「て・に・を・は」という、わずか一文字の助詞が、文全体を支配することがあります。
助詞はそれほど重要な存在であるにもかかわらず、しかもたった一文字か二文字であるにもかかわらず、いとも安易に省略されてしまうことがよくあります。
ためしに、助詞「を」を省略するとどうなるか、例を挙げて見てみましょう。
「コーヒーを飲みたい」というよりも、「コーヒー飲みたい」というほうが、カジュアルで親しみやすい言い方・書き方になる。というのは、皆さんよくご存じのことですよね。
でも、きちんとした印象を残したいなら、助詞を省略しないほうがよい場合もあるのです。
【例文】
「もう恋なんかしない。男に懲りた」など心にもないことを言っているうち、年とって、誰にも相手にされない女になっちゃいそう。できればもっと自分に素直になりたいよ。
本当は、若いイケメン新入社員の彼とすれ違うたび、胸がドキドキするんだもん。
【改善例】
「もう恋なんかしない。男に
は懲りた」など
と心にもないことを言っているうち
に、年
をとって、誰にも相手にされない女になっちゃいそう。できればもっと自分に素直になりたいよ。
本当は、若いイケメン新入社員の彼とすれ違うたびに、胸がドキドキするんだもん。
●できれば助詞を省略しないほうが良い、という例
【例 文】私はあなたのように大胆になれない。
【改善例】私はあなたのようには大胆になれない。
【例 文】パーティを開こうと突然言われても、急に支度できません。
【改善例】パーティを開こうと突然言われても、急には支度できません。
【例 文】来たことない、豪華なホテルだわ。
【改善例】来たことのない、豪華なホテルだわ。
【例 文】あいつは酒癖も女癖も悪くて、周囲からつまはじきされていた。
【改善例】あいつは酒癖も女癖も悪くて、周囲からつまはじきにされていた。
【例 文】ふたりの愛だけで一生やっていけない。
【改善例】ふたりの愛だけでは一生はやっていけない。
【例 文】お金だけでも一生やっていけない。
【改善例】お金だけでも、一生はやっていけない。
●助詞や接続詞を適切に使おうね、という例
【例 文】そんな人だって思わなかった。
【改善例】そんな人だとは思わなかった。
【例 文】今月分の家賃は、来月末までに待ってもらおう。
【改善例】今月分の家賃は、来月末まで待ってもらおう。
【例 文】今月分の家賃は、来月15日まで持っていきます。
【改善例】今月分の家賃は、来月15日までに持っていきます。
【例 文】15日まで、利息は1,000円です。
【改善例】15日までで、利息は1,000円です。
【例 文】すぐ持って行ったところ、利息を1,500円とられた。
【改善例】すぐに持って行った。ところが、利息を1,500円とられた。
【例 文】うちの母は、いまだにパソコンをいじったことがない。
【改善例】うちの母は、いまだパソコンをいじったことがない。
【例 文】うちは、いまだ電子レンジを持っていません。
【改善例】うちは、いまだに電子レンジを持っていません。

●では、ここでクイズです。
【例文】私は、平日にジョギングをしません。
<質問>
・平日でなければ、ジョギングをするのでしょうか?
1.する
2.しない
3.どちらともいえない
(正解はおそらく、3)

【例文】私は、平日はジョギングはしません。
<質問>
・平日も、ジョギング以外の運動ならするのでしょうか?
1.する
2.しない
3.どちらともいえない
(正解はおそらく、3)

【例文】私は、平日にはジョギングもしません。
<質問>
・平日にはジョギングをはじめとして運動は一切しない、ということでしょうか?
1.そのとおり
2.そうではない
3.どちらともいえない
(正解はおそらく、1)
休日は別として、平日はまったく運動をしないということならば──
【改善例1】私は、平日にはジョギングや運動の類いはしません。
【改善例2】私は、平日の運動は一切いたしません。
↑というようにすれば、言わんとしていることが確実に伝わります。