【2011 December】
2011.12.19
●K君──ハマモノ
横浜芸術。
民族に根ざし、民族に生まれた芸術が、自己の芸術に対する奉仕を忘れて国際性を第一義とし、輸出を目的とした場合、それはたちまちのうちにハマモノに転落し国籍不明の混血児ができあがる。
『新しき土』はその悲惨な例である。
☆☆
ハマモノ。
それはこの映画の共同監督、伊丹万作の戦後の言葉。
☆☆
『新しき土』は東宝東和川喜多かしこが封印しているそうだ。
俺は、貴重なDVDを観た。
そしてシナリオを採録したことがある。
☆☆
ハマモノ、いいじゃねぇか。
スカモノを好んでやりたいのが、我々か。
☆☆
岩波現代文庫『李香蘭と原節子』四方田犬彦、新刊手にとってしまった。
…………………………
●T子──ハマモノとは、ハマに雑居する国際性の中にも日本伝来の要素を再発見し、そこに異国性を感じるという、ねじれた感覚を生むものである。
風邪は大丈夫そうね。
トランジット改稿、できた。
読んでくれないの?
…………………………
●K君──明日、オフ。
読む。
PCに。
☆☆
金さんがおなくなりになりました。
号外もありました。
…………………………
2011.12.20
●K君──お早う。
読んだ。
「進化」していたよ。興味深く。
赤。トル。別の言葉。言葉が硬い。など。
ホステスの会話は面白い。
18歳の文学少女の会話があってもいいかな。
1学年上の男の話は、同級生ともしてる。
それは、主人公の人となり、やはり「18歳」であることが浮かび上がったほうがいい。
と、思う。
…………………………
●T子──すみません。
今朝のメール、誤って削除してしまいました。
添付ファイルを再送信してもらえる?
…………………………
●T子──朱筆入れ、ありがとう。
修正し、三田文学に送信します。
安眠妨害、許して。
横浜中華街、パリ、そのあとに続く一連のモノローグは削除したほうが良い、ということ?
ラストの十数行も要らない、というの?
明日、締切なのよ。
今夜送信できれば、なお良い。
あなたの朱筆に従い、思い切り削除してみた。
これで本当に質が高まったのか、再読してくれるんでしょ。
PC送信するからね。
…………………………
(電話あり)
(T子記す)
モノローグもラストも削除してみた、私自身の考えが伝わらないから不満ではあるが、作品としてはすっきりしたかもしれない、あの部分に読者がそれほど反応しないのなら、削除する、と私は言った。
削除しろというよりも、説明的だから朱にした、ほかの言い方はないのかな、と。あと、あれらについて語るならもっといろいろ書き込まないといけない、中国四千年の歴史と黄河文明も要らない、ニジンスキーについての記述も長い、とK。
(でも、もう書いちゃったから削りたくない)
よそ者についての説明も要らない、おまえもよそ者、外人バーのプロのホステスではないから、そもそもドブ板自体が横須賀のよそ者で、突出している、横須賀が興奮していないのは当たり前、そんなことは書かなくていい、ドブ板は破綻したわけじゃない。
(では消滅したのか?)
俺についての描写を読むのは恥ずかしい、俺こんなこと言ったかな、ひどいやつだな、と思う。男にふりまわされた、その間にドブ板を見た、トランジットした、そういうこと、男とのことを書いたから話の核はそれになる、だからラストの2行は活かしたほうがいい。
(私もそうしたい、だけどその直前にある「放言」の内容は要らないと言われると困る。18歳の女の子であることを浮かび上がらせるための加筆をした。文学少女らしい会話も書き加えたのに)
…………………………
●T子──ドブ板トランジット60枚、これを三田文学に送信しました。
…………………………
●K君──三田文学って、横書きデータで入稿できるの?
…………………………
●T子──できる。
縦書き変換してプリントアウト、それを読んでくれる。
私がプリンター持っていないと知って、特別の措置。
…………………………
2011.12.21
●T子──ともあれ脱稿して気が楽になった。
ご協力ありがとう。
実は昨晩、夢の中であなたに、改稿過程でありがちなミスを指摘され、また意識の低さを批判され、うなされたが、夢でよかったと、喜んでいるところ。
さて、○○出版の企画書、構成案は、いつ書きますか?
私も数日ほしいので、できるだけ早く、こちらに回して。
…………………………
●K君──ご苦労です
出版企画『産婦人科看護婦は見た!婦人科外来に来る変な患者』のサブタイトルとして、いくつかの化石のような文章が出てきた。
送る。
暇つぶしにしてくれ。
☆☆
『横須賀武山物語』書き出し。
お袋の要介護認定申請から許可までの時間軸のなかで、武山に暮らすことになり、そして離れるまでを語る。
…………………………
●T子──書き出したのは結構なことですが、出版企画は、いつやるのか。
予定を知りたい。
…………………………
(T子記す)
『間違えやすい漢字使い分け辞典』を私に1冊、Kに1冊注文。
送るから郵便番号教えて、と電話。
用件がすんでもKは電話を切ろうとしない。
話がある様子。
Kは構成案を書きあぐねている、ネットで看護婦日記など検索している、切り口が見えてこない、書き方がつかめない、考えてみる、こうして仕事を紹介してくれるのはうれしいが、興味を持てないことだと頭が回らない、などと、ぐずぐず言う。
だから私はびしっと言ってやった、これはあんたの仕事、私は伴走するだけ、いやならやめる、やりたいと言うから話を進めた、勝手に進めてはいない、この1冊を皮切りに以後○○出版でいろいろ書いていけるように、ということだったでしょう、あんたはひとの話を聞いていない。
先日のメモなくしたみたいだ。
じゃ郵送する。
送らなくても、入力すれば構成案になる。
私にやれというのか、それはだめ、メモをもとに言葉をつけ加えて、一目で内容がつかめる構成案にしてよ、目次をつくるつもりでやってよ、自分でやらないとあとで書きにくくなるよ。
おまえの頭の中ではもうできあがっている、そのイメージどおりにいかないかもしれない。
それでもいい、自分のやりたいようにやって、だけどそもそもこれは、先日の打合せで意見を出し合ってつくったイメージだと思うけどなあ。
あの雑談だけでは書けない。
今後数回取材する予定です、あの雑談は構成案をつくるためのもので、どういう感じの本にするかを話しあった、コンセンサスを得たはず。
これは仕事の話だから私もつい厳しい口調になる。やさしく言えない。
そういうことじゃないんだけど、わかった、やります、とK。
…………………………
●K君──もりたよしみつがなくなった。
…………………………
●T子──映画監督?
まだ若いでしょう。
弔問に伺っても、飲み過ぎないで。
☆☆
最後に送ったトランジット、開いてくれたかしら。
いずれ、読んでおいてね。
☆☆
校正リライトの仕事を、年内に1本かかえている。
これが終わったらすぐ別の案件を、と編集者から電話あり。
今回のは女性の著者で、恋愛もの。
文章はかなり錯綜。
よってバシバシ、リライトしてほしいとのこと。
紙に朱筆入れではなく、データ修正。
締切は1月10日、データ送信にて。
これをやるには年末年始の休みを多少犠牲にしないとできない。
手強い相手なので、3日間では仕上がらない。
それでもギャラはいつもと同じ7万5千円。
どうしよう。あなたやってくれる?
…………………………
●K君──やる。
…………………………
●T子──よかった。
お願いします。
早ければ26日にデータが送られてくる。
そしたら余裕でしょ。
そのころ私は別の校正してる。
…………………………
●K君──本日バイト
さっきまで図書館。
看護師と婦人科病を。
☆☆
DAISOで夜食用のパンとカレンダー。
松屋で牛丼小盛り。
ドトールに着いてコーヒー。
☆☆
○○出版のHPみた。
☆☆
団鬼六『花と蛇』。
石井隆の同作は、プロデューサーだ。
☆☆
五十路人妻写真雑誌は愛読。
『性生活報告』の文庫化。
ヘンリー塚本だ。
看護師のブログ多し。
差別化オリジナリティは、結構難しいぞ。
実は心療内科に行くべきは、婦人科診察台マニア。
オカマのホルモン注射は婦人科でいいのか?
合法か?
美容整形外科形成外科か。
ビラビラレーザー照射は、尖っ形コンジロームの治療法でもある。
☆☆
ははきぎほうせい『エンブリオ』『受精』『インターセックス』生殖治療と性同一障害を扱う。
神の領域に挑む。
もっとも、看護婦もキリスト教から始まる。
☆☆
ところでゆうに、その校正を優先ということだな。
…………………………
●T子──○○出版企画の件、いろいろ考えてくれて頼もしい。
だけど、あまりむずかしく考えずにスタートしましょう。
後々問題になりそうな点は、作業を進めながらその都度、考慮のうえ対処。
医院や患者の実名出すわけじゃなし、書き方に注意すれば、ひっかからない。
看護士ブログは多数あれど、今回我々がやろうとしているのと同じ書籍はまだない。
だから企画書通ると思う。
ネタ元は悦○、原稿執筆はKとT子。
この3人の共著ということにするか、あるいは何か適当なペンネームでっちあげるかな。
☆☆
人妻写真集、性生活報告など、お好みの仕事が諸々あるのなら、そっち方面で稼げばよろしい。
まずは○○出版でね。
そのための第一歩が、この企画本。
日程からいうと、○○出版構成案の次に校正リライトの締切。
なので、よろしく。

(T子記す)
「化石のような」とKは言うが、1999年・2004年あたりに書かれたデータ5種、送られてきたので読む。
三浦市町づくり市民懇談会の講演記録は安心して読めた。
だが、映画『待合室』撮影日誌2004年、日韓合作映画『安重根』顛末記1999年は、読んでつらくなった。
よく書けている。
視野の広さ、政治経済歴史地理を読み解く力、行動力、瞬発力、体力、気力、意識の高さ、映画という仕事に対する情熱、どれもすごいと思う。
だけど映画の世界はいかにも大変そう。
その渦中に飛びこみ、やりがい充足感幸福感を味わい、時に翻弄され、エネルギーを使い果たしてきたのか。
私もこれまでずっと仕事に精力傾けてはきたが、Kを忘れずにいる余裕はあった。
でもあいつは、まったくそれどころじゃない環境を生きてきた。
無我夢中で仕事をし、家庭もあり、恋もあっただろうし、それに何より、資金繰りに追われていたのだった。
その間、私のことは忘れていたのか。
時々思い出しては、どう思っていたのだろう。
そして今は?
1999年といえば、私は闘病中だった。
それでも入院先から台場のホテルへ取材に行っていた。
だから許永中逮捕の騒動を知っていた。
Kは私が病気のことを知らせても、あまり心配してくれなかった。
その当時のあいつはそれどころじゃなかったのね。
日韓合作映画『安重根』顛末記を読めばそれがわかるし、こっちまでつらくなる。
大変だったね、よく頑張ったね、と言ってやりたい。
同時にKという男が怖くなる。
仕事なのか自己表現なのか、それとも自己実現、あるいは単に自分がやりたいこと、燃えること、夢中になれること、とにかくそちらのベクトルに向かっていく強烈なエネルギー、何かを犠牲にしても突っ走るエゴ、やりたくないことはやらない、妥協しない頑固さ、そんな諸々が恐ろしくもある。
そんなKに私は利用され、喰われてしまう気がして怖い。
Kの真意がわからなくなる。
私を好きでいてくれる気持ちを信じたい。
何もかも嘘や演技であるはずがない。
だが一抹とはいえ不純な動機があることも透けて見えてしまう。
人は楽なほうに流れるからね。
ああもう男の面倒みるのなんかよそうかな。
私ももっと真剣に勉強して書いて大きな仕事を成し遂げるべきだな。
Kに負けてられないよ、そんな気分になる。
だけどKがいなければつまらない。
書いて成功するだけじゃつまらない。
ともかく精進しよう。
世界を広げよう。
そして自分のやるべきことをやっていこう。
才能をのばす。
開花する。
そして目指すは、絶大なパワーを持って男を惹きつけること。
生涯惹きつけておくこと。

(さらにT子記す)
2004年にはすでにメールやりとりがはじまっていた。
その年の暮れから翌年初頭にかけて、Kは私の知らないところでそんなふうに映画の仕事していたのか、のめっていたのかという感じ。
ちょっとショック。
だけどロケ先で原稿書いているのはきっと、私が紹介した仕事の原稿。
それを思うと、なんだかおかしい。
奥さんからクリスマスプレゼントにマフラーもらった、俺はヨン様じゃねえと苦笑いしながら、という話には、私だって笑う。
短歌の女性と終わって、私に連絡してきた。
そこから私たちはまたはじまった。
この7年間にKの気持ちがどう動いていったのかを知りたい。
今はどう思っているのか、本当のことを知りたい。
そしてこれからどうしたいのか、心底からの気持ちと考えを聞かせてほしいよ。実はあいつ、ただなりゆきまかせで、特に深く考えていることなどなかったりして。
私はこうしてKのことばかり書いている。
メール通信記録、デートノート、小説においても。
Kは私のこと、私とのことは書かないのかしら。
映画日誌に私の名が登場しないのはいいとして、日記や小説にはぜひ書いてほしい。
…………………………
2011.12.22
●K君──いづみ語録
あづさ編、文遊社、古本屋にみつけた。
買ってしまった。
縁。お導き。
☆☆
看護婦の構成案、オレ的には成立。
明日祝日、家人いなければ、昼過ぎには送れるが。
☆☆
まもなくバイト開始。