ビジネスマナー

新年度・人事異動期のビジネスマナー、要注意の漢字(その1)

投稿日:2017年4月11日 更新日:

新社会人にとって最初の難関は、学生時代とはまったく違う世界の言葉(ビジネス語・業界語)になじむこと。

といえるかもしれません。

アカウンタビリティー
アサイン
アテンド
イニシアチブ
インバウンド

など、ビジネスシーンでよく使われる専門用語がたくさんあります。

そのほとんどは、英語圏からの外来語ですね。

ですから、「俺、英語は得意なんだ」という人は、それだけで有利です。

ただ、いくら英語や外来語に強くても、日本語を適切に読み書きできないようでは困ります。

「適宜」を「てきせん」と言ったり、「暫時」を「ぜんじ」と読んだりすれば、人に笑われます。

そういう難しい言葉は上司や先輩を見習って、現場で実戦的に覚えるのが一番。

なんて悠長なことは言っていられません。

上司や先輩が漢字の読み間違いをすることもザラにあるのです。

どんな漢字がよく使われるかは職場により異なりますが、ぜひこれだけは覚えておきたいというものを予習しておくとよいですね。

●新年度・人事異動の季節に飛び交う読み間違い

●更迭(こうてつ)


人事異動の時期になると、

「栄転」「左遷」

「更迭」

なんていう、難しい言葉が飛び交うことになります。

「えいてん」「させん」まではちゃんと言えるけれど、更迭のことを「こうそう」なんて言っていると、「こいつもこの程度か」と思われかねないので要注意です。

更迭と左遷はよく似ていますが、左遷の場合は「低い地位におとすこと」で、

「これまでは本店の係長だったが、閑な支店に左遷された」

というように遣います。

「更迭」は「こうてつ」と読み、重要な地位に就いている人が役職を解かれ、別の人間が充てられることを指します。
大臣をはじめとして、政府機関や政党の要職者、スポーツチーム監督などの民間の要職者について用いられる言葉です。

よって、一介の課長や係長が「俺、更迭されちゃったよ」なんて言うのは大げさというか、身の程知らずというものです。

●進捗(しんちょく)

「例の仕事、進歩状況を報告してくれ」

と部長に言われたとしましょう。

進歩? もしかすると、進捗の具合を知らせろということ?
ならば部長、「しんちょく」と言ってもらわないと通じません、よね?

●発足(ほっそく)

会社、組織、機構、プロジェクトチームなどが設立されて活動を開始することを「発足」(ほっそく)と言います。
「はっそく」と言う人もいて、たいていの辞書にこの読みが掲載されるようになりました。

しかし、

厳密には「ほっそく」が正しい。

と断固主張している専門家もいます。

●踏襲(とうしゅう)

「今年も前年のやり方を踏襲してくれ」

という言い回しは、会社などではお馴染みのものです。
たまに、ちゃんと言えない上司もいます。
「ふしゅう」なんて言ったりして。

部長、それは「とうしゅう」と読むのです。

●年俸(ねんぽう)

「ねんぽう」と読みます。
意味は、皆さんご存じのとおり、年収のことです。

木偏の「棒」ではなく、人偏の「俸」と書きます。

「年棒」と書いたり、「ねんぼう」と読んだりすると、「この人は教養がない。将来ろくな給料もらえそうにない」と値踏みされてしまうので要注意。

●粗利益(あらりえき)


「そりえき」と言う人も多いのですが、正しくは「あらりえき」です。

●脳裏(のうり)

「アイデアが脳裏にひらめく」「初めてキスしたときの場面が脳裏に焼きついている」

「よくない考えが脳裏をよぎった」

というように、「脳裏」はわりと出番の多い言葉です。

「のうり」と読みます。
「のううら」なんて言ったりすると、聞いているほうは腰くだけになります。

●貼付(ちょうふ)

書類などのデータを添付(てんぷ)してメール送信することがよくありますね。

「てんぷ」と似た言葉に、「貼付」があり、「貼り付ける」という意味です。

「封筒に切手を貼付する」「貼り薬を皮膚に貼付する」

というようなときに遣います。

貼付の読み方は「ちょうふ」であって「てんぷ」ではないので要注意です。

ただし、「てんぷ」と読んでも間違いではない、とされつつあります。
読み間違える人が多いため、特別措置がとられたのかもしれません。

●少人数・小人数(こにんずう)

パソコンに「しょうにんずう」と入力すると「少人数」と変換されます。
「こにんずう」と入力すると「小人数」と変換されます。

しかし、

「少人数」の正しい読みは「こにんずう」です。

「しょうにんずう」と読み違いをする人が多いため、慣用・俗用として認められるようになったようです。

●団塊の世代(だんかいのせだい)

戦後直後は出生数が急激に上がり、殊に1947~1949にかけての3年間は、一組の夫婦が全国平均で4人以上の子をもうけたことになります。

この多産期に生まれた子は約806万人にものぼり、他の世代と比較して格段に人数が多いことから、「団塊の世代」と呼ばれています。
「だんかいのせだい」、略して「だんかい」と言うこともあります。

これを「だんこん」「だんこんのせだい」と言う人がいて、周囲の失笑をかっていました。
恥ずかしげもなく「男根、男根」って言うなよ。

●出生率(しゅっしょうりつ)


「しゅっしょうりつ」と読みます。
「しゅっせいりつ」と読むのは間違い。

●一日の長(いちじつのちょう)

「一日の長」という言葉があります。
「いちじつのちょう」と読み、意味は、少し年上であること、または、経験や技量が相手より一段上であること。
主に謙遜して遣う言葉であり、たとえば免許をとりたての後輩を車に乗せ、

「運転、すごくお上手ですね」

なんて誉められたとき、

「いやあ、一日の長っていうやつだよ」

という具合に遣います。

「一日の長」というのは、一日駅長、一日消防署長というような意味で遣うわけではないので、勘違いしないように。

●愛弟子(まなでし)

仕事で目をかけてもらっている上司や先輩に、「愛弟子」(まなでし)として人に紹介されるのは光栄ですが、「あい弟子」などと言われると非常に困ります。

特に女性の場合は、「愛人と勘違いされるからやめてください」と言いたくても、年長者の間違いを正すには勇気がいるでしょう。

●習い性(ならいせい)

「○○君、毎朝早いね」「はい、早起きは得意です。習い性です」

なんていう会話があったとします。

「習い性」は本来は「ならいせい」と読むのですが、「ならいしょう」と読む人は多いようです。
私もつい先頃まで、そう読んでいました。

パソコンにおいても、「ならいしょう」と入力すれば「習い性」と漢字変換されます。

「ならいせい」と入力すると「習い所為」などと、わけのわからない言葉に変換され、肝心の「習い性」は、当初は出てきません。

「ならいせい」=「習い性」

とパソコンに学習させないとならないのです。
IT機器に頼りきっていると危ない、ということですね。

●明朝体(みんちょうたい)

ワープロやパソコンに標準装備されている文字の書体に、明朝体というものがあります。
「みんちょうたい」と読みますね。
中国で明(みん)の時代から宋の時代にかけて完成された活字書体であることから、「明朝体」と呼ばれるとのこと。

もしもこれを「みょうちょうたい」と言う人がいたら、それとなく訂正してさしあげましょう。

●疾病(しっぺい)

保険会社のパンフレットを見ると、やたらと出てくるのが「疾病」の文字です。
これは「しっぺい」と読みます。

「しつびょう」ではありませんから、保険セールスの人と話をするときなど、何度も「しつびょう、しつびょう」なんて言ったりして恥をかくことのないよう気をつけましょう。

●至極(しごく)

至極は「しごく」と読み、「これ以上はない」と意味で、

「至極残念」しごく ざんねん「至極便利」しごく べんり

というように遣います。

「すごく」がなまって「しごく」になったわけではないので要注意ですね。

これとよく似た語に「究極」があり、「きゅうきょく」と読みます。

しかし、「至極」を「しきょく」や「しぎょく」と読むのは間違いです。
しぎょく恥をかくといけないので気をつけましょう。

●無下に(むげに)

「せっかくのお誘いを無下に断るわけにはいかない」

なんて言うと、自分もいっぱしの社会人になったものだと誇らしい気分になります。

「無下に」は「むげに」と読みます。

「むかに」などと読み間違えるのは、大人として恥ずかしいことです。

●手折る(たおる)

街路に咲いている桜の枝を手折ると叱られます。
あれは公共のものだからです。

「手折る」は「たおる」と読みます。
「ておる」ではないので、お間違えのないように。

意味は、道具を使わずに手で花や枝を折ることです。
桜の枝は細くても硬くて丈夫なので、ノコギリか剪定ハサミがないと、折るのも剪るのも難しいと思います。

ちなみに、男性が女性をわがものにすることも「手折る」というのですが、この場合は、地位や権力、金にあかせて車や高級スーツ、豪華な食事やプレゼントといった小道具を使ってよいようです。

●まとめの一言


上司や先輩が漢字の読み間違いをすることはザラにあるので要注意ですね。

上記のほかにも、間違いやすい言葉は多数あります。

引き続き、この記事の後半をご覧ください。

関連記事→新年度・人事異動期のビジネスマナー、要注意の漢字(その1)

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