文章エステ

文章エステ/礼儀正しい文は人に好かれます

投稿日:2017年5月26日 更新日:

日本語の文章は、最後まで読まないと、文全体の意味を捉えにくい構造になっています。
文の最後に述部が配置されている場合が多いからです。

です
ます

である
ではありません
ではない
でしょう
だろう
かもしれません
かもしれない
しましょう
しよう
してください
してくれ
しないでください
するな

など、文末にきてやっと、書き手の意図(メッセージ)が伝わります。

ですから、文末はとても重要な役割を担っています。

また、文末をどう書くかによって、文のスタイル(文体)が決定づけられます。

●文のスタイルを決定するのは「文末」

日本語の文章には、大きく分けて次の2種類の文体があります。

敬体/です・ます文体

常体/だ・である文体

文の終りを「です・ます」で締めくくると、礼儀正しく丁寧な印象になります。
だから、敬体というのですね。

そのいっぽうで、敬体は情緒に流されやすい傾向があるため、論理的な文章を書くにはふさわしくないと、一般に考えられています。

そのため、論理的な文章にふさわしいのは常体であるとされています。

↑文末が「だ・である・のである」と断定的であるため、述べていることの原因・理由・根拠などを力説する効果が望めるのです。

実際に、批評や評論、論文などは、その大多数が「だ・である」文体で書かれています。
情緒よりも理性や論理を重んじるからでしょう。

●「です・ます」文体で論理的な文を書くことは可能

しかし、「です・ます」は情緒的、「だ・である」は論理的、と決めつけることはできません。

「です・ます」文体を用いて論理的な文を書くことは可能です。

敬体(です・ます文体)、常体(だ・である文体)のいずれであっても、情緒豊かでかつ理性的な文章にすることはできるはずです。
それは文体の問題ではないのです。
きちんと考えを組み立て、筋道を立てて論を展開しているか否かの問題です。

ただ、「です・ます文体は文章法としての歴史が浅く、まだ完成されていない」とされている点が、弱点といえば弱点です。

たとえば、「あなたは美しい」という文を、「あなたは美しいです」と、です・ます文にすると、どことなく違和感があるのです。

●「です・ます」「だ・である」の使い分け

一連の文章の中で、敬体と常体を混合して使うことが可能です。

たとえば、基本は「です・ます」文体とし、時に「だ・である」を使って、その部分を強調することができます。

【例文】

小学校時代は、作文、読書感想文、夏休みの絵日記にも苦労させられました。

書きたいことなど何も思い浮かばないので、親や先生が喜びそうなフレーズをちりばめ、適当に仕上げていたように思います。

そのように、書くことは苦手な私でしたが、子供の頃から本好きで、いつも手許に本がありました。

本がありさえすれば、テレビなどなくていい。

面白いものなら一晩中読んで飽きない。

本は一番の友達である。

というのが私の実感です。

↑<解説>

・「です・ます」文体に、「だ・である」文体を織り交ぜるのは良いのですが、これを頻繁に行なうと、高飛車な印象になってしまうので、控えめにしておくのが良いでしょう。

【例文】

小学校時代は、作文、読書感想文、夏休みの絵日記にも苦労させられたものである。

書きたいことなど何も思い浮かばないので、親や先生が喜びそうなフレーズをちりばめ、適当に仕上げていたように思うのである。

そのように、書くことは苦手な私であったが、子供の頃から本好きであり、いつも手許に本があったのである。

本がありさえすれば、テレビなどなくていいのである。

面白いものなら一晩中読んで飽きないのである。

本は一番の友達である。

というのが私の実感である。

↑<ここが残念!>

・「だ・である」文体の文に「である」を多用すると、とんでもなく高圧的な筆致になり、文全体ががなりたてているような印象を与えてしまいます。

【改善例】

小学校時代は、作文、読書感想文、夏休みの絵日記にも苦労させられた。

書きたいことなど何も思い浮かばないので、親や先生が喜びそうなフレーズをちりばめ、適当に仕上げていたように思う。

そのように、書くことは苦手な私だったが、子供の頃から本好きで、いつも手許に本があった。

本がありさえすれば、テレビなどなくていい。

面白いものなら一晩中読んで飽きない。

本は一番の友達である。

というのが私の実感だ。

↑<解説>

・特に強調したい箇所に、「である」を使うと効果的です。
(この改善例では、「本は一番の友達である」という1箇所にのみ、「である」を用いました。)

<補足>

・「のだ・のです・のである」を用いる第一の理由は、前の文を受けて説明を加えるためです。
それには、前の文と内容が密接につながっている必要があります。
つまり、「なぜならば」から始める文章であっておかしくない場合に、その文末を「のだ・のです・のである」とすると良い、ということですね。

●まとめの一言


言葉のマナーとして覚えておきたいことを、いくつかご紹介しました。

・文のスタイルを決定するのは「文末」

・文の終りを「です・ます」で締めくくると、礼儀正しく丁寧な印象になる

・ただし、何にでも「です」をつければ丁寧表現になるというわけではなく、むしろ荒っぽい印象になってしまう

この3点はとても重要だと思います。
この機会にぜひ頭にインプットしてください。

関連記事→文章エステ・「美しいです」ではなく「きれいです」が正しい

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