「書き間違い」をしやすい語はたくさんあります。
おかげで、私もずいぶんと恥をかいてきました。
ひょっとするとあなたも、知らないうちに恥をかいているかもしれません。
たとえばの話ですが──
と手紙を送ったなら、先生はきっと喜んでくれるでしょう。
社交辞令だとわかっていても、自尊心をくすぐられて気をよくする、ということが実際にあるのです。
ただし、そこに書き間違いがあると、読み手は気分を害します。
「授賞式」を「受賞式」と書いたりしてはいけませんね。
そのほか、どのような語に気をつけるべきか、例を挙げていきます。
●過分なお褒めに授かりまして?
「お褒め」というものは、授かるものではなく、与る(あずかる)ものです。
「預かる」ではなく、「与る」です。
というのが正式な言い方・書き方です。
という意味ですね。
「恩恵に預かる」
↑こういう言い方・書き方は誤りです。
正しくは、
です。
●「与る」という言葉の2つの意味
「与る」という語には2種類の意味があります。
ひとつは、「主に目上の方から、好意の表れとして、あることを受ける・こうむること」。
何を受ける・こうむるのかといえば、「恩恵、お招き、お褒め」といったことが挙げられます。
「与る」という語のもうひとつの意味は、「関わりをもつこと・関与すること」。
「事業計画の立案に与る」というように遣います。
↑この場合は、「与る」を「関わる」と言い換えることも可能です。
●亀の甲より年の効?
という慣用句があります。
「甲」は、亀の甲羅のこと。
「亀は万年生きる」と言われており、それに比べれば、人間などいくら長生きをしたとしても80〜100年のことですから、とてもはかなく、短い一生だと感じられます。
それでも、年長者が経験から身につけた知恵や技術は貴ぶべきだ、というポジティブな意味を持つ語が、「亀の甲より年の功」です。
厳密には、「亀の甲より年の劫」と書くのが正しいとされています。
「劫」はきわめて長い時間のことを指し、長年の功績という意味がこめられています。
年長者に向かって、
などと書いたりしていませんか。
年の「効」と書くのは間違いです。
年の「功」と書くなら間違いではありません。
●枯れ木も山の賑わい?
仮に、あなたが学生時代の恩師に、結婚式の招待状を送ったとしましょう。
もしそこにこう書かれていたら、恩師はどうお思いになるでしょう。
先生はおそらく、というか必ず、額に青筋立ててお怒りになるはずです。
「枯れ木も山の賑わい」という語の意味は、
という意味です。
ですから、「枯れ木も山の賑わいと申します」という語は、主に、自分を謙遜して言うときに遣われます。
殊に、高齢者が若い人たちに交じって何かをする際など、よく口になさるようです。
私のような、老いてつまらない者でも、いれば多少の賑やかしになるでしょうから、ぜひ参加させてもらいます」
というように遣われるわけですね。
と陰で人を揶揄するときに遣われたりもします。
「枯れ木も山の賑わい」という言葉は、遣い方を間違えると、とんでもないことになるわけですね。
取り扱いに注意しましょう。
●草葉の陰で見守って?
仮に、あなたは学生時代に書道部に所属していたとしましょう。
当時お世話になった部活指導の恩師へ手紙を書き、書道展入選を果たしたことを手紙で報告したとしましょう。
その手紙の末尾にこう書かれていたら、恩師はどう思われるでしょう。
先生は、「俺はまだ死んじゃいないぞ!」と、さぞご立腹のことでしょう。
「草葉の陰で」という語は、死者について語るときに用いるものです。
というようなときに遣うのです。
●最高調?
みんなノリノリで絶好調でした!」
というように、上司や先輩であっても、気のおけない相手に対してならば、カジュアルな言葉遣いのメールを送ったりすることもありますね。
そこで「みんなノリノリで最高でした。最高調!!」などと書き間違えをしないように気をつけましょうね。
それは二重の間違いをおかすことになります。
場の雰囲気が盛り上がり、いわばクライマックスに達しているような状態をいうときは、
「最高潮」
と書きます。「調」ではなくて「潮」です。
「ピークです」
という表現でも、盛り上がりの絶頂感を伝えることができます。
●気遅れ?
場の雰囲気や勢いに圧倒されて怖じ気づく・ひるむことを「気後れする」といいます。
というふうに遣います。
モジモジして一歩出遅れる状態を言い表す言葉なので、つい、「気遅れ」と書いてしまうこともあるでしょう。
パソコンもたまに「気遅れ」と漢字変換したりすることがあるので困ります。
でも、↑それは間違い。
●まとめの一言
恩師、先輩、上司など、目上の方に手紙やメールを書くときは、折り目正しくフォーマルな書き方をすると、好印象を与えることができます。
ビジネスシーンにおいてはもちろんのこと、プライベートな用件で手紙やメールを書くときも、できるだけフォーマルな筆致を心がけ、語の誤用や書き間違いには特に気をつけたいものです。
きちんとした文章、明快でわかりやすい文章を書けるようになると、周囲の人があなたの意見に耳を傾け、よい反応を示してくれるようになります。
文章力をつけることにより、仕事も人間関係もうまくいきだす可能性は高いのです。
大変役に立つ記事をありがとうございました。
ところで一つ気になったのですが、「陰で人を揶揄するときに遣われたりもします」は「使われる」ではないでしょうか?
トクナガさん、コメントをありがとうございます。ご指摘の件は、おっしゃるとおりでもあり、「使う」と「遣う」のどちらでもよいとも思います。「言葉遣い」という言葉があるので、この場合は「遣う」としてみました。