文章力アップ

文章力/主語と述語の「ねじれ」に注意

投稿日:2017年5月14日 更新日:

「メールではうまく伝わらない」

「SNS投稿したら、思わぬ誤解をされた」

そんな経験はありませんか。

ちょっとした行き違いからトラブルが生じることもあるので、注意しないといけませんね。

メールやSNSなどでは比較的短い文章をやりとりすることが多いと思いますが、短い文章においても、意味が正確に伝わるよう、文法を意識することが大事だと思います。

まずは、「主語」と「述語」のあるべき関係について考えてみましょう。

誤解やトラブルを招く書き方から卒業することができます。

●主語と述語の関係

●「ねじれ」現象その1

文の骨子をなしているのは「主語」と「述語」です。

主語と述語のつながりは文全体を貫く背骨のようなもので、途中で曲がったり、ねじれたりすると、筋の通らない文になってしまいます。

私が命令してコンビニを襲ったのは、この人です。

↑読んで意味は通じるけれど、どこか違和感がありませんか。

↑「私が」で始まった文の中で、いきなり別の人物が登場して主語を乗っ取っているからです。

「私が命令しました」

「コンビニを襲ったのは、この人です」

と2つの文に分けることができるのですが、
それを無理矢理つなげているため、背骨の曲がった文になっています。

私がこの人に命令して、コンビニを襲わせました。

↑「私が」で始めた文は、最後まで「私」の側から書くべきだ、と私は考えます。

私の命令でコンビニを襲ったのは、この人です。

↑とする方法もあります。

述語「この人です」に正しく対応する主語は「襲った人物」です。

私がコンビニを襲えと命令したのは、この人です。

↑こう書き換えても良いでしょう。

↑「私が」で文が始まっていますが、主語となるのは「私が命令した人物」で、その述語は「この人です」になります。

●「ねじれ」現象その2

意味は通じるけれど、筋が通っていない。そんなねじれ方をすることもあります。

昔からいた人に言わせると、東京の下町もだいぶ変わってしまったと話している。

↑「言わせると」の一語があるために、主語「昔からいた人」と述語「話している」の対応関係が読み取りにくくなっています。

昔からいた人に言わせると、東京の下町もだいぶ変わってしまったということだ。

↑主語と述語を正しく対応させることで、意味内容の伝わりやすい文になります。

昔からいた人は、東京の下町もだいぶ変わってしまったと話している。

↑とすることもできます。

●「ねじれ」現象その3

文が長くなると、次のような「ねじれ」が生じやすいので要注意です。

うちの会社では、ご来社になったお客様にペットボトルのお茶をお出しすることになっていますが、これではせっかくお茶をお出ししても、お忙しい中、わざわざ足を運んでくださったお客様にほっとくつろいでいただくおもてなしの心が感じられません。

↑おもてなしの心を感じるのは、この文章を書いている人ではなく、お客様でしょう。

↑主語と述語が正しく対応していないために、よく考えないと意味が通じない文になっています。

うちの会社では、ご来社になったお客様にペットボトルのお茶をお出しすることになっています。
けれど、これではせっかくお茶をさしあげても、お忙しい中、わざわざ足を運んでくださったお客様にほっとくつろいでいただくおもてなしの心を感じていただけないでしょう。

↑一文が長かったので、二文に分け、「けれど」でつなぎました。

いずれの文も一貫して、話者を主体として語られているので読みやすく、わかりやすいと思います。

また、「お茶をお出しする」という表現が重複するので、「お茶をさしあげる」と書き換えました。

ついでに言うと──

「おもてなしの心を感じていただけないでしょう」

という表現を

「おもてなしの心が伝わらないでしょう」

としても良いと思います。

さらに言うと──
「おもてなしの心」にかかる言葉が「くつろいでいただく」では据わりが悪いので、

「くつろいでいただけるような」

もしくは

「くつろいでいただこうという」

と書き換えると、しっくり馴染むともいます。

以上のことから、改良完成形は次のようになります。

うちの会社では、ご来社になったお客様にペットボトルのお茶をお出しすることになっています。

けれど、これではせっかくお茶をさしあげても、お忙しい中、わざわざ足を運んでくださったお客様にほっとくつろいでいただこうというおもてなしの心が伝わらないでしょう。

●シンプル イズ ベスト

主語と述語を適切につなげるために一番の方法は、文をできるだけ短く区切ることです。

しかし、それでも主語と述語の「ねじれ」は起こります。

貸したお金、返しなさいよ。

↑この文のどこに「ねじれ」があるか、わかりますか。

借金を返す人は、借りたお金を返すのであって、人に貸したお金を返すのではありません。

先の文は命令形なので、述語「返す」に対応する主語「あなた」が省略されています。

また、口語文であるため、「私が貸したお金」の「私が」が省略されています。

貸したお金、返しなさいよ。

これで意味は通じるでしょうが、

あなた、借りたお金、返しなさいよ。

私が貸したお金、返しなさいよ。

↑とすれば、より正確です。

●「ねじれ」現象その4

次に挙げる例文は、某ミステリー小説から拾ったものです。

さすがミステリーだけあって、謎に満ちています。

あなたは真相を読み解くことができるでしょうか。

【例文】

じつは私、行方不明になる前に、その男を東京駅で見かけたことがあります。

<質問>

・行方不明になったのは誰ですか?

1.「私」
2.「その男」
3.誰か知らない人

(正解はおそらく、2)

・「その男」を東京駅で見かけたのは誰ですか?

1.「私」
2.あなた
3.この文章を書いた人

(正解はおそらく、1)

<ここが残念!>

●誰が行方不明になったのか、明示されていません。

●「自分が行方不明になる」という言い方は不自然ですから、「行方不明になったのは別の人」と読み手は見当をつけるでしょう。

しかし、誤読される可能性がゼロではありません。

「じつは私、しばらく行方をくらましていたのですが」と解釈することもできるのです。

【改善例1】

その男が行方不明になる前のことですが、じつは私、東京駅で(彼を)見かけたことがあります。

<解説>

●主語(誰が)と述語(〜した)をできるだけ近づけて配置すると、主語と述語の関係を読み取りやすくなります。

●「彼を」という語を省略しても、誤解を招く恐れはまずないでしょう。

【改善例2】

じつは私、その男が行方不明になる前に、東京駅で(彼を)見かけたことがあります。

<解説>

●主語「私」を文頭に置き、この主語に対応する述語「見かけた」を文末に置きました。

このように、主語と述語の位置が離れていても、文意は正確に伝わります。

●伝わる理由は、第2の人物である「その男」を第2の主語として、それに対応する第2の述語「行方不明になる」を直結させ、「誰と誰がそれぞれ何をしたか」を明快に示しているからです。

●文の背骨の「ねじれ」現象、さらにいろいろあります

【例 文】バレンタインチョコは、隣のクラスの男子だった。

【改善例】バレンタインチョコをあげたのは、隣のクラスの男子だった。

【例 文】ちょっとさみしそうな横顔が、私は素敵だった。

【改善例】ちょっとさみしそうな横顔が、私には素敵だった。

【例 文】彼は人づきあいが悪くて、損させていた。

【改善例】彼は人づきあいが悪くて、損をしていた。

【例 文】子供時代の思い出がよみがえらせる。

【改善例】子供時代の思い出がよみがえる。

【例 文】うちのクラスは、学芸会の演し物はまだ決まっていない。

【改善例】うちのクラスでは、学芸会の演し物はまだ決まっていない。

【改善例】うちのクラスは、学芸会の演し物をまだ決めていない。

【例 文】ある出来事が、私的に大きく変わった。

【改善例】ある出来事が、私を大きく変えた。

【例 文】彼はプライドに傷つけた。

【改善例】彼はプライドが傷ついた。

【改善例】彼はプライドを傷つけられた。

【例 文】自分で自分が守られるのが一番だ。

【改善例】自分で自分を守るのが一番だ。

【例 文】特技は、自分の欠点は棚に上げて人のあら探しをする。

【改善例】特技は、自分の欠点は棚に上げて人のあら探しをすることだ。

【例 文】成功はポジティブ思考を心がけることです。

【改善例】成功する秘訣は、ポジティブ思考を心がけることです。

【例 文】目に浮かぶのは、豪邸に住んでみたいということ。

【改善例】目に浮かぶのは、豪邸に住んでいる自分の姿。

【例 文】「なぜダメなのか」は、気力を奪います。

【改善例】「なぜダメなのか」と考えると、気力を奪われます。

【例 文】想像力を発揮させましょう。

【改善例】想像力を発揮しましょう。

【例 文】さすがプロとしての仕事ぶりは違うね。

【改善例】さすがプロの仕事ぶりは違うね。

【例 文】お客様との不倫は解雇です。

【改善例】お客様と不倫関係にあった場合は解雇します。(解雇されます)

【例 文】物忘れが激しくて有名な私です。

【改善例】物忘れが激しいことで有名な私です。

【例 文】ここでやめておかないと、取り返しがつかない。

【改善例】ここでやめておかないと、取り返しがつかないことになる。

【例 文】なぜなら人生には、多くのストレスが降りかかってきます。

【改善例】なぜなら、人生には多くのストレスが降りかかってくるからです。

【例 文】仕事を辞めたいと言うと、代わりの人を見つけてこないと辞められない。

【改善例】仕事を辞めたいと言うと、代わりの人を見つけてこない限り辞めさせないと言われる。

【例 文】「どうすればいいか」は、解決策と気持ちは未来に向かいます。

【改善例】「どうすればいいか」と考えるようにすると、気持ちが未来に向かい、解決策を思いつきます。

【例 文】高級ブランド品が愛され続ける理由の一つには、その丁寧な手仕事と素材の良さにあります。

【改善例】高級ブランド品が愛され続ける第一の理由は、その丁寧な手仕事で、そこに素材の良さが加わります。

【例 文】あのブランドのすごいところは、世界中のどこで買っても、絶対に値段が落ちないという点です。

【改善例】あのブランドのすごいところは、世界中のどこで買っても、絶対に値段が落ちていないという点です。

【例 文】「自分の考えを組み立てる力」「言語表現力」「相手のことを理解する力」、これらは人間として、さまざまな可能性を広げてくれる基礎的、総合的な能力です。

【改善例】「自分の考えを組み立てる力」「言語表現力」「相手のことを理解する力」、これらは人間にとって、さまざまな可能性を広げるための基礎的かつ総合的な能力です。

【例 文】私の知り合いの男性は、彼は痛々しいほど恥ずかしがりやで、女性と話ができない、そんな彼自身が嫌で自分を変えたいと思いました。

【改善例】私の知り合いの男性は、痛々しいほど恥ずかしがりやで、女性と話ができないのですが、彼自身そんな自分が嫌で、変えたいと思っていたようです。

【例 文】初対面では、私はどんな人物なのか相手もお互いによくわかりません。そこで名刺交換と、その後の会話をスムーズに進めやすくします。

【改善例】初対面では、お互いに相手がどんな人物なのかよくわかりません。そこでまずは名刺交換をして、その後の会話がスムーズに進むようにします。

●まとめの一言


文の「主語」と「述語」を意識して書くようにしましょう。

「主語」と「述語」を正しく対応させてください。

「主語」と「述語」のつなぎ方がねじれていると、筋が通らず、意図の伝わらない文になってしまいます。

関連記事→文章力/「主語」と「述語」の取り扱い

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