リテラシー向上

「値上がる」という表現は不適切。名詞を動詞のように使うときは、できるだけ助詞を付けてほしい。

投稿日:2024年4月17日 更新日:

値段が高くなることを「値が上がる」または「値上がりする」と言いますね。

お金を支払う側はそのように言い、お金を受け取る側は「値を上げる」「値上げする」と言います。

名詞を動詞化する際の注意点

「値上がり」「値上げ」はいずれも名詞ですが、これを動詞として使うこともできます。

名詞の後に助詞の「が」や「を」や「に」を付けて、「値上がり(が)する」「値上げ(を)する」「値上げ(に)なる」とすれば良いのです。

この場合は、「が」や「を」を省略しても特に問題はないようです。

ただし、「値上げになる」の「に」を省略して「値上げなる」という言い方はしませんね。

さあそこで、ちょっと考えてみてほしいのです。

私が思うに、その表現はちょっと変、NGです。

適切な言い方は、冒頭にも示したように、「値が上がる」「値を上げる」でしょう。

この場合は「が」や「を」を省略しないほうが良いようです。

必要とされる助詞が抜け落ちていると、どうなるか

「値上がる」「値上げる」と同様のケースで、「その言い方はNG」と私の語感センサーに引っかかる表現はいろいろとあります。

活字になったものを目にしたことはありませんが、映画・ドラマ・ネット動画などで耳にすることがよくあるのです。

たとえば、「知ったかぶる」「知ったかぶりやがって」という表現。

──それを言うなら「知ったかぶりをする」「知ったかぶりをしやがって」でしょう。

「知ったかぶり」という名詞を動詞にして使うときは、「を」を付けて使うことが適切で、広く一般に浸透している言葉遣いだと言えます。

文法的に正しいかどうかということよりも、語感になじむかどうかが、より重要ですね。

助詞の「を」「に」「は」などが抜けているために変な感じになってしまった表現を挙げてみます

語感になじまない表現があると、私は辞書で調べることにしています。

その結果、「ほらやっぱりね、その言い方は適切ではないのよ」ということが往々にしてあります。

(↑適切なのは)平積みにする

(↑適切なのは)読み聞かせをする

(↑適切なのは)先細りになる・先細りである

(↑適切なのは)下支えをする

(↑適切なのは)空回りをする

(↑適切なのは)出戻りになる

(↑適切なのは)棚上げをする・棚上げになる

(↑適切なのは)曲げ伸ばしをする

(↑適切なのは)言い争いはしたくない

(↑適切なのは)鉢合わせをする

ただし、「鉢合す」という表現はOK

私の語感になじみませんが、その表現でOKだとする辞書もあるようです

私にはちょっと違和感があるものの、「口づけ」という名詞を動詞化して「口づける」とするのはOKなのですね。

「口をつける」ならもちろんOKですし、「口づけをする」というのもOKで、これなら私も納得がいきます。

そのほかにも、私としては意外としか言いようがないのですが、その表現でOKだとされるものがいくつもありました。

(↑私は「通りすがりに」という遣い方しかできないのだと思い込んでいました)

(↑私は「むきだしにする」という遣い方しかできないのだと思い込んでいました)

(↑私は「腹這いになる」という遣い方しかできないのだと思い込んでいました)

(↑私は「使い回しにする」という遣い方しかできないのだと思い込んでいました)

(↑私は「出し惜しみをする」という遣い方しかできないのだと思い込んでいました)

(↑私は「野垂れ死にをする」という遣い方しかできないのだと思い込んでいました)

(↑私は「持ち運びに便利」というような遣い方しかできないのだと思い込んでいました)

(↑私は「後ずさりをする」という遣い方しかできないのだと思い込んでいました)

(↑私は「差し入れをする」という遣い方しかできないのだと思い込んでいました)

(↑私は「生け捕りにする」という遣い方しかできないのだと思い込んでいました)

(↑私は「言い逃れをする」という遣い方しかできないのだと思い込んでいました)

(↑私は「買い溜めをする」という遣い方しかできないのだと思い込んでいました)

(↑「買い付けをする」という遣い方ばかりではなさそうだ、と私も薄々気づいていましたが、「買い付ける」という表現もやはりアリだったのですね)

(↑「買い置きをする」という遣い方ばかりではなさそうだ、と私も薄々気づいていましたが、「買い置く」という表現もやはりアリだったのですね)

ちなみに──

「買い止める」「売り止める」はNGです。これらは金融トレードなどの際に用いられる用語で、その世界では通用する表現かもしれませんが、より適切なのは「買い止めをする」「売り止めをする」ではないかと私は愚考しております。

まとめの一言

名詞を動詞化して使うときは、名詞の後に助詞の「を」や「に」や「は」をできるだけ付けてほしい、と私は思っています。

もちろん、付けなくても良い場合だってたくさんあります。

「お茶をする」ではなく「お茶する」でじゅうぶんOKですよね。

「を」がなくても「〜する」の「する」を付けているからOKなのだと思います。

しかし、「値上がりする」を「値上がる」としたり、「下支える」「先細る」「空回る」なんて言ったりするのは、私は認めたくありません。

先にも述べたとおり、文法的に正しいかどうかということよりも、語感になじむかどうかが問題なのだと思います。

その「語感」というものが人それぞれなので、時として食い違いが生じることもあります。

私には違和感のある表現でも、多くの人が使うようになれば、辞書に載るようになることもあるのでしょう。

正直いって、いやだなあと思います。

関連記事→文章力の勝利!! 国語が「できる」ようになった子は他の科目も成績が伸びる

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