【2012 February】
2012.2.22
●K君──あったかくなったね。
執筆は進んでる?
…………………………
●T子──『夢を見させて』3章まで書けた。
あと5章。
月内脱稿はきつい。
雑誌の仕事が入れば、そちらを優先。
無理しない。
明日は外出するので、早々に休む。
…………………………
●K君──
ゆーめいどりーむ。
あいどりーむあどりーむ。
タイトルいいね。
憎まれ口、すきなんだ。
内容の想像がつく。
おまえの本線だろう。
わたし、心身とも不調。
…………………………
●T子──
>憎まれ口、すきなんだ。
↑どういうこと?
☆☆
>わたし、心身とも不調。
↑なぜなの。
理由がわからないと、ますます心配になる。
…………………………
(心配で電話をした)
(T子記す)
Kは風邪声だった。
だから心身不調なのか。
Kが言うには、あれから市営地下鉄ブルーラインで寝てしまい、終点で折り返し、気づいたら田園都市線?のほうにいた。そこから三軒茶屋まわりで?帰ったので、かえって近かった。
バーガーキングでも2時間寝た。寒くて起きた、とK。
眠れたのはよかったけど、それで風邪ひいたんでは困ったね、と私。
うん。
長い間の疲れが出たのだから、2、3日では疲れはとれないでしょ。
そう、疲れが出た。今日は1日家でひとり、家庭の義(掃除、ごみ出しなど)していた。
だったら体は休まったでしょ。
だけど家ではよく眠れない。家人が戻るとすぐに家を出て、またバーガーキングで漢文を打ち込んでいる。俺かわいそうだよな。
かわいそうだね。
それでもこれやらなきゃならない。やらないと家を出られないから。
三浦海岸の宿で書けばいいよ。
『夢を見させて』タイトルがいい。そうかおまえはこういうの書けばいいんだよなと思った。書いていて楽しいだろ。
そうでもないよ。トランジットやスクランブルのほうが楽しかったよ。
横須賀橫浜は一度は書かなきゃならない通過点のようなもので、もうあまりこだわることないだろ、書くこともないだろ。俺はそれが売りになるんで、書くけどな。
憎まれ口って、そういうことか。だけど私も作家のイメージとして橫浜の女性というものが……。
それはわかるよ。
それにあなたがタイトルから想像している内容とはたぶん違うと思うよ。
あ、そう。しかし今後また横須賀橫浜やるなら、えーとねえ、一番いいのは往復書簡のようなものをやること。
誰と?
俺と。俺の悪口書けるようになるといい。
じゃ書いてみようか。
それできるようになるには、ちゃんと勉強しないといけないってことだよ。
わかったよ。
もう少しここで打ち込みやったら、サッカー(テレビ中継?)見に行かなきゃならないんで。
じゃ、とにかく体に気をつけて。
大丈夫だよ、サンキュー。
…………………………

(T子記す)
大袈裟にいうと、私はKに見限られたようで淋しい気分になった。
あの時代の横須賀を一緒に書いていこうとしていた、そんな一時もあったから。
しかしそれは私の本領ではないので、方向転換して「トランスロマネスク」を追求する?
そういうことになりそう。
それでいい、との確信もある。
しかしその前に、「T子は問題意識が低く、社会オンチで、社会を見る目がなってないから、書くうえでのパートナーになれない」と断じられたようで、気持ちが落ちこんでならない。
ここで再びしかしだが、私だって、やろうと思えばやれるのだ。
…………………………
(深夜零時半頃、電話あり)
(T子記す)
Kはコンビニで煙草を買おうとしたところ、レジで年齢確認のボタンを押すように求められ、「そんな条例おかしいだろ、それじゃ買わねえよ」と怒って出てきたとのこと。大人げない。店長に申し入れれば良いのだ、「不愉快だ」と。
俺は新聞に投書する、とK。
それもいいかも、しかしうちの近所のコンビニは店員が融通きかしてくれるよ、それよりも飲食店を禁煙にした神奈川県条例のほうがひどい、諸外国はさらにひどい実態だよ、そんなことよりも、あんた風邪ひいているのだからご自愛のほどを。
自愛はしてるけど、いいよ、誰だって死ぬときは死ぬんだから。
体を大事にするのは、長生きして書く時間を稼ぐことだよ。
いいよ、1本売れれば。
そんなこと言わないで、体大事にしなよ。
サッカー観てた、負け方を観ていた、負けることを認めなければならない、負け方を教える、学ぶ、そういうことが大切だ。
勝つも負けるも本当は関係ないのかも、勝敗を決するからこそ燃えるけど、試合に向けて練習をして成長していくその過程が大切でしょ。
おまえが言うことは簡単すぎる。
☆☆
雨が降ってきた、いい雨だよ、とK。
そうね、こっちも降り出した、音がする、と私。
じゃーねー、おやすみ。
Kは一人でいたがる、でも寂しがり屋。
独り遊びの好きな、あまのじゃく。
…………………………

2012.2.23
●T子──風邪は?
あなたとのメールは楽しい。
会うのも好き。
だけど電話だと、あなた可愛くない。
電話を切ったあと、私はいつも情緒不安定になる。
…………………………
2012.2.24
●T子──心身とも、いかが?
だいじょうぶ、よね?
…………………………
●K君──早起きだね。
夢の中で考え、夢を見ている夢を見る。かな。
…………………………
●T子──体調、ほんとに大丈夫?
心配だった。
寂しかった。
「音沙汰無しでも平気」は遠い昔日。
あんたのせいだ。
…………………………
●K君──(梅の花フォトメールを送ってきた)
…………………………
●K君──寂しかったのね。
携帯メールが不得意なんだ。
「武山挽歌」明日から、頭から。
2章が形になれば。
3・4章は渡してもいいかな。
5章の立教で難航。
電力中央研究所で、はまった。
やめるか。悩む。
25日、15万家に入れた。
…………………………
●T子──『なぎさホテル』を図書館予約したら、120名も先約あった。
やっと順番がきたので読んでみたが。
内容と修辞が釣り合わない。
ずばりいうと、レトリックが稚拙。
よく編集者が黙認したと思う。
ディープではない。
これも一種のライトノベル、あるいはシャロゥ。
この程度か。
なのになぜ、あんなに女を、人を、仕事を呼ぶのだろう。
文章に限っていえば、私やあなたのほうがハイレベルで美しい。
間違っていないと思う。
…………………………
●K君──言外、行間の語りもあるかもね。
☆☆
野坂夫人、介護日記上梓。
言語リハビリ。
「これはなんですか」
「・・・・」
夫人、文章にできない、と書く。
☆☆
井上成美は、写していて泣ける。
滂沱。
こんな人がいたこと、近くにいたこと、伝えたい、残したい。
「武山挽歌」よくねぇか。
薫につながる。
…………………………
●T子──Sorrow & Praise挽讃歌
造語だけど。
…………………………
2012.2.25
●K君──プロローグ
8千字で完成。
終日費やす。
…………………………
●T子──本のタイトルが「武山挽歌」?
フェアウェルタケヤマ、もしくは、ヨコスカ挽讃歌のほうがいいよ。
…………………………
●K君──疲れてるみたいだね。
挽歌、エピローグのタイトル。
☆☆
同情してくれ。
公園でパック酒。
☆☆
明日、1章直し。
…………………………
●T子──体はそれほど疲れていないが、うちも色々あって、神経が疲れた。
自己防衛本能から、脳みそ弛緩。
あなた家にお金入れたのは偉いと思うけど、毎日外に出てるのに月5万でやれるなんて、すごいね。
…………………………
●K君──返信ありがとう。
どうしても片手で携帯メールはできない。
☆☆
井土ヶ谷からブルーラインであざみ野。
田園都市線三軒茶屋。
世田谷線乗り換え下高井戸。
これが最短エコノミー経路であることを発見したよ。
…………………………
●T子──たぶん余計なことだろうし、あなた怒るかもしれないけど、あなたの疲労と資金繰りを考慮して、うちに呼ぼうか、図書館で書いてもらえば何とかなるか、など考えることもある。
だがそれをやってしまうと、奥さん怒って多額の慰謝料を要求するだろうね。
離婚しない限りは、私があまり手を出してはいけないのだ。
…………………………
●K君──そう考えるか。
慰謝料じゃなくて、生活の保証、子どもたちのことだが。
律儀に返信ありがとう。
…………………………
●T子──
貧乏の棒も次第に長くなり ふりまわされる年の暮れかな
貧乏をすれど この屋に風情あり 質の流れに借金の山
…………………………
2012.2.26
●K君──江戸川柳。
落語からですか。
☆☆
バーガーキング、最後の180円。
どこまで頑張れるか。
小銭持ちて、落伍者、救いに、来ませんか。
経路、井土ヶ谷-あざみ野-三軒茶屋-下高井戸。
甘えてませんか。
おはよ。
…………………………
●T子──さっきから起きてる。
でもなんでいきなりこうなるの。
朝まで家に帰らなかったの?
帰れば、どうとでもなるでしょうに。
…………………………
●K君──おー早起き。
11時定時起床だと思ってた。
昨日、公園パック酒の後、帰ったよ。
…………………………
●T子──明日まで待てないのかしらね。
頭キレたら、全部やめちゃうよ。
急に言われて東京までお金届けに行くなんて、みじめなことさせないでよ。
…………………………
●T子──ゆうちょBK、やっていた。
5時ギリギリセーフ、少額振り込みました。
…………………………
●K君──ありがとう。
でも、5時で終わりだよね。
1章、直し終了。
…………………………
●K君──コンビニで出せた。
サンキュー。
…………………………
(T子記す)
Kに言いたい。
「お金入れないなら出て行け」と家族に言われ、冷遇されているのに、無理に無理を重ねて同居しているのはなぜ?
アパート借りて自活する目途が立たないから?
それはよくわかるが、家人の怒りを鎮めるために、私が融通したお金を入れているでしょ。
そんなことをするぐらいなら、三浦海岸1泊2千円の宿があるのだから、そっちへ行けばいい。
たまにうちへ来てもいい。
でもあなたは、そうやって遣う分を家に入れて、子供たちのために役立てたいのね?
その気持ち、その計算もわかるが、あなたは家族に気を遣って義理を果たすいっぽうで、私に不義理をしていることがわからないのか。
私はあなたを支援するつもりで資金を用立てているが、あなたの家庭を守るためという意識はない。
したがって、お金が家人にまわると、私は己の行動がばかばかしくなる。
あなたが書いていけるようにと支援することは、あなたが家庭や子供を抱えているということを含め、そのすべてを支援することであり、渡したお金がどう遣われようと、私は文句を言うべきではないし、気にする必要もない、私には関係のないことなのだ、と割り切るしかないのか。
しかしねえ、なるべくはやく別居したいのでしょ。
だったらなぜ別れ話を進めて離婚に踏み切らないの?
離婚後に養育費を払うという手があるでしょ。
幸い、お子さんたちはみな大きいのだから、養育費負担の先は見えている。
支払えるときに支払えるだけ、ということで勘弁してもらったらどうなの?
まったく支払わずに約束反故にしてしまう例も多いよ。
でもそれはよくないことだから、つとめて支払う努力をしましょうよ。
はやく離婚してほしい、と思っていても、私はそれを言いたくない。
ただ、こんな状態が長く続くのはいかにも無駄、徒労という気がする。
あなたにも、ご家族にも、私にも。
だって、Kは家にいられなくて外で書くから、疲れて老け込んでしまう。
一人にならなければ、落ち着いて書く場所も時間も確保できない。
ご家族だって、Kぬきで家賃の安いところに引っ越したほうが楽になるでしょう。
私は、Kが妻子持ちでなくなることを望んでいる。
私もKも仕事を増やし、経済状態を好転させる必要があることに変わりはないが、婚約者として、それをやっていきたい。

(再び、T子記す)
やはり当面は黙って見守るしかないのか。
それが賢明なやり方か。
Kの力を信じて、長い目で見て、焦らず、おおらかに、「私自身がそうしたいのだからそうする」と覚悟を決めて。
それが真心というもの? 生涯の恋人に対する無償の愛?
Kに良い変化が起きたのは昨年11月初頭で、体調不良から脱却してすぐ「放屁力」をやりだした。
その後、阿部薫を書く気になって構想開始。
さらにはキャンプマギルを懐かしむ投稿サイトを見つけて、武山執筆構想に着手。
ライトノベル校正リライトの仕事も入った。
○○出版に提出する企画書作成もした。
私のアパートに出入り解禁となった。
と立て続きに良い流れが生じた。
変化が起き出した1か月後の12月中旬には、武山に着手している。
年末年始は郵便局バイトで多忙であったが、武山そのほか複数の案件を抱えて、将来に対する意欲も向上し、「メリークリスマス、朗」であった。
私と再会して後しばらくは、あがいて駄々をこねるばかりだったが、1年後には書く意欲を復活させ、書き出してくれた。
「抜け出す」「別れる」と明言するようになった。
大きな進歩である。
…………………………

(夜9時すぎ、助けてくれてありがとうの電話あり。30分ほど話す)
Kは長文メールを打とうとしたが、途中で操作ミスのため、送信できなかった、とのこと。
多少酔っている。だが声は元気そう。もう風邪声ではない。
1日中飲まず食わずだったが、入金あったので、ちゃんと食事をした、と知らせてきた。
会話の大半は武山のことで、Kの語りを私が聞くかたち。
いずれ仕上がったら私がちゃんと読む、まず通読してリライトの方針を立て、著者であるあんたに打診してから着手する、そのようにきちんとやりましょう、と私は伝えた。
タイトルは最初に寄越した『横須賀武山の原発騒動記~キャンプマギルの軍転法』がいいのでは?
騒動記、キャンプマギルとくれば、内容が地味でも(うるせえな、とK)、タイトルは華やかになるし、原発、軍転法、と内容の想像がつく点もいいと思う。
ただ、取材していないので、「騒動記」とはできないわよ、と私。
今ここであれこれ言って決めることじゃない、とK。
そうよ、タイトルは出版社が決めるのよ、タイトル会議にかけてもらうようにするまでが骨だよ。
☆☆
あんた家にお金を入れたのはいいけれど、後先考えずにやらないでよ。
俺はそういう計算できないんだ、計算するときはするけど、ま、そうもいかない状況があるんだよ。
そのしわ寄せをこっちにもってこないでよ、今朝はたまたま起きていたからよかったけど、まだ寝ていたら激怒するところだった。
怒ってもいいかと思った、経路を書いたのは、出かけてくれば楽しいと思ったから。
とんでもない、私は行かない。
そうか、俺は電車に乗って出かけるの好きだけどな。
おかげで今日は書けなかった。
純文学の邪魔をしてしまった。
(純文ではなくライトノベルだけどね)
お金入れたのに、家での待遇は変わらないの?
変わらない。
あんたが気にしているだけでしょ、大きな顔して帰って寝ていればいいのに。
そういう状態じゃない。
それじゃ何のためにお金入れたかわかんないじゃない。
その問題ははやく解決しないといけないことだな。
(と一応口では言うが、どこまでやる気なのだか本心が見えない)
…………………………
(T子記す)
思い起こせば去年の夏、Kが横須賀の実家に滞在していた折には、東京の家族が何の連絡もしてこないことを気にしていたっけ。
つい先日も、家族が無断で数日家を留守にし、Kを一人にしていたときも、「誰も俺のことを心配していない」とぼやいていた。
うまくいっていなくても、家族は家族。
ましてや子供たちとは血のつながりがあるのだから、ぬきさしならない絆というものがあるだろうと理解はできる。
それを断ち切るのは容易なことではないだろうと察する。
年月のなせるわざだ。
と同時に、時間が解決する問題でもあろう。
☆☆
俺がいやなのはさあ、三浦海岸の宿は、風呂とトイレが部屋に付いていないんだよ、完全に落ち着いて書ける環境じゃない。
贅沢言ってる。
☆☆
お子さんたちも大きいのだから、養育費も負担は軽いでしょ。
(離婚した後に養育費を支払え、とは言わずにおいた)
これから娘の授業料を支払わないといけない。
奨学金の手続きはしたのでしょ。
あれは入学金と生活費にまわった。
(大学入学金は100万くらいか? 授業料は年間140~150万くらいか?)
娘の進学先については学校名も学部も知らない、娘に聞いても「さあ?」だけ。
それはひどい。
俺も「さあ」はないだろうと怒った、いや、さして怒りはしなかったけど。
(末娘さんの大学生活が本格的にはじまり、安定するまで、父親としてそばにいるほかないというKの気持ちがわかるようになってしまった。たとえ不甲斐ない父親であっても、この段階で家族の元を離れるわけにはいかないのでしょう)
☆☆
いずれ時がくれば結果が、結論が出る、あんたも、私のほうも。
☆☆
執筆は1日6~8時間に留めて、早く家に帰って休みなさい、そうすればコンスタントに書いていける、と勧めた。
むろんKもそうしたいのだろうが、できないらしい。
今月中に武山を仕上げる、とK。
べつに今月中でなくていいから、とにかくそれをきちんと仕上げてちょうだい。
と私は終始、やや冷淡に応じた。
実際に気持ちはクールダウンしている。
Kはそれを感じ取っただろうか。
T子の気持ち、T子の生活、T子の将来をもっと真剣に考え、大切にし、誠実に、本気で対応しなければいけないのだと、覚れよ。
…………………………
(T子は蠍座・蠍座3月の運勢)
遠慮は無用。自分の才能や特技を活かせる場面があるなら、どんどん披露して。あなたが思っている以上に高評価を得られるはず。自信を持って一歩前へ出ることが、大きなチャンスを招きます。
また、華やかなエンターテイメントを鑑賞するのがオススメ。ミュージカルの舞台や、大ホールで行うライブなど、大規模で派手な演出を見るだけで、視野が広がるでしょう。
恋愛には、思わぬ新展開がありそう。カップルは、同棲、婚約、結婚など、今より一歩進んだ関係が結べるかもしれません。シングルには、ひと目惚れするという暗示が出ています。
…………………………
(Kは獅子座・獅子座3月の運勢)
恋愛においては、好きな人を束縛したくなる時期。どこで何をしているかがいちいち気になり、つい相手に詰め寄ってしまうことも。こちらがプライバシーに踏み込むほど、相手は離れていってしまうので、的確な距離を保ちましょう。