言葉、というよりもむしろ「言葉遣い」を通じて、多くの情報が伝わっていきます。
知性、教養レベル、育った環境まで、なんとなくわかってしまうのです。
ビジネスにおいても、マナーとして覚えておきたいことは多種多様にありますが、まずは言葉の遣い方をマスターすることが大事、と私は考えています。
たとえば──
おあいにくさま。
とんでもございません。
めっそうもございません。
申し訳ございません。
↑これらは日常的によく耳にする言葉ですが、実は誤った言葉遣いだということを、あなたはご存じでしょうか。
おあいにくさま
「生憎(あいにく)」という言葉は、
という気持ちを表します。
「あいにく、ただいま品切れでございます」
「あいにくなことですが、社長は出かけております」
というように遣いますね。
「あいにく」という言葉を丁寧に表現しようとすると、
となりますが、これは往々にして、皮肉をこめて遣われることが多いようです。↓
というように。
「お」や「さま」がついたからといって、なんて丁重な物言いだろうなどと感心してはいけないのです。
と、やんわり断られたら、それは「さっさと帰んな」という意味なのだと思ってください。
知らずにいると損をします。
とんでもございません
こんな私でも、たまに人に誉められたりすることがあります。
そういうとき私はいつも、「とんでもない」などと謙遜してみせます。
などと、いじいじ考えてしまうこともあります。
小心者なんですね。
「とんでもない」を丁寧に言うとしたら、「とんでもありません」「とんでもございません」となるのでしょうか。
本当にそれでいいのかしら。
「とんでもない」という表現こそが正しいのではないか、と私は思うのです。
──と、どこかで読んだ記憶があります。
「とんでもありません」と言って正しいのか、正しくないのか。
──どっちつかずですね。
ならば私は、「とんでもない」で通していこうと思うのですが、文法的な正否を確かめる拠り所がないのは心細いことです。
めっそうもございません
「とんでもない」と同じ意味の言葉に、「滅相(めっそう)もない」という語があります。
これを丁寧に言うとしたら、「めっそうもありません」「めっそうもございません」と言い換えればよいのでしょうか。
「それは文法的に誤っている」という見解を持つ人にいわせると、
となるそうです。
「めっそうもありません」なんていう言葉は、日本語に造詣の深い人の耳には、いかにも調子っぱずれで不快な響きなのでしょうね。
「滅相」という語を辞書で引くと、
と意味が示されたそのあとに、用例として「滅相もない」という言葉が紹介されています。
ですから、
「滅相もありません」
「滅相もございません」
という言い方は、辞書のどこを探しても出ていません。
ならば、↑その言葉遣いは適切とはいえない、と解釈するのがよさそうです。
申し訳ございません
深くお詫びをすべき場面で、
「すみません」
「ごめんなさい」
と言ったのでは、軽々しい感じになってしまい、反省していることが伝わりません。
そこで、
「申し訳ありません」
「申し訳ございません」
となるのですが、この言い方は果たして正しいのでしょうか。
「誤表現ではない」とする人もいれば、
と主張する人もいます。
私は後者の見解に共感を覚えています。
この場合、言葉の基本形は「申し訳がない」です。
「申し訳が」の「が」を抜いて「申し訳ない」とするのは、いってみればまあ、基本形のカジュアル化でしょう。
普段は「申し訳ない」でよいのです。
しかし、改まった場で、この言葉を遣うなら、
と、きちんと言えることが望ましいと私は思います。
そのほうが断然カッコいい!!
●まとめの一言
言葉のマナーについて、私たちはよく知っているようで案外知らないものです。
「この言い方でいいのかな」と疑問が頭をもたげたときは、辞書で確認するようにしましょう。
先述のとおり、言葉の専門家の間でもいろいろと意見が分かれているようですが、少なくとも、辞書に記載されている言葉であるならば、自信をもって口にしてよさそうです。