「こちらをご覧ください」というように、「ご覧ください」という敬語表現はよく使われますね。
「ご覧ください」の「ご覧」は、「見る」ことを依頼する相手の方への尊敬を示す尊敬語です。
「ご覧ください」と「ご覧になってください」
「ご覧ください」よりも「ご覧になってください」としたほうが、より丁寧ですし、より敬意を感じさせます。
「ご覧になってください」のほうが、敬語として一段格上なのです。
「なって」は省略しても良い
しかし、「ご覧ください」と「ご覧になってください」はどちらも敬語であることに変わりはなく、言葉の意味も変わらないので、「なって」は省略しても良い、とされています。
省略したほうがすっきりとした感じになるので、わざわざ「なって」を付ける人はほとんどいらっしゃらないようです。
昔は、「ご覧になってください」という言葉をよく耳にしたものですが、いつの間にか、すっかり聞かれなくなりました。
同様のことはほかにもあります。
「お越しになっていただいた」ではなく、「お越しいただいた」
「ご満足していただける」ではなく、「ご満足いただける」
というように、できるだけ短く表現することが好まれているようです。
「ご高覧ください」という言い方もある
「ご覧ください」というのはちゃんとした敬語ですが、もしかすると先方に対する敬意が十分に伝わらないかもしれないと感じるのであれば、「ご高覧ください」とすると良いですね。
「ご高覧」だけで十分に敬意を示すことができますから、「ご高覧なさってください」とする必要はありません。
「ご高覧」と「なさって」というように、一つの文に同じ種類の敬語(この場合は尊敬語)が重なると、「二重敬語」になってしまいます。
敬語を使いすぎるとまわりくどくなり、真意が伝わりにくくなるため、二重敬語は敬語の使い方として不適切であるとされています。
敬意を示したつもりでも、かえって失礼にあたるようなことは、できるだけ避けたほうが良いですね。
「依頼表現」では「なって」を省略することが多い
「この書類にご記入ください」
「詳細をご確認ください」
「詳しくご説明ください」
「ここでお支払いください」
など、何かを依頼する場合の敬語表現は、「なって」を省略することが多いようです。
「ご記入になってください」
「ご確認になってください」
「ご説明になってください」
「お支払いになってください」
とすると、「依頼」というよりも、上から「命令」しているような口調に感じられてしまうのですね。
そのため、「なって」が省略されることが多いのでしょう。
省略しない形よりもやや敬意は落ちますが、「敬意が足りない」と意識されることは、今はほとんどないようです。
「ください」と命令して良いのか
「〜ください」の「ください」という表現がそもそも命令形であるため、目上の人に対して使うのはあまり適していない、とする説もあります。
そういう場合は──
「この書類にご記入をなさってください」
「詳細のご確認をなさってください」
「詳しいご説明をなさってください」
「ここでお支払いをなさってください」
というようにすれば、命令形ではあっても、上からものを言うような偉そうな感じが和らげられます。
「なさって」とすれば敬語として完璧
前述のとおり、二重敬語は避けたほうが良いのですが、「ご記入・ご確認・ご説明・お支払い」など(丁寧語)に「なさって」(尊敬語)をつなげるなら問題ありません。
同じ種類の敬語が重なるわけではないので、「二重敬語」にはならず、敬語の使い方として適切です。
「〜してください」「〜になってください」と言うよりも、「〜なさってください」と言えば、命令形ではあっても、尊敬の敬語となります。