私の職業はライターです。
仕事の内容は主に、書籍や雑誌の原稿を書くことですが、書くにあたってはまず、人に会ってお話を伺い、そのときに録音させてもらった取材音源を文字起こしすることから始めます。
↑こうした作業を、一般に「取材テープ起こし」といいます。
「文字起こし」、あるいは「音声起こし」という場合もあります。
要するに「聞いた話を文字にする作業」をおこなうわけですね。
今回は、そのことについてお話ししてみようと思います。
●きちんとした日本語にするのは大変な作業
出版業界だけでなく、一般企業や官公庁、地域活動などにおいても、会議や打ち合わせなどの内容を「文字起こし」「音声起こし」することが必要とされることが多々あるようです。
さらには、インターネット上での動画配信、たとえばYouTubeなどで、ナレーション音声や会話を文字にして表示しているのを目にする機会も増えました。
人が話したことを文字にするだけだから簡単だ、誰にでもできる、と思われがちですが、きちんとした日本語にするのは、なかなか大変な作業です。
同音異義語の使い分け、常用漢字の正しい使用など、日本語の基礎的学力が必須です。
小中高校での国語の授業で教わったはずのことが頭に入っていれば問題ないと思います。
しかし、忘れていることも多いんですよね。
そのため、テープ起こしに必要な知識とスキルを伝授する本が多数出版されています。
会議や講演、またはインタビューなど、人の音声が録音されたものを文字にすることを仕事としたい方、在宅ワーカーとしてやっていきたいとお考えの方は、まずはこうした参考図書にあたって勉強するとよいかもしれません。
また、テープ起こしを仕事としないまでも、もしその機会があったらチャレンジしてみるとよいのではと思います。
●1時間の音声を文字にするのに2時間はかかる
私はテープ起こしのプロではないので、この作業にはかなり時間を要します。
取材音源が10時間分あれば、それをすべて文字化するのに20〜30時間は必要です。
取材内容が充実していればいるほど、時間がかかります。
それでも1日8時間ほど作業をすれば3日〜4日で終わるだろう、と思ったら大間違い。
がんばっても1日4時間が精一杯で、それだけでヘトヘトに疲れてしまいます。
なぜかといえば、クリエイティブとは言いがたい単純作業だからです。
録音されている話の内容は面白いのだけれど、それを文字にしていく作業はつまらないので、遅々として進みません。
原稿執筆時のようにだんだんノッてきて夢中になるということはほぼ皆無なのです。
だから時間がかかってしまうんですね。
と教えてくれた方もありますが、私は使う気になりません。
↑聞こえるものすべてを文字にされても困るのです。
●聞いたことをそのまま文字化してもダメ
ではここでちょっと、実際のテープ起こしの例を見てみましょう。
最初に、録音内容をそのまま文字にしたものを挙げます。
続いて、録音内容を整理して、必要と思われる要素を加筆したものを挙げます。
どちらがより読みやすく、理解しやすいか、違いを感じとっていただければと思います。
【録音内容をそのまま文字化】
エルメスが世界中の人から愛され続ける理由の一つには、その丁寧な手仕事と丈夫な作りにあります。
上質な材料を使っているし、洗練されたデザインで、熟練した職人が一つ一つ丁寧に製品を仕上げていくそうです。
自社で製作を一から最後まで作っているということもあります。
それこそが、この会社を世界ナンバーワンにして、愛されている理由だと思います。
【録音内容に加筆修正を加えて文字化】
エルメスのハンドバッグが世界中で愛され続けている理由は何でしょう。
それは、素材のよさ、デザインのよさ、丁寧な手仕事による丈夫な造りです。
上質な皮を用いていること。
デザインが洗練されていること。
熟練した職人が一つひとつ丁寧に仕上げていくのでとても丈夫な造りになっていること。
これらが高く評価されているのです。
さらには、製造工程のすべてを一貫して自社でおこなっているという点も、高評価につながっています。
こうしていくつもの条件が満たされたことにより、エルメスは世界ナンバーワンのブランドともいわれるようになったのだと思います。
●まとめの一言
テープ起こしをする際は、同音異義語の使い分け、常用漢字の正しい使用など、日本語の基礎的学力が必須です。
加えて、重要箇所のキーワードをもれなく拾うこと、話の要点を的確に掴んでムダのない文にまとめることも必要です。
音声を文字化するアプリを使っても、なかなかそうはいかないでしょう。
人間の頭脳は、それができます!
私も、おつむ大事にしようと思います。