文体模写(パスティーシュ)

水野敬也氏の文体模写「1年に5つの節句があるって、自分知っとるか〜」

投稿日:2018年1月31日 更新日:

この記事のひとつ手前の記事は、

「お雛様をいつまでも飾っておくと婚期を逃すって本当?」

という内容でした。
前記事→ひな祭り、お雛様をいつまでも飾っておくと婚期を逃すって本当?

この前記事を有名作家の誰かが読み、手を加えるとしたらどんなふうにするのかな〜〜

という妄想的前提に立ち、遊び心で文体模写をしてみたのが本記事です。

前記事と本記事、併せてご笑覧いただけますなら幸いです。

さて、まずは文体模写について少しお話ししたいと思います。

文体模写、つまり他人の文章スタイルを真似て書くことは、筆力向上におおいに役立ちます。

ですからこれは、暮らしに役立つ歳時記情報をゲットしながら、ついでに言葉力アップグレードをはかるという、一粒で二度おいしい企画なんですね。

年間シリーズ企画としてお届けする予定で、今回はその第16回目、水野敬也氏バージョンをお届けします。

暮らしに役立つパスティーシュ(文体模写)
第16回・水野敬也氏バージョン

●『夢をかなえるゾウ』の水野敬也氏だったら、きっとこう書くに違いない・・・

「1年に5つの節句があるって、自分知っとるか〜」

ある日、家に帰ったらガネーシャがいた。

ガネーシャはヒンドゥー教の神様で、象の顔かたちをしている。
障害を取り去り、また財産をもたらすことから、事業開始と商業の神様、また学問の神として崇められている。

ガネーシャっていうのはインドの神様だと思っていたが、どうして日本にいるのだろう。

昨日、神社にお参りしたから、さっそくご利益が授けられたのだろうか。
でも、日本の神様じゃないはずだけどなあ。

などと、ぶつくさつぶやいていると、ガネーシャが突然、大きな声でこう叫んだ。

「自分、成功したいんやろ。にしては、世の中のことなーんも知らへんな。教えたるから、ええか、よく覚えとけよ」

そしてガネーシャは、声を少し落として、こう続けた。

まず第一に、人にも自然にも節目というもんがある。
節目とは節句のことや。
1月7日は人日(じんじつ)の節句。
七草粥を食べて1年の豊作と無病息災を願うわけやな。
3月3日は上巳(じょうし)の節句。
桃の花が咲く時季だから「桃の節句」とも言いよる。
桃の花や菜の花、自然の生命力をもらって厄災を祓う。
自分、ハマグリのお吸いもん好きか。
あれ、うまいでえ。
自分もつくって食べてみい。
アサリは湯がたってから、ハマグリは水から、やで。
ハマグリ、うまやろ?
それに、いろいろ使い途のある貝なんやで。
ぴったりと合う貝は一組しかないさかい、貝合せっちゅう遊びにも使われるんや。
おめでたいしるしとして婚礼の汁物にも最高やで。
5月5日は端午(たんご)の節句やな。
強い香気を放つ菖蒲(しょうぶ)や蓬(よもぎ)を軒に吊すとええで。
それから菖蒲湯に入って無病息災を願うんや。
菖蒲はえらい。
だから端午の節句は「菖蒲の節句」とも言うんやで。
7月7日は七夕(しちせき)の節句だっちゅうのは、知っとるやろ。

中国に古くから伝わる「牽牛・織女星の伝説」をもとに、乞巧奠(きこうでん)っちゅう行事があったんやな。
そこに、日本古来の「棚機津女(たなばたなつめ)の信仰」が混ざり合って、今の七夕行事が完成したっちゅうわけや。

ま、詳しいことは7月になったらまた教えたる。

9月9日は重陽(ちょうよう)の節句。
菊を観賞する宴をひらいて、菊に長寿を祈る日や。
これも9月近くなったら、詳しく教えたるでえ。
ともかく、この5つの節句をちゃんと実行すれば、思いもよらんかった色んな経験をさせてもらえる。
つまり、自分が成長できるっちゅうことやねん。

(つづく)

関連記事→東海林さだお氏の文体模写「梅雨などつゆ知らず、毎日楽しいぼく」

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