読書感想文

読書感想文/文は人なり。自分らしく自由自在に!!

投稿日:2018年2月12日 更新日:

「この本を読んで、こう感じた」

と思いつくまま書き出していくと、それも読書習慣の一部となります。

どんな本を読み、どんなことを考え、どこに感動したのか。それを記録に残すことにより、貴重な思い出のストックができます。

わずか数行のメモであっても、あるとないとでは大きく違います。

私の経験からいって、それは写真アルバムにも匹敵する「幸せの思い出貯蔵庫」です。

私の貯蔵庫の中から、いくつかご紹介したいと思います。
ご笑覧いただけますなら幸いです。

●『レトリックの本』JICC出版局(現 宝島社)

『レトリックの本』
『みんなの文章教室』
『文章・スタイルブック』
『珍国語』

──これら4冊のシリーズ本(別冊宝島)は、80年代に立て続けに刊行されました。

いずれも名著だと思います。

文章を書くことに関心のある方はぜひご一読を。

なかでも特に、『レトリックの本』は、変奇な文を集めている点がユニークで面白い。

私が特にいいなと思ったのは、写真家の荒木経惟さんのアラーキーな文です。
逸脱しまくりですよ〜!!

本書は発行当時の人気作家(椎名誠、糸井重里、嵐山光三郎など)から多数の例文を引いています。

今読むとやや古びた印象の箇所もありますが、例文が示す独特の文体と、それを編者が分析する力は現在も十分通用するもので、ものすごく内容が濃い力作、労作であることが伺えます。

井筒三郎さんという方がこの本の全体を統轄しているようで、私など「まいりましたっ」と平伏したくなる思いです。

しかし井筒さん単独の著書は見当たらず、その後どのようなお仕事をなさったかについても不明です。
残念至極。しごく残念。

●『その日本語、ヨロシイですか?』新潮社校閲部 部長 井上孝夫著

目次
第1章 校閲よ、こんにちは
第2章 調べ方の調べ方
第3章 ルビは難しい
第4章 嗚呼!漢字
第5章 仮名づかひ今昔
第6章 グローバル時代の翻訳
第7章 その日本語、間違ってます!?
第8章 その日本語、ヨロシイ!?
第9章 死語の世界
第10章 出版と日本語と校閲と

校閲というハードなお仕事をなさっている部長さんが書かれた現場発のレポート、という感じの本です。

「ここはこう書き換えたほうがヨロシイかと思うのですが」

と編集者や著者にお伺いをたてるのが校閲者の仕事である、とのことですが、

「まあ!! なんと謙虚な!!」

と私などは感心しまくりです。

だって、校閲のお仕事って本当に大変そうなんですよ。

日本語の正しい使い方を熟知していなければならないし、歴史・科学・文学・音楽・美術、いえそれだけではなく要するに世界全般について、事実に反する記述があれば修正を促すだけの知見がないと務まらないのです。

正確を期すために各分野の資料にあたって調べていらっしゃるそうですが、もとより博覧強記でなければできない仕事でしょう。

作家の多くが、校閲者の方々を頼りとし、尊敬しているそうです。

私もたまに校正の仕事を請け負うことがあるので、近年、日本エディタースクール校正部門を受講し、修了証書をもらいました。

校正者としては全然たいしたことのない私ですが、いえ、だからこそなのですが、この方面は引き続き勉強していきたいと思っています。

●『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』神田桂一・菊池良著

全100篇のパスティーシュ集です。

Amazonのヒットチャートで見て即買いでした。

私も文体模写を勉強中ですから、こういうの大好きっ!

おおいに楽しませてもらいました!!

「物真似をされるようになったら、一流になった証拠」

という説があります。

でも、文体模写などされて茶化されるのはイヤ、という作家さんは多いかもしれません。

「そんなの知ったことか!!」と強気の姿勢で臨まなければ、パスティーシュはできません。

そうした意味で、本書は潔いよいものを感じさせます。

最初の1篇は

「もし村上春樹が本書の『はじめに』を書いたら」

で始まります。
続いて──

太宰治「焼きそば失格」。

相田みつを「カップ焼きそばだもの」。

フィッツジェラルド「グレート焼きそば」。

スーザン・ソンタグ「反カップ焼きそば」。

迷惑メール「件名:突然ですが、カップ焼きそばを相続しませんか?」

など、興味深いタイトルが続々と登場します。

この本の著者は守備範囲が広いようですね。
テレビや雑誌にも目配りがきいていて、ほんと感心します。

ところで、文体模写をするには、その作家の本を何冊も読み込む必要があります。
私は本書を読みながら、

「どの作家の本をどれくらい読み込んでいるかな〜」

と、そんなことばかり考えていました。

「火花」の模倣、上手ですね。

村上龍と林真理子のはダメでした。
あまり読んでいないのかなと思いました。

村上龍×坂本龍一の対談模写は、かなり笑えます。

本書を読了後、ほかの本を読むと、いつもとは違う感覚で活字を追っている自分に気づきます。
すべてが文体模写っぽく思えて、どこかにおふざけやオチが仕込まれているんじゃないかと用心しながら読み進めていたりするんです。

●まとめ

今回は、以下の3冊をご紹介しました。

『レトリックの本』JICC出版局(現 宝島社)

『その日本語、ヨロシイですか?』新潮社校閲部・ 部長 井上孝夫著

『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』神田桂一・菊池良著

関連記事→読書感想文/読むように味わう写真集&脳内スクリーンに映し出すように読む書籍

-読書感想文

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

関連記事

読書感想文/芥川賞or直木賞受賞の、気になる作家・気になる小説

私はどちらかというと古い小説を読むことが多くて、最近の若い作家のことはほとんど知りません。 たまに芥川賞受賞作を読む程度で、直木賞まではとても手が回りません。 今回ここにご紹介するのも主に、芥川賞受賞 …

読書感想文/環境問題を考える読書

『黙って寝てはいられない』 『原発ゼロ やればできる』 2011年福島第一原発事故が起きて以降、日本の原発稼働は2基のみとなり、その後2013年~2015年まではゼロ稼働だったが電力は足りていた、その …

読書感想文/人生を変えるかもしれない本

「この本を読んでよかった。出会えて幸せだ」と強く感動したとき、私はごく短いものですが読書感想文を書くようにしています。 わずか数行のメモであっても、あるとないとでは大きく違います。 自分はこんな本を読 …

読書感想文/古くても新鮮!! 読むに値する名著をザクザク発掘!!

本を読んだら、何か少しでも記録を残すとよいですね。 自分はこんなふうに感じ、こんな点に感動した。と書き留めておくと、貴重な思い出をストックすることができます。 走り書きのメモであっても、たくさん集まれ …

読書感想文/日本語を使って考えることの快楽に溺れています

学生時代はよく本を読んだけれど、卒業して社会人になってからは週刊誌を読む程度で、あとはもっぱらネットかな〜 という方は多いようです。 でも、大人になった今こそ、積極的に本を読み、「感想文」を書くことが …

2023/06/29

「を抜き」「は抜き」を改善しよう

2023/06/23

「か抜き」言葉を改善しよう

2022/12/01

「お申し付けください」よりも「仰せ付けください」のほうが良いなあ

2022/08/15

男と女の日常茶飯劇

2022/04/01

ライターが習得した速読法

2022/03/30

「十分」と「充分」に違いはある?

2021/12/26

Kindleペーパーバック出版、私もやってみました。

2021/01/19

「XX時からXX時に行きます」という言い方は、変じゃない?

2020/09/07

主語がなくても通じる、日本語の不思議

2020/08/27

チーママ・オーママ/小ママ・大ママ

2020/02/27

表記統一の観点からいうと、「行う」ではなく「行なう」が正しい

2020/02/26

「語尾上げ」しゃべりが癖になっていない?

2020/02/06

TOKYO MXテレビ『5時に夢中!』に出演しました。

2019/11/29

ものの数え方・73選

2019/11/28

馬から落馬・顔を洗顔←重ね言葉はやめよう

2019/11/27

カタカナ語の乱用防止に、この日本語を!!

2019/11/16

「理想」の対義語は□□、「流行」の対義語は□□。

2018/10/18

頭から離れる?離れない? 正しい言い方はどっち!?

2018/09/18

横浜に代々伝わる「ハマ言葉」

2018/09/03

文章構成術/基本フォーマット12種類

2018/03/10

なぞなぞ傑作選・必笑78題

2018/03/09

テープ起こしをすると文章力が高まる!!

2018/03/02

ネガティブなことをポジティブに言い換えるレッスン

2018/02/16

「い抜き言葉」はカジュアルな場面でのみOK

2017/10/03

月の呼称/睦月・如月・弥生・卯月・皐月・水無月・文月・葉月・長月・神無月・霜月・師走

2017/06/02

読点の打ち方を完全マスター!! ①

2017/05/20

文章力/接続詞の乱用禁止!! 大事な場面で効果的に使おう

2017/05/16

文章力/説明がうまい人は「修飾語」(形容詞・形容動詞・副詞の3点セット)に強い

2017/05/05

悪文リライトにチャレンジしてみませんか

2017/05/04

文章力を高める10の行動。すべて試してみる価値あり!

2017/04/30

混じる?交じる? 漢字の書き分けは、頭をやわらかくする知的なゲーム

2017/04/23

先入感?異和感?それって漢字変換ミス? 同音異義語・同訓異字の落とし穴

2017/04/22

「れ足す言葉」は、くどい、しつこい

2017/04/21

「さ入れ言葉」は上品か下品か?

2017/04/20

「ら抜き言葉」はOKかNGか?

2017/04/16

アブない隠語も、正しく覚えれば失敗しない

2017/04/04

ビジネスマナー/尊敬語と謙譲語の使い分け

2017/03/24

日本語の乱れ/あざーす・やばくね? 変な言葉や言い間違いが増えていますね?

2024/04/17

「値上がる」という表現は不適切。名詞を動詞のように使うときは、できるだけ助詞を付けてほしい。

2024/04/15

主語と述語のつながりが微妙にねじれているように感じられる文って、気持ち悪いよ

2024/04/12

「見せる」と「見させる」の違い・「見せて」と「見させて」の違い

2024/04/10

「ご覧になって」の「なって」は省略可

2024/04/09

「万一○○の時は、いつでも力になるよ」、この文はどこか変だと思いませんか?

言葉をたくさん知っていると、話すのも書くのも自由自在。頭を整理しながら自分の思いや考えを的確に伝えられるので、いつも気分よく過ごせます。仕事や人間関係にきっと良い影響があるでしょう!!

当サイト「言葉力アップグレード」は言葉の世界を豊かにし、話し方・書き方をレベルアップする技術を紹介しています。どうぞご活用ください。

follow us in feedly