日常会話では、助詞「を」を省略することがよくあります。
たとえば、こんなふうに──
「を」抜きでも、意味はちゃんと伝わります。
しかし書き言葉においては、「を」という助詞をできるだけ省略しないほうがよいでしょう。
助詞というものは、用いるべき箇所にきちんと用いることにより、端正な印象の文になります。
助詞「を」の3大用法
【動作の対象を示す】
(例) 酒を飲んだ、ハシゴをした、法律違反を承知で、危ない橋を渡った
【経路を示す】
(例) 静岡を通る、名古屋を過ぎた
【起点や経由点を示す】
(例) 会社を辞める、嫁ぎ先を飛び出す
「を」と同様に「は」も助詞も一つです。
助詞「は」の3大用法
【規定する】
(例) 私はお金持ちだ。
【他と区別する】
(例) 彼にはお金がない。
【強調する】
(例) 結婚できなくても残念ではない。
関連記事→「は」と「が」の違い、文章力/助詞「てにをは」の上手な使い方
時として、誤解を生むこともある
書き言葉において助詞を省略すると、時として誤解の生じることがあります。
たとえば、次の文をあなたはどう解釈しますか。
この人は結局、会社を辞めるのでしょうか。
そしてこの人は、転職するのでしょうか。
この書き方では、どちらとも言えませんね。
では、こう書き換えたなら、どうでしょう。
これならはっきりと、この人は転職することが嫌だから会社を辞めないことにしたのだなとわかります。
と、するのでもいいと思います。
↑この場合は、
というように書くと、言わんとすることが的確に伝わるでしょう。
要は、必要とされる助詞はできるだけ省略せずに書きましょうね、ということです。
【例 文】私はあなたのように大胆になれない。
【改善例】私はあなたのようには大胆になれない。
【例 文】パーティを開こうと突然言われても、急に支度できません。
【改善例】パーティを開こうと突然言われても、急には支度できません。
【例 文】ふたりの愛だけで一生やっていけない。
【改善例】ふたりの愛だけでは一生はやっていけない。
【例 文】お金だけでも一生やっていけない。
【改善例】お金だけでも、一生はやっていけない。
【例文】
「もう恋なんかしない。男に懲りた」など心にもないことを言っているうち、年とって、誰にも相手にされない女になっちゃいそう。
できればもっと自分に素直になりたいよ。
本当は、若いイケメン新入社員の彼とすれ違うたび、胸がドキドキするんだもん。
【改善例】
「もう恋なんかしない。男には懲りた」などと心にもないことを言っているうちに、年をとって、誰にも相手にされない女になっちゃいそう。
できればもっと自分に素直になりたいよ。
本当は、若いイケメン新入社員の彼とすれ違うたびに、胸がドキドキするんだもん。
●まとめ
書き言葉においては、「を」や「は」といった助詞を省略せずに、できるだけ書き入れることが望ましいと思います。
「ご了承ください」「ご容赦願います」「お悔やみ申し上げます」などのように慣用的な表現の場合は、「ご了承『を』ください」「ご容赦『を』願います」「お悔やみ『を』申し上げます」とする必要はないでしょう。「を抜き」でよいと思います。