ビジネスマナー

ビジネスマナー/言葉の遣い方を知らない人は損をする

投稿日:2017年3月27日 更新日:

言葉遣いから多くのものが伝わっていきます。

知性、教養レベル、育った環境まで、なんとなくわかってしまうのです。

ビジネスにおいても、マナーとして覚えておきたいことは多種多様にありますが、まずは言葉の遣い方をマスターすることが大事、と私は考えています。

たとえば──

おあいにくさま。

とんでもございません。

めっそうもございません。

申し訳ございません。

↑これらは日常的によく耳にする言葉ですが、実は誤った言葉遣いだということを、あなたはご存じでしょうか。

おあいにくさま

「生憎(あいにく)」という言葉は、

相手の希望に応じられず申し訳がない、

という気持ちを表します。

「あいにく、ただいま品切れでございます」

「あいにくなことですが、社長は出かけております」

というように遣いますね。

「あいにく」という言葉を丁寧に表現しようとすると、

「おあいにく」「おあいにくさま」

となりますが、これは往々にして、皮肉をこめて遣われることが多いようです。↓

「おあいにくさま、そうはいきませんよ」

というように。

「お」や「さま」がついたからといって、なんて丁重な物言いだろうなどと感心してはいけないのです。

「おあいにくさまでございますが、そのご要望にはお応えしかねます」

と、やんわり断られたら、それは「さっさと帰んな」という意味なのだと思ってください。
知らずにいると損をします。

とんでもございません

こんな私でも、たまに人に誉められたりすることがあります。

そういうとき私はいつも、「とんでもない」などと謙遜してみせます。

「とんでもない、っていう今の言い方、ちょっとぶっきらぼうだったかな。もっと丁寧に言えばよかったかな」

などと、いじいじ考えてしまうこともあります。
小心者なんですね。

「とんでもない」を丁寧に言うとしたら、「とんでもありません」「とんでもございません」となるのでしょうか。

それは広く遣われている言い方で、『明鏡国語辞典』では「文法的に誤った表現ではない」とされています。

本当にそれでいいのかしら。

「とんでもない」という表現こそが正しいのではないか、と私は思うのです。

なぜなら──
丁寧に言いたいときは、「とんでもないことです」「とんでもないことでございます」とするべき

──と、どこかで読んだ記憶があります。

「とんでもありません」と言って正しいのか、正しくないのか。
──どっちつかずですね。

ならば私は、「とんでもない」で通していこうと思うのですが、文法的な正否を確かめる拠り所がないのは心細いことです。

めっそうもございません

「とんでもない」と同じ意味の言葉に、「滅相(めっそう)もない」という語があります。

これを丁寧に言うとしたら、「めっそうもありません」「めっそうもございません」と言い換えればよいのでしょうか。

「それは文法的に誤っている」という見解を持つ人にいわせると、

正しくは、「めっそうもないことです」「めっそうもないことでございます」

となるそうです。

「めっそうもありません」なんていう言葉は、日本語に造詣の深い人の耳には、いかにも調子っぱずれで不快な響きなのでしょうね。

「滅相」という語を辞書で引くと、

「とんでもないさま。程度のはなはだしいさま」

と意味が示されたそのあとに、用例として「滅相もない」という言葉が紹介されています。
ですから、

「滅相もない」と言い切って、決して間違った言葉遣いではないのです。

「滅相もありません」

「滅相もございません」

という言い方は、辞書のどこを探しても出ていません。

ならば、↑その言葉遣いは適切とはいえない、と解釈するのがよさそうです。

申し訳ございません

深くお詫びをすべき場面で、

「すみません」

「ごめんなさい」

と言ったのでは、軽々しい感じになってしまい、反省していることが伝わりません。

そこで、

「申し訳ありません」

「申し訳ございません」

となるのですが、この言い方は果たして正しいのでしょうか。

「誤表現ではない」とする人もいれば、

「正しくは、申し訳がありません・申し訳がございません、とするべきだ」

と主張する人もいます。

私は後者の見解に共感を覚えています。

この場合、言葉の基本形は「申し訳がない」です。

「申し訳が」の「が」を抜いて「申し訳ない」とするのは、いってみればまあ、基本形のカジュアル化でしょう。

普段は「申し訳ない」でよいのです。
しかし、改まった場で、この言葉を遣うなら、

「申し訳がありません」「申し訳がございません」

「申し訳がないことです」

と、きちんと言えることが望ましいと私は思います。

そのほうが断然カッコいい!!

●まとめの一言

言葉のマナーについて、私たちはよく知っているようで案外知らないものです。

「この言い方でいいのかな」と疑問が頭をもたげたときは、辞書で確認するようにしましょう。

先述のとおり、言葉の専門家の間でもいろいろと意見が分かれているようですが、少なくとも、辞書に記載されている言葉であるならば、自信をもって口にしてよさそうです。

関連記事→ビジネスマナー/言い間違いに気をつけよう

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