暮らし歳時記

お節・お雑煮・屠蘇湯は、家族そろって食すことに意味がある

投稿日:2017年12月23日 更新日:

「正」という文字には「改める」という意味があります。

ですから、お正月は「改まった月」「改まった年」ということなのですね。

改めて迎えた新しい年の元旦は、家族そろってお節やお雑煮を食べましょう。

そこから小正月(1月15日)までの半月間は、

初詣

松納め

七草粥

鏡開き

小豆飯

といった正月行事を執り行なうことが、古くからの習わしです。

年初の正月行事は、年神様を迎えるために行なうものです。

年神様とは神道の神々のことで、来方神・穀物神・祖霊・年徳神・大年神・御年神など、さまざまな神様がいらっしゃるとのことです。

そうした神々が、お正月は各家庭にやってくるとされています。

そこで各家々では、神の依代(よりしろ)、つまり神の霊が来訪して宿る場所として門松を立て、我が家にお迎えした年神様と共に、新年の数日を過ごすわけですね。

でもその前に、正月行事を行なう準備をしておかなければなりません。

準備を開始するのは、昔から12月13日あたりとされています。

↑この日を「正月ことはじめ」というんですね。

ちなみに、「ことはじめ」の「こと」とは、お正月行事のことを指します。

●正月ことはじめ

・煤払い

「正月ことはじめ」の日はまず「煤払い」といって、家中の大掃除をして清めることがしきたりです。

年神様は罪・咎・穢れを嫌うので、清浄な場でなければ来臨されないとされているからです。

・煤払いのあとは「煤湯」「おこと汁」

大掃除を終えたら、入浴をして心身を清めるとよいですね。

↑このときに入るお風呂のことを「煤湯」というそうです。

家中の汚れを取り除き、斎戒沐浴して身を清めます。

そして気分がすっきりしたところで祝儀酒を口にします。

サトイモ・ニンジン・ダイコン・アズキなどを入れた汁料理を「おこと汁」といい、これを祝儀酒と共に食すると完璧です。

「ことはじめ」の儀をすませ、翌日からいよいよ「年用意」にとりかかります。

●年用意

年用意とは、新年を迎えるための用意をしておくことです。

神棚の準備・餅つき・お節料理・床の間や室内のしつらえ、晴れ着の支度など、やるべきことは多数あります。

・年神棚(または恵方棚、年棚)

年神様を迎えるための「年神棚」(または恵方棚・年棚)を作り、そこに年神様への供え物として、サカキや鏡餅などを供えます。

神棚に注連縄を飾るのは、神域と現世を隔てる結界をはるためです。

また、世の中に疫病や災いをもたらすとされる悪神、いわゆる厄病神(やくびょうがみ)が家の中に入ってこないよう、年棚の隅にあえて疫神様の座を作り、悪疫を退けてもらうという風習もあります。

私の家には神棚も床の間もありません。
玄関の靴箱の上にあるちょっとしたスペースに鏡餅を飾るくらいしかできませんが、そういうちょっとしたことでも、神様をお迎えしたいという気持ちをあらわすことができると思っています。

・松迎え

昔々は、新年の年男(翌年が申年ならば申年の男性)が山に入って松の木を伐ってきたそうです。

その松の木を家の玄関先に立て、

「年神様、どうぞこの松を目印に我が家へおいでください」

と御来臨を促すのです。

今では、門松や松飾りは町で買ってくることがほとんどですね。

私も毎年、近所の花屋さんで松飾りを買ってきて、玄関のドアに飾っています。

・床飾り

年神様を家にお迎えするために、日の出や高砂の掛け軸、鏡餅、季節の花などを床の間に飾ります。

これは神様へのおもてなしの一つであり、めでたく新年を迎えられることを感謝する気持ちの表現でもあります。

我が家のように床の間がない家では、たとえばリビングルームの壁にお正月らしい絵や写真を飾り、テーブルに花を置くというだけでも良いと思います。

お正月らしく、おめでたい雰囲気をつくることが大切ですね。

・飾るなら28日か30日に

門松や松飾りを取り付けるなら、年末の28日か30日に、とされています。

29日じゃダメなの?

と思ってしまいますよね。

「9のつく日は苦に通じるので縁起が悪い」という理由から、できれば避けたほうが良い

とされています。

また、

31日に飾るとたった一晩だけの「一夜飾り」になってしまうので、良くないとされています。

●除夜の鐘

大晦日の夜は、全国各地の寺院が鐘を撞いて百八声をとどろかせます。

108のうち、はじめの54声は強く、残りの54声は弱く打ち鳴らされます。

なぜ108なのかといえば、人間誰もが持っている108つの煩悩を一つひとつ破って新年を迎えるため、とされています。

除日(旧年を取り去る日)の夜だから「除夜」というのですね。

除夜の鐘が鳴り響き、最後の一声が撞かれると、これを合図に新年が始まります。

●初詣

除夜の鐘が鳴り終わると、さっそく神社仏閣へお参りに行くという人は多いでしょう。

「はつもうで」という言葉がよく使われますが、大晦日の晩から元旦明け方までの参拝を、かつては「除夜詣で」または「年越し詣で」、あるいは「二年参り」といったそうです。

初詣には、3つの様式があります。

1 その年の恵方(吉にあたる方角)にある社寺へ詣でる

2 社寺のその年の最初の祭日に詣でる

3 恵方や祭日とは関係なく、著名な社寺に参詣する

この3つの方法でお参りできないときは、どれか一つだけでも良いと思います。

私は毎年、元旦の朝に、これから始まる一年の無事息災を願いに、ご近所の神社にお参りしています。

●正月三が日は、家族そろってお節・お雑煮・屠蘇湯でお祝い

1月1日から3日までの朝食は、家族そろっていただくというのが決まりです。

年末に作っておいたお節料理を食べ、主食はお餅(お雑煮)、そして屠蘇酒を飲んで祝います。

「家族そろって」という点に大きな意味があります。

お節料理やお餅の雑煮は本来、神様への供え物として用意されるもの、つまりは神饌です。

神饌を神様と家族一同が分け合って食べ、平和と繁栄を祈ることに意味があるのです。

平和と繁栄の源は家族の絆、ということだと思います。

・お節料理

基本的に、お節は次の4種で構成されています。

1 祝い肴

黒豆

数の子

ごまめ(田作り)

関東ではこの3種種が欠かせません。

関西では黒豆、数の子、たたきごぼうの3種だそうですね。

そのほか、紅白かまぼこ、伊達巻き、栗きんとんなども祝い肴です。

2 煮しめ

しいたけ

レンコン

くわい

こんにゃく

ニンジン

里いも

など、いろいろな種類の野菜を煮しめ、昆布巻きなどを添えます。

3 酢の物

ニンジンと大根の紅白なます、レンコンの酢の物などが定番です。

4 焼き物

ブリ、鯛、海老など、海の幸を焼いていただきます。

お節は重箱に詰めます。

一の重には、祝い肴。

二の重には、焼き物。

三の重には、煮物。

与の重には、酢の物。

というのが一般的でしょうか。

・お雑煮

私は神奈川県の生まれ育ちなので、お雑煮といえば出汁のきいたすまし汁です。
具は鶏肉、そして大根、ニンジン、ゴボウの千切り、かまぼこ、小松菜など。
そこに四角い餅を茹でて入れます。

しかし、お雑煮の味や材料、作り方は各地方によってさまざまですね。

すまし汁で仕立てるか、味噌汁で仕立てるか、四角い餅か、丸い餅か、餅は焼いて使うか、煮て使うか、といった点に違いが見られます。

全国でも珍しい例として、四国高松では、餡子の入った丸餅と野菜を白味噌仕立てのお雑煮にするそうです。

本当に、地域によっていろいろなお雑煮がありますが、それでもとにかく共通しているのは、必ず餅を入れるということ。

お餅は年神様への供え物で、それをおろして一緒にいただくという思想に基づくお料理だからですね。

・屠蘇酒

屠蘇酒は、山椒・防風・肉桂・桔梗など、数種の漢方薬を調合した屠蘇散をお酒に加えたもので、解毒強壮作用があるとされています。

中国伝来のものなので、日本古来の神事とは直接のつながりはないのですが、「適度にお酒をいただいて元気に健康に過ごす」という意味で、お正月の献立に採り入れられて定着したようです。

味はみなさんご存じのとおり、ちょっと胃薬のような味と香りがするリキュール酒といった感じですね。

屠蘇酒は、大中小3つ重ねの盃に注いで飲みます。

盃1、2杯が適量かと思います。
酔ってくると次第に味も風味もわからなくなり、酒なら何でもいいやと、ついぐいぐいいっちゃいますが。

●松おさめ

関東では1月6日・関西では1月14日が「松納め」とされています。

門松や松飾り、注連縄などを取りはずすのですが、そのあと、どのように処理したら良いのでしょう。

本来、門松などは元あった森に返すことが礼儀にかなった作法とされていますが、今はどこのうちでも買ってきた門松を飾っているでしょうから、森に戻すなどという大変なことはできませんね。

といって、ゴミとして処分するのは気が引けます。

せめて焚き火でもして、神様に感謝しながら燃やすというのはどうでしょう。

「今年も無事に新年を迎えることができ、良いお正月を過ごせました。これからもどうぞよろしくお願いいたします」

という気持ちがあれば、神様はきっとわかってくれると思います。

●七草粥

7日の朝は七草粥をいただき、お正月にご馳走を食べ過ぎて疲れた胃腸をいたわると共に、この一年の無病息災を願います。

七草というのは次の7種ですね。

・セリ

・ナズナ

・ゴギョウ

・ハコベラ

・ホトケノザ

・スズナ

・スズシロ

今は七草をセットにしたものがスーパーなどで販売されていますから、手に入れやすくなりました。

作り方は地域によって異なるでしょうが、関東地方では次のようにすることが一般的です。
●「七草」をまな板の上に載せ、包丁の背などで叩いて細かくする。
●鍋に粥を炊き、叩いた七草と塩を入れて味を調える。

鰹節で出汁をとり、醤油や味噌で味付けして「七草雑炊」にする地方もあるそうです。

●鏡開き

11日は「鏡開き」の日です。
正月に神様に供えた鏡餅を使って、汁粉や雑煮、かき餅(あられ)などにしていただきながら、無病息災を祈ります。

三が日にいただくお雑煮の餅と鏡餅とは別個のもの、と私は思っていましたが、分けて考えてはいけないものだったようです。
本来の鏡餅は、円形の鏡のように作った大小2個の餅を重ねて神棚に供え、11日の「鏡開き」の日におろして食べるまで、お餅は口にしないというのが本式だったのですね。

それにしても、餅をついてから10日以上も飾っていれば、いざ食べようとしたときには固くなっているでしょう。

昔の人はなぜ、わざわざ固くした餅を食べたのでしょう。

↑調べてみると、それは「歯固め」のためでした。

固くなった鏡餅を食べることにより、

「自分はこの年になってもまだこんなに歯が丈夫です。長生きできますね」

と、神様に長寿を願うことが風習だったのです。

●小豆粥

15日には小豆粥をいただきます。

作り方はごく簡単で、お鍋にたっぷりの水と米、それに小豆を加えて炊きあげ、好みにあわせて塩などで味付けをします。

↑ポイントは、前の晩から小豆を水に浸しておき、やわらかくしておくことでしょうか。

小豆粥を作るのはちょっと面倒、というときは、お赤飯を買ってきて食べるのも良いですね。

小正月の1月15日に小豆を食するのは、邪気を払って一年の健康を願うためです。

↑ビタミンBを補給し、より健康になるため、ともいわれています。

ついでに言うと、上に「寒」のつく食べ物もオススメです。
1月はとにかく寒さの激しくなる時季なので、上に「寒」のつく食べ物、たとえば

寒ブリ、寒ぶな、寒しじみ

など、栄養豊富で脂肪分もたっぷり含んだものを食べて体力をつけると良いとされているのです。

関連記事→2月の寒さ対策、ヒートテック・インナー重ね着のコツ

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