本を読んだら、何か少しでも記録を残すとよいですね。
走り書きのメモであっても、たくさん集まれば「幸せの思い出貯蔵庫」となり得ます。
私はこの3年間に、約30本の読書感想メモを残しました。
読み返すと、それを書いたときの記憶がよみがえり、自分がどんなことを考えていたかが、ありありと思い出されます。
記録を残しておいてよかった、と思うのは、そんな瞬間です。
私の読書感想メモを、当ブログの読者の皆様にも見ていただきたいと思います。
皆様にとって、読書を促す一助となり得るならば、本当にうれしいことです。
また、「自分も読書感想文を書いてみよう」という気になっていただけるなら、望外の喜びです。
●クレイジー・ライク・アメリカ
『クレイジー・ライク・アメリカ』イーサン・ウォッターズ著
原題は『Crazy Like Us』
第1章 香港で大流行する拒食症
第2章 スリランカを襲った津波とPTSD
第3章 変わりゆくザンジバルの統合失調症
第4章 メガマーケット化する日本のうつ病
患者は、時代の診療診断に一致する症状を、無意識に生み出そうとしている。
心の苦しみを認めてもらおう、正当化しようという潜在意識が、目的を達成できる症状へと引き寄せられていく。
↑本書によるこの指摘がとても興味深くて、ぐいぐい引き込まれました。
心の病にも流行があるんですね。
私見ですが、犯罪についても同様のことがいえるのではないでしょうか。
若年層の凶悪犯罪、自殺、親殺し、子殺し、幼児虐待など、ひとたびどこかで犯罪が起きると、連鎖反応のようにあちこちで起こってしまうのは悲しいことです。
本書では「流行」という言葉が使われていますが、それはつまり、ある症状に病名がつくことによって病気が誕生し、その病気に関する知識や情報が社会に広まることにより、「私も」となる例が多いようです。
と本書は指摘しています。
人はみな、心の不調(悲しさ、つらさ、生きづらさ)などを、いろいろな方法で訴えるのだと思います。
どんな方法で訴えるか、私たち人間は無意識に探っているのでしょう。
たとえば、泣いて騒いだあとはスッキリします。
デトックス効果があるんですね。
泣けるほど感動する映画、とかなんとかいう宣伝コピーが流行っていますが、これはなんだか涙を強制されているみたいで、私はちょっとイヤです。
「泣くもんかと思っていたけど、つい涙してしまった」というのが好きです。
●女は人生で三度、生まれ変わる
『女は人生で三度、生まれ変わる』ローアン・ブリゼンディーン著
ホルモン分泌の仕組みは男性と女性とではこんなに違う。
という話です。
とても興味深く読みました。
「男ってどうしてこうなの?」と悩んでいた若い頃なら、むさぼるように読んだでしょう。
今は私もわりと冷静です。
本書は、男女の脳の違いに言及していますが、主にページを割いているのは、女性の脳やホルモン分泌はこうプログラムされている、だから気分や言動がこのように変化することが多い、という点です。
女性の脳が一大変化を迎える時期は一生に3回あり、思春期、妊娠出産のとき、閉経期だそうです。
いずれの場合もホルモンが多大な影響を及ぼし、価値観やプライオリティががらりと変わることもあるようです。
更年期の変化は思春期を上回るというけれど、私の実感では、思春期のほうが断然強烈でした。
思春期といえば14歳から18歳あたりですね。
若い脳と体が、荒れ狂うホルモンの嵐に立ち向かうなんて、可哀想だわ~残酷だわ~。
ホルモンの嵐に翻弄されて、生来のやさしさなんか吹っ飛んでしまい、自己中心的な言動を繰り返すことになるのもやむを得ないのかもしれません。
男性も思春期はホルモン暴走に翻弄されるようですから、周囲のことになど構っていられないのでしょうね。
そこは男女お互い様ですね。
ともあれ、この本は面白いですよ。
男性の皆さんにもぜひお読みいただければと思いました。
口説きにも使えそうですし、口説いた女性と長いおつきあいをするためにも、伴侶や娘とうまくつきあっていくうえでも役立ちそうです。
それにね、男性も女性にくっついていると影響を受けて、ホルモン分泌がじわじわ変わり、少しずつ生まれ変わるそうですよ。
男性の皆様、奥様やお嬢様にくっつきましょう。
ちなみに、版元の草思社が倒産し絶版になったためか、本書は古本市場で高値を呼んでいます。
1600円の本が、安くても3000円、その上は7000円から、約2万、3万、5万超にもなっています。
●思春期をめぐる冒険
『思春期をめぐる冒険』岩宮恵子著
日本評論社→新潮文庫→創元こころ文庫、と版元を移して版を重ねています。
読者はそれを読むことによって心理療法(のようなもの)を擬似体験している。
ということかな~という本です。
春樹さんの小説は暗喩に満ちているため、そこを解析しようとする本が多数出ていますね。
本書もその一冊かと思いきや、違ったのですねえ。
心理療法のプロセスで起きる諸々の変化と春樹小説の中で起きる出来事の類似性についての論述がとても興味深く、また、
とする筆者の主張に、深く納得のいくものを感じました。
河合隼雄氏の解説文にあるとおり、「知られざる思春期のありよう」があぶり出されているという印象を持ちました。
私の場合もたしかに、思春期は心身ともに乱調になりがちで、しんどい時期でした。
ただ、臨床心理士が実際の心理療法の例を挙げて解説するのを読むなかで、「私の場合は何か違ったがな〜」と感じる箇所もありました。
そこはやはり、個々人により感じ方が違うものなのですね。
ホルモンバランスが崩れる、心も乱れる、という点は思春期も更年期も同様と思いますが、不肖私は加齢とともに多少は知恵がついたのか、更年期はわりと楽に乗り越えました。
思春期の自分を思い出すと気の毒になり、心の中で「いい子いい子」「よしよし」と撫でてやります。
思春期に戻るのはごめんこうむりたいと思っています。
できるものならば、28歳か36歳くらいに戻れたらいいなあと。
と勝手なことを述べてまいりましたが、これは間違いなく質の高い名著だと思います。
これを読んでから村上春樹の作品を読むと、面白さ倍増でしょう。
春樹ファンの方々におすすめしたいと思います。
●マイ・グランドマザーズ
『マイ・グランドマザーズ』やなぎみわ著
という夢を女性たちに語らせ、その突拍子もない夢想をグロテスクな美とともに表現するという、超ユニークな試みを成し遂げた写真集です。
1999年より制作を続けたこのシリーズは、2009年ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館出品という大規模プロジェクトを果たしたそうです。
●シモネッタの どこまでいっても男と女
『シモネッタの どこまでいっても男と女』田丸公美子著
イタリア語同時通訳・エッセイストの田丸公美子さんのエッセイ集です。
こういう楽しい本を読んでいると時間を忘れます。
頭も体ものびのび寛いで楽になる感じです。
簡素でピリッとした名文、時に助詞を省略しているのも愉快だなあ♪
本書は田丸公美子さんの家族エッセイといっていいでしょう。
家族ネタではあっても、いつもの調子で笑わせてくれます。
涙もあります。
このほか『シモネッタのデカメロン』『シモネッタのアマルコルド』など、イタリアネタ&下ネタ満載の著作はさらに笑えます!
●まとめ
今回は、以下の5冊をご紹介しました。
『女は人生で三度、生まれ変わる』ローアン・ブリゼンディーン著
『思春期をめぐる冒険』岩宮恵子著
『マイ・グランドマザーズ』やなぎみわ著
『シモネッタの どこまでいっても男と女』田丸公美子著