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読書感想文/暗くても明るい、ディープな本たち

投稿日:2018年2月14日 更新日:

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「この本を読んで、こんなことを考えた」

と、思いつくまま書き出していくと、それも読書習慣の一部となります。

どんな本を読み、どこに感動したのか。それを記録に残すことにより、貴重な思い出のストックができます。

わずか数行のメモであっても、あるとないとでは大きく違います。

私の経験からいって、それは写真アルバムにも匹敵する「幸せの思い出貯蔵庫」です。

そんな貯蔵庫の中から、いくつかご紹介したいと思います。
ご笑覧いただけますなら幸いです。

●『掏摸』中村文則著


マズローの欲望5段階説によると、最も低次の欲望としてまず生理的欲求があり、それが満たされると次いで安全欲求、社会的欲求、尊厳欲求、自己実現欲求、と次第に高次元の欲望へ向かっていくのが人間として自然であるとのことです。

生理的欲求
安全への欲求
社会的欲求
尊厳への欲求
自己実現の欲求

と段階を経て、次第に高次元の欲求を抱くようになっていく、ということですね。

現在の日本は平和で安全で食糧も有り余るほどあるというのに、社会の底辺には、基本的な生理欲求を満たすことすら困難な人々が少なからずいるというのが現実でしょうか。

本書で中村文則が描く風俗嬢や育児放棄の母親など、その言動から伝わってくるのは、

生理的欲求を満たそうとして目先の利益を追うことが習い性になり、精神の動きを止めてしまう人々がいる。

ということです。

その一方で、本作品の主人公である掏摸(スリ)の男や犯罪組織に関わる男たちは、生理的欲求や安全欲求を満たすことを通り越し、社会的欲求(特に承認欲求)に取りつかれているように感じます。

いずれにせよ、病んでいますね。

個々も病んでいるし、社会も病んでいる。

そんな世界観の小説だと思います。

本物のスリが小説を書いたとしたらどんな作品になるだろう。
泥棒ジュネはあっけらかんとして、けっこう洒落たこと書いていたようだなあ。

なんてことを考えながら読了しました。

●『「闇学」入門』中野純著


著書ご自身がナイトハイカーで、「闇歩きガイド」「体験作家」と名乗っています。
ユニークですね。

そして本書では、こう語っています。

「夜に野山を歩くと、暗闇の中でも次第に目が利くようになる、五感が冴える、闇と一体になって無我の境地、空を仰げば宇宙に溶けこむ感覚、と面白いことがいっぱいある」
「電気がなかった時代、江戸庶民は蝋燭を灯して徹夜で遊ぶことが何よりの贅沢だった、夜を徹して富士山に登ることも流行した」

という話も私にはとても興味深く、そしてまた、

「深夜も明るい都会の生活は、知らず知らずにストレスになっている」

と著者が言うのもわかる気がします。

中国もどんどん明るくなっているようですが、20年ほど前に私が訪れたときは、路地に闇が漂っていて、いい感じでした。

ですから当然、

「古来日本人は闇夜のほのかな月光を愛で、蛍狩り、虫聴きといった闇のレジャーを楽しんできたのであり、谷崎潤一郎の陰翳礼讚を理解せずに日本人やっていけないだろう」

と本書で述べられている点にも納得です。

日本の夜は明るすぎる、というか闇が駆逐されているため、平面的ですね。

夜道を街灯が煌々と照らす。
コンビニや自販機の灯りもある。
安全そうで安心。便利。
だけど資源も金も浪費したくない。

ということから、節電を兼ねて闇を愛好する人々が増えていくのでは?と思うのです。

意識的に暗闇を作りだし、いろいろなことを試してみると面白いでしょうね。

闇飲み。
闇入浴。
闇セックス。

など、いつもと同じ行為であっても、真っ暗闇で行うというだけで、味わいが違って感じられるそうです。

●『ゲイ・マネーが英国経済を支える!?』入江敦彦著

「英国経済復興とゲイの権利拡張は正比例の関係にあり、ゲイパワーが国を支えるどころか動かしている、ゲイに気に入ってもらえない企業はやっていけない」

と本書は述べています。
面白いですね。

その背景として語られていることをもう少し紹介すると──

イギリスでは同性婚が認められていて、ゲイカップルも男女の夫婦と同じ権利と義務を有するそうです。

違うのは、子供(養子)がいないゲイカップルが多数派で、自分の楽しみや贅沢に金を惜しまず遣うことだそうです。

消防や警察にもゲイグループがあり、年恒例のゲイパレードに参加するというのですから、日本とはだいぶ様子が違いますね。

日本ではテレビにオネエキャラの女っぽい男性がよく登場しますが、男っぽいゲイもいるはずですよね?
いないの?
そういう方々にもどんどん表舞台に登場してほしいと願っています。

●『秘密の京都』入江敦彦著


前項で紹介した『ゲイ・マネーが英国経済を支える!?』の著者入江敦彦氏は現在英国在住だそうですが、その本領は、生地京都の都市論です。

入江氏の京都もの著作は多数あり、私のイチオシは、本書『秘密の京都』です。

その京都案内がいかに素晴らしいかというと──

「京都という都市は貧も福も鬼も蛇も、もちろん美だってテンコモリ」
「点と点を結んで京の相を窺うには、京都時間で歩くというテクニックが必要」

というように、観光ガイドの裏をかくディープな都市論が展開されているのです。

読み進むにつれ、千年の古都に息づく美意識と、都市としてのサバイバル力が立体的に浮かび上がります。

●まとめ

今回は、以下の4冊をご紹介しました。

『スリ』中村文則著

『「闇学」入門』中野純著

『ゲイ・マネーが英国経済を支える!?』入江敦彦著

『秘密の京都』入江敦彦著

関連記事→おすすめの「文章術本」139冊

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