夜中によく落っこちてました。
パリは、もう飽きるほど見て、歩いて、ステイしました。
かつては、あそこへ行くと頭に血がのぼり、平常心を失ったものですが。
アート魂といおうか詩人の血といおうか、そういうもので胸がザワザワしたんだよ。
ヨーロッパはいろいろ行ったけどパリだけは特別、なんかヤバイ、という感じだったの。
そのパリの空気が日常感覚になるのは、すごくいいこと。
モンマルトルのホテルで窓から空を眺めては、デビュー作について思いをめぐらせていました。
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思春期という魔物あるいは長いトンネル、これをテーマに書こうと思います。
シンナーも薬も売春もやらない子にだって荒れるときはある、でしょ。
そういう若い子だけでなく、未だトンネルの中にいる中年のみなさんにも読んでもらえる本にしたい。
私自身、なりたい自分になることをあきらめなかった点を誇りとし、圧し潰されずに今日まで生き延びたことに感謝して、近年やっと長いトンネルを抜け出たようでホッとしています。
そんな気持ちを書いてみたいの。
焦りや倦怠、憂鬱すらも一種の快楽。
だから豊穣につながっている。
退屈は不毛にして、快楽を味わう力を損なう。
生きることは快楽の塊だ、それを忘れるな、ということなの。
その快楽を知る能力が一気に全開になる魔の刻というのが思春期の入り口で、その時期にはホルモンも暴れまくってるから、セルフコントロールが難しい。
だけど恐れることはない。
トンネル抜ければ楽になる。
抜け出る前にリタイアするな。
自分で自分を圧し潰すな。
殊に自殺なんか絶対にするな、ってことを言いたい。
☆☆
ちょっと酔ってます。
また今度。
執筆開始は9月の予定です。