読点の打ち方

読点の打ち方を完全マスター!! ③

投稿日:2017年6月4日 更新日:

「読点の打ち方」について、考えてみましょう。

文のどこで読点を打つか。

目安にしてほしいのは次の5点です。

1.語句を対等に並べる場合

例/東京、川崎、横浜、横須賀、三浦の暴走族が一堂に会した。

2.長い修飾語が2つ以上ある場合

例/頭の回転が速くてよく気が利く、この店で一番人気の、優秀な販売員に担当してもらいたい。

3.倒置文の場合

例/だから言ったでしょう、ママが、遊んでばかりいないで勉強しなさいって。

4.重文(主語と述語を持つ文が2つ以上含まれる文)における文の切れ目

例/時が経ち、世間知らずだった少女も大人の女になった。

5.助詞を省いたとき

例/コーヒー、いただきます。

この5点にあてはまらない場合は読点を打っても打たなくても良い、と考えて差し支えないでしょう。

というのが私の意見ですが、阿部紘久著『文章力の基本』にはどう書かれているか、見てみましょう。

●『文章力の基本』が掲げる10項目

阿部紘久著『文章力の基本』という本では、「読点がほしいところ」として、10項目を挙げています。

そのすべてが本当に必要なのかという点を検証していきます。

↓(黄色の枠で囲んだ箇所は、当ブログ用に私が加筆しました。)

【読点がほしいところ】

1.「長い主語」「長い述語」「長い目的語」の切れ目

【例】

1971年に愛知県でつくられたココストア1号店が、日本で最初のコンビニだと言われている。

↑主語・述語・目的語がいずれも長い場合は読点を打つ必要がありますが、どの程度の長さから読点を必要とするかという決まりはありません。

文意が通じるならば、読点を打たなくても良いでしょう。

2.「原因」と「結果」、「理由」と「結論」の間

【例】

私は小説が好きなので、新しい小説を手にするだけでワクワクする。

↑文意が通じるならば、読点を打たなくても良いでしょう。

「好きなので」と「新しい」の間に読点を打つのは、ひと続きにしないほうがより読みやすいという理由によるもので、「原因」と「結果」、「理由」と「結論」を分かつためではありません。

したがって、たとえば、「食べることが好きなので太っている」とすることもできるわけです。

3.「前提」と「結論」の間

【例】

私のことを認めてくれる人がたとえ少数でもいてくれれば、私はそれで嬉しい。

↑前提と結論の間だからという理由によるのではなく、重文だから、文と文の間を読点で区切る必要があるのです。

4.「状況・場の説明」と「そこで起きていること」の間

【例】

7月に白馬岳を登って行くと、足元に無数の高山植物が咲き乱れている。

↑「状況・場の説明」と「そこで起きていること」の間だからという理由によるのではなく、重文だから、文と文の間を読点で区切る必要があるのです。

5. 時間や場面が変わるところ

【例】

彼は1年前に転職して、今は順調にやっている。

↑文意が通じるならば、読点を打たなくても良いでしょう。

「転職して」と「今は」の間に読点を打つのは、ひと続きにしないほうがより読みやすいという理由によります。

「時間や場面が変わるところ」であっても、「彼は1年前に転職したばかりだが今は課長になっている」とすることも可能です。

6. 逆接に変わるところ

【例】

警視庁の調べでは年々凶悪事件が減少しているが、私たちの印象はそうではない。

↑「逆接に変わるところ」だからではなく、重文だから、文と文の間を読点で区切る必要があるのです。

重文でない場合は、「逆接に変わるところ」であっても、たとえば「凶悪事件は年々減少しているがその残酷さは増している」というように、読点なしでつなげることもできます。

7. 2つのものを対比するとき

【例】

初めての海外生活を楽しみにする一方で、見知らぬ土地で長い間生活することに不安を抱いていた。

↑「2つのものを対比するから」ではなく、長い修飾語が2つ以上あるから読点を必要とするのです。

修飾語が短いならば、対比する場合であっても、たとえば「赤は強くて白は弱い」というように、読点なしでつなげることができます。

8. 隣同士の修飾語の間に、予想外の関係が生じてほしくない場合

【例】

より多くの、地域になじみのない人に、コミュニティ活動に参加してもらいたい。

↑「より多くの地域に」と誤読されることを防ぐために、読点を必要とします。

ただし、この例文の場合は、読点を打つことによって誤読を避けるというのはベストの方法ではないと思います。

改善例の1つとして、「地域になじみのない人にも、より多く、コミュニティ活動に参加してもらいたい」という文にリライトすることを提案します。

9. よく使われる別の意味の表現と区別したいとき

【例】

この製品により、多くの電力を節約することができます。

↑「より多くの電力」と誤読されることを防ぐために、読点を必要とします。

ただし、この例文の場合は、「この製品によって多くの電力を節約」とすることもできます。

10. ひらがなばかり、漢字ばかり、カタカナばかりが続く場合

【例】

そのようなことは、まっぴらごめんです。

↑文意が通じるならば、読点を打たなくても良いでしょう。

●まとめ

阿部紘久『文章力の基本』が掲げる「読点がほしいところ10項目」のうち、本当に読点がほしいところは一つもありませんでした。

より正確にいうと、読点を必要とする理由が異なっているため、10項目のすべてが的外れな指摘になっています。

どんな場合に読点を打つべきかについて、現時点では明確なルールが定められておらず、各人の考えに委ねられています。

共通認識や規範はなきに等しい状態なのです。

そのため、誤解を招きやすい文章が日常の随所に散見されます。

規範に縛られ、個々人の表現の自由が制限されるようでは本末転倒ですし、規範に反する文章表現があっても良いと思います。

しかしながら、言語文化の水準向上をはかるために、文法(言語体系の規範)を追求することも必要です。

読点の打ち方について、必要最低限の規範はあったほうが良いと私は考えます。

読点の打ち方について参考にしてほしいのは、当ブログが提案する5つのポイントです。

【読点を打つべきポイント】

●語句を対等に並べる場合

●長い修飾語が2つ以上ある場合

●倒置文の場合

●重文(主語と述語を持つ文が2つ以上含まれる文)における文の切れ目

●助詞を省いたとき

この5点にあてはまらない場合は読点を打っても打たなくても良い、と考えて差し支えないでしょう。

必要最低限の読点をおさえておけば良いのです。
自分の文章には「、」が多いなあと思う場合は、怖がらずにどんどん省略しちゃっていいと思います。

関連記事→読点の打ち方を完全マスター!! その4

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