「そして」「だから」「しかし」といった語のことを「接続詞」といいます。
接続詞は交通標識のようなもので、文章がこの先どちらの方向に進むのかを事前に示すもの、とされています。
私の考えはそれとはやや異なり、
接続詞は料理でいえばスパイスのようなもの、
と捉えています。
必要な場面で適切に使えば威力を発揮する。
だけど、あってもなくてもよい。
というのが接続詞の特性だと思います。
↑そうすれば、どことなく幼稚で稚拙に感じられた文が、ビシッと引き締まった「大人の味」に大変身します。
●接続詞が果たす役割
日本語にはさまざまな接続詞があります。
・前の文に続けて理由や原因を示すときは、
「だから」を使います。
・前の文と逆のことを言うときは、
「けれども」「しかし」「ところが」です。
・前の文につけ加えることがあるときは、
「および」「ならびに」です。
・別の物事をつけ加えるときは、
「また」「さらに」「そのうえ」です。
・前の文を別の言葉で言い換えるときは、
「つまり」「すなわち」です。
・複数の例を挙げていずれかを選ばせるときは、
「または」「もしくは」です。
・話題を転換するときは、
「ところで」「さて」を使います。
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接続詞を用いることで、文と文の関係が明確に示されます。
↑文章が流れていく方向を予測することができるので、読者の理解はいっそう深まるでしょう。
けれども、いちいち、「そして」「だから」「しかし」「すなわち」とやったのでは、うるさくなり、かえって読みにくくなります。
●絶品料理「吾輩は猫である」
接続詞は、文の流れを良くも悪くもする魔法の言葉、料理でいうなら薬草スパイスのようなものです。
料理の素材がよければ、スパイスなしでもおいしくいただけます。
文章の世界も同じで、接続詞を使わずとも、水が流れるようにスムーズに流れゆく文章を書くことは可能です。
その良いお手本が、夏目漱石の小説の中にありました。
『吾輩は猫である』の書き出しは次のようになっています。
吾輩(わがはい)は猫である。名前はまだ無い。
どこで生まれたか頓(とん)と見当がつかぬ。
何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。
吾輩はここで始めて人間というものを見た。
●接続詞というスパイスを上手に利かせるコツ
接続詞を使わないと意味が通じない場合は、もちろん使うべきです。
適切な使い方を、もう一度確認しておきましょう。
<順接>(前項に続けて理由や原因を示すときに用いる)
そして、だから、それで、そこで、それでは、すると、したがって、ゆえに、etc.
<逆接>(前項と逆のことを述べるときに用いる)
が、だが、しかし、けれど、けれども、だけど、ところが、とはいえ、それでも、etc.
<付加・並列>
(前項につけ加えることがあるときに用いる)
(列挙する事柄が対等の関係にあることを示す)
そして、それから、また、および、ならびに、etc.
<累加>(前項と別の物事をつけ加えるときに用いる)
さらに、しかも、そのうえ、かつ、ただし、etc.
<説明>(前項を別の言葉で言い換えたり、理由を説明したりするときに用いる)
つまり、すなわち、要するに、いわば、ちなみに、なぜなら、たとえば、etc.
<選択>(複数の例を挙げ、いずれかを選ばせるときに用いる)
または、もしくは、あるいは、それとも、そのかわり、むしろ、ないしは、いっぽう、etc.
<転換>(話題を転換するときに用いる)
さて、ところで、では、それでは、ときに、etc.
接続詞が不必要なときは省略し、ここ一番という大事な場面で使って最大限の効果を発揮するというのが理想です。
●「お子様ランチ」を「大人の味」に
・接続詞を多用すると幼稚な印象になりがちですが、文章を書く際に、接続詞はとても有効なツールです。
・まず1文を組み立て、接続詞を用いて次の文と接着してみると、文の流れが適切か否か、一目でわかります。
・接続詞を適切に用いることにより、文章を論理的に展開していくことができます。
・全文を書き終えたあと、なくても良いと思われる接続詞は削除しましょう。スッキリとしたシャープな印象の文になります。
・できる限り接続詞を省くことにより、文の動きがきびきびとしてきます。
お子様ランチのようだった幼稚な文も、大人びた味わいになるのです。
●「または」と「および」を混同しない
接続詞を用いないと意味が通じない場合は、ぜひとも用いるべきです。
しかし、その用い方が適切でないと、わけのわからない文になってしまいます。
この4種の接続詞は、次の点に注意して使い分ける必要があります。
・「または」「もしくは」と「および」「ならびに」を混同しやすいので要注意。
●混同していないのに、それでもわかりにくい例
「または」「もしくは」と「および」「ならびに」を混同しない、という注意事項を守り、きちんと使い分けていても、非常にわかりにくい文になってしまう場合もあります。
<質問>
1.日本在住の外国人
2.世界中の外国人
3.日本にいる日本人と外国人のすべて
(正解はおそらく、1)
(社会常識からそのように判断されますが、例文を読む限りでは不明)
<質問>
1.印鑑、現金、本人であることを確認できる公的な書類
2.印鑑、現金、運転免許証またはパスポート、住民基本台帳カード、各種年金手帳、各種健康保険証、各種福祉手帳(合計7点)
(正解はおそらく、1)
1.印鑑
2.新設する口座に預ける現金
3.本人であることを確認できる公的な書類
(運転免許証、パスポート、住民基本台帳カード、各種年金手帳、各種健康保険証、各種福祉手帳、以上6点のいずれか1点)
付記/日本国籍を有していない方は、外国人登録証明書を持参する必要があります。
<解説>
・上記の改善例のように、「または」「もしくは」「および」「ならびに」を極力使わずに説明したほうが、わかりやすい文になる場合もあります。
●まとめの一言
接続詞は、料理でいうならスパイスのようなものです。
やたらと乱用せず、効果的に使っていきましょう。
接続詞を使わずとも、スムーズに流れゆく文章を書くことは可能です。
↑文章が引き締まり、シャープな印象になります。