「読点の打ち方」について考えてみましょう。
文のどこで読点を打ったらいいか。
迷ったときは、次の5つのどれか1つでも当てはまるかどうかチェックしてみるとよいですね。
例/東京、川崎、横浜、横須賀、三浦の暴走族が一堂に会した。
例/頭の回転が速くてよく気が利く、この店で一番人気の、優秀な販売員に担当してもらいたい。
例/だから言ったでしょう、ママが、遊んでばかりいないで勉強しなさいって。
例/時が経ち、世間知らずだった少女も大人の女になった。
例/コーヒー、いただきます。
この5点に当てはまらない場合は読点を打っても打たなくても良い、と考えて差し支えないでしょう。
というのが私の意見ですが、中村明著『悪文 裏返し文章読本』にはどう書かれているか、見てみましょう。
●『悪文 裏返し文章読本』が掲げる17項目
中村明著『悪文 裏返し文章読本』では、「読点の打ち方、慣用的なルール」が17項目も挙げられています。
「法則」ではなく「慣用的なルール」としているので、必然的に数が多くなってしまうのは理解できます。
しかし、そのすべてを頭に入れるのは骨が折れます。
本当に必要な読点はどれなのか、考えてみましょう。
↓(黄色の枠で囲んだ箇所は、当ブログ用に私が加筆しました。)
【読点の打ち方、慣用的なルール】
1. 主題を示したあとに打つ
【例】
この本の内容をむやみに信用することは、〜である。
主題を示す部分が短く、述語との距離も小さい場合にはふつう打たない。
【例】
それはあのひと特有のおとぼけだ。
2. 文の中止するところに打つ
【例】
読者は途中で本を投げ出し、〜した。
たとえば「投げ出し逃げた」という書き方をすると誤読を招く恐れがあるので望ましくないが、「投げ出して逃げた」とすれば、読点がなくても読みやすい、というのはそのとおりです。
文が中止する箇所には句点「。」を打ちます。
3. 並列の関係になっている語句の切れめに打つ
【例】
〜、〜、〜、どれも同じだ。
4. 条件や理由などを説明して意味を限定することばのあとに打つ
【例】
もし〜だったら、〜。
〜の折に、〜。
〜になったので、〜。
たとえば────
もし嫌だったら断ってね。
お暇な折りにいらしてください。
転勤になったので引っ越した。
という書き方をして構わないのです。
5. 途中のいくつかのことばを隔てて修飾する語句のあとに打つ
【例】
じろじろ、ひとの恋人をうらやましそうに見る。
例文の場合は、読点なしには読みにくいのですが、「じろじろと他人の恋人を」と書けば読みやすくなります。
6. 接続詞やその働きをする述語のあとに打つ
【例】
したがって、〜である。
接続詞のあとに読点を打つ、という決まりはありません。
「したがって不正解である」とすることもできるわけです。
そして誰もいなくなった。
だから私はさみしかった。
だけど平気だ。
というように、接続詞のあとに読点を打たずに文を続けることが可能です。
7. 感動詞のあとに打つ
【例】
やあ、ひさしぶりだなあ。
例文の場合は読点なしには読みにくいのですが、
やあ久しぶりだなあ。
と書けば読みやすくなります。
8. 提示したことばのあとに打つ
【例】
〜、それは〜だ。
「〜、それは〜だ」は一種の倒置文であると考えられます。
9. 修飾部分が長く続く場合、大きな切れめに打つ
【例】
去年の夏のヨーロッパ旅行で安く買った、濃いねずみ色をした冬物のツイードの帽子。
述部「ねずみ色をした(している)」の主部は「帽子」
と読者は捉えやすく、そのため文意を汲みにくいのです。
「去年の夏のヨーロッパ旅行で安く買った冬物で濃いねずみ色のツイードの帽子」と書き換えれば、多少読みにくいけれども、意味は通じます。
10. 文の成分を倒置した場合、その間に打つ
【例】
〜をした、〜をしながら。
倒置文には読点が必要です。
11. 文の途中に主部を置いた場合、その前に打つ
【例】
〜を、私は〜した。
この例文も倒置文です。
12. 助詞を省略した箇所に打つ
【例】
楽しい話、聞かせてください。
「楽しい話を聞かせてください」の「を」の代用として読点が用いられています。
13. 読みの間を示すところに打つ
【例】
じゃん、けん、ぽん。
おぎゃあ、おぎゃあ。
読点を打つかどうかは書き手の考えに託される、ということを示す例だと思います。
14. リズムを強調したい場合、五音なり七音なりの切れめに打つ
【例】
ちょいと出ました、三角野郎が、四角四面の、櫓の上で。
15. ことばや考えをかぎ括弧をつけないで引用する場合、引用の範囲を明確にするために打つ
【例】
〜と、書かれている。
〜、と書かれている。
読点を打たずに「〜と書かれている」としても、なんら変わらないのです。
引用の範囲を明確にするには、しかるべき方法をとる必要があります。
(引用した箇所を「 」で括る、「以下『○○』より引用」または「以上『○○』より引用」と明記する、引用文は本文の一文字下げとする、などの方法があります。)
・朗読の際に文意を明晰に伝えようとすると、「と」の前後に軽いポーズを置くことが多い。
・「〜、と、書かれている」とすると、↑の意味で理にかなうが、見かけがうるさい感じになる。
16. 仮名が続きすぎて読みにくい場合、必要に応じて打つ
【例】
みんなができるだけひとまとまりとして、まとまっていけるように気をくばっていきたい。
「さいた さいた さくらが さいた」
というように分かち書きをすることがあります。
あのときあなたがあんなところにいなければよかった。
とするよりも、
と書けば、より読みやすくなります。
できるだけみんながまとまっていけるように気をくばりたい。
とリライトすれば、読点がなくても読みやすいでしょう。
17. 意味があいまいな場合、文意を明確にする目的で、それぞれの文章にあわせて打つ
【例】
コーチは、汗をかきながら猛練習に励む選手を指導している。
コーチは汗をかきながら、猛練習に励む選手を指導している。
例文は主語と述語が2つある重文構造なので、「汗をかくコーチ」について語る文と、「猛練習に励む選手」について語る文とを読点で区切る必要があります。
「猛練習に励む選手を」という語は、「指導している」に掛かる修飾語として機能しています。
●まとめ
中村明著『悪文 裏返し文章読本』が掲げる「読点の打ち方、慣用的なルール・17項目」のうち、本当に読点がほしいところは、8項目のみでした。
より正確にいうと、読点を必要とする理由が重複している項目があるため、少し整理をして、5項目に絞って良いのではないかと思います。
どんな場合に読点を打つべきかについて、現時点では明確なルールが定められておらず、各人の考えに委ねられています。
共通認識や規範はなきに等しい状態なのです。
そのため、誤解を招きやすい文章が日常の随所に散見されます。
読点の打ち方について、必要最低限の規範はあったほうが良いと私は考えます。
そこで皆さんに参考にしてほしいのが、当ブログで提案している5つのポイントです。
●語句を対等に並べる場合
●長い修飾語が2つ以上ある場合
●倒置文の場合
●重文(主語と述語を持つ文が2つ以上含まれる文)における文の切れ目
●助詞を省いたとき
この5点にあてはまらない場合は読点を打っても打たなくても良い、と考えて差し支えないでしょう。
必要最低限の読点をおさえておけば良いのです。
自分の文章には「、」が多いなあと思う場合は、怖がらずにどんどん省略しちゃっていいと思います。