「慰め」と「慰み」はよく似た言葉です。
この2つに共通しているのは、「気持ちを静めてなごやかにするもの」という意味を持っていることです。
「慰め」という語は主に、「慰める」という主体的な行為と、その具体的な方法や内容を指します。
「慰み」という語は、自分にとって慰めになると感じることや、その具体的な方法や内容を指します。
そういう違いがあるわけです。
そして、次のように使い分けられているんですね。

●「慰め」と「慰み」の使い分け
【慰め】
慰めの言葉をかける
音楽に慰めを求める
【慰み】
何の慰みもない単調な日々
慰みに絵を習う
↑こうした使い分けが、ごく自然にできるとよいですね。
しかし時として、「慰め」と「慰み」の違いがよくわからなくなり、勘違いしたまま書いたり言ったりしてしまうこともありそうです。
そういう間違った使い方の例を挙げておきます。
●誤用の例
慰みの言葉をかける
音楽に慰みを求める
何の慰めもない単調な日々
慰めに絵を習う
↑ね、こういう間違い例は、よくありそうですよね。
ここであらためて確認し、今後に役立てていただければと思います。
●覚え方のコツ
「慰め」と「慰み」の違いを忘れて混同してしまうことのないようにするために、私は次の2点を自分にたたき込みました。
なぜそう感じるかというと、「慰みもの」という言葉があるからです。
【慰物・慰者】
なぐさみ‐もの〘名詞〙
① 楽しむための材料や手段となる物。なぐさみとする物。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四「物見遊山の慰物(ナグサミモン)ぢゃアねへ」
② 一時のなぐさみにもてあそばれる者。遊女などをいう。
※浮世草子・好色一代男(1682)三「さて此所のなくさみ物はと尋ければ、御仕置かたく、定めての遊女といふ事もなくて」
つまり、「慰みもの」という語には、「もてあそばれるもの」「蔑まれてもしかたないもの」という意味がこめられているのですね。
しかし念のため申し上げると、「慰み」という語が必ずしも、卑下すべきものを指すわけではありません。
というのも、「慰み」の関連語に「手慰み」「手すさび」といった言葉があり、いずれも「手先でもてあそぶ」という意味を持っていますが、「もてあそぶ」というのはあくまでも軽く自嘲的に、言い換えるなら謙遜して語っているに過ぎず、まっこうから否定するようなニュアンスがこめられているわけではないのです。
●慰みの関連語
【手慰み】
【手すさび】
意味はいずれも、手先を使って物をもてあそぶこと
●使用例
手慰みに縫ったエプロン
手すさびの人形作り

以上、おわかりいただけたでしょうか。
「慰め」か「慰み」か、この場合はどっちが適切なのだろうと迷ったら、先述の2点を思いだしてください。
それでも判断に苦しむときは、「慰み」ではなく「慰め」としておくのが無難だと思います。
「慰み」と言われると、人によっては不快に感じることがあるかもしれないからです。
「慰み」ではなく「慰め」と言われるなら、たとえそれが日本語としてやや不適切な表現であったとしても、腹を立てるほどのことではないと多くの人が感じるであろうから、です。