「SNS投稿したら、思わぬ誤解をされた」
そんな経験はありませんか。
ちょっとした行き違いからトラブルが生じることもあるので、注意しないといけませんね。
メールやSNSなどでは比較的短い文章をやりとりすることが多いと思いますが、短い文章においても、意味が正確に伝わるよう、文法を意識することが大事だと思います。
まずは、「主語」と「述語」のあるべき関係について考えてみましょう。
誤解やトラブルを招く書き方から卒業することができます。
●主語と述語の関係
●「ねじれ」現象その1
文の骨子をなしているのは「主語」と「述語」です。
主語と述語のつながりは文全体を貫く背骨のようなもので、途中で曲がったり、ねじれたりすると、筋の通らない文になってしまいます。
↑読んで意味は通じるけれど、どこか違和感がありませんか。
↑「私が」で始まった文の中で、いきなり別の人物が登場して主語を乗っ取っているからです。
「コンビニを襲ったのは、この人です」
と2つの文に分けることができるのですが、
それを無理矢理つなげているため、背骨の曲がった文になっています。
↑「私が」で始めた文は、最後まで「私」の側から書くべきだ、と私は考えます。
↑とする方法もあります。
述語「この人です」に正しく対応する主語は「襲った人物」です。
↑こう書き換えても良いでしょう。
↑「私が」で文が始まっていますが、主語となるのは「私が命令した人物」で、その述語は「この人です」になります。
●「ねじれ」現象その2
意味は通じるけれど、筋が通っていない。そんなねじれ方をすることもあります。
↑「言わせると」の一語があるために、主語「昔からいた人」と述語「話している」の対応関係が読み取りにくくなっています。
↑主語と述語を正しく対応させることで、意味内容の伝わりやすい文になります。
↑とすることもできます。
●「ねじれ」現象その3
文が長くなると、次のような「ねじれ」が生じやすいので要注意です。
↑おもてなしの心を感じるのは、この文章を書いている人ではなく、お客様でしょう。
↑主語と述語が正しく対応していないために、よく考えないと意味が通じない文になっています。
けれど、これではせっかくお茶をさしあげても、お忙しい中、わざわざ足を運んでくださったお客様にほっとくつろいでいただくおもてなしの心を感じていただけないでしょう。
↑一文が長かったので、二文に分け、「けれど」でつなぎました。
いずれの文も一貫して、話者を主体として語られているので読みやすく、わかりやすいと思います。
また、「お茶をお出しする」という表現が重複するので、「お茶をさしあげる」と書き換えました。
ついでに言うと──
という表現を
としても良いと思います。
さらに言うと──
「おもてなしの心」にかかる言葉が「くつろいでいただく」では据わりが悪いので、
もしくは
と書き換えると、しっくり馴染むともいます。
以上のことから、改良完成形は次のようになります。
けれど、これではせっかくお茶をさしあげても、お忙しい中、わざわざ足を運んでくださったお客様にほっとくつろいでいただこうというおもてなしの心が伝わらないでしょう。
●シンプル イズ ベスト
主語と述語を適切につなげるために一番の方法は、文をできるだけ短く区切ることです。
しかし、それでも主語と述語の「ねじれ」は起こります。
↑この文のどこに「ねじれ」があるか、わかりますか。
借金を返す人は、借りたお金を返すのであって、人に貸したお金を返すのではありません。
先の文は命令形なので、述語「返す」に対応する主語「あなた」が省略されています。
また、口語文であるため、「私が貸したお金」の「私が」が省略されています。
これで意味は通じるでしょうが、
私が貸したお金、返しなさいよ。
↑とすれば、より正確です。
●「ねじれ」現象その4
次に挙げる例文は、某ミステリー小説から拾ったものです。
さすがミステリーだけあって、謎に満ちています。
あなたは真相を読み解くことができるでしょうか。
じつは私、行方不明になる前に、その男を東京駅で見かけたことがあります。
<質問>
1.「私」
2.「その男」
3.誰か知らない人
(正解はおそらく、2)
1.「私」
2.あなた
3.この文章を書いた人
(正解はおそらく、1)
<ここが残念!>
●誰が行方不明になったのか、明示されていません。
●「自分が行方不明になる」という言い方は不自然ですから、「行方不明になったのは別の人」と読み手は見当をつけるでしょう。
しかし、誤読される可能性がゼロではありません。
「じつは私、しばらく行方をくらましていたのですが」と解釈することもできるのです。
その男が行方不明になる前のことですが、じつは私、東京駅で(彼を)見かけたことがあります。
<解説>
●主語(誰が)と述語(〜した)をできるだけ近づけて配置すると、主語と述語の関係を読み取りやすくなります。
●「彼を」という語を省略しても、誤解を招く恐れはまずないでしょう。
じつは私、その男が行方不明になる前に、東京駅で(彼を)見かけたことがあります。
<解説>
●主語「私」を文頭に置き、この主語に対応する述語「見かけた」を文末に置きました。
このように、主語と述語の位置が離れていても、文意は正確に伝わります。
●伝わる理由は、第2の人物である「その男」を第2の主語として、それに対応する第2の述語「行方不明になる」を直結させ、「誰と誰がそれぞれ何をしたか」を明快に示しているからです。
●文の背骨の「ねじれ」現象、さらにいろいろあります
【改善例】バレンタインチョコをあげたのは、隣のクラスの男子だった。
【改善例】ちょっとさみしそうな横顔が、私には素敵だった。
【改善例】彼は人づきあいが悪くて、損をしていた。
【改善例】子供時代の思い出がよみがえる。
【改善例】うちのクラスでは、学芸会の演し物はまだ決まっていない。
【改善例】うちのクラスは、学芸会の演し物をまだ決めていない。
【改善例】ある出来事が、私を大きく変えた。
【改善例】彼はプライドが傷ついた。
【改善例】彼はプライドを傷つけられた。
【改善例】自分で自分を守るのが一番だ。
【改善例】特技は、自分の欠点は棚に上げて人のあら探しをすることだ。
【改善例】成功する秘訣は、ポジティブ思考を心がけることです。
【改善例】目に浮かぶのは、豪邸に住んでいる自分の姿。
【改善例】「なぜダメなのか」と考えると、気力を奪われます。
【改善例】想像力を発揮しましょう。
【改善例】さすがプロの仕事ぶりは違うね。
【改善例】お客様と不倫関係にあった場合は解雇します。(解雇されます)
【改善例】物忘れが激しいことで有名な私です。
【改善例】ここでやめておかないと、取り返しがつかないことになる。
【改善例】なぜなら、人生には多くのストレスが降りかかってくるからです。
【改善例】仕事を辞めたいと言うと、代わりの人を見つけてこない限り辞めさせないと言われる。
【改善例】「どうすればいいか」と考えるようにすると、気持ちが未来に向かい、解決策を思いつきます。
【改善例】高級ブランド品が愛され続ける第一の理由は、その丁寧な手仕事で、そこに素材の良さが加わります。
【改善例】あのブランドのすごいところは、世界中のどこで買っても、絶対に値段が落ちていないという点です。
【改善例】「自分の考えを組み立てる力」「言語表現力」「相手のことを理解する力」、これらは人間にとって、さまざまな可能性を広げるための基礎的かつ総合的な能力です。
【改善例】私の知り合いの男性は、痛々しいほど恥ずかしがりやで、女性と話ができないのですが、彼自身そんな自分が嫌で、変えたいと思っていたようです。
【改善例】初対面では、お互いに相手がどんな人物なのかよくわかりません。そこでまずは名刺交換をして、その後の会話がスムーズに進むようにします。
●まとめの一言
文の「主語」と「述語」を意識して書くようにしましょう。
「主語」と「述語」を正しく対応させてください。
「主語」と「述語」のつなぎ方がねじれていると、筋が通らず、意図の伝わらない文になってしまいます。