書き方・話し方のマナー

「さ入れ言葉」は上品か下品か?

投稿日:2017年4月21日 更新日:

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「させていただきます」という、へりくだった言い方が増えていますね。

へりくだる必要のない相手にへりくだっていることもよくあります。

たとえば、

「駅の改札で、SUICAを使わせていただきました」

なんて、誰に対してへりくだっているのか、わけがわかりません。

「お客様、このケーキには蜂蜜をかけていただいてください」

というのも、変な言い方です。
お客様をへりくだらせてどうする、と言いたくなります。

「させていただく」というのは、自分の側がへりくだり、相対的に相手を持ち上げる表現、つまり謙譲語です。

↑これも敬語の一種ですから、正しく遣うようにしないと、逆に相手に対して失礼なことになってしまいます。

●へりくだり表現

「~させていただきます」

「~させてください」

「~させます」

↑このような、へりくだり表現をする際は、

自分の側がへりくだるのであって、相手をへりくだらせるのではない。

ということを意識して、適切な遣い方をするようにしましょう。

●上品なのか下品なのか


「させていただきます」というのは、とても丁寧な言い方なので上品な印象を与えるはず、と誤解している人が多いように感じます。

たしかに、丁寧語を適切に遣えば好印象になるでしょう。

しかし、不適切な遣い方をすれば、下品とまではいかなくとも、とても上品とはいえません。

●「さ入れ」の言葉

「~させていただきます」

「~させてください」

「~させます」

↑このような、へりくだり表現をする際は、ついうっかり「さ入れ言葉」を遣ってしまわぬよう、気をつけてください。

悪い例を挙げてみます。

×毎週土日は休まさせていただきます。

×ちょっと言わさせてもらいます。

×一曲、歌わさせていただこう。

×車に乗させてください。

×食事をおごらさせてください。

×娘に持って行かさせます。

×風呂あがりに浴衣を着させます。

×秘書に返事を書かさせます。

×車内では若い人を立たさせそう。

「ら抜き言葉」と同様に、「さ入れ言葉」は文法的に正しいものではないとされています。
それなのになぜ多くの人が「さ入れ言葉」を好んで遣っているのでしょうか。

「さ」を加えたほうがより丁寧で、へりくだった印象になると感じるからだろうと私は思います。

しかし、「さ入れ言葉」を耳にして(または目にして)、違和感ならびに不快感をいだく人は少なからずいるものです。

●「させ」がつく言葉にご用心

「させ」の「さ」を取るべき場合は取ったほうが良いのです。

×毎週土日は休まさせていただきます。

○毎週土日は休ませていただきます。

×ちょっと言わさせてもらいます。

○ちょっと言わせてもらいます。

×一曲、歌わさせていただこう。

○一曲、歌わせていただこう。

×車に乗させてください。

○車に乗せてください。

×食事をおごらさせてください。

○食事をおごらせてください。

×娘に持って行かさせます。

○娘に持って行かせます。

×風呂あがりに浴衣を着させます。

○風呂あがりに浴衣を着せます。

×秘書に返事を書かさせます。

○秘書に返事を書かせます。

×車内では若い人を立たさせそう。

○車内では若い人を立たせよう。

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●「さ」なのか、「せ」なのか


「さ」と「せ」のどちらを遣うべきなのか、迷ってしまう場合もあるでしょう。

迷ったときは、どちらも試しに口にしてみると良いのです。

たとえば、

「笑わさないで」

「笑わせないで」

というように、「さ」と「せ」の2パターンを口にしてみると、どちらがより自然で好ましいのか、感覚的につかめるはずです。

例を挙げておきます。

×笑わさないで

○笑わせないで

×この本、彼には絶対に読まさない。

○この本、彼には絶対に読ませない。

↑「笑わせない」「読ませない」という言い方がより適切なのだということが、ご理解いただけたでしょうか。
これはもう、耳で覚えて感覚的に体得するしかないようです。

●「せ」なのか、「し」なのか


「せ」と「し」のどちらを遣うべきなのか、判断に苦しむ場合もあります。

「行かせて」と「行かして」

「見せて」と「見して」

どちらの言い方が正しいのでしょう。

口語においては、「せ」でも「し」でも、どちらでも意味は通じます。
しかし文法的には、「行かせて」「見せて」が正しいとされています。

正しい例と正しくない例を挙げてみます。

×泣きたいだけ泣かしてやろう。

○泣きたいだけ泣かせてやろう。

×驚かしてごめんね。

○驚かせてごめんね。

↑これも、耳で覚えて感覚的に体得するしかないようです。

●人や物に何か動作をさせるときの「使役表現」


急ぐように促すことを、

「急かす」(せかす)

「急がす」(いそがす)

「急がせる」(いそがせる)

と表現しますね。

↑3種類の表現方法があり、どれを遣っても間違いではありません。

「とどろかす」

「とどろかせる」

↑どちらも意味は同じで、どちらも正しい遣い方です。

しかし厳密にいうと、人や物に何か動作をさせるときの「使役表現」に当てはまるのは、上の2例でいうと、「急がせる」「とどろかせる」です。

●ここでちょっとクイズを

「このまま車で東京へ戻るつもりだが、新幹線で帰りたい人がいるなら、最寄り駅で降りさせる」

という場合の「降りさせる」という表現は正しいか、正しくないか?

答えは、「正しい」。

「降りさせる」は、ラ行上一段活用の動詞「降りる」の未然形である「降り」に、使役の助動詞「させる」が付いた形で、文法的に何ら間違いはないとされています。

しかし私は、「降りさせる」という表現はできれば遣いたくないと思っています。
あくまで私見ですが、次のように言い換えたほうが、より自然で美しいと思うからです。

×「新幹線で帰りたい人がいるなら、最寄り駅で降りさせる」

○「新幹線で帰りたい人がいるなら、最寄り駅で降ろします」

使役の助動詞「させる」を遣わずに表現する方法は、たくさんあります。

「最寄り駅で降りてもらう」

「最寄り駅で降りられるようにする」

「最寄り駅で降ろすことができる」

↑どの表現も間違いではない、と私は思っています。

●まとめ


「さ入れ」言葉は日常のあらゆる場面で遣われています。

「切なそう」と言えばいいのに、「切なさそう」と言う。

「読まなすぎる」と言うべきところを、「読まなさすぎる」と言う。

この場合は「さ」を取ったほうがいいのか?

「さ」と「せ」、「せ」と「し」、どっちだ?
などといちいち考えなくても、身体が自然に反応するようでありたいものです。

そのためには、「さ入れ言葉」を見たり聞いたりしても許容してしまわないことが大事です。

「それは間違った言い回しなのだ」という意識を持ち続ければ、「さ入れ言葉」やその周辺の言葉に触れたとたんに違和感を覚え、より適切な言い回しに改めようと頭が働くようになります。

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