【2012 February】
2012.2.10
●T子──サルトル『嘔吐』
主人公ロカンタンは、他人との接触に極めて乏しいが、物には絶えず囲まれている。
ところがあるときから、物との関係が微妙に変化する。
普段は自然に受け入れていた物に、一種の嫌悪感、嘔吐感を覚えるようになったのである。
これが発端で、ロカンタンの手探りの思索が始まる。
従来は気にも留めなかった物が「存在」であること、しかも何の理由もなく偶然に存在していることに気づく。
そうした発見のクライマックスがマロニエの木の根っこの場面で、このとき到達した確信が、「本質的なことは偶然性だ」「存在は必然ではない」であった。
いっぽうで、ロカンタンの別れた恋人は「完璧な瞬間」を作るという観念にとらわれているが、それは過ぎ去った過去を物語るときにのみ可能であって、生きるというのは退屈な日々の積み重ねであることが徐々に判明してくる。
これはロカンタンの場合も同様で、「選ばなければならない。生きるか、物語るかだ」となる。
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(T子メモ)
音楽が流れる時間には日常生活と違って始まりがあり、終わりがある。
何の理由もなく物が存在する現実の世界、始まりもなければ終わりもない日常の世界とはかけ離れた、いわば「冒険」の時間である。
ロカンタンは自分もこのように生きたかったのだと気づくが、もちろん生の時間においてはそのような願いの達せられるはずはない。
まただからこそ音楽は、「存在」とは別の世界があること、たとえば小説を書く可能性が残されていることを示唆するのである。
↑音楽の刺激から小説へ、という結末。
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2012.2.11
●K君──武山2章
なんとなく、まとまりをみせた。
40枚。
リライト見た。
ありがたいですが。
まだ変わりそう。
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●T子──本日、記すことなし。
実存した。(とロカンタンは記した)
私は、ライトノベルを記すことにした。
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2012.2.12
(電話あり。30分ほど話す)
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(T子記す)
Kは朝8時から書いていた、第2章がまとまり、第3章に入ったとのこと。
さすがに疲れたのか、あるいは飽きたのか、お酒を飲んでいるようだった。
だがスランプを酒で紛らわしているわけではないらしい。
どうにか抜け出した、まとまってきた、書けたところまでデータ送信する、意見を聞かせてほしい、おまえのレベルでわかるかどうか知りたい、とK。
また生意気なことを言う、私はちゃんと読んで直してあげているでしょう、読めばわかるんだから、と私。
おまえがちゃんと理解したことは伝わった。
細かい直しは最後にして、とりあえず組み立て方を考えてあげる。
よけいなことしやがって、と思ったリライト箇所もある、いきなり構成案を出されてムカッときたこともある。
ふたり笑。
☆☆
サルトルはわからなかった、とK。
あれは西欧人の感覚、我々日本人はアニミズムや仏教に馴染みがあるから、ああいうことでは悩まない、だけど私はサルトルが書いている感覚も少しわかる、と私。
書き上げるまで体を大事にして、倒れたりしないように、締切が設けられていて急がされているわけではないのだから、焦らず、自分が納得いくようにすること。
でも急ぎたい。
成長が追いついていなければ時間がかかるのはやむを得ない。
☆☆
私はライトノベルを書き出した。
やったね。
書いてみると、けっこうむずかしい。
わかるよ。
だらだら書く、だけど水増ししているようになってはいけない、そこがむずかしい。
濡れ場は?
ある、7人の男と7つのセックスシーン。
昔から思っているけど、セックスは書くものじゃなく、やるものだ、とK。
実際にやれないことを書く、と私。
☆☆
武山の話、なおも続く。
Kが何を言いたいのか、よくわからない。
読めばわかる、話はそれからだ、とKは応えた。
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2012.2.13
●T子──ライトノベル
プロローグは書けた。
全体の10分の1。
原稿用紙350枚ほど書く必要があるので大変なのよ。
明日から本編。
これが重要。
寝転がって、考えをまとめる。
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●K君──頑張ってください。
我が3章、1万字。
明日から4章。
こんなに難航するはずなかったのに。
コピペはだめだ。
資料は、きちんとテーマ別にノートをとらなければ、だめだ。
なにしろノートまで散らかっている。
まだ送らないよ。
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2012.2.14
(KはPCより、「1972横須賀 週間ポスト記事」を送信してきた)
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●K君──参考までに、最新ポストの記事送る。
別の記事を読みたくて、買ったら、この記事が目に入った。
どこかで「納得できない」ものがある。
事実関係もある。
実際に取材してるのか?
反米の象徴にヨコスカをもってくるか?
見開き4枚でこの字数。
よく見ると、複数の文体が混在してないか?
☆☆
新聞も週刊誌も、算用数字を使う。
「三男一女」も、「3男1女」と表記していた。
☆☆
本日4章マギル。
それぞれ、落としているところもあり、個人感を記さねば。
章ごとの「つなぎ」もある。
文体。
「中曽根は」ではなく、「中曽根さんは」と書いた方がいいか。
論文ではない。
☆☆
四方田犬彦は、「百恵論を書くにあたり、彼女の周辺には、出版界にもタブーが存在した」という。
☆☆
企画『わたしは前科何犯か!』
☆☆
濡れ場描写、お手伝いします。
男目線に、さらされる主人公。
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●T子──『日本人なら知っておきたい日本の古典』は、『日本人の知らない日本語』(漫画とエッセイ、外国人に日本語を教える学校教師とイラストレーターの2人組による)続編含め累計130万部を受けてのスピンオフ企画だった。
私は、いずれの書も図書館でチェックしておいた。
内容は薄い、が読みやすい。
わりと面白い。笑える。
☆☆
『~日本語』から派生した『~古典』を担当したのは、幻冬舎の○○氏。
知ってる。
私も前に一度仕事したことがある。
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●K君──横須賀高校行きのバスではない。
ヨーハイ。
ベースのなかのハイスクール。
したがって、その前の「ヨコスカ」は、ベースをさす。
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●T子──違う。
原文は「横浜の高校へ1時間半」となっている。
あとで気づいてメモ付け加えたが、当時は武山から横浜までハイスクールバス(後にそれに関する投稿あり)。
そのバス通学が1時間半かかったことから、あのようなアクセス説明になった、と思われる。
長井のキャンプ・マギルまでは横須賀(著者註:横須賀中心部またはJR横須賀駅を指すと思われる)からおよそ8マイルで、橫浜の高校(著者註:当時、キャンプ・マギル近辺に住む高校生は橫浜のハイスクールへバス通学をしていた)までバスで1時間半ぐらい。
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●K君──ナガイハイツを読んだ。
するとヨコスカ高校のもんだいか。
削除した投稿、復活させます。
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●T子──
40年代の後半、キャンプ・マギルの小学校は1学年から6学年まであった。
その当時、キャンプ・マギルの区域に住んでいる高校生たちは橫浜にある寄宿舎に入れられていて、金曜ごとに帰ってきては、日曜にまた寮に戻っていった。
後に道路も交通事情もよくなってからは、毎日バスで通学できるようになった。
将校ハイツが長井ハイツと呼び名が変わったのも、やはり後のことだった。
↑これを削除したの? 面白いからイキですよ。復活したのなら良し。
☆☆
ヨコスカ高校のもんだい、とは?
原文に横須賀高校という語は出てこない。
橫浜の高校となっているのを、私が勝手に意訳した。
勘違いだった。
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●K君──5時間、休憩。
アラスカのパイロット、iと小文字のやつ、復活。
アラスカで武山のこと考えているのが、楽しい。
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●T子──なぜに5時間?
アラスカの英文を和訳する必要あり?
ならば、送信して。
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●K君──中島みゆき
の
歌
英訳。
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●T子──中島みゆきを私が訳すの?
気が進まない。
武山と関連あり?
(↑関連なし。ただ思いついただけ、やったら面白い、とK)
☆☆
アラスカの英文はどうなったの?
私がもらったデータでは、アラスカ投稿はたいして面白くないよ。
(↑おまえは面白くなくても俺が面白いんだからいいんだ、だと)
(だったら、その面白さを解説するように書けばいいのだ、と提言した)
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(電話あり)
(T子記す)
自分からかけてきたくせに、いつもはじめは黙っているから、私のほうで「こんばんは」と声を出したところ、「いつもテンション高いね」と。
どうしたの、あなたはテンション下がったの?
いや俺はいつもふつうのテンション。
☆☆
武山執筆のことでいろいろ話すので聞いてあげた。
自分が何をどう書くべきか、考えがまとまってきたらしい。
よろしい。
読者に向かって書くといっても誰が読者かわからない、T子さんにわかるように、おまえに向かって書けばいいのか。
そうだよ、きっと。
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2012.2.15
●T子──岸恵子の鶴田浩二追悼の文章に泣けた、と言っていたよね。
それで思い出した。
号泣の谷底に突き落とすような追悼文のあることを。
森瑶子が亡くなってしばらく後、かつての婚約者で、長年にわたって彼女の本の装幀を手がけ、エッセイ共著も出したデザイナー亀海昌次による追悼が、文庫巻末に収録された。
夫君の許しを得て病院に見舞い、最後の別れをしたことが綴られていた。
その亀海も、もういない。
何もかも、生きているうちだね。
☆☆
追伸
私は頭とろいから、長生きして時間を稼ぐしかない。
それはたぶん、あなたも同じ。
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2012.2.16
●T子──2月25日(土)に、安針塚別邸でバンドが音だすのでいらっしゃいと呼ばれてる。
あなたも一緒に行く?
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●K君──遠慮しよう、できなきゃな。
4章格闘中。
テーマ、とっ散らかってきたか。
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●T子──脱稿したら行くの?
>テーマ、とっ散らかってきたか。
↑途中で私に読ませて。
そのうえで色々話せば、考えまとまるよ。
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2012.2.17
●K君──4章
長井台地の上の占領。
そこそこ納得で、素稿。
明日、立教。
だが、疲れてもいる。
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●T子──無理しちゃだめだよ。
明日は休めばいいじゃん。
私は3、4日書いたら必ず小休止するよ。
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●K君──サンキュー。
まだ、叩き台。
推敲も、足しも削除もある。
先を書きながら、振り返ったり。
もう少しか。
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●T子──努力は必ず報われる、と私は信じている。
但し、容貌の衰えに要注意のこと。
あとでガバッと睡眠、栄養、運動が必要だね。
☆☆
団鬼六「不貞の季節」文春文庫、傑作。
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2012.2.18
●T子──少女小説
3分の1あたりまでダラダラ書き進んでしまったが、なぜこんなものを書いているのだろう、何を描こうとしているのだろうと、はっきりしない。
ただ言葉が洩れだしていく。
やばいかな。
没になったらどうしよう。
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●K君──わしゃ、見えてきた。
ま、打つのが、面倒。
バーガーキングもいいが、電源があるから。
コンパクトなバッテリーの活きてるパソコンを買おう。
たぶん、電車内とか飲み屋のカウンターが、ふさわしい書斎になりそうだ。
5章は、親父の話。
ゆえ、前から移動するものあり。