読書感想文

だんだんよくなる西加奈子

投稿日:2019年12月14日 更新日:

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特に理由はないのですが、西加奈子さんの小説は初期のものから順に読もうと思っていました。

デビュー作『あおい』に次ぐ2作目が『さくら』です。

まずはこの2冊を読み、『きいろいゾウ』『こうふく みどりの』『こうふく あかの』『ふる』と、立て続けに読んでみました。

『あおい』『さくら』『きいろいゾウ』『こうふく みどりの』『こうふく あかの』『ふる』

題名が色彩を帯びていますね。

表紙カバーもカラフルであたたかい感じ。

そして中身も、読んでいてほわんとした感じになります。

ですが、率直に感想を述べると、どれも期待はずれでした。

特に『ふる』については、主人公がいじいじと考えすぎるからいけないんだよ~とストレスがたまる思いでした。

それに、ライトノベルを読んでいるような感じで、物足りないったらありゃしないのです。

そこが若い人にはビンビンくるのかな、なんて思ったりもします。

『舞台』

初期作品は私の求めているものと異なりましたが、その後の作品は、読み応えありでした。

まず、『舞台』という作品。

こちらもやはり主人公が考えすぎるタイプで「いじいじ系」小説だと思いますが、太宰治の「人間失格」につながる感じの、より深いいじいじ系でした。

西加奈子さんは太宰治にシンパシィを感じているのかな。

『炎上する君』

どんよりとしたまま終わる小説であっていいから、途中どこかに、生きる喜び爆発の場面があるといいな。私はそういうのが読みたいよ。

と願いつつ、短編集『炎上する君』を読みはじめて、ぶっ飛びました。

人物造形が素晴らしい!!

そして、世界を切り取るその視点とかアングルとか、なんかもうすごく独特のものを感じます。

文章も緻密で端正で、読んで心地よい~のです。

『通天閣』

さらにぶっ飛んだのは、『通天閣』という作品です。

パンチが利いています。こういうの好きっ!!

現実を描くのが巧いなあと感銘を受けました。

ただ、私は大阪のディープサウスと呼ばれる新世界、通天閣のあたりが好きなので、この『通天閣』という小説には新世界にたむろしている生活保護のおっちゃんたちがうじゃうじゃ出てくるかと期待していたのに、そうじゃなかったのはちょっと残念。

それに、期待?したほど下品でもなく汚くもなかったので、嫌悪感なしに読めました。

西加奈子がこだわっているのは、一見無関係の人間同士がどこかでつながっているということではないでしょうか。

『こうふく みどりの』『こうふく あかの』二部作で描こうとしていたそれが、本作で見事に結実したのでしょう。

と思えるようになったことは私にとって大収穫です。

前述の二部作を、つまらないつまらないと文句言いながらも読んだ甲斐がありました。

やっぱ好きです、西加奈子!

『i(アイ)』

この作品は、そうとう力はいってますね。

読むほうも力がいります。

私が一番ぐっときたのは、293ページ、主人公が海の中で聞く音の描写です。

ゴゴゴゴゴゴ。どくん、どくん、どくん。

↑これは胎児が母親の胎内で全身に感じる命の音だと思います。

読んだ瞬間、私はわっと泣きそうになりました。

主人公がシリアに生まれて、先進国の裕福な家庭の養子として育ったという設定もユニークです。

恵まれた環境にあることで罪悪感を覚える人もいるのだということがリアルに伝わってくるようでした。

これに対し、私が読んできた小説の多くは、人を雇う側ではなく雇われる側の人間がこの不平等な世界に対して抱くムシャクシャ感、やってらんねえ感、軋轢ギシギシ、閉塞感くるしいよおで、それらをどうにかして突破したいという熱い思いが描かれていました。

本作のような視点から世界を見た小説は、私にとって初体験です。新鮮でした。

『ふくわらい』

やはり良いですね、西加奈子。

人物造形がおもしろいと思います。

カバーイラストもすごくいいと思います!

『この話、続けてもいいですか。』

西加奈子エッセイ集『ごはんぐるり』や『まにまに』も読みましたが、それよりも格段に面白かったのが、この『この話、続けてもいいですか。』です。

ネガティブな友人たちの話など、じつに笑えます。

正直なところ、西加奈子がいくら巧いといっても、昔の大作家のような濃密な文章は期待できないと思っていました。

ところがこのエッセイ集を読むと、筆力ありありじゃん!笑わせる文章ってすごいなあと感心することしきりです。

これを書いた当時、西加奈子はまだ30そこそこだったのですね。

若い女性の身辺雑記にしては、自ら「加齢だ」と嘆く箇所が多いので、あらら随分早熟なのね~‼ と意外に思ったりして、そんなことでも楽しませてもらいました。

気取っていないところが魅力ですね。

豪快と繊細が同居しているようなところも好きです。

大阪のねえちゃん、という感じで、東京だと中央線の荻窪とか西荻窪とかに、そういうノリの女子が多いような気がするのですが、偏見かしら?

●まとめ

今回は、私が読んだ「西加奈子本」についてお話しさせてもらいました。

『あおい』

『さくら』

『きいろいゾウ』

『こうふく みどりの』

『こうふく あかの』

『ふる』

『舞台』

『炎上する君』

『通天閣』

『i(アイ)』

『ふくわらい』

『この話、続けてもいいですか。』

あなたのお気に入りは、どの西加奈子でしょうか。

関連記事→ この本にも飛びつきました!!『読む京都』『女ぎらい』『女子をこじらせて』

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