「読点の打ち方」を完全マスターしましょう。
文のどこで読点を打ったら良いか。
迷ったときに目安としてほしいのはズバリ、次の5点です。
例/東京、川崎、横浜、横須賀、三浦の暴走族が一堂に会した。
例/頭の回転が速くてよく気が利く、この店で一番人気の、優秀な販売員に担当してもらいたい。
例/だから言ったでしょう、ママが、遊んでばかりいないで勉強しなさいって。
例/時が経ち、世間知らずだった少女も大人の女になった。
例/コーヒー、いただきます。
この5点にあてはまらない場合は読点を打っても打たなくても良い、と考えて差し支えないでしょう。
というのが私の意見ですが、日本サービスマナー協会理事長 澤野弘監修『きちんと伝わる! 文章の書き方』にはどう書かれているか、見てみましょう。
●『きちんと伝わる! 文章の書き方』が掲げる「読点の打ち方ルール14項目」
日本サービスマナー協会理事長 澤野弘監修『きちんと伝わる! 文章の書き方』では、「読点の打ち方ルール」が14項目にものぼります。
「ルール」というからには、ぜひとも守る必要のあるものです。
その点をしっかりと踏まえたうえでの「ルール」なのか、という視点から検証してみましょう。
↓(黄色の枠で囲んだ箇所は、当ブログ用に私が加筆しました。)
【読点の打ち方ルール】
1. 長い主語・述語・目的語のあとに打つ
【例】
かつて若者の人気を集めていた車も、今は海外でしか売れない。
●例文の場合は、後半部分の述語が短いので、読点を省略し、
とすることも可能です。
●修飾語が長いために、主語と述語のいずれも長くなった場合や、主語・述語・目的語がいずれも長くなった場合には読点が必要です。
「長い修飾語が2つ以上ある場合は読点が必要」と覚えておけば十分です。
2. 2つの意味にとれる文では誤解を防ぐ位置に打つ
【例】
先生は、熱心に絵を描く生徒にアドバイスした。
先生は熱心に、絵を描く生徒にアドバイスした。
例文は主語と述語が2つある重文構造なので、読点が必要です。
3. 接続詞・逆接の助詞のあとに打つ
【例】
しかし、どこを探しても見当たらなかった。
とすることも可能です。
4. 原因・理由・条件などを表す節のあとに打つ
【例】
工事期間が延びてしまったので、コストがかさんだ。
「原因・理由・条件などを表す節のあと」だからといって、必ずしも読点を打つ必要はありません。
5. 状況・場の説明のあとに打つ
【例】
12月に誰もいない草原を歩いていると、見慣れない花が咲いていた。
「状況・場の説明のあと」だから読点を打つわけではありません。
6. 時間や場面が変わるところに打つ
【例】
彼女は3年前に結婚して、今はふたりの子どもを育てている。
「時間や場面が変わるところ」だからといって、必ずしも読点を打つ必要があるわけではありません。
7. 引用を示す「と」の前に打つ(引用カッコの代用)
【例】
毎日続けることが成功の鍵だ、と先生はおっしゃっていた。
読点は、引用カッコの代用とすることはできません。
たとえば────
という文では、どこからどこまでが先生の言った言葉なのか不明瞭です。
よって、
「毎日というのはなかなか大変だけれど、毎日続けることが成功の鍵だ」と先生はおっしゃっていた。
毎日というのはなかなか大変だけれど、「毎日続けることが成功の鍵だ」と先生はおっしゃっていた。
というように、先生の言葉を「 」で括る必要があります。
8. 時を表す語のあとに打つ
【例】
7月1日、彼との再会を果たした。
とするなら、読点は不要です。
9. 名詞や動詞に修飾語が2つ以上つくとき、それぞれの間に打つ
【例】
その店には、教育に関する、入手が困難な、価値の高い本が集められている。
長い修飾語が2つ以上つくときは、読点を打つ必要があります。
例文の場合は、短い修飾語が4つあり、その並び順が適切でないために、読点を必要とします。
とすれば、読点は一箇所で済みます。
ちなみに、長い修飾語を先に出し、短い修飾語を後に出すようにすると、文をまとめやすくなります。
10. 語句を並列的に並べるとき、それぞれの間に打つ
【例】
私の実家では、お米、野菜、果物は手作りしていた。
とすることもできます。
11. 言い換えや説明のとき、その間に打つ(「つまり」「すなわち」の代用)
【例】
もっとも安らげる場所、自分の部屋へ持ち帰りたい。
いずれにしても、副詞や接続詞の代用として読点が使えるかというと、必ずしもそうではないようです。
とすることが望ましいと思います。
そうでないと、「もっとも安らげる場所か(または)自分の部屋に持ち帰りたい」と解釈される場合もあります。
12. 挿入句があるとき、その前後に打つ
【例】
そんなやり方は、熟練者なら可能だが、私にはとうてい無理だ。
したがって、挿入句のある文は重文構造になるので、必要に応じて読点を打たなければなりません。
と同時に、例文は「私」と「熟練者」という2つの主語を持つ重文構造です。
とすれば良いでしょう。
13. 強調するとき、強調語句のあとに打つ
【例】
猫が、その光景を見ていたのです。
読点を打つことによって語が強調されるかどうかは、書き手の考えに託されます。
14. 格助詞を省略したとき、そのあとに打つ
【例】
その建物、私が幼いころに住んでいた団地だ。
(「その建物が」の格助詞「が」を省略)
助詞の代用として読点を打つ必要があります。
とすれば、より自然な印象の文になります。
●まとめ
日本サービスマナー協会理事長 澤野弘監修『きちんと伝わる! 文章の書き方』が掲げる「読点の打ち方ルール14項目」のうち、本当に読点を打つべき項目は3項目のみでした。
どんな場合に読点を打つべきかについて、現時点では明確なルールが定められておらず、各人の考えに委ねられています。
共通認識や規範はなきに等しい状態なのです。
そのため、誤解を招きやすい文章が日常の随所に散見されます。
読点の打ち方について、必要最低限の規範はあったほうが良いと私は考えます。
そこで皆さんに参考にしてほしいのが、当ブログで提案している5つのポイントです。
【読点を打つべきポイント】
例/東京、川崎、横浜、横須賀、三浦の暴走族が一堂に会した。
例/頭の回転が速くてよく気が利く、この店で一番人気の、優秀な販売員に担当してもらいたい。
例/だから言ったでしょう、ママが、遊んでばかりいないで勉強しなさいって。
例/時が経ち、世間知らずだった少女も大人の女になった。
・重文は、必ずといっていいほど読点を必要とします。
「ここで2つの文が分かれるから読点を打つ」と考えるようにしてください。
例/コーヒー、いただきます。
↑以上が「読点の打ち方完全マスター法」です。
今さら人に聞けない「読点の常識」、これでバッチリですよ。
要するに、必要最低限の読点をおさえておけば良いのです。
自分の文章には「、」が多いなあと思う場合は、怖がらずにどんどん省略しちゃっていいと思います。