図書館のリサイクルコーナーにあった本を、母に読ませるために持ち帰りました。
『シルバー川柳』という本で、今年88歳の母にちょうどよいと思ったのです。
狙いは的中し、母はクスクス笑いながらページを繰っていました。
「おかんもシルバー川柳つくってみなよ」
と勧めたら、あっという間に4句できました。
●長生きはしたくないね と飲むビタミン
●探しもの 探し疲れた 手の中に
●またやった と嘆く さみしい ひとりごと
●老後にと 貯えかぞえる 今老後
↑母の日常そのままです。
それを母はただ思いつくまま書いたようなので、私は推敲ということを教えましたよ~!
よりよい川柳にするために手を加えることを、私も母と一緒になってやってみたのです。
母の作はまだまだ精進が必要ですが、皆様に見ていただくことで今後の励みになればと思い、いくつか記しました。
これからも母が続々とひねってくれますように。
そして、老いのつらさ、悲しさ、さみしさなど、いろいろあっても、すべて笑い飛ばしてほしい。
私はそう願っています。
『シルバー川柳 ベストセレクション』
『シルバー川柳』という本はシリーズ化されて、関連書を含めると、2019年現在10冊以上出ています。
社団法人全国有料老人ホーム協会が主催した「シルバー川柳」投稿コンテストの入選作が本になったのですね。
そして、その第1巻は発売後、たちまち27万部突破のベストセラーとなったそうです。(2013年時点)
27万部とは、すごいですね、
これだけ売れたのもよくわかります。
だって、本当にいい作がたくさんあるからです。
シルバーの皆さんとてもお上手で、ユーモアの年輪を感じさせます。
皮肉と諧謔が身上の川柳ですから、「おもしろうて やがてかなしき」ですね。
それこそ「もののあはれ」です。素晴らしいことだと思います!
『シルバー川柳1・2』の中から、母と私が特に笑った句を9つ、ここに引用させてください。
●振り返り 犬が気遣う 散歩道
●飲み代が 酒から薬に かわる年
●できました 老人会の 青年部
●老の恋 惚れる惚けるも 同じ文字
●妖精と呼ばれた妻が 妖怪に
●注目を 一身に受け 餅食べる
●杖持つと 真似したくなる 座頭市
●オレオレの 詐欺もお手上げ 遠い耳
●厚化粧 笑う亭主は薄毛症
『神坐す山の物語』浅田次郎著
狐憑き、天狗、神隠し、先祖霊など、作家の浅田次郎氏が幼い頃から何度となく耳にした怖いお話。──それは氏の一族に代々伝承される「体験談」で、そうした「実話」を基に、脚色はほんの少し色づけ程度におさえた怪異物語集、それがこの『神坐す山の物語』です。
浅田氏の母方の曾祖父は、験力の強い神官だったんですね。
浅田氏自身も、ちょっとだけ「見える」そうです。
そして、氏語るところの「八百万の神が遍満せる御嶽山」の頂に、江戸時代から続く広大な宿坊があり、それがこの物語の舞台なのだそうです。
その宿坊は今も「山香荘」という名で営まれているとのこと。
いつか行ってみたいような、みたくないような、微妙な感じですが、この本は間違いなく、読んでよかった!です。
たしかな文章で、漢字の使い方もニクいほど的確です。
浅田次郎は「読ませる」作家だと思います。
尊敬しちゃう!
神のお力添えもあるのかしらん?
巻末に、「ロングインタビュー『物語の生まれる場所』」が掲載されています。
インタビューの聞き手を務めた編集者さんも、そうとう力はいってますね。
この一連の話の舞台背景をさらに詳しく、ご自身の言葉で説明なさっています。
「作家 浅田次郎が小説で描く御嶽山の世界観に浸る会」なんていう素敵なツアーも、その編集者さんが企画なさったようですよ。
それにしても、「見える」方って、けっこういらっしゃるんですね。
私の知り合いにも何人かいます。
知り合いの知り合いにまで広げると、さらにその数が増えます。
神社やお寺さんでは、本当に不思議なことが起こるみたいです。
ある方は、見た後には必ず、「かしこみ、かしこみ」と祝詞を唱えるそうです。
「かしこみ」は「畏み畏み」と書くのですね。
畏れ多いものを敬う言葉です。
文藝春秋社の創業者であり、芥川賞・直木賞の設立者でもあった菊池寛氏も、よく「かしこみ、かしこみ」と口にしていらしたようです。
私も文芸の神様に敬意を表し、原稿を書く前に「かしこみ、かしこみ」と唱えるようにしようかな。
●まとめ
今回は、以下の2冊をご紹介しました。
●『シルバー川柳 ベストセレクション』
●『神坐す山の物語』浅田次郎著