「この本を読んでよかった。出会えて幸せだ」
と強く感動したとき、私はごく短いものですが読書感想文を書くようにしています。
わずか数行のメモであっても、あるとないとでは大きく違います。
自分はこんな本を読み、こんなことを考えた、ここに感動した。と記録を残すことにより、いい思い出がどんどんストックされていきます。
私の「思い出貯蔵庫」から、いくつか紹介したいと思います。
当ブログ読者の皆様がこれから読む本を選ばれる際に、少しでも役立ちますなら幸いです。
『李陵・山月記』中島敦
唐代伝奇などの中国古典に素材を求めた短篇小説集です。
山月記・名人伝・弟子・李陵、と4篇入った文庫本が280円(私が購入した当時)でした。
それから数十年を経た今でも、ワンコインでお釣りがきちゃうのですから、文庫本ってなんてお得なんでしょう!
中島敦という作家は和魂漢才、つまりは和歌も漢詩もよくする人だったそうです。
加えて洋モノもお好みで、横浜山手の女学校で教鞭を執るかたわら、ハイカラなポエムなど書いていらしたようです。
日本で最初にカフカを翻訳したのも中島敦でした。
その中島敦が一時期を暮らした横浜山手に、神奈川近代文学館があります。
そこで開催された中島敦展で、「教え子にもてた」とする紹介文を目にしました。
中島先生、もてて嬉しかったのかな。
余談ながら、私の知人(男性)も女子高で教えていますが、毎日とてもつらい、とこぼしています。
女子高生というものは、見かけは可愛いけれど、その実態たるや思いのほかワイルドで、彼が女性に対して抱いている夢や憧れを悉く粉砕してしまうので、非常につらいのだそうです。
さらに余談ながら、中島敦は妻以外の女性ともいろいろあって、こっそり抱き合っているのを奥さんに目撃されてしまった、という話もあります。
実際はどうだったのでしょうね。
もし本当にあった出来事なら、そのとき中島敦はどう対処したのでしょう。
浮気現場を妻(または夫)に目撃されたとしても、絶対に、「やってない、何もしてない」とシラを切り通さないといけないそうです。
やってる最中の現場に踏み込まれた場合は、「彼女(または彼)が急に具合悪くなったので、しかたなくここで介抱していた」と言い通すのがよいそうです。
話が脱線して失礼しました。
本書収録の短篇「山月記」「名人伝」「弟子」「李陵」は、いずれも名文の鑑のような作品です。
こういうのを「珠玉」というのだと思います。
『In Praise of Shadows』谷崎潤一郎著「陰翳礼讚」の英語版
英語で書かれた本をスラスラ読めるようになりたい。
私の場合は特に、アンジェラ・カーターという作家の書いた小説を原書で読んでみたい。
と言ったら、「比較的シンプルな英語で書かれた短いものから始めるとよい」と、ある人が教えてくれました。
谷崎潤一郎著『陰翳礼讚』(日本語原文)を対訳本として読み進めれば何とかなるだろう、とも言われました。
そこで購入したのが本書です。
はりきって洋書読みにチャレンジしましたが、結果はどうかというと──
文の構造は理解できます。だから、おおよその文脈はつかめます。
でも、ところどころでつまずきます。
私に語彙力が不足しているからだと痛感しました。
かくなるうえは方向転換を図り、英和辞書を読むことから始めよう。
読んで面白い英和辞典ってあるかな?
どなたかご存知でしたら教えてください。
とぼやいていたら、ある方がこう教えてくれました。
「面白いかどうかはともかくとして、研究社の中英和を乱読してみてください。実力がつきます」
はい、わかりました。がんばってみます。
英和辞書を枕元に置き、毎晩少しずつ読んでみましょう。
眠れないときなど、入眠剤の代わりになりそうです。
●『三田文学』2015.11月号
http://www.mitabungaku.jp/backnumber123.html
イギリス在住の作家カズオイシグロ氏が来日し、慶應義塾大学で講演をしたときの講演録を掲載した号です。
これが出た当時は、私も「三田文学」誌を定期購読していたのですが、読んだあとはいつも友達にあげちゃっていました。
それがですよ、カズオイシグロ氏ノーベル文学賞受賞のニュースが飛び込んできたのですから、あわてました。
あの講演録をもう一度読みたい、と切実に思いましたよ。
さっそくアマゾンで調べてみたら、なんと売り切れでした。
三田文学が在庫ゼロになるなんて、すごーく珍しいことだと思います。
それで仕方なく、私は地元図書館で借りて、講演録のページをコピーしました。
●まとめ
今回は、以下の3冊をご紹介しました。
『李陵・山月記』中島敦著
『In Praise of Shadows』谷崎潤一郎『陰翳礼讚』の英語版
『三田文学』2015.11月号