【2005 July】
●T子──ちょっとだけ至急
このたびの父上のご逝去、心よりお悔やみ申し上げます。
元気だしてね!!
☆☆
さて、仕事の依頼が1件あります。
私の弟を通じて急遽持ち込まれた話ですが、力になってもらえませんか。
○○党の政見放送用ビデオおよびHP用スチール写真の撮影だそうです。
7月13日にその打合せがあるので、ぜひご参加願いたく。
また、その席上にて先方と、詳細およびギャランティの取り決めをしていただけると助かります。
まずは、この件をお願いできるかどうか、ご意向をお聞かせください。
そのうえで、下記にご連絡なさると良いと存じます。
尚、私も弟も同行できませんが、事後報告していただけるなら幸いです。
☆☆
記
○○党神奈川県総支部連合会
電話 045-000-0000
ご担当 ○○様
○○○○の紹介と伝えて下されば話は通じます。
以上

●T子──「Kが先方に会って話を聞いてくれるそうだ」と弟に報告したところ、「なるべく早く電話を入れてもらったほうがいい」と言ってました。
よろしく。
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●K君──もろもろありがとうございます。
依頼の件、明日午前中には、先方様へ電話入れます。
父親往生の顛末は、落ち着いてから。
例の○○書房の最終の直し、加筆、月曜日です。
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●T子──映画『沈黙』のプロデューサー○○さんって人、知ってますか。
私の親友が仲良くしてるらしいのだけど、その人物から仕事の依頼あり。
私は対応しきれないし、あなた、お引き合わせするから受けてくれるかな。
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求められているのは歴史小説。
織田信長がキリシタンだったという解釈で、あの時代を描いてほしいそうよ。
資料提供ある予定。
打合せもちろんあるでしょう。
その小説を原作として、ハリウッドの人が脚本書いて映画にするんだって。
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「その話はまとまっている」というけどホントかどうかわからない。
原作者は○○さんということになり、こちらはそのゴーストライター。
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書いてほしい内容はだいたいわかった。
原稿ボリューム、期限、ギャラについて、詳しいことを決めてもらっているところ。
「300万以下では受けないよ」と言っといたけど、どう思いますか。
やる、やらない、できるだけ早く返信ください。
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●K君──遠藤周作の原作作品を篠田正浩が映画化したもの。
3人のプロデューサーがクレジットされている。
うち2人は知っている。
知らないのは、その○○氏のみ。
○○氏のプロデューサー歴は、これ1作のみ。
制作協力会社に○○・インターナショナルという会社がクレジットされている。
○○という日系の俳優が出演しているが、トーゼン、彼の会社だと推察できる。
しかし、この会社名で検索をかけると、○○○という人が社長を努める会社がヒットする。
○○氏と○○○氏がつながるような気がする。
が、確証はない。
☆☆
○○○氏は、学生時代に彼女との往復書簡を出版した。
『愛と死を見つめて』である。
毀誉褒貶がついてまわった。
その後、ジャーナリスト、経済出版社に勤める。とある。
著作も、経済書、旅行記など、いくつかある。
『愛と・・・』はリバイバル出版されたのか、されるという話を聞いていた。
彼の毀誉褒貶含めて、不透明さはついてまわる。
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信長に関しては──
「日本で最初にクリスマスをやったのではないか。安土城にクリスマスツリーを飾ったに違いない」
と漠然と考えていて、そんなところから映画はできないものか、とも思っていた。
信長の宗教観を考えていくと、仏教であれ神道であれ、「本質はこうだ」という確固たるものがあったのではないか、と思える。
宗教とか「神」の理解を、はるかに高いところで理解していたのだと思う。
そういう意味では、おもしろいかな。
☆☆
○○党もおもしろかった。
1週間、神奈川県をずっと眺めていた。
政治家とは?
○○党とは?
神奈川の意識とは?
など考えた。
その結果の、コンセプト案は送った。
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●T子──顔合わせ
7月23日(土)午後6時
JR京浜東北線 王子駅前マクドナルドにて集合。
そのあと居酒屋にでも行って話をしようと。
○○氏がいろいろ説明してくれるらしい。
でも、ギャラ金額はその日はまだ明示できないって。
とにかく話をして、お互いにいけそうかどうか相性を見よう、ということでヨロシク。
私も親友も同席するけど、遊びのつもりだからね。

●T子──アポ確認
明日のスケジュール、了解していただけましたか。
電話や面談時に決定したこと以外は、メールで意思を伝えてください。
ルールです。
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●K君──了解
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●T子──あれからいろいろ考えた
今日は同席できなくて悪かった。
あなた無事に帰り着けただろうか。
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高校時代の私を「フランス人形みたいに可愛かった」と言ってくれたそうね。
その気遣いが嬉しかった。
酔うと所構わず横になってしまう私だから、そんな私を見て「壊れて捨てられた人形みたい」と言う男もいるさ。
それほど私の寝顔は美しいのかね。
☆☆
だけど、あなたがゼロ(私の親友)を見て「昔は女優さんだったのですか?」は言い過ぎだろう。
そこまで気を遣う必要はない。
☆☆
あのあとゼロから報告を受け、「○○氏とKさんは限りなく相性よさそうよ」と聞いた。
映画人同士、話が弾んだようなので、こちらも嬉しく思った。
☆☆
ゼロは私の25年来の親友で、今では親戚みたいな女である。
だから彼女の好意は全面的に信用できる。
とはいえ、あいつの認識に一抹の不安が残るのだ。
今回の話は本当にビッグプロジェクトなのか?
ゼロはここ数ヶ月、こうも言っていた。
「大きな仕事が動くと、嗅覚の鋭い奴らがどっと群がる」と。
だったら、これはあなたにとってビッグチャンスかもしれない。
その反面、多数のシナリオライターが出てきてもおかしくない。
そんな場合に、この程度のノリで大丈夫なのか。
ゼロも「ビッグプロジェクトだ、ビッグだビッグだ」と騒ぐわりには、セカンドオピニオンを取っていない。
おそらく、この話がまとまればジャパニーズテイストの衣装や小物のコーディネイトを任せる、ぐらいのことを言われているのだろう。
あいつは、そういうのに目がくらみやすいんだ。
頼むから、ここはひとつ冷静に判断してやってくれ。
自分のためにも、ゼロのためにも。
これが杞憂に過ぎず、すべて順調に運ぶなら願ったり叶ったりである。
そうなることを真摯に願う。
及ばずながら私も力になる所存である。
☆☆
最後に、プロット作成はベストを尽くしなはれ。
ていうか、ぜひそうしてください。
☆☆
私の仕事がうまくいき、まさにK君向けの仕事までなぜか私の元に舞い込んでくる理由は、「Best Wishes」が働いているからなのだ、と感謝している次第である。
あら、余計なお世話?
それでもいいじゃん。

●T子──朗報
今日また、ゼロから電話があった。
○○さん、とても喜んでいるのだそうだ。
「すごくいい人に引き合わせてくれた」とゼロは感謝されたって。
それから、実はすでに何人ものライターに書かせてはいるらしい。
でも昨日のことがあって限りなくKさんに気持ちがなびいた、これで本格的にエンジンかかった、とご本人がおっしゃったそうです。
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○○さんも最初は、ただゼロの友だちということで私に興味をもち、会いたがっただけ。
それが思わぬ展開になってよかった、よかった、とも言ってるらしい。
☆☆
あなた気に入られたね。
たしかにあなたは最適の人材だよね。
原作はもちろんのこと、映画完成までいろいろ役に立てるもん。
あなた、これを機会にバケちゃってください。
このプロジェクトは必ず動くし、動き出せば早い、心配するな、とゼロにさんざん言われた。
あ、そう。と言っておいたよ。
それならよかった、と。
☆☆
それはそうと、私が顔を出さないから、○○さんもはじめは怒ってたらしいね。
「怒らせるなよ、怒ったらこわいぞ」って、ゼロは言うけど、どうして私が怖がらなきゃいけない?
ともあれ、「次は絶対に来るように」と言い渡された。
わかった、行くよ。
ゼロのため、K君のため、ってことでしょ。
ああいう女にこうも愛されると大変だよ。
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●K君──ゼロさんとあなたの関係に「失礼」がなくてよかった。
○○氏に関しては、「話半分、3分の1以下」かな。
まあ、(ビジネスとして)真に受けるわけにはいかない。
この手のはなし、この業界にはごまんとある。
裏事情は、さまざまに推察できる。
ハリウッド自体が、アメリカの国策の反映なのだから。
日本の世論をコントロールしようという意図のもとに作られる映画は多々ある。
『ラスト.サムライ』だってそう。
スピルバーグだって、多々やっている。
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日本史上最大の英雄をクリスチャンにしよう、などとは。
☆☆
韓国は、キリスト教国。
クライアントである投資会社は、インドネシアで石炭関係のビジネスをしていると。
インドネシアで、石炭を採掘している企業は韓国企業だ。
今の日米、日韓関係を考えれば、ありえる発想だ。
それはそれで面白い。
☆☆
ただ、○○氏が、原作者のポジションに立とう、と思っていることは確かだ。
「自分の名前で出す」と言ってたから。
☆☆
『信長クリスチャン説』を構想するのは楽しい。
自分のためだな。
その構想(プロット)まではやってみる。
そのプロットに「対価、ギャランティー、報酬」が成立すれば、次のステージにいける。
実際に、書くとすれば、安土を訪れたり、信長の足跡を歩いてみないと。
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●T子──ちょっと愚痴る
交通マヒの当日、私はストレス回避のために家で飲み始め、つい深酒になった。今だに体調芳しくない。
その後もゼロやあんたのことが心配で(勝手にだけど)、心労は続いている(おおげさか)。
☆☆
あの翌日から執筆開始のつもりでいたのに、すっかり予定が狂った。
これは私がゴーストライターとして手がける最後の1冊。
集大成だし、本気でミリオン狙っている。
だからこれから約1ヶ月は、ゴーストライターT子の正念場なの。
その間にも、最近手がけた数冊のゲラチェックや仕上げが入る。
また、単行本の仕事を始めて3年になるから、文庫本化の準備も入る。
ひとつひとつはチョチョイで終わるはずだが、そのつど集中力もペースもかき乱される。
ああ、これらを早く片づけて、たまりにたまったレポートも完成させて、すっきり気分でデビュー作に取りかかりたい。
気持ちは焦る。
☆☆
8月は王子さま来日もあるから落ち着かない。
いや、それは楽しみだからいいけれど、○○氏との「次」、これはいったいいつなのだろう。
行くよ。行くけど、早く知らせてよ。
あなたはもう知っているんでしょう?
その山を越え、気分よく最後の1冊に集中したいよ。
私のことも少しは心配してよ。
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●K君──T子さま
>交通マヒの当日、私はストレス回避のために家で飲み始め、つい深酒になった。今だに体調芳しくない。
↑都市機能の脆弱さを実感した。
麻布十番に居たので、王子まで地下鉄南北線で、1本で行けるはずだった。
しかし、2時間半が過ぎて、銀座線と日比谷線の点検が終わり、運転再開のアナウンス。
南北線は、地下のいちばん深いところを走っている。
それをヒトが歩いて点検するのだと。
これは、まだかなりかかるぞ。
と、唯一地震の直後から徐行運転をしていた大江戸線に乗り換えて新宿へ出る。
JRが動いている保障はない。
大混雑の新宿駅。身動きがとれない。
山手線は動いていない。
そのため動いている埼京線は、ホームにたどり着くのも一苦労。
ホームはヒトで溢れ、危険この上ない。
乗降に時間がかかる。
発車しても、ホームをやり過ごすまでは、「電車が歩いている」ようなものだ。すし詰め。
それでも、赤羽に辿りついた。
しかし、横浜方面行きの京浜東北線が来たのは、30分後。
それも35キロの徐行運転。
鶴見行きのはずが、蒲田止まりにするとアナウンスがある。
約束より2時間も遅れて、20時過ぎ、王子に着いた。
南北線はまだ動いていないとのことだ。
帰りは、王子から都電荒川線で大塚へ出た。
そこから山手線。
☆☆
>その後もゼロやあんたのことが心配で(勝手にだけど)、心労は続いている(おおげさか)。
↑○○氏との関係は、杞憂です。
ただ、ゼロさんが簡単に「ゆく」と思っているとすれば、諌めておいたほうがいい。
☆☆
>あの翌日から執筆開始の予定でいたのに、すっかり予定が狂った。これは私がゴーストライターとして手がける最後の1冊。集大成だし、本気でミリオン狙っている。これから約1ヶ月はゴーストライターT子の正念場なの。 その間にも、最近手がけた数冊のゲラチェックや仕上げが入る。また、単行本の仕事を始めて3年になるから、文庫本化の準備も入る。ひとつひとつはチョチョイで終わるはずだが、そのつど集中力もペースもかき乱される。 ああ、これらを早く片づけて、たまりにたまったレポートも完成させて、すっきり気分でデビュー作に取りかかりたい。気持ちは焦る。
↑がんばって欲しい。
☆☆
>8月は王子さ ま来日もあるから落ち着かない。いや、それは楽しみだからいいけれど。○○氏との「次」、これはいったいいつなのだろう。行くよ。行くけど、早く知らせてよ。あなたはもう知っているんでしょう?
↑次に、あいま見ゆる日ということであれば、「10日後」ということでプロットの約束をしたので、8月の2日か3日頃か。
☆☆
>その山を越え、気分よく最後の1冊に集中したいよ。私のことも少しは心配してよ。
↑もちろん。
いろいろお世話になっています。