と思いつくまま書き出していくと、それも読書習慣の一部となります。
わずか数行のメモであっても、あるとないとでは大きく違います。
自分がどんな本を読み、どんなことを考え、どこに感動したのか。その記録を残すことにより、貴重な思い出のストックができます。
私の経験からいって、それは写真アルバムにも匹敵する「幸せの思い出貯蔵庫」となり得ます。
私の貯蔵庫の中から、いくつかご紹介したいと思います。
ご笑覧いただけますなら幸いです。
●『名作うしろ読み』斎藤美奈子著
木曽路はすべて山の中である。
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
──というように、名作文学の書き出しはみんなが知っているけれど、最後の一行は?
おぼえていないことが多いでしょう。
そこに目をつけて、ラスト一行から作品全体を吟味しなおしたのが。この本『名作うしろ読み』です。
見開き2ページに1作紹介なので、数多くの作品に触れられます。
どのページも面白い。
前から読んでも後ろから読んでも、楽しめます。
そして、数々の有名小説の新たな解釈に結びつきます。
たとえば、谷崎潤一郎『細雪』が雪子の腹下しで終わっているのには、私もかねがね割りきれない思いでした。
と本書で斎藤美奈子さんが書いてくれたので、ようやくスッキリしました。
近年、美奈子さんの新著お見かけしないなと思っていたら、2009.4~2015.3まで6年間も!本書の原稿を読売新聞に連載していたんですね。
知らずにいて損した気分です。
●『アフロ・ディズニー』菊地成孔+大谷能生著
2008年、慶應義塾大学文学部において行われた1年間の講義を基に編まれた本です。
テーマは「現代芸術」で、具体的には、
ということ、といって良いかと思います。
さらに具体的にいうと、
それを「ポリリズム」といい、ポリリズムの雑多性、混血性、多文化共生のカオスに現代芸術の肝がある。
ということでしょうか。
著者のおふたりはジャズミュージシャンで、音楽批評もなさり、楽理や楽曲分析というむずかしい話も面白おかしく説く頭の良さ、センスの良さがウケてます。
東大・藝大・国立音大など、あちこちから引っ張りダコだったようです。
私も菊地さん大好き。
なのでつい新宿歌舞伎町へ足が向かってしまう今日この頃です。
共著者の大谷さんはご近所(横浜黄金町)のようなので、勝手に親近感をもっています。
●『この話、続けてもいいですか。』西加奈子著
エッセイ集です。
以前読んだエッセイ集『ごはんぐるり』『まにまに』よりも格段に面白いのでオススメしたくなりました。
特に面白かったのは、ネガティブな友人たちの話で、じつに笑えます。
あと、お酒飲みまくる件も、大阪のねえちゃんという感じで笑ってしまいました。
東京だと中央線?荻窪とか西荻窪とかに、こういうノリの女の子が多いような気がするのですが、偏見かしら?
さて、西加奈子さんの書くものはたいてい好きなのですが、正直なところ、いくら巧いといっても、昔の大作家のような濃密な文章は期待できないと思っていました。
ところがこのエッセイを読むと、筆力ありありじゃん!と感心することしきりです。
笑わせる文章ってすごいなあと。
●まとめ
今回は、以下の3冊をご紹介しました。
『アフロ・ディズニー』菊地成孔+大谷能生著
『この話、続けてもいいですか。』西加奈子著