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読書感想文/素敵なおじさまたちのステキな言説

投稿日:2018年2月10日 更新日:

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「この本を読んで、こんなことを考えた」

と思いつくまま書き出していくと、それも読書習慣の一部となります。

どんな本を読み、どこに感動したのか。それを記録に残すことにより、貴重な思い出のストックができます。

わずか数行のメモであっても、あるとないとでは大きく違います。

私の経験からいって、それは写真アルバムにも匹敵する「幸せの思い出貯蔵庫」です。

そんな貯蔵庫の中から、いくつかご紹介したいと思います。
ご笑覧いただけますなら幸いです。

●『伯爵夫人』蓮實重彦


蓮實重彦氏は、東大総長(元)、文芸評論家、映画評論家として名高い方だけあって、さすがの文章~濃密でエロチックだと思います。

でもこれ、80歳のときに書いたというから驚きです。

さらに蓮實氏は、本作で三島由紀夫賞を受賞した際の記者会見で「不機嫌じいさん」だったんですって。

記者団に感想を求められ、「嬉しくない。傍迷惑な話」というのは率直すぎて笑えます。

記者団に対し、「馬鹿な質問はやめていただけますか」と言い放ったというのもチャーミング!!

筒井康隆氏の書評が面白いので貼付します→

斎藤美奈子さんの書評もどうぞ~!→

●『街場の文体論』内田樹著


神戸女学院大学で開講された「クリエイティブ・ライティング」14講を書籍のかたちにまとめたものです。

「こういうふうに書けばいい点がとれる、高い評価を得られる」

というようなマニュアル的なものではありません。

むしろ、

「何をどう書けばよいのか自分でもわからないまま書いていくからいいのだ。
思わぬ発見があり、本当に書きたかったことが見えてくる。
そこから自分自身が成長していく」

と著者は説いています。

↑これにはとても勇気づけられました。

本書が例として挙げている家は村上春樹、三島由紀夫、橋本治、村上龍、司馬遼太郎、吉本隆明、と多彩で、ソシュールの『一般言語学講義』、ロラン・バルトの「エクリチュール」概念などにも話はおよび、著者独自の視点から突っ込んだ解説がなされています。

記号論、言語学、構造主義、構造分析といった難解な言説をわかりやすい言葉でパラフレーズしてくれているので助かります。

「学者のするむずかしい専門的な話を、市政のふつうの市民の日常的なロジックや語彙で言い換える」

という仕事は、欧米や韓国などではあまりポピュラーではないようです。
「わかる人にだけわかればいい」という感じなのでしょうか。

その点、日本では昔から、「外来のハイブロウな文化」と土着の日常生活との間に架け橋をつくることが盛んに行われ、特に出版業界はそうしたことに長けていますね。

ともあれ、これは読んでよかった、勉強になった、と心から思える一冊でした。

●『部屋の宇宙誌』海野弘著


海野弘さんの著作は都市空間をテーマとしたものが多いようで、劇場、庭園、広場について語ったものが色々とあります。

本書「部屋の宇宙誌」は、部屋を人間の精神が見える空間と捉えてその精神性を分析し、また、天井や壁、家具などが人間の感性にどのように働きかけるかを考察しています。

扱われているのは主にヨーロッパのインテリアで、ゴシック、バロック、マニエリスム、ロココなど、暮らしの中にある美術芸術が次々と紹介されます。

日本の建築や内装意匠との比較も興味深いものがあります。

名著だと思います!

初版が出た1983年に読み、とても気に入ったのですが、その後は引っ越しの際に手放してしまい、後悔して再度購入したものの、また手放してという繰り返しで、今回3度目の購入となりました。
もう放さない!!

●『思い出の作家たち 谷崎・川端・三島・安部・司馬』ドナルド・キーン著


谷崎「鍵」、川端「伊豆の踊子」「雪国」、三島「潮騒」、安部「カンガルー・ノート」など、もはや古典ともいえる作品の数々を再読したくなります。

なぜって、本書著者ドナルド・キーン氏の解説があまりに秀逸だからです!

昭和の時代、文学の世界には大物が何人もいて、精力的に書いていたのだなあと改めて感動しました。

今、こうした巨きな足跡を残す作家が果たして何人いるでしょう?

ほとんどいない、かもしれません。

痩せちゃだめだよ、日本文学!
ライトになっちゃだめ、重くていいんだからね!

と文学の世界の僻地で叫んでいる私です。

ついでに言わせてもらうと、作家というのは、まともな社会人じゃなくていいのよ〜変態でもいいのよ〜。

だって、川端「眠れる美女」なんか、ネクロフィリア(死体愛好)紙一重ですもん。
谷崎はマゾ、三島は死にたがりゲイでしょ。

思いっきり変な情熱があり、それを表現する文才があったから、すごい小説が書けたのでしょうね。
ごくノーマルな人だったら、何も湧いてこないかも〜と思うのです。

話がとんでもないほうへ行きそうなので、軌道修正しましょう。

三島の小説は構造がしっかりしていて、文章が明晰、かつ細部まで凝った造りで華やかです。
熟考、熟成の賜でしょうか。

その三島がノーベル文学賞をとりそこねた、と本書が言及しているのは興味深い点です。
いわく──

「ノーベル文学賞は候補者を地理的に制御しているが、ようやく日本の番がまわってきたとき、谷崎がすでに亡くなっていたのは嘆かわしい。
あのとき受賞したのが川端であり、三島でなかったのは、何かの行き違いだったかもしれない」

と著者は延べ、三島の受賞を阻んだ、デンマークの某作家のことにふれています。

そして──

「他の何にもまして求めていた世界的な認定を受けそこなったせいで三島は自殺したのだという声もある。
自分の得た賞の耐えかねるほどの重さに気づいたがために川端は自殺したのだという声もあるはずだ」

とも書いています。

ということは、デンマークの某作家が三島の受賞に反対しなければ、三島は世界の三島となって生き続け、川端もまた生き延びていたかもしれないわけですね。

歴史に「if」はないというけれど、

「もしもあのとき、こうだったら」

と考えると、現実がミステリー小説の世界そのもののように思えてきます。

●まとめ

今回は、以下の4冊をご紹介しました。

『伯爵夫人』蓮實重彦著

『街場の文体論』内田樹著

『部屋の宇宙誌』海野弘著

『思い出の作家たち 谷崎・川端・三島・安部・司馬』ドナルド・キーン著

関連記事→ヒリヒリするようなフィクションと現実

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