【2010 November】
2010.11.8
●T子──仕事のことで急用。
すぐ電話ください。
(ハロー、と機嫌よくかかってくる)
(フリー編集者○○さんにお引き合わせしたい件を伝える)
明日会う相手は少し年下のフリー編集者○○さん。
あらかじめ言っておくと、彼の前では私、私生活の乱れた女ではないからね。
過去の話をするときは気をつけましょう、お互いに。
…………………………
●T子──○○さんは、5時45分には行けるって。
ブリーズベイホテル。
JR桜木町駅から野毛方面へ地下道を渡ってすぐのところ。
OK?
…………………………
●K君──OK!
…………………………
●T子──私もう支度できちゃった。
あなた、もしヒマなら、早めに来る?
…………………………
●K君──今、渋谷。
…………………………
●T子──東急線で桜木町?
すぐ着くじゃん。
それとも、どこか寄るの?
私、出かける。
日ノ出町で降りてぶらぶらしてる。
…………………………
●K君──それは日ノ出町に来いということか?
桜木町へは、横浜乗り換えということがわかった。
3時半位に、横浜か。
…………………………
●T子──東横線は桜木町駅がなくなって、今は「みなとみらい駅」?
…………………………
●K君──そうか。
横浜乗り換えJRで買った。
地下鉄が嫌いだというのもあるけれど。
もう、菊名。
…………………………
●T子──今どこ?
私は野毛小路。
一杯飲もう。
…………………………
●K君──野毛小路を歩いてる。
後ろ、多分。

【デートノート③ 2010.11.9〜11.10】
(T子記す)
男と女の迷路で、Kとはぐれてしまった。
だけど、ついに見つけた。
追いついた。
「Tちゃん」と声をかけられた。
☆☆
野毛小路の居酒屋で、1時間半ほど飲む。
ワイン、ひれ酒、うなぎ蒲焼き。
Kは元気がない。
Kは私にならって、世田谷でアパートを探しているらしい。
不動産屋のチラシを、一緒に見る。
☆☆
ブリーズベイホテルで○○さんと合流。
萬里へ。
☆☆
仕事の話いろいろ。
私と○○さんが横浜のYBCの話をしていても、Kはちゃんとついてくる。
私のこと、少し見直した?
☆☆
本当に書きたいものについて話がおよび、盛り上がる。
☆☆
「ハードボイルドなところへ行こう」ということで、パパジョンへ。
ビリーホリデーをリクエストする。
ビリーは元祖だめんずウォーカー。
☆☆
K君、これが野毛だよ。
☆☆
「先輩」と私がKを呼んだら、パパジョンのカウンターで隣にいたお客さんに「彼女美人だねえ、いい女だ」と言われ、K喜ぶ。
「よかった」と思ったんだって。
☆☆
Kのたっての希望により、タクシーで瑞穂埠頭「スターダスト」へ。
ジュークボックスで懐かしい曲をかける。
ここが俺の原点、とKが言う。
原点はドブ板じゃないの?
☆☆
酔いがまわり、○○さんに対しても、もはや私たちの仲を隠しきれない。
☆☆
Kがケータイを忘れたため、再びパパジョンへ。
また飲む。
今度は私、Kの隣に座った。
K、嬉しそう。
☆☆
だけどさあ、立ち小便とツバ吐くのはやめてよ、と私は言った。
Kの家庭では、感情的にも生理的にも嫌悪するようになっちゃったから夫婦仲が悪化したというけど、それはKが奥さんや娘さんたちに嫌われてるということ?
あなたはそれほど嫌いになっていないのでは?と私は思う。
☆☆
野毛のラブホテル泊。
神経質な私も、ダブルベッドで平気で眠れるようになった。
☆☆
「Tちゃん、こんなにトロトロ」とKが言う。
した。
だけど今夜はもうムリ、明日の朝しよう。
☆☆
夜も翌朝も交わる。
だから私、Kに開けてもらった窓を締め、ベッドの上のあいつの元へ。
またするの?とK。
そういう約束だったじゃん、と私。
おまえ、いつから肉食系になったの?
☆☆
何度も入れ直す。
入れるときがいいんじゃん。
と私が言うと、Kはちょっと意外そう。
そして、「あとひく」と。
☆☆
ずっとしてなかったから、一度するとまたしたくなる。おまえは?
私はそうでもない、だんだん平気になっていく、あとひくのは男の生理? それとも、私が驚くほどいい女になったので惚れ直したのかな?
☆☆
T子をいかせたい、遠慮するな、いけ。
あんたこそ、いって。
若ければ、とっくにいってる。
☆☆
Tちゃん、俺疲れちゃったよ。
心配事があるのよね、かわいそう。でも大丈夫、ぜったいに大丈夫。
☆☆
おまえは生き延びようとするところが偉い、とK。
だって楽しいこと一杯あるじゃん、こうして飲んだり、話をしたり。
俺はもうすべてがどうでもよくなってる。
嘘よ、そんなの。
☆☆
あんたと遊ぶのは今日で終り。じゃないと私、書けないから。
☆☆
前夜、「おまえのアパートに行く」と言われたが、それはだめ、私の生活めちゃくちゃになっちゃう、と断った。
☆☆
朝、野毛から中華街まで腕を組んで歩く。
会えばいつも腕を組む。
不倫カップルに見えるだろう、とK。
そうね、夫婦だったら腕なんか組まないものね、と私。
☆☆
中華街・謝甜記。
モツと野菜の煮込み、すごく美味。
紹興酒を飲みながら、会話弾む。
☆☆
向き合って、お互いの顔をよく見ながら話す。
「美人はおまえ」とKに言われる。
「おまえの話おもしろい。書け」と、これはいつも言われること。
☆☆
お粥もとても美味。
うまい、うまい、とK。死ぬまでにこれが食えてよかった、と。
(私の弟に言わせると、うまいと感じるのは飲んでるからで、素面で食うと物足りないらしい)
☆☆
山下公園からシーバスでポートサイド地区へ向かう。
APEC開催中につき、警備が厳しい。
オバマも来てるし。
荷物チェックの際、「鞄の中に危ないものいっぱい入ってるよ、これがメドベージェフ用の……」とK。
警官笑って、「もういいです」。
☆☆
15分の船旅。
船は貸切り状態。
寄り添って横浜の海と街並みを眺める。
☆☆
いつでもどこでも、すぐに靴下を脱ぐK。
私はあいつの親指を握っている。
足にさわっている。
足つぼマッサージ。
☆☆
キス。
肩にもたれる。
髪をなでてもらう。
言葉はいらない。
☆☆
下船し、波止場で日向ぼっこ。
ふたりともヘロヘロで動けない。
私、吐きそう。
☆☆
近場のビルのトイレへ。
そのまま家に向かった。
置き去りにされたKは1時間くらい、その場にいたらしい。
「逃げると追う」っていうのはホントね。
その夜、わざわざ電話がきたもん。
私は意識してやったわけじゃないけど、たまたまうまくいっちゃった。

atヨコスカ 24時間デート第1弾のとき、私の出費は2万円ほど。
(ホテル、Uちゃんとの飲み会)
Kもドブ板で飲んだワインや久里浜フェリーその他を払ってくれた。
☆☆
at油壺・三浦 デート第2弾は、ほぼ全部K持ち。
3万以上かかったはず。
☆☆
at横浜 デート第3弾は私3万円ほど。
Kも調子にのってけっこう使ったはず。
翌朝の中華街やシャトルバスもKが出したし。
☆☆
Kに気持ちをもっていかれて、大連で知り合った彼には熱が冷めた。
それでも逃がすのは惜しい。
ゼロと共有のボーイフレンドに留めておけばいい。
その彼との箱根行きに関して、弟からアドバイスあり。
「うちのワーゲンゴルフ(オープンカー)をゼロに運転してもらって、颯爽と乗り付けろ」と。
「帰りもさっと帰れ」と。
「少し物足りなさを残しておけば、男はまた誘おうあって気持ちになる」とのこと。
だけどねえ、と私は拒否モード。
「わかんねえかなあ」と弟は、姉の馬鹿っぷりを心配している。
☆☆
そんなことよりも、とKのことを弟に聞いてもらう。
弟は、「一生一番大好きな人がいて、さらに他ともつきあえるのは幸せなことだよ」と。
「だけど気をつけろ、相手の気持ちを読み違えるな、のぼせんじゃねえぞ」とも言う。
わかってる、私だって我慢してるんだ。
☆☆
それでも私の妄想はふくらむ。
仕事にも創作にもモチベーションが上がった今、はやく作家デビューしてKの面倒をみたい、楽をさせたい、いい思いをさせたい、引き上げてやりたい。
☆☆
作家になった暁には弟にも仕事手伝ってもらうから、Kとのことも含め、私のことをいろいろコントロールお願いしたい。
弟よ、Kはできる男なのよ。
本読んで音楽聴いてただ楽しんでるだけの男じゃない。
飲んだくれの、ろくでなしではあるが、うすらトンカチではないのだ。
現場の仕切りは頼りがいあるし(車ではちょっと失敗したようだけど)、自ら書く気概があるの。
○○党の仕事のときだって、短期間にあれだけ調べて、あれだけ書いてくれた。
ほぼノーギャラだったにもかかわらず、だよ。
☆☆
Kが私の経済力や仕事の影響力を頼って一緒になろうとしたって構わない。
Kが持ち直して、「俺やっぱりおまえと一緒になりたい」という運びになるなら、それこそ嬉しい。
☆☆
でも、たまに会って遊ぶからいいんでしょ。
ずっと一緒にいたらだめになるって、わかってる。
そのへんはお互い経験済みだから、うまくやれそう、かな? 確信はないけど。
☆☆
もしも私に妹がいて、こんなことやってるようだったら、絶対にこう言ってる。
「あの男はだめだよ。それでもどうしてもやめられないなら、たまに遊ぶだけにしておきな。一緒になれるかもなんて、将来のこと考えるのはバカ」。
☆☆
でもまあいいや、妄想してるだけで楽しいんだから。
☆☆
最後は一緒、最後まで一緒。