読書感想文

読書感想文/日本語を使って考えることの快楽に溺れています

投稿日:2017年6月10日 更新日:

学生時代はよく本を読んだけれど、卒業して社会人になってからは週刊誌を読む程度で、あとはもっぱらネットかな〜

という方は多いようです。

でも、大人になった今こそ、積極的に本を読み、「感想文」を書くことが大切なのでは?と私は思います。

読書感想文というよりも、読後のメモ。それがわずか数行であっても、あるとないとでは大きく違います。

私もメモを残しています。

ご興味のある方にご覧になっていただけますなら幸いです。

●頭の悪い日本語

『頭の悪い日本語』小谷野敦著

本書を読みだしてすぐに、この著者は頭のいい人だなと感心しました。

言葉の誤用を指摘する本は数あれども、これはおそらく、一頭地を抜く逸品だと思います。

類書の中で唯一、これだけは手許におこうと私は決めました。

本書では例えば、

「感化」とは良い影響を与えることをいう。

と教えています。

私など、悪い影響を受けることを「感化される」と言って(書いて)いたので焦りました。

「感化」とは本来、良い影響を与えることを言うわけですから、「感化院」というものは、問題行動のある少年や少女に良い影響を与えて更正させるための施設のことを指すのだそうです。

感化院がのちに教護院となり、1998年から児童自立支援施設という名称になったそうです。

「孤児院」という言葉もありました。
しかし今はほとんど使われていません。
孤児院→養護施設→児童養護施設、と名称が変化しているのですね。

「孤児院」と呼んだほうがストレートに伝わると思うのですが、孤児というのは差別的な言葉であるとして敬遠されたのかもしれません。
呼び方を変えても実態は変わりませんけどね。

もうひとつ教えられたことがあります。

「敷居が高い」とは、迷惑をかけたり義理を欠いたりして、その家の敷居をまたぎにくいという場合に使う言葉

なんですね。
そういえば昔はみんな、そういう意味で言っていたなあと思い出しました。

そのほか、私が頻繁に誤用してきたのは、「自作自演」「私淑」「爆笑」など多数あります。

「自作自演」とは、自分が作った台本や楽曲を、自分自身で演じたり演奏したりすること。または、計画から実行までをすべて自分だけで行うこと。
他人がやったように見せかけて自分で行うことは、「自作自演」ではなく「狂言」というのが正しいそうです。

「私淑」とは、直接その人に会ったことはないけれど、尊敬して手本としていること。面識がある人に対して使う言葉ではない、とのことです。

「爆笑」とは、大勢の人がどっと笑うことを言い、したがって「一人で爆笑」というのは、語の遣い方として不適切であるということになります。

と、いろいろ有益な情報を得られたのはよいことですが、一度読んだくらいではとうてい記憶の修正を図れないと感じました。
今後もうっかり間違ってしまうかもしれません。

気をつけよう、バカな言葉と鳥頭。
私は、忘れた頃にまた本書を読むようにしたいと思っています。

●カネを積まれても使いたくない日本語

『カネを積まれても使いたくない日本語』内館牧子著

著者の内館さん、かなりお怒りのようです。
聞き苦しい日本語が蔓延していますからねえ。

それにしても、聞き苦しさ100%のパロールを活字にしてみせる技量は、さすが脚本家だけあってお見事です!
ヘンな言葉をこれだけ集めるのはさぞ大変でしたでしょう、と頭が下がります。
私も文章術の本を出しておりますが、参りました!とても敵いません!!

「我々は他者を気遣いすぎて過剰にへりくだっている」
「言うべきことを曖昧にぼかす」

とのご意見に共感し、納得しまくりです。

本書が指摘しているとおり、過剰なへりくだりは慇懃無礼となりがちで、敬語の誤用を招く、という問題を生じます。

断言すべきことは勇気をもって断言すべきですね。
そのためにも、

思いを的確に表現する語彙を豊富に持て!

ですよね。

●文壇アイドル論

『文壇アイドル論』斎藤美奈子著

村上春樹ワールドはゲーセンである、ゆえにゲームにハマるやつが続出、攻略本も続々登場。

俵万智サラダ記念日よりも筒井康隆「この刺青いいわとスケが言ったから七月六日はカラダ記念日」。

吉本ばなな、ルーツはコバルト文庫の少女カルチャー。

林真理子は負のパワーでのしあがった無意識のフェミニスト。

上野千鶴子は「フェミニズムの旗手」ではなく、遅れてきた「リブの闘士」。

立花隆は知のコンビニエンスストア。

村上龍、おっちょこちょいパワー炸裂のワイドショー的ルポ小説で時代を先読み?

田中康夫なんクリ、カタログ文化は新型のルポルタージュ。

↑等々、80~90年代文壇アイドルのアイドルたる所以を探った文芸批評です。

さらに本書から引用させていただくと──

なんクリは小説部分が「だである」文体で描き出した現実のパロディ、巻末の註は「ですます」文体で皮肉を利かせた批評で、本命は巻末註にあり。

そしてまた斎藤美奈子いわく、

意識的なフェミニスト上野千鶴子と林真理子はコインの表裏、わけわからんちんのオヤジ社会を力業でねじ伏せた。

さらに美奈子さんは、こう書いていらっしゃいます。

80年代は女の時代、とか騒がれていたのに、ふたを開けてみたら俵万智と吉本ばなな、これじゃねえ〜って感じ。

その舌鋒鋭く、分析のたしかさはお見事です。痛快です。そして笑えます。
本書『文壇アイドル論』はちょっと古いのですが、今読んでも面白いのです。
忘れた頃に再読すると、もっと面白いかも!

美奈子本はどれもハイクオリティだと思います。
買って損しません。

初の評論『妊娠小説』も面白いですよ。
名だたる文豪による過去のベストセラー小説のほか、村上春樹初期作品もやり玉に挙げられています。

数ある美奈子本のなかでも特に、『文章読本さん江』は絶品で、私の宝物です。

文章めちゃめちゃ上手! 頭いい!
肝が据わってます!
斎藤美奈子様は貴重な存在でございます!
美奈子さん天才かも。

そうです、私は美奈子さんの大ファンです。
新作の発表を待ちわびているのですが、なかなか出ません。
どうしちゃったのかな?

●まとめ


今回は、以下の3冊をご紹介しました。

『頭の悪い日本語』小谷野敦著

『カネを積まれても使いたくない日本語』内館牧子著

『文壇アイドル論』斎藤美奈子著

関連記事→読書感想文/コンピュータが小説を書く日、そのほかオススメの3冊

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