「読む・書く・話す・聞く」の日々雑感④
「商品には万全を期しておりますが、不都合な点がありましたらお申し出ください」または「お申し付けください」と言われたら、あなたはどう感じますか?
私は「申し出る」「申し付ける」という言い方に違和感を覚えてしまいます。
「申す」は「言う」の謙譲語で、自分の側がへりくだることで相対的に相手を上に置き、敬意を示すための表現です。
敬意を払うべき相手をへりくだらせちゃマズいでしょ、と思うのです。
『明鏡国語辞典』の編集委員による本『続弾!問題な日本語』によると、
「お申し出ください」は全体で尊敬語として使われており、明らかな間違いとまでは言えません。
とされています。う〜ん、そう言われても、私は納得がいきません。
ただ、その本に、こうつけ加えられていたのは幸いです。
「申し出る」そのものには謙譲語の性格が残っているため、客に対しては「お申し付けください」「お知らせください」などの言い方をするほうが望ましいでしょう。
ですよね、やっぱりそうでしょ、と半分だけ胸のつかえがおりました。
あとの半分は、「お申し付けください」でほんとにいいのか?と疑問が残るのです。
「お申し付け」という語にも謙譲語の性質が残っているんじゃないの?
だったら、お客様に対して使うのは不遜に当たるんじゃない?
適切な敬語表現にするにはどうすればいいの?
敬語を使うべき相手は、お客様とは限りません。
上司、先生、先輩といった目上の方、年長の方などには、できるだけ適切な敬語を使うようにしたいものです。
では、「お申し出」や「お申し付け」を適切な敬語表現にするにはどうすれば良いのでしょう。
答えは、「仰せ付けください」とすることだと思います。
「仰せ」という言葉があった、と思い出そう
「仰せ」(おおせ)というのは、目上の方からの言いつけ、命令、お言葉のことを指します。
仰せをいただく
仰せのままに
仰せつかる
仰せつかりました
仰せつかっております
というように使います。
「お申し付けください」→「仰せ付けください」
「お申し出ください」→「仰せ付けください」または「お知らせください」
このように言い換えると良いですね。
「仰せ」という語は、今や滅多に使われることなく、半ば忘れられた言葉になっていますが、ぜひ復活・復権させたいと私は考えています。