ビジネスマナー

ビジネスマナー/尊敬語と謙譲語の使い分け

投稿日:2017年4月4日 更新日:

敬語をきちんと遣える人は仕事もできる。

と私は思っています。

入社試験の面接においても、試験官の方々は、候補者がどれだけ敬語を的確に遣えるかを見ているのではないでしょうか。

あなたの敬語遣いは、試験にパスするレベルですか?

自信がある方も、ない方も、ここでもう一度、ご自分の敬語レベルをチェックしてみると良いかもしれません。

●丁寧語・尊敬語・謙譲語

敬語は、大きく分けて次の3種類があります。

●丁寧語/相手に敬意を表するために、丁寧な言い方をする。
●尊敬語/相手に敬意を表するために、尊敬の言葉を遣う。
●謙譲語/相手に敬意を表するために、あえて自分を低い位置に置き、相対的に相手の位置を高める。

丁寧語

同じ内容でも、丁寧な言い方に換えることで、相手に対する敬意を示すことができます。
たとえば──

「金」は「お金」「縁」は「ご縁」

というように、「お」「ご」をつけて丁寧に表現すると良いのです。

「~だ」は「~です」「~だろう」は「~でしょう」「~する」は「~します」「~いたします」

と丁寧に言い換えましょう。

尊敬語

相手に敬意を表するために、語頭に「お」「ご」を付けて丁寧に言い換えることをおすすめします。

相手の方に気分良くなっていただき、好印象を持ってもらえるようにしましょう。
たとえば──

「子供」→「お子様」「成長」→「ご成長」「忙しい」→「お忙しい」

「多忙」→「ご多忙」

「車」→「お車」

「会社」→「貴社」

「自宅」→「お住まい」「ご自宅」

尊敬語には、独特の言い回しもあります。

「いる」→「いらっしゃる」「行く」→「いらっしゃる」「見る」→「ご覧になる」「見られる」

「食べる」→「召し上がる」

「する」→「なさる」

「出かける」→「お出かけになる」「お出かけなさる」

「待つ」→「待たれる」「お待ちになる」「お待ちなさる」「お待ちです」

(椅子に)「掛ける」→「お掛けになる」「掛けられる」「お掛けです」

「お召し上がりになられる」「お見えになられる」

のように、二重敬語(丁寧語+尊敬語)を使うと、敬意を示すというよりも卑屈な印象になってしまうので、そうした使用は避けたほうが良いでしょう。

「召し上がる」「お見えになる」で良いのです。

謙譲語

あえて自分を低位置に置き、へりくだった表現をすることにより、相対的に相手を持ち上げて、敬意を表すことができます。
たとえば──

「いる」→「おる」「おります」「行く」→「伺う」「まいる」「見る」→「拝見する」

「する」→「致す」

「待つ」→「お待ちする」

「相談する」→「ご相談する」

「言う」→「申す」「申し上げる」

「買ってもらう」→「お買いいただく」

「辞退する」→「ご辞退申し上げる」

「やる」「あげる」→「さしあげる」

「~してやる」→「~してさしあげる」

「茶」→「粗茶」

「品」→「粗品」

「贈り物」→「つまらない物」「心ばかりの品」

「そう考えます」→「そのように愚考いたします」

「理論」→「拙論」

●失敗しやすいのは、尊敬語と謙譲語

敬語は、相手に気分よく話をしてもらう(読んでもらう)ための高度な技術です。
コミュニケーション環境を整えることを目的として、長い年月をかけて編み出された必殺テクであるともいえます。

必殺テクだけあって、その使用法は複雑です。
殊に複雑なのは、自分や身内に尊敬語を用いることは、相手に対して無礼にあたるので、尊敬語ではなく謙譲語を用いるべきだとされている点です。
たとえば──

×「私のお母さんがそうおっしゃいました」↑「母がそう申しておりました」
×「我が社の田中部長さんがそのようにご判断なさいました」↑「弊社の田中がそのように判断いたしました」

そのほかにも、尊敬語と謙譲語を混同したために生じる不適切な使用例はいろいろとあります。

以下に例を示しますので、不適切だとされる理由をよく理解し、心に留め置いてください。

●~さんはおられますか


「いる」の尊敬語は「いられる」「いらっしゃる」。

「いる」の謙譲語は「おる」「おります」。

↑「おる」「おります」なんていう言葉は古くさくて、ふだん遣う機会はあまりないように思われがちですが、

「今日は一日、社におります」「お世話になっております」

というように、仕事の場では頻繁に登場します。

「おる」「おります」は本来、自分の側がへりくだって遣う言葉ですから、相手に対して遣うときは注意が必要です。
敬語にヒネリを利かせたつもりなのか、

「~さんはおられますか」

などと言う人もいるのですが、それは「~さん、いる?」とタメ口をきくよりも失礼なのでは、と私は否定的にとらえています。

『明鏡国語辞典』の編集委員たちにより編まれた書籍『問題な日本語』に、こう記されています。

「おります」は相手に対する尊敬語ではないが、「おられる」「おられます」とするなら、敬語として適切。

これを読んで、私はどうも釈然としない思いを抱きました。
敬語を使うなら、

「~さんはいらっしゃいますか」

と素直に言えばいい、と思います。

先述の本『問題な日本語』に、こう付記されていました。

「おる」は謙譲語なので「おられる」を尊敬に使うのは誤りだとする意見は根強い。

「いられる」という尊敬語はあまり一般的でなく、尊敬表現には、むしろ「おられる」が普通に使われることになります。

なお、「いらっしゃる」は「いられる」や「おられる」よりも一段高い敬意を表しています。

でしょ、やっぱりね、と私はようやく納得がいきました。

「~さんはいらっしゃいますか」

という言い方がベストなのです。

●~さんはいつ戻ってまいられますか

「まいる」というのは、「行く」の謙譲語。「行きます」と言わずに「まいります」というように遣います。

「戻ってまいります」というのは、「戻ってきます」の謙譲表現ですが、これはあくまでも自分の側がへりくだって遣うものです。
自分自身のことだけでなく、

「娘はまもなく戻ってまいります」「課長は3時に戻ってまいります」

というように、自分の身内のことを外部の人に話すときにも用いられます。

敬語を遣うべき相手を指して、

「社長さんはいつ戻ってまいられますか」

などと言うのは、とんでもなく失礼にあたるのではないでしょうか。

↑それは、「社長が戻るまで待っててやるから、だいたい何時頃になるか、教えろ」と言っているようなものだと思います。

敬語を誤って遣うと、相手を持ち上げるどころか、かえって貶めることになる場合があるので、くれぐれも注意しましょう。

「社長さんはいつお戻りのご予定ですか」「いつお戻りになられますか」

とするのが適切な敬語表現だと思います。

●ご伝言をお願いできますか

「相談」と言わずに「ご相談」、「電話」と言わずに「お電話」とすることはよくあるので、「伝言」にも「お」か「ご」をつけて丁寧に伝えたいという気持ちはわかります。

「伝言」という語は音読みなので、つけるなら「ご」ですね。

しかし、相手の方は一瞬、「ん? ご伝言?」となってしまうかもしれません。

「自分の伝言に『ご』をつけるのは、ちょっと変だなあ。お伝言、なんて言われるよりはマシだけど」

と感じてしまうこともあるのです。

ならば、「お言伝」としてはどうでしょう。
読み方は「おことづて」です。

「お言伝をお願いできますか」

とすれば、「伝言を託す相手(私)に対して丁寧な言い方をしているのね」と受け取ってもらえるはずです。

「社長への伝言だから、丁寧な言い方をしているのね」と受け取られる場合もあるでしょう。

「伝言をお願いできますか」ではなく、「お言伝をお願いできますか」とすれば、誰に対しても失礼のない丁重な表現、敬意を示す表現になります。

ちなみに、相手から伝言を預かったときは、

「ご伝言を承りました」

と言ってOKです。

●丁寧語・尊敬語・謙譲語を同時に駆使してこそ一人前

丁寧語・尊敬語・謙譲語の3種は有機的につながっています。

この3種を同時に駆使することができてこそ、敬語の遣い方をマスターしたといえます。

というと、いかにも難しそうですが、「こういうときは、こういう言い方をするのか」と覚えてしまえば良いのです。

ぜひ覚えてほしい、代表的な敬語を以下にリストアップします。

目で見て、声に出し、耳で覚える。

というように、体全体を使って敬語に馴染んでいくと良いですね。

あたし、僕、俺、自分 → わたくし
あなた → あなた様、○○様
うちの会社、我が社 → 弊社、当社、小社、私ども
おたくの会社 → 御社、貴社
誰ですか → どちら様でしょうか
お名前を聞いてもいいですか → 恐れ入りますが、お名前をお聞かせいただけますでしょうか
○○様でございますね → ○○様でいらっしゃいますね
しばらくぶりです → お久しぶりです
いつもお世話様です → いつもお世話になっております
部長は今外出中です → あいにく、○○は席をはずしております
すみませんが → 恐れ入りますが
少し待ってもらっていいですか → 少々お待ちくださいますか
今お時間よろしかったでしょうか → 少しお時間をいただけますでしょうか
どうしますか → いかがなさいますか
どちらにいたしますか → どちらになさいますか
どうかいたしましたか → どうかなさいましたか
これでいいですか → こちらでよろしいでしょうか
これで結構でしょうか → こちらでよろしいでしょうか
それはできません → それはいたしかねます
知りません → 存じません
わかりません → あいにく、わかりかねます
そうです → さようでございます
そうですか → さようでいらっしゃいますか
そうでしたか → さようでいらっしゃいましたか
おっしゃられるとおりです → おっしゃるとおりです
それで構いません → それで結構です、差し支えはございません
わかりました・了解しました → 承知しました・かしこまりました
上司にそのように申し上げておきます → 上司にも申し伝えておきます
明日は社にいらっしゃいますか → 明日は御社においででしょうか
私のほうからそちらへ行きます → わたくしがそちらへ伺います、参ります
こちらからご連絡します → こちらから連絡をさしあげます
話を聞きます → お話を伺います
資料をご持参ください → 資料をお持ちになってください
資料を送ります → 資料をお送りします
ご拝受ください → お受け取りください、(確認していただきたいものを含む場合は)ご査収ください
資料は拝見されましたか → 資料には目を通していただけたでしょうか
見てください → ご一読ください、ご高覧ください
その件について伺っていますか → その件についてお聞きになりましたか
○○様が参られました → ○○様がいらっしゃいました、○○様がお見えです
どこへお連れしますか → どちらへご案内しましょうか
お客様をお連れしました → お客様をご案内しました、お客様がお見えになりました
どこへ参られますか → どちらへいらっしゃいますか
ご一緒します → お伴いたします
一緒に行きます → ご案内いたします
では、さようなら → では、ここで失礼いたします

●まとめの一言


あなたの言葉は、あなたの人柄をあらわします。
言葉遣いから多くのものが伝わっていくのです。
知性や教養、育った環境まで、なんとなくわかってしまうのですから、決しておろそかにすることはできません。

ビジネスマナーとして覚えておきたいことは多種多様にありますが、まずは敬語の遣い方をマスターすることが大事だと思います。

どうも自信がないなあという方は、このブログの関連記事をぜひご覧になってください。
仕事上のメール、企画書、報告書など、ちょっとした文を書くときなどに、きっと役立つと思います。

敬語の使い方ひとつで、文章の格が上がりもすれば下がりもします。

格調高い文体を目指すなら、むずかしい学術用語や故事成語よりも、敬語を学習するほうがよほど役に立ちます。即効性があります。
敬語を正しく用いると文章の格が上がる、といって過言ではありません。

関連記事→新年度・人事異動期のビジネスマナー、要注意の漢字

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