私は「神戸まとめの達人運動」に興味をもち、実際に使用されている課題文を拝読しました。
そして、あることに気づいたのです。
まず一つは、
もう一つは、
「まとめの達人運動」に取り組んで読解力をつけ、伝えたいことを適切に伝える力をつけた生徒さんたちの中から、
と頼もしい声があがるようになることを、私は心から願っています。
これは決して皮肉などではなく、他人が書いた文章をより読みやすくわかりやすい文章に書き直す能力、それは究極の文章力であり、それを可能にするレベルの読解力と伝達力を生徒さんたちに獲得させることこそ、「まとめの達人運動」が目指すべき最終目標であろうと言いたいのです。
そうした意味で、やや難解な文章を課題文に採用するのはとても良いことでしょう。(←これはちょっと皮肉)
一読で理解するのは絶対に無理、しかもそれをたった15分で150文字に要約したり、誰が読んでも理解できる文に書き直したりするのは、プロのライターでも「かなりきびしい」と音を上げるほどの、こじれた文章であってこそ、課題文として適切です。
ならば、ということで、その難解な文章をご用意しました。
お読みいただくとおわかりのとおり、かなり、こじらせています。
はっきりいって、理解に苦しみます。
典型的な悪文です。
そんな難問中の難問を投げかけて恐縮ですが、あなたは次の例文を一読ですっと理解することができるでしょうか。
ぜひ試してみてください。
●「誰が何をしたのか」が読み取りにくい文
<質問>
・道に空き缶を置いていたのは誰ですか?
1.あまり運がなかった人
2.ホームレスの人
3.この文を書いた人
(正解はおそらく、2)
・誰が誰にお金をあげたのですか?
1.あまり運がなかった人→ホームレスの人
2.かわいそうに思った人→あまり運がなかった人
(正解はおそらく、1)
・いくらあげたのですか?
1. 5,000円
2. 10,000円
3. 2,500円
(正解はおそらく、3)
<ここが残念!>
・最初の1文に、主語が2つ登場しています。
(「あまり運がなかった人が」「ホームレスが」)。
↑そのため、「誰が何をしたか」がわかりにくくなっています。
・あげた金額が不明なので、「倍の5,000円が当たった」と言われても、すぐにはピンときません。
<解説>
・この例文が伝えようとしているのは、「人助けをすると、予想外の幸運が舞い込む」ということでしょう。
・さらに伝えたいのは、「大切なものを手放してみるのもいいことだ。運が悪いと思っている人にも、思わぬ幸運が舞い込むかもしれない」ということでしょう。
・最も伝えたいことを早く伝えようと気が急いたのか、文の冒頭で「あまり運がなかった人が」と結論をほのめかしているため、混乱をきたしてしまいました。
↑その点を改善すべく、「ある人が」と主語を書き換えました。
●読めば読むほど理解に苦しむ悪文
さらなる難問に挑戦してみてください。
<質問>
・「別種の驚き」とは、何を指しているのでしょう?
1.著者がこれまでに2万人以上の恋愛相談に乗っていたこと
2.著者が10年の会社員経験をもっていること
3.怪しげな情報商材と違い、なかなかの良書であること
4.男性向けに書かれた恋愛指南書であること
(正解はおそらく、2と4)
<ここが残念!>
・この例文を書いた人が「何に、どう驚いたのか」について、一言も言及されていません。
<解説>
・ある種の「驚き」があり、さらにまた別の「驚き」があったことを、順を逐って説明しました。
・驚いた理由を述べる必要があるので、例文から推察される内容を加筆しました。(最後の2行はオマケです)
●まとめの一言
新聞・雑誌・書籍、そしてネット上にも、いわゆる悪文を多数見つけることができます。
というような文章に出会ったら、何故わかりにくいのか、ほんの一瞬でいいので考えてみてください。
そして、できれば、その悪文を手直ししてください。
読解力をつける方法、そして、伝えたいことを適切に伝える力を育成する方法として、これにまさるメソッドはないと思います。