文章力アップ

文章力/「主語」と「述語」の取り扱い

投稿日:2017年5月15日 更新日:

主語と述語を明確に示す。

主語と述語を適切に対応させる。

↑この2つは、文章を書く上でとても大事です。

しかし、主語を省略しても意味の通じる文にすることはできます。

たとえば──

「今朝家を出たときは晴れていました」

「何を召し上がりますか」

というように、「誰が」「何が」を示す主語が書かれていなくても、

「今朝(私が)家を出たときは(空が)晴れていました」

「(あなたは)何を召し上がりますか」

というように、誰(何)のことを言っているのか、たいていの人は理解してくれます。

ただし、肝心なところで主語を省略すると、読者の誤解を招きやすいので要注意です。

●主語の取り扱い方

●「誰が?」の文

次の文を読んで、「誰が何をしたのか」、あなたは正しく読み取ることができますか。

昨夜はよく飲んだ。

俺がそのキャバ嬢と別れたのは、深夜3時近かった。

彼女と同郷の男友達が朝まで営業しているホストクラブで働いていた。

「これから、そっちへ行く」と言って、路地を曲がった。

↑よく飲んだのは「俺」、または「俺とキャバ嬢」でしょう。
深夜3時近くに別れたのは「俺とキャバ嬢」で間違いないと思います。
朝まで営業しているクラブで働いているのは、「(俺と一緒に飲んだ) キャバ嬢と同郷の、(たぶん彼女の)男友達」です。

では、

「これから、そっちへ行く」と言って、路地を曲がったのは誰?

「俺」?
「キャバ嬢」?
「俺とキャバ嬢」?

どれも正解ともいえるし、どれも間違っているともいえます。
正解の決め手となるものがないので、読者は答えを求めながら読み進むことになるでしょう。

一読ですっと意味が伝わる文にしてください。

↑主語を明確に示すと、誤解など生じようもない明快な文になります。

路地を曲がったのが「俺」ならば、

俺は「これから、そっちへ行く」と言って、路地を曲がった。

↑と主語を明確に示すべきなのです。

路地を曲がったのが「キャバ嬢」ならば、

彼女は「これから、そっちへ行く」と言って、路地を曲がった。

↑と主語を明確に示すべきです。

「これから、そっちへ行く」と言って、俺は路地を曲がった。

「これから、そっちへ行く」と言って、彼女は路地を曲がった。

↑としてもいいと思います。

「これから、そっちへ行く」と言って、路地を曲がって行ってしまった。

↑とすれば、「俺」ではなく「キャバ嬢」がそうしたのだな、と読者は理解できます。

「行ってしまった」という一語から、「俺」が名残惜しく感じていることも伝わります。

●主語は文のはじめに示そう

主語はできるだけ文のはじめに示してください。

↑と文法に定められているわけではないのですが、そうしないと、いったい誰のことを語っているのかわからないため、読者はイライラさせられることがあります。

彼はバーの扉を押して足を踏み入れた。

赤いドレスを着て、ゆったりとソファに腰掛け、おそらくレミーマルタンか何かだと思われるコニャックのグラスを手に、もう片方の手で煙草をふかしている、しわだらけの老女が目に入った。

↑これなど、まだいいほうで、「しわだらけの老女」が出てくるまでさらに延々と描写が続くという、しつこい書き方をする人もいます。

↑その描写がてんで冴えないものだったりすると、読者は飽きます。そしてイライラします。

「彼」が赤いドレスを着ていたのかな、とのっけから勘違いしてしまった場合、そして、そうではないとやっとのことがわかった場合、読者の怒りをかうこともあります。
なんでもっと早く言わないんだよ! 
と叱られてしまいそうです。

主語はできるだけ文のはじめに示すようにしてください。

先述の例文の場合でいうと、「しわだらけの老女」という主語を早めに登場させるのです。

彼はバーの扉を押して足を踏み入れた。

しわだらけの老女が赤いドレスを着て、ゆったりとソファに腰掛け、おそらくレミーマルタンか何かだと思われるコニャックのグラスを手に、もう片方の手で煙草をふかしているのが目に入った。

↑これでは当たり前すぎてつまらない、もっと気を持たせたいという場合は、どうすればよいか、以下にサンプルを示します。

彼はバーの扉を押して足を踏み入れた。

目に飛び込んできたのは、赤いドレスを着て、ゆったりとソファに腰掛け、おそらくレミーマルタンか何かだと思われるコニャックのグラスを手に、もう片方の手で煙草をふかしている、しわだらけの老女だった。

↑「目に飛び込んできたのは」という一語を加えることにより、ずいぶんわかりやすくなったと思います。

●主語と述語をできるだけ近づけよう

文のはじめに主語が示されているのに、それでもわかりにくい文もあります。

僕は結婚式場の予約もしていたのに、式の直前に浮気をしたばっかりに、破談になったカップルを知っている。

↑「僕」が結婚することになって式場の予約をし、しかし式の直前に浮気をしたので破談になった、という話だと思って読んでいると、文末に来て、そうではなかったことがわかり、「な~んだ」とがっかりしてしまいます。
読者を振り回す悪文の典型的な例だといえます。

結婚式場の予約もしていたのに式の直前に浮気をしたばっかりに、破談になったカップルを僕は知っている。

↑「僕は」という主語を後ろにずらし、「僕は知っている」としました。

主語と述語をできるだけ近づけると、意味が伝わりやすくなります。

僕は、結婚式場の予約もしていたのに式の直前に浮気をしたばっかりに、破談になったカップルを知っている。

↑「僕は、」と読点をひとつ打つだけで、読者の誤解を防ぐことができます。

●主語をあえて文の後方に持ってくる

私は電車に乗るとき、カフェでお茶するときも、何かしら読むものがあれば時間を持てあます心配がないので、必ず文庫本か雑誌を携えていく。

↑一読で意味が伝わる文です。それでもなお改良の余地があります。

電車に乗るとき、カフェでお茶するときも、私は必ず文庫本か雑誌を携えていく。
何かしら読むものがあれば、時間を持てあます心配はない。

↑こうすると、主語「私は」と述語「携えていく」がいっそう近づくので、より読みやすくなります。

私は電車に乗るとき、カフェでお茶するときも、必ず文庫本か雑誌を携えていく。
何かしら読むものがあれば、時間を持てあます心配はない。

↑文を二つに分けるなら、後続の文では「私」という主語を省いて良いと思います。

●主語と述語の間に語を入れすぎない

私は無責任にも、出版事業は博打のようなものでしょう、売れないと思っていても、何かの拍子に売れてしまうかもしれませんよ、と担当編集者に、そして続いて編集長に向かって、だけどリスクを負う当事者はなかなか首を縦に振ってくれませんよね、と言った。

↑主語と述語の間に語を入れすぎると、「誰が何をしたのか」が読み取りにくい文になります。

私は無責任にも、担当編集者に言った。
「出版事業は博打のようなものでしょう、売れないと思っていても、何かの拍子に売れてしまうかもしれませんよ」と。
それから編集長に向かって、「だけどリスクを負う当事者はなかなか首を縦に振ってくれませんよね」と言った。

↑主語と述語をできるだけ近くに置くようにすると、「誰が何をしたのか」を読み取りやすい文になります。
さらに、「言った」ことの内容を「 」でくくり、地の文と区別することで、よりわかりやすい文になります。

●まとめ


「読みやすく、わかりやすい文章にする」には、

「主語と述語を明確に示す」

「主語と述語を適切に対応させる」

この2点が重要です。

関連記事→文章力/説明がうまい人は「修飾語」(形容詞・形容動詞・副詞の3点セット)に強い

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