文章の「脚」にあたるものは「述語」
顔と脚をつなぐ部分が長すぎると、胴長短足の不格好な文になります。
格好悪いだけでなく、言わんとすることが通じにくい文になります。
●胴長短足の不格好な文
主語と述語の関係を意識しながら、次の文を読んでみてください。
「主語」にあたるのは、「あの人の強み」です。
では、「述語」にあたるのは何でしょう?
あの人の強みは、子供の頃から読書が好きで、特に絵本をたくさん読んできたので、むずかしい言葉を使わずにわかりやすい言葉で話をするし、小学校で国語を教えていた先生の経験もあるから、みんながとてもわかりやすい、面白いと言ってくれることです。
<質問>
1.読書経験が豊富で、特に絵本をたくさん読んできたこと
2.むずかしい言葉を使わずに話せること
3.小学校で国語を教えていた経験があること
4.みんなが「とてもわかりやすい、面白い」と言ってくれること
(正解はおそらく、1と2と3)
<ここが残念!>
・「あの人の強みは」という主語に対応する述語が、なかなか出てきません。
↑
という語が、主語と述語の間に挿入されているためです。
2.むずかしい言葉を使わずに話せること
3.小学校で国語を教えていた経験があること
・文末の結論部分を見て、
と誤読される可能性は高いといえます。
・「話を聞いた人が、とてもわかりやすい、面白いと言ってくれること」は、強みというよりもむしろ、何らかの強みがあって生じた結果だといえます。
あの人の強みは、子供の頃から読書が好きで、特に絵本をたくさん読んできたこと、加えて、小学校で国語の教師をしていた経験があることです。
だから、むずかしい言葉を使わずに話をすることができるのです。
みんなが「とてもわかりやすい、面白い」と言っています。
<解説>
・例文は胴体部分が長すぎるため、3つの文に分けて、ボディバランスを整えました。
・「あの人」の強みは3つあると考えられます。
そのうちの1つ、
というのは、他の2つの強みがあってこそ生まれたものでしょう。
そこで、「だから」と一言つけ加えて、3つの強みを有機的に関連づけました。
<補足>
・「わかりやすい」という語が二度出ているため、なくてもわかる箇所では省略しました。
・「小学校で国語を教えていた先生の経験」は、「教える」と「先生」が意味重複するため、「小学校で国語の教師をしていた経験」としました。
●超短足の文
私は女性のみなさんに提案したいのですが、洗練された女性になる方法を知りたい人というは好きこそものの上手なれというような、そういう言葉がありますが、できれば地元よりも都会で洗練された一流ホテルや一流レストランでお食事したりしてというように一流の雰囲気を味わったりしてほしいというふうに思うのですが、そういうことが好きな女性は上手にできるので、都会で目を引く素適な女性がいるのでそういう人を見つけるということなど都会でしてほしいというのもありますが、一流ホテルや一流レストランで働いているウェイターさんやウェイトレスさんや支配人という方々もわりと素敵ですが、洗練されていますが、どんな素敵な服を着て一流の場所で一流の食べ物を食べたり飲んだりしているかということを見てよく観察するというのがいいのでしょうが、私も女性の一人としてそういう一つの方法をとってみたのですが、やっぱりそういう洗練された女性になるのに憧れますが、夢のまた夢というようなこととか、でも絶対に無理ではないかもしれないというようなことも思ったりもしてしまいますが、そういうのはやっぱり都会の一流レストランや一流ホテルのおいしい食事や飲み物が元気にさせてくれるということかもしれませんが、洗練された女性になれるという元気な方法を知りたいという人はやっぱり好きこそものの上手なれということでしょうか。
<ここが残念!>
・文の最初と最後に、同じことを語っています。
・「〜ですが」の使用が、なんと10箇所にものぼります。
・「洗練」「一流ホテル」「一流レストラン」「都会」「素敵」「食べ物」「飲み物」「元気」など、同じ言葉を重複使用しています。
・「というような」「というふうに」「そういう」など、必要のない語が多用されています。
「好きこそものの上手なれ」と言います。
「百聞は一見に如かず」という言葉もあります。
女性のみなさん、これを応用してみませんか。
たとえば、「もっと自分を高めたい」「素敵な大人の女性になりたい」と強く願っている人は、一流ホテルやレストランを積極的に利用するといいのです。
そのゴージャスな雰囲気を味わい、出入りする人々を眺めているだけで、知らず知らずのうちに、「素敵な大人の女性」と呼ぶにふさわしい洗練された服装や立ち居振る舞いをマスターすることができると思います。
もし可能であるならば、地元を離れて都会へ出てみましょう。
東京のような大都会には、名のある店やホテルが多数揃っています。
ハイグレードな空間に身を置き、ハイクォリティなサービスを堪能してください。
味のレベルも高く、きっとあなたを満足させてくれるでしょう。
さあそして、パッと目を引く女性がいたなら、それとなく観察するのです。
彼女はどんな服や小物を身に着け、お店のスタッフにどう接し、お料理や飲み物は何を選んでいるか。
そうした一つひとつがとても参考になります。
もちろん私も、この方法を実践しています。
お手本となる人を見つけるたびに、「これでまた夢と憧れに一歩近づいた」と手応えが感じられるので、テンションが高まり、元気いっぱいになりますよ。
<解説>
・例に挙げた悪文はトータル580文字、改善例の文は554文字です。
文字数はさほど減っていませんが、だらだらと続く長文を14の文に分けたので、だいぶ読みやすくなりました。
・
というメッセージを明確に打ち出しました。
↑その内容の是非はともかくとして、意味不明の長文で読者を疲れさせてしまうことは回避できたと思います。
●やや胴長でも許せるけれど、足(結論)が意味不明なのはダメ
主張の文章というのは、ともすれば演説のようなものになりがちで、お世辞にも「読み手にやさしい」文章とは言えませんし、セミナーや講演会で顔を見ながら話を聞くならまだしも、話した通りに文章にしたものを読まされるとなると、何度も同じことを繰返しているのが目立ったり、「言葉足らず」の文章だったり、説明が足らなかったりして、読む人は疲れますし、何より内容を理解できませんから、あらかじめ列挙する旨を示す予告文を入れておくとスマートです。
<ここが残念!>
・この例文で最も肝腎なのは、
という箇所でしょう。
しかし、↑この大事な一節こそが、文中で最も悪文になっています。
なんとなく意味は通じるのですが、注意深く読む人なら、
と考え込んでしまうでしょう。
主張文というのは、ともすれば演説のようになりがちで、それはお世辞にも「読み手にやさしい」文章とは言えません。
セミナーや講演会で聞く話をそのまま書き写したような文である場合は、読者はいっそう疲れます。
随所で同じ言葉が繰返されているいっぽうで、説明の行き届かない箇所が多々あり、内容をよく把握できない例が多いのです。
主張文を書くときは、話が行ったり来たりしないように、また、主張したいことが確実に伝わるように、工夫してください。
それには、これから述べる内容の重要ポイントをあらかじめ列挙し、冒頭に示すと良いでしょう。
<解説>
・「あらかじめ列挙する旨を示す予告文を入れておく」という文の意味が伝わりやすいように、
と書き換えました。
●まとめの一言
だらだらと続いて読みにくい文になってしまった、と思うときは、主語と述語をつなぐ胴体部分をできるだけ短くしましょう。
長い文章を複数の文に分けると効果的です。
「胴長短足」の不格好な文から「脚長」で格好いい文に生まれ変わらせることができます。