読書感想文

読書感想文/横浜にまつわる素敵な本をご紹介

投稿日:2017年6月13日 更新日:

横浜の街が好きです。

横浜を描いた本も好きです。

横浜で出会った、横浜の本をご紹介したいと思います。

●西洋の見える港町横浜

『西洋の見える港町横浜』中野孝次著

著者の中野孝次氏と版元の草思社は、『清貧の思想』という著作に始まる縁だそうです。本が大ヒットしたので、お互い、「相性がいい」と思っていらしたことでしょう。

『西洋の見える港町横浜』という本も草思社から出ています。
執筆当時(1997年)、著者の中野孝次氏は神奈川近代文学館館長でした。

おそらくそのことと関係がありそうですが、本書では横浜出身の作家と作品について、かなりのページが費やされています。
中島敦、有島武郎、長谷川伸、吉川英治、獅子文六、北林透馬、山本周五郎、大佛次郎、荒畑寒村、といろいろ出てきます。

みんな横浜を愛していたんだなあ。

と感慨深いものがあります。

●横浜的・野毛的

『横浜的』『野毛的』平岡正明著

横浜を語らせたら誰よりも面白く、独自の都市論を構築して横浜に貢献したと思われるのは、平岡正明さんです。

平岡さんが横浜について書いた本は、『横浜的』『野毛的』など、いろいろあります。

第一級の都市論、だと思います。

惜しい方をなくしました。

https://www.amazon.co.jp/gp/product/4759251189/ref=dbs_a_def_rwt_hsch_vapi_tu00_p5_i11

●無国籍

『無国籍』Chen Tien-shi著

横浜中華街で、とあるお店のママさんに勧められ、本書を購入しました。
娘さんが書いたというのです。

その娘さんの従姉にあたる楊逸さんが第139回芥川賞を受賞した作品『時が滲む朝』の文庫本もレジ付近に置いてあり、こちらは既読でしたが、サイン入りだというので、併せて購入しました。

ママさんがいろいろ話を聞かせてくれました──

このお店のご主人とママさんご夫婦はともに中国大陸の出身ですが、若い頃に台湾へ移り住んで中華民国の国籍となり、その後日本へ渡ったそうです。

日本で暮らした数十年の間に、ご夫婦の生まれ故郷は政治体制を大きく変え、中華人民共和国が建国されました。

その中国と、日本は国交を断絶しました。

その後20数年を経て、1972年に国交正常化がなされたということは、皆さんもよくご存じのとおりです。

しかし、国交正常化に伴い、日本は、それまで国交のあった中華民国に断交を通告したということを、ご存じでしたか。

中華民国、というよりも台湾といったほうが、私たち日本人にはなじみ深く、台湾へ旅行する人は昔から数多くいました。

その台湾と、日本は国交がないのです。

なぜなら、中華人民共和国と中華民国は対立関係にあるからです。

日本が中華民国と断交に踏み切った当時から今も、中華民国の国籍を有する在日華僑の人々は、国交がない国の民という存在です。

日本で生活していくうえで何かと支障が生じることは必至です。

ならば、国籍を中国に戻すか、あるいは日本国に帰化するという方法もあったでしょうが、このママとパパの場合は、そのどちらの選択肢も選ばなかったのです。

彼等が選んだのは、どこの国にも属さない「無国籍」でした。

日本も中国も選びたくない、というのが正直な気持ちだったとのことです。

それでいろいろな人に相談し、情報を集めていくなかで、

「国が守ってくれなくても、無国籍者は国際法により基本的人権を守られる」

という情報を拠り所に、

「無国籍もひとつの国籍だ」

という考え方に行き着き、決心なさったそうです。

パパとママと共に、お子さんたち6人も無国籍となりました。
そのうちの一人が、当時まだ1歳だった、この本の著者です。

それから20数年の後、本書が書かれた2010年当時の状況として、日本に「無国籍」と登録されている人が1397人いらしたほか、登録されていない人や、本人に自覚がないまま無国籍状態となっている人はさらに多い、と記されています。

国籍とは?

民族とは?

著者は自らのアイデンティティの基盤であるこの問題について、深く掘り下げて考察しています。

国家と家族の歴史に真正面から向き合った、体験的ノンフィクションです。

●まとめ


今回は、以下の5冊をご紹介しました。

『西洋の見える港町横浜』中野孝次著

『横浜的』平岡正明著

『野毛的』平岡正明著

『無国籍』Chen Tien-shi著

『時が滲む朝』楊逸著

関連記事→読書感想文/凄まじいまでの暴力と官能と憂鬱

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