という場合は、文法など無視して、自分の思いどおりに書いて良いと思います。
ただ、その場合も、相手に対する配慮を忘れると、気楽な雰囲気を通り越し、ぶしつけでぶっきらぼうな印象になってしまいがちなので要注意です。
また、読む人を侮辱するような失礼な文になってしまうおそれもあります。
●敬語を正しく使うと、文章の格が上がる
これ、私の大のお気に入り。
あなただってきっと気に入ると思う。
ひとつあげるから。いいよね?
どう?
これ、私はとても気に入っています。
あなたもきっとお気に召すと思い、ひとつ差し上げたいのですが、いかがでしょうか。
●まずは丁寧語をマスターしよう
敬語は「丁寧語・尊敬語・謙譲語」の3種類に大別されます。
この3種類のうち、丁寧語は使い方が比較的簡単です。
【丁寧語】おはようございます。今日はいいお天気ですね。
【丁寧語】アクセスを頂戴しました○○社の者です。
【丁寧語】お仕事のご依頼を賜り、誠にありがとうございます。
【丁寧語】御社に最適と思われるプランをご提案申し上げます。
うちの会社の取引先である会社の社長に呼ばれて急に俺が行くことになったのですが、待ってると言ってたはずの社長が留守でいなかったのですよ。
【丁寧語】
弊社がいつもお世話になっております会社の社長様から面談のご要望を承り、さっそく私がお伺いしたのですが、残念ながら社長様はご不在でした。
(「拝借」「頂戴」「者」「賜り」「申し上げます」「弊社」「おります」「承る」「お伺い」は謙譲語)
↑<解説>
・語頭に「お」や「ご」をつけ、文末を「です・ます」にして丁寧な表現にすることで、相手への配慮を示すことができます。
・丁寧語は耳によく馴染んだ表現なので、話すときも書くときも間違えることはほとんどないでしょう。(お依頼、ご弊社、ごアクセスなんていう、とんでもない間違いもあり得る時代ですが)
・「~です」「~ます」といった丁寧語を使わずに、だ・である文体で書くのは読者に対して無礼かというと、そんなことはありません。
無礼にあたるのは、敬語の使用法を誤ることです。
それはお読みいただく方に大変に失礼なことで、書き手の見識を疑われてしまいます。
●失敗しやすいのは、尊敬語と謙譲語
語頭に「お」「ご」を付けて丁寧に言い換えることにより、相手に対する敬意を示すことができます。
これを「尊敬語」と言います。
尊敬語には、「いらっしゃる」「ご覧になる」「召し上がる」など、独特の言い回しがあります。
「お召し上がりになられる」「お見えになられる」のように、
とされています。
「お見えになる」
とするのが適切です。
敬語は、相手に気分よく話をしてもらう(読んでもらう)ための高度な技術です。
コミュニケーション環境を整えることを目的として、長い年月をかけて編み出された必殺テクであるともいえます。
必殺テクだけあって、その使用法は複雑です。
なかでも殊に複雑なのは、自分や身内に尊敬語を用いることは、相手に対して無礼にあたるので、尊敬語ではなく謙譲語を用いるべきだとされている点です。
適切な使用例、不適切な使用例を以下に挙げます。
よく見比べてください。
【改善例】こんにちは。お久しぶりでございます。
【改善例】遠方までお運びいただきまして恐縮に存じます。
【改善例】会社へは、このあといらっしゃるのですか。
【改善例】お忙しいご様子ですね。
【改善例】ご遠慮なさらずに、どうぞおあがりください。
【改善例】どちらでもお好きなところにおかけになってください。
【改善例】お楽になさってくださいね。
【改善例】粗茶ですが。
【改善例】お菓子など、いかがですか。どうぞ召し上がってくださいませ。
【改善例】只今、母がまいります。
【改善例】あいにくなことですが、姉は出かけております。
【改善例】お義兄様がおいでになることは姉も承知しておりますので、いらしたら少しだけお待ちいただきたいと申しておりました。
【改善例】母も、何かご相談したいことがあるようです。
【改善例1】どのようなお話か、私は存じません。
【改善例2】どのようなお話か、私は存じ上げません。
【改善例3】どのようなお話か、私は存じておりません。
【改善例】詳しいことは、母と姉にお尋ねくださいませ。
【改善例】ご理解いただきにくいかもしれませんが。
【改善例】正直に申し上げて、事がここまでこじれてしまいますと、本当に残念なことですが、おふたりの離婚もやむなし、というのが私の認識でございます。
【改善例】私もこちらでご一緒にお待ちいたします。
【改善例】テレビでもご覧になりますか。
【改善例】お義兄様、もうお帰りですか。
【改善例】タクシーをお呼びいたしましょうか。
【改善例】せっかくお越しいただきましたのに、すみません。
●まとめの一言
会話においても、文章においても、礼儀正しく、大人の品格を感じさせる素敵な表現をしたいものです。
敬語を適切に用いることにより、会話や文章の格が上がり、それを発した人の格も上がります。