【2012 June】
2012.6.1
●K君──
六月や
朝の小雀
侍りをり
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2012.6.2
●K君──
二十三
年目の四日
六月よ
…………………………
●T子──その句は娘さんを詠んだものでは?
ならば、私ではなく、娘さんに送信したほうがよい。
私は仕事が忙しい。
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●K君──天安門事件である。
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●T子──ひまなの?
武山の件で新聞社の人に会ってみたら?
短歌50選を角川含め3誌に送ってみたら?
私なら、そうする。
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●K君──そうしたいが、できない。
パークホテルにて。
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2012.6.3
(交信なし)
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(4月23日付・三田文学よりのメール)
お預かりしている御稿に関し、その後はっきりとしたご連絡もしないままにして おりましたこと、どうかお許し下さい。
前号への掲載を最後まで検討したのですが、どうしても小説の終章の展開が論点 となり、結局、春号の「創作特集」には入りませんでした。
引き伸ばされるのはもう結構、とお思いになられるでしょうが、もし以下の2点 にご承諾いただければ、再度の書き直しをお願いしたいと思っております。
①相手の男性との具体的な展開をもう少し書き込む。(最終部分もふくめて)
②やはり酒場以外での主人公の日常生活が少ない(前にもたしか祖母との生活など書き込むべきでは、と申し上げたと思います)。
以上、恐縮ですがご検討のうえ、ご返事頂戴できれば幸いです。
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T子 wrote:
> 三田文学編集長様
> お世話になっております。
> 「ドブ板トランジット」の○○T子です。
> 先日(1.11)に修正データを送信いたしました。
> 結末の描き方が物足りないように感じておりましたので、
> 数行加筆のうえ、新データを送信させていただきます。
> よろしくお願いいたします。
> 加筆は、以下のとおりです。
> その後は、ぷっつりと連絡が途絶えた。ベトナムが終わったあとの、もうひとつの終わりがやってきたのだった。自分の心さえつかみきれない、未熟で、曖昧な、十八歳と十九歳のバイバイ。ふたりが互いの身に招きあったものは、自業自得の決裂と、不完全燃焼ゆえの心残りだった。しかし時を戻すことは叶わない。先へ進むしかないのだった。
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(改稿を三田文学に送信。その数日後の6月4日、返信あり)
拝読しました。これで完成作品としましょう。現在編集中の夏季号(7月10日発行)に頂戴いたします。
ゲラの時に細かな点はお尋ねするかもしれません、よろしくお願い申し上げます。
小説の舞台となったあの時代を書ききるのは難しいのですが、やはり個人的な出来事から描くしかなく、いろいろと勝手な注文をつけましたこと、どうかご容赦くださいますよう。
いい小説に仕上がったと思います。
作品の掲載は、次なる作品発表のためのものです。どんどん書いてください。
以上、とり急ぎ。

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2012.6.4
●T子──三田文学夏季号(7月10日発行)に掲載されることが決定しました。
編集長いわく、「作品の掲載は次なる作品発表のためです。どんどん書いてください」
はい、ぜひ書きたいです。
ともかく、これで一段落ついた。
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●K君──デビューおめでとう!
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●T子──あなたのおかげよ。
ありがとう!
ぜひ買って読んでね。
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●K君──
>あなたのおかげよ。
?
>ありがとう!
?
>ぜひ買って読んでね。
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●T子──デビューおめでとう、と書いてくれたので、ありがとう、と返したかったのです。
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2012.6.5
●K君──祝杯
をあげる金のなし。
小銭の施しのほど、を。
パーク爺。
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●T子──ふざけたお方ですねえ。
立場が逆なら、そちらはハナから完全無視したでしょう。
私、同情するけど、もう渡してはならないの。
あなたは先月、私の部屋を出て行く朝、数時間にわたって、暴言を吐いた。
自分が何を言ったか覚えていますか?
私も少し大人になったので、言葉をすべて真に受ける愚は犯しませんが、笑って許すわけにもいきません。
親しき仲にも礼儀あり。
聞いてほしいことがあれば、またメールします。
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2012.6.6
2012.6.7
2012.6.8
2012.6.9
(交信なし)
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(T子記す)
三田文学掲載決定、ライトノベル『夢を見させて』執筆、ドラマ「Cybill」を見て英語リスニング、母と新宿タカシマヤ、と忙しくしていたので、平気だった。
Kの件でつらい思いをすることは、ほとんどなし。
心は安定している。
Kから受け取る快よりも不快が上回ったせいなのか、そしてまさに愛想が尽きたのか。
自分の気持ちがこんなふうに変化するとは、想像だにしていなかった。
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2012.6.10
●T子──トランジットのゲラ刷りが送られてきたので、著者校をした。
あらかじめ校正の手が入っていたが、まさに的確な指摘だった。
次は、スクランブルを三田に見てもらい、掲載に見合う仕上がりにしようと思う。
ありがたいことに、引き続き発表の場を与えられているのだから、この方法で成長していきたい。
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●K君──グッド!
バット、バッド!
(煙草イラスト)と(酒イラスト)が、恋しい。
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●T子──煙草と酒と、おまえが恋しい。
と書いてきたなら、お金いくらでも振り込んだのに。
というのは、うっそ、嘘だよん。
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●K君──ああ、(酒イラスト)が飲みてぇもんだな。
ああ、(煙草イラスト)がすいてぇもんだ。
パークホテルひきあげ。
お休み。
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(T子記す)
Kは意地をはって家族に顔を合わせない、お金なくても我慢してる、よく耐えられるものだと感心してしまうほどだが、そのエネルギーを仕事に向ければいいのに。
あいつ、いったいどういうつもりなんだろう、なに考えてんだろう。
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2012.6.11
●T子──天下一○○○店(○○出版近くの中華料理店)
新規スタッフ7名募集中 時給千円 深夜2割5分増 1日5時間または8時間、または9時間
調理、接客業務全般、事務作業など。
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●K君──タバコすいたい。
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●T子──取材終了。
1杯だけ、祝杯あげようか。
下高井戸?
飯田橋から、どう行けばいい?
返事がないなら、私帰るよ。
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●K君──新宿。
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●T子──ギリギリ間に合った。
新宿で落ち合うの?
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●K君──新宿から小田急。
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●K君──電車賃もなし。
小田急で梅ヶ丘。
各駅。
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●T子──新宿から8駅もある。遠いじゃん。
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●K君──特急下北沢乗り換えもあるけど。
後々、便利。
渋谷にしろ横浜にしろ。
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●下北沢過ぎたら、メールください。
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●T子──代々木上原
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●K君────了解。
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●T子──駅に着いた。
