「冬至」と「冬至日」は、似ているけれど違うものです。
どう違うか、ご存じでしょうか。
冬至とは、1年で最も昼が短く、最も夜が長くなる日のこと。
冬至日とは、冬至の日の前後約1ヶ月間のこと。
そういう違いがあるんですね。
2021年の冬至にあたる日は12月22日です。
毎年冬至の頃には、地球の北半球において、太陽が1年中で最も南寄りの方角に位置するため、日の出・日の入りも最も南寄りになります。
したがって、日の出の時刻が遅くなり、日の入りの時刻が早くなるのです。
と目安にされていますが、実際はちょっと違います。
厳密にいうと、
日の入りが最も早い日は冬至の約半月前(つまり12月8日頃)
なのです。
12月上旬から翌1月初めにかけての約1ヶ月間は、太陽が照っている時間の短い日々が続きます。
↑この1ヶ月間のことを「冬至日」と呼びます。
暦の上で「冬至」とされているのは12月22日で、それは日本では冬至日のちょうど中間にあたります。
●冬至にカボチャを食べ、ゆず湯に入るのは何故?
12月22日、冬至の日の朝に小豆粥を食すことを「冬至粥」といい、これを食べれば身体があたたまり、疫病にかからないとされていたそうです。
冬至の「と」に因んで、とうなす(カボチャ)・豆腐・唐辛子・ドジョウを食べ、ゆず湯に浸かるという風習も、今なお全国各地に残っています。
私の家の近所では、冬至の前にはスーパーなどの店頭でカボチャとゆずの大売り出しをしています。
冬至にカボチャの煮物を食べ、ゆず湯に入れば、無病息災に暮らせるというわけですね。
その根拠は、カボチャにもゆずにもビタミンCやベータカロチンなど、さまざまな栄養が豊富に含まれているので身体にいい、風邪などひきにくくなる、ということでしょう。
たしかにそのとおりだと思うのですが、無病息災というのはちょっと大袈裟かなという気もします。
古くからの風習・伝承には、その健康効果よりもむしろ、精神的な効用が大きいのではないかとも思うのです。
冬至のカボチャ・ゆず湯といった風習の起源をたどると、
ということだったようです。
カボチャやゆずに限らず、
味も良い。
値段も安い。
手に入れやすいので便利である。
季節を取り込むことにより暮らしにメリハリがつき、心も豊かになる。
という生活の知恵でもあったのでしょう。
そう考えると、暮らしの歳時記を大切にすることの利点がしみじみとよくわかります。
私も冬至の日はカボチャの煮物をつくり、ゆず湯にゆっくりと浸かって、英気を養いたいと思います。
●カボチャの煮物作りは、落とし蓋をすることがポイント
カボチャを煮るとき、私は必ず木製の落とし蓋をしています。
煮物をする鍋の直径よりもひと回り小さいサイズのものが良いですね。
これを具材の上に被せると、煮汁が全体に行き渡るので、少ない煮汁でもむらなく煮含めることができます。
また、具材をひっくり返す必要がないので、煮くずれしません。
●作り方
●カボチャは皮をむかず、種とわたを取り、ひと口大に切ります。
(皮が固いときは、軽く電子レンジにかけると切りやすくなります)
●鍋に煮汁(だし汁・醤油・味醂など。好みに合わせて分量を調整)を入れ、カボチャの皮を下にして並べ、落とし蓋をして火にかけます。
●沸騰したら弱火にして15分ほど、カボチャが柔らかくなるまで煮ます。
(煮える頃には煮汁がほとんどなくなるというのが理想的です)
●火を止め、そのまましばらく置いて、カボチャに味を含ませます。
●柚(ユズ)は皮から実の搾りかすまで活用できる
11月になると、黄ばみはじめたゆずが店頭に並ぶようになります。
堅く実の締まった緑色のゆずもいいものですが、熟して黄色くなったものは、味も香りも一段と増し、利用範囲がぐんと広がります。
たった一つのゆずでも、皮から実の搾りかすまで、いろいろと使い途があります。
たとえば鍋物や湯豆腐のつけ汁、鍋焼きうどん、茶碗蒸し、お吸い物などに、ゆずの黄色い皮を薄く削ったものを一片加えてみてください。
その小さな一片から上品ないい香りがたちのぼり、まるで料亭の味のようになります。
皮の部分に香り成分が豊富に含まれているのです。
そのため、つい厚めに削ってしまいがちですが、そうすると、皮の下にある白いスポンジのような部分まで口にすることになってしまいます。
白い部分には苦みがあります。
ですから、なんとなくもったいないような気がしても、皮の表面だけを薄く削るようにしましょう。
冬の寒い時季なら、ゆずは常温で保存できます。
乾燥しないように、新聞紙などに包んでおくといいですね。
暖房を入れて室温が上がっている場合は、冷蔵庫の野菜室に入れるほうが良いでしょう。
皮を大きめに剥ぎ、ラップに包んで冷凍保存し、使う直前に取り出して細かく刻む、という方法もありますが、やはり生の新鮮なものに比べると香りは落ちるようです。
●ゆずの果肉・果汁の活用法
ゆずの香りは約350種類もの成分が混ざり合ってつくられるそうです。
中でも重要な香り成分である「ユズノン」は、ゆず1個に100万分の1グラムしか含まれていないとされています。
これがどれくらい稀少かというと、長さ50mのプールの水量に対し、目薬1滴の量にあたります。
その稀少なユズノンは、ゆずの皮の中の油胞(ゆほう)と呼ばれる香りのカプセルのようなものの中にあります。
ですから、ここが大事なポイントですが、
のです。
●皮の部分を下にして揉みほぐし、さらに出てくる果汁を搾りとります。
こうすると、香りのカプセルから飛び出したユズノンが果汁に加わり、香り高い「ゆず果汁」になります。
しかも一度搾っても、皮にはまだたくさんの香り成分が残っています。
まずは皮つきのまま果汁を搾り、そのあとで皮を薄く削って調理に利用するというのが賢い方法ですね。
果汁の使い途はいろいろあります。
酢の物やポン酢に使う。
など、お好みの方法で楽しんでください。
果汁を搾り取ったあとの皮をお風呂のお湯に放り込めば、香り高いゆず湯を楽しめます。
●ゆず湯は果たしてどれだけ効果効用があるのか?
ゆず湯に浸かると血行が促進され、全身にあたたかい血液が巡るようになるので身体がポカポカと温まり、湯冷めをしにくい、風邪をひきにくい、といわれています。
血行改善や疲労回復の効果は、ゆず湯でなくても、ごく普通の入浴で得られるものですが、ゆず湯の場合は特に、香りによるリラックス効果と安眠効果が感じられ、その点はとても魅力です。
上記のほかにも、ゆず湯独特の効果効能がいくつも挙げられることが多いようです。
●肌や髪の保湿効果
●毛細血管の強化
●血中コレステロールの低下
●アレルギー症状の緩和
●リウマチの症状緩和
●ミネラルの吸収を促進
●自然治癒力アップ
●デトックス効果
●アンチエイジング効果
●ガン予防効果
↑これらについて、私はどちらかというと懐疑的です。
ゆずに含まれるのは、「リモネン」「シトラール」といった香りの成分だけでなく、「クエン酸」「ビタミンC」「ベータカロチン」など、さまざまあります。
それらの成分が果たしてどれだけ肌から吸収され、どれだけ内臓に良い影響を与えるだろうかと考えると、たいしたことはなさそうだと思ってしまうのです。
肌の表面に影響を及ぼすことはたしかだと思います。
ただし、それがツヤツヤ美肌やしっとり美肌に結びつかない場合もあるようなのです。
敏感肌の人や刺激に弱い人は、ゆず湯に入ると肌がピリピリして痛いとか、湯上がりに肌がかゆいとか、良くない結果につながることもあるようなので注意が必要です。
はっきり言うと、肌の弱い人はゆず湯などやめておくのが賢明です。
●まとめの一言
前述の繰り返しになりますが、カボチャの煮物やゆず湯で無病息災というのは大袈裟です。
こうした古くから伝わる風習は、その健康効果を期待することよりも、暮らしを楽しもうとする心を伝えていくことに意義があるのだと思います。
それまでの季節にはなかった珍しいものを神様と人とが分かち合おうとする謙虚な心、
そしてあらためて健康を祈るという前向きな心も素晴らしいと思います。
でも、カボチャはあまり好きではないという人は、無理にカボチャを食べなくていいんです。
肌が弱い人は、無理をしてゆず湯に入ることはないでしょう。
ほかにも旬のものはたくさんあります。
冬至の日はカボチャのかわりにネギ、小松菜、京菜、カブ、春菊、白菜、ほうれん草、カリフラワー、ブロッコリー、大根、レンコンなど、お好みにあうものをたくさん召し上がってください。
ゆず湯で肌がダメージを受けやすい人、ゆずの香りや味そのものが苦手な人は、みかん、橙、ネーブルオレンジなど、好みにあう果実を搾って料理や飲み物に使うというのはどうでしょう。
味もよい。
値段も安い。
手に入れやすいので便利である。
季節を取り込むことにより暮らしにメリハリがつき、心も豊かになる。
そんな生活の知恵を十分に活かすには、