【2012 July】
2012.7.1
(交信なし)
…………………………
2012.7.2
(T子記す)
おまえのやってる仕事はくだらない、そんな仕事で稼いだ金だから引っ張っていいと思った、と、あんた言ったよね。
そこまで貶められても、私の怒りは長く続かず、許してしまった。
ビコーズ、私は人が好い。
あなたを含め人々の私に対する「愛または関心」を、私は核心部分で確信している、自分の能力のほどを知っている、よって気持ちに余裕があるのです。
あなたは、(家族に限らず、他者の)愛情不足や拒絶を恐れているようにお見受けする。
しかし自身内部の愛情を否定しなければ、プライド損傷することもなく、ごく平常心でいられるのでは?
大切なもの(家族)を大事にしてやれないことからくる葛藤ならびに軋轢は致し方ないでしょう。
そこで逃げを決め込んだら事態はさらに悪化する。
心と裏腹なことを言って相手を傷つければ、あなたも傷つく。
横須賀時代からほとんど変わっていないようだね。
修行が足りないのかな。
できるだけ家にいて、家族にやさしい言葉のひとつもかけてごらん。
効果てきめんだと思う。
一見何ら効果ないように見えても、水面下で変化が起きている。
だから、めげずに続けるの。
そして、とにかく仕事を見つけなければ。
ハローワークと人材センターの窓口で係員に相談。
同時進行で、武山と新聞社、短歌50選、雑誌連載企画、放屁論加筆。
投企を成せば、必ず道は開ける。
☆☆
追伸
あんたって男はセルフィッシュで気分屋で飽きっぽくて落ち着きがなく、言うことコロコロ変えるくせに意地っ張り、見栄っ張り、無茶なことするわりに小心で、さみしがりで甘ったれ、なのに無慈悲という、やっかいなやつ。
そのうえエバッていて人の話を聞かず、人をなめた真似しやがるから頭にくる。
でも不思議と威圧感はなく、女を萎縮させる要素はきわめて薄い。
そうした一面は変えないで、と私は望む。

…………………………
●T子──I have sent you a PCmail. Check it please.
ハロワに行ってくださいよ。
…………………………
●T子──携帯つながってる?
校正リライトの仕事が入ったから、やって。
…………………………
●T子──至急連絡を
あなたの携帯の電話番号、もう一度教えて。
校正リライトの仕事が入ったから、やってほしい。
女性向けファンタジー、軽い感じの文章、それほど混乱していない、ただしニュアンスでふんわり書いているので、日本語としておかしいところ多々あり、それをデータにて修正、締切は7月12日、ギャラいつもと同じ7万5千円。
やるでしょ? それとも、ほかのバイトを見つけたい?
連絡ください。
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2012.7.3
2012.7.4
(交信なし)
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2012.7.5
●K君──いろいろ
校正、やる意志あり。
が、ついに、家追い出された。
…………………………
●T子──返信なかったので、私がやってる。
あとが詰まっているため、早々に片付けたかった。
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(以下は送信しないが)
私は仕事が忙しい。
人がそばにいると、執筆に集中できない。
家族を恋しがる男を泊めて面倒みるなんて、ばかばかしくてやってられない。
追い出されても家に戻りなさいよ。
以前にも、そういうことあったでしょ。
今回は私、おみやげ持たせてやれないから、自力で仕事を見つけて帰ることだね。

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2012.7.6
2012.7.7
(交信なし)
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2012.7.8
●T子──大丈夫ですか?
仕事は見つかった?
家を追い出されても、また戻ればいいじゃん。
以前もそういうことあったでしょ。
…………………………
●K君──気遣いありがとう。
簡単に、見つからないよ。
帰れる?帰りたくない。
1週間以上、夜は公園ベンチ泊。
週末ゆえ、金曜日の夜から、「羽根木パークホテル」暮らし。
2日間、雨だった。
明朝、チェックアウト予定。
…………………………
●T子──横須賀の実家はだめなの?
それなら、林の○○さんでバイトできるように、私が動くけど。
…………………………
●K君──妹と連絡不能。義絶。
…………………………
●T子──公園で粘っていても埒が明かない。
身体こわすよ。
横須賀しかない、と思う。
あんまり心配かけないでよ。
☆☆
ほんと久々に、観たい邦画が出た。
へルタースケルター。
☆☆
未だ世田谷にいるのは、おうちに帰るタイミング待ち?
仕事さえ見つければ帰れるよ。
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●K君──横須賀に帰れるのなら、帰ってる。
羽根木パークにいるのは、移動費用がないからだ。
行政の仕事の斡旋だって、障害者優先だ。
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●T子──仕事探しの件、試行錯誤せずとも色々わかっちゃうのはすごいと思う。
だけど、ハロワでも何でも、アクションを起こせば、何かしら変化がもたらされるでしょう。
社会保険庁へ相談に行くのは、嫌なの?
(あれ? 生活保護は、福祉事務所?)
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●K君──船戸与一のカンボジアに材を取った長編、丸2日がかりで読了。
☆☆
社保庁が仕事なんか、斡旋しないだろう。
国民年金、トーゼン払ってない。
ハローワークは、登録してあるけれど、ここで成立したためしなし。
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(電話で話した)
(T子記す)
社会保険庁でなく福祉事務所だった件、ハロワに年齢差別のない仕事を要求せよ、などについて話し合った。
Kは福祉事務所へ行ったことがあるような口ぶりだったが、「生活保護は離婚しないと無理」なんて言う。
こうなってもまだ離婚する気はないらしい。
離婚成立していなくても別世帯にすれば受給可能らしい、と私は教えた。
しかし何をどう提言しても効果なし。
下高井戸の居酒屋がバイト募集していたが、客として通っていた店なのでだめだとKは言う。
社長と知り合いらしいのに、どうせ無理だ、とあきらめている。
行動する以前に、頭で考えて、結論を出してしまうのだ。
☆☆
三田文学が届いた、母が読んで少し嫌がった、「おまえあれは小説なんだろうね?」と。もちろんフィクションだよ、あることないこと書いてある、だけど作家になるとは、小説を書くとは、裏側のどろどろした部分を描き出すこと、きれいごとを書いていたんじゃつまらない、これからもっとすごいこと書くよ、それに、昔のドブ板がいかがわしいといっても、今の新宿歌舞伎町あたりに比べたら幼稚園みたいなものだ、あれを読んでショックを受ける人などいないだろう、しかし身内は読まないほうがいいかもねと言ったところ、母は「もう読まない」との反応、でも「書くな」というわけではなかった、母もそのうち慣れるだろう、などKに話した。
Kは明日、三田文学を見に書店へ行くと言った。
☆☆
この3日間で餡パン1つだけ、酒たばこやってない、とK。
お金がもう底をついたと知らされたが、送金してくれとは言われなかった。
☆☆
私は当分、仕事が忙しい、と牽制しておいた。
うちに転がりこむのは許さないわよ、と言外に伝えたつもり。
公園生活は気楽だ、とのことで、可能なかぎり続けることになりそう。
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2012.7.9
●K君──おはよう
日の出。
きれいな朝です。
いい日になりそうだ。
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●T子──時間ギリギリ、1万振り込む。
ちゃんと食事して、福祉事務所へ行ってごらんよ。
その権利はあるよ。
これまで納税も消費もしてきたのだから。
…………………………
●K君──感謝。
堕ちたら、墜ちたところで、みえるものもある。
あんぱんひとつの、価値も。
羽根木パークホテル、の話は、書けそうだ。
ただ、どの話で、出る、かで抵抗があった。
貧窮問答歌。
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●T子──心労ゆえか、早朝メールのせいか、頭痛。
風邪か?
☆☆
パークホテル(に限らず)、三田に応募しなはれ。
100枚以内、3月末締切。
あなたも私も、作家になるのよ。
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●K君──おやすみ。
今夜は、暖かい。

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2012.7.10
(「ドブ板トランジット」掲載の『三田文学』夏季号発行)
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●T子──eルーム
多目的レンタルスペース。水道光熱費込みで月28,000円~。
各室にテレビアンテナ、コンセント2口あり。
(ネット設備なし、かな?)
24時間空調管理、館内にキッチン、ウォシュレット付トイレ、コインシャワー、物干しスペース、屋上憩い空間あり。
千駄木、金町、錦糸町、町屋、南品川(今年3月ニューオープン、青物横丁駅徒歩3分)。
敷金・礼金・保証人不要、即日利用可。
持参するものは、保険証またはパスポート、証明写真、印鑑(三文判OK)、入会金18,000円、賃料月額(約28,000円)と共益費月額(3,000円)の日割り分。
入会金を一度支払うと会員として登録され、以後eルーム各店舗を、いつでも何度でも賃料・共益費のみで利用できる。
生活保護で南品川店に部屋を借りられるといいね。
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2012.7.11
●T子──パークホテル生活に変化なし?
福祉事務所へ行く決心ついた?
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2012.7.12
●K君──雨
降ってきた。
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●T子──いつまで公園生活を続けるつもりなの。
もう何年と路上で生きてる人はザラにいるようで、仕事に就いてもすぐまた路上に戻るらしいけど、年金または生活保護を受給していればこそ、そんな生き方も可能なのでしょう。
ダスキンのビル清掃の仕事は、70代でもOKみたいよ。
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2012.7.13
2012.7.14
(交信なし)
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(T子記す)
実家で迎え盆。
弟に、Kがホームレス化している件を相談した。
この1年、Kは映画の仕事がなく、私経由で校正リライトの仕事、月15万ほど稼いで家に入れていたが、それでもなお家にいづらいようで、家族を避けて外にいた、私はそんなKに腹が立った、奥さんも仕事や子育てのほかに、あんな亭主では大変だろうが、生活を縮小しようとせず、Kにお金を持ってこさせることしか考えていないので私は怒りを覚えた、そして私はKに仕事を手伝わせることをやめた、それで収入が途絶えたKはついに家を追い出されて行くあてがない、横須賀の実家にも帰れない、これまでにずいぶん親に無心してきたことを妹が怒っているからである、私は複雑な思いを抱えたままKとつきあい続けたが、もはや気持ちは冷めつつある、Kに引きずられることなく、自分の仕事と生活を守っている、しかしKが公園生活で健康を害するのではないかと心配でならない、就活や生活保護やレンタルスペースなどいろいろ提言したが、Kはいうこときかない、放っておくしかないのか、と。
弟いわく、本人がその気にならない限り、何を言っても無駄だろうから放っておくしかない、最近は弱い男が多い、家族に多大な迷惑をかけて行方不明になっている男もいる、とのこと。
さらにいわく、相手のために良かれと思っていろいろ言っても、本人にとっては迷惑でしかない場合もある、(おねえちゃんは)相手のことを思って心配して悩んでいるのではなく、自分のために(不安や痛みが原因で)悩んでいるのだから、よせ、考えるな、心配したり悩んだりするということは、結局は引きずられているということでもある、と。
私はKと完全に縁を切るつもりはないので、気にかかるのは仕方ない、ただ、そもそも厄介な男であるし、こんな状況になってしまうと、いよいよまともにつきあえる相手ではない、Kは恐らく、私が家に呼んで面倒みてくれることを望んでいるのだろうが、私は仕事多忙につき、そうはしない、自力で持ち直してほしい、解決策は生活保護しかないような気がするが、それも自分で何とかできるはずだから、放っておこう。
弟も言う。いかにも切羽詰まった状況というよりも、要は本人のやる気、しかし人間は楽なほうへしか行かないから、生活保護を受けてなお公園生活ということもあり得る、どうなるかは判らない、予測できない。
☆☆
Kの気持ちを察するに、私と組んで仕事をすると自信喪失し、挫折感や無力感が強まるのかもしれない。
小説、校正リライト、単行本の原稿代筆においても、私は一日の長ゆえ、Kを上回っている。
そういった諸々がKはおもしろくないのだろう。
よって、やる気にならないのであろう。
…………………………

2012.7.15
●T子──だいじょうぶ?
…………………………
●K君──だいじょうぶ。
…………………………
●K君──気がつけば
三連休。
真夏。
…………………………
●T子──昨日、実家で、お盆の迎え火を焚いた。
季節の変わり目、私は少し体調不良。
誰かさんが心配かけるせいもあり。
あなたはなぜ、だいじょうぶなのよ。
いっそ気楽でいい?
仕事も生活保護も決まっていないようだけど、やっていけるのかしら。
…………………………
2012.7.16
●K君──返信不要
ジュンといふ
美少女ありき
港町
ハマの姉御と
なるとし聴けり
…………………………
●T子──さっきのメール
今日も1日、ご無事だったようで、と安心しました。
それはいいけど、早く作家になって、お金返してよ。
…………………………
2012.7.17
●K君──4泊5日の、「ホテル 羽根木パーク」ライフ、チェックアウト。
帰宅。
洗濯・風呂。
味噌汁と飯。
世間の動きチェック。
結局、布団に横になれず。
本日は、ホテル替えと思いきや、夕立雷雨の気配。
屋根ある羽根木インへ。
明日、区の「おしごと支援係」へ行く。
シニア対象。
明後日、都の就労サポートセンターへ行く。
流石に今日は、暑くて歩けない。
今夜は、矢作の『ロング・グッドバイ』2004が、夜伽だ。
…………………………
●T子──結局、おうちに戻れたのね、というか、すでに一度戻っていたのね。
だったら、あんなに心配するんじゃなかった。
でも、受け入れてもらえてよかったね。
当然だ、という気もするが。
…………………………
●K君──家人が出払って、帰宅して、誰かが帰ってくるまえに、出て行く。
変わっちゃいない。
1ヶ月、家人たちと顔をあわせてない。
猛暑日の4泊5日、シャワーと洗濯が必要だろう。
だから、すでに「羽根木ホテル」にいる。
…………………………
●T子──ちょっとシャルドネ
うちの近所の裏通りにあるアパートでは、軒先に干してある洗濯物はいつも決まって、ベージュのパンティストッキング2足と、女物にしてはでかい木綿のパンティと、Eカップと思しきブラが1枚。
服は干していない。
これまで気づかなかったが、もしかすると女装趣味の男が住んでいて、中年女の下着を身に着け、それを外に干して誇示しているのではないだろうか。
☆☆
実家からマックを運びこみ、DVD鑑賞。
男優では、トム・ハンクスとコリン・ファース、そしてアラン・リックマンがマイフェイバレット。
but,K君の顔のほうがいい。
私の目は未だに40年前を幻視している。
だから私の心は未だ16歳。
いとこのウーちゃんのように、60年代の感覚で生きている女もいるからいいか、と思う。
彼女にとって、14歳前後が人生で最も忘れがたい時代なのだろう。
私は、73年から75年にかけての3年ほど、16歳から18歳が佳き時代であった。

…………………………
2012.7.18
●T子──アチャー!
アルフ○ポリスに送った私のライトノベル、没くらってしまった。
150シートも書いたのに。
ショックだよ。
…………………………
●K君──習作として、熟成発酵を待つ。
状況ゆえ、鑑賞できずだが。
本日8時帰宅。
風呂洗濯、味噌汁飯の後、三軒茶屋にある区のシニア職業支援センターに行く。
歩いて片道1時間を往復した。
結局、「登録」はしたが、警備か清掃の仕事しかない。
ハローワークの区版シニア版にすぎない。
世田谷区は、老人の職業支援をしています、というコンプライアンス的アリバイにほかならない。
チクショー、ビールが飲みてえ。
早く、矢作ワールドに入り込もう。
…………………………
●T子──T子さんにしか書けないものを書き、大人の文芸を追求するのが良いと思います、と社長。
それはわかりきったこと。
こっちは印税のためにライトノベルやりたいんだよ。
これを反省材料とし、また新たに書こうかな、仕事が一段落ついたら。
私は立ち直りが早い。
