私は職歴30年超のライターで、幅広い分野で文章を書く仕事に携わってきました。
ライターになりたての1980年代には主に広告コピーライトを手がけ、その後はブライダル情報誌『けっこんぴあ』記事作成のための取材および原稿執筆が中心となり、そこからさらに複数の出版社の依頼を受けて書籍原稿の代筆をさせていただくようになりました。
書籍原稿の代筆というのは、本の表紙に名前の出る人(著者)に成り代わって原稿を書くことです。
また、著者が下書きしたものを書き直す、つまりリライトする場合もあります。
そのようにして私が携わってきた書籍は、この20年間で100冊を越えます。
前述のように「書く仕事」をいろいろと経験しているうちに、いつしか私は、リテラシー(読み書き能力)を高める手法について研究する立場となり、現在はこの分野を専門としております。
リテラシー向上の手法はさまざまあります。
自分の書いた文章を、私のようなライターやプロの添削士に直してもらうというのも、ひとつの方法です。
ただ、そうすれば必ず文章が上達するというわけではありません。
これまでに延べ100人以上の文章をリライトしてきた私の経験からいって、人は自分の間違いをなかなか認めようとしません。
誤字脱字や言い回しのおかしな点など、改善ポイントを指摘すると、その場は納得してくださるのですが、しばらくするとまた、前回と同様の誤字や語句の誤用が散見されるほか、相変わらず意味不明の文を書き連ねているという例が実に多いのです。
ですから、「文章の病はぶり返す」と心しておくのが賢明です。
自分の欠点は見えにくいのです。
ならばいっそ、「人のふり見て我がふり直せ」でいくしかないでしょう。
そこで私が推奨したいのは「悪文リライト法」というものです。
他人が書いた「ダメ文章」をリライトすることにチャレンジしてみるといいのです。
リテラシー向上の手法として、これは特に効果が期待できます。
他人のダメ文章をより良い文章にしようと頭を使っているうちに、自然と筆力が向上していくのです。
難解な文章を一読ですっと理解できる素晴らしい文に書き換えることも、できるようになります。
そこまでくれば、病はもうぶり返しません。
自分の文章のダメな点にいち早く気づき、サッと直すことができるようになります。
思いのままに言葉を操り、「読ませる」文を綴ることが可能になるのです。
↑上記のことを1人でも多くの方にお伝えしたくて、私は2015年に自著『言いたいことが伝わる 上手な文章の書き方』を上梓しました。
無名の新人でも商業出版できる
ライター歴は長くても、作家として無名の新人だった私が本を出したので、「自費出版? 新風舎とか幻冬舎ルネッサンスとかに何百万か払って、自分の本を作ってもらったのかな」と人に聞かれることがよくありました。
しかしそうではなく、秀和システムという中堅出版社を介しての商業出版なのです。
私の本は、出版社および出版取次業者の流通ルートを通じて全国の書店に並びました。
Amazonのサイトでも販売されました。
そして、いくつかの書評サイトで取り上げられたおかげもあって、次第に注目度が高まり、刊行から1年以内に増刷の運びとなりました。
当然のことながら、出版社は売れた部数に応じて、著者である私に印税を支払ってくれています。
出版社、取次業者、書店、著者、こうしたすべてが収益を上げているわけです。
こうなればもう、堂々たる商業出版と言ってよいでしょう。
私のように作家として無名の新人であっても、商業出版をすることが可能なのです。
自費出版なら簡単?
商業出版をするためには、出版物を全国に配布して販売するルートを持っている出版社の存在が不可欠です。
「でも、どうすれば出版社に認めてもらって本にしてもらえるのか」
「そもそも、どうすれば出版社に自分の原稿を見てもらえるのかわからない」
という人は少なくないでしょう。
「たくさん売れなくてもいいから、とにかく早く本を出したい」
という人もいるでしょう。
「書きたいことはあるけれど、どのように原稿をまとめればいいのかわからない」
という人もいるでしょう。
そういう場合は、「お金さえ出せば、あとは出版のプロが面倒みてくれるのだから、自費出版でいいや」という気になるかもしれません。
「自費出版」というキーワードで検索をすると、出版をサポートする会社の情報がいろいろ出てきますね。
各社それぞれにサポート内容も費用も違うので、見比べてみるといいかもしれません。
紙の書籍か電子書籍か
「電子書籍」という形で自費出版するという方法もあります。
これは既存の紙媒体での出版とは一線を画す手法で、出版社と交渉する必要が一切ありません。
インターネットが使える程度の知識があれば誰でも、いつでも、初期費用ほほゼロで、自著の出版が可能です。
しかしそれでも、紙媒体の自費出版であれ電子書籍であれ、紙の書籍を商業出版した場合と比較すると、「自分の本を出した!!」という満足感は著しく稀薄なものとなります。
なぜなら、自分の原稿を本にするまでのプロセスにおいて、試行錯誤がほとんどないからです。
要するに、独りよがりのまま結末を迎えてしまうわけですね。
書き手にとって、編集者ほど熱心な読み手はいません。
編集者が忌憚のない意見を聞かせてくれるおかげで、書き手は自分のおおよその力量を推し量ることができ、そこから奮起して、より良い原稿に仕上げるために全力投球していくのです。
編集者不在のまま事を進めれば、クォリティアップの機会は訪れません。
書いた本人は「よく書けてる」と思っていても、編集者は「これじゃダメです」「おもしろくない」「もっと読者を惹きつける書き方をしないとね」などと、いちいちうるさいことを言うでしょうから、つらい思いをすることは必至です。
それでも、そうした難関を乗り越えてこその喜び、達成感というものが、商業出版にはあるのです。
編集者による篩い分け、いうなれば原稿の質を見て淘汰する仕組みが有効に機能してはじめて、出版物全体のクォリティ水準が保たれる、という点も忘れてはならないでしょう。
まとめ
せっかく本を出すのですから、独りよがりではなく、自分の限界を越える努力をして、編集者、出版社、取次業者、書店、そして書いた人も読む人もみんなが「よくやった!! いい本だ!!」と感動するものにしたいと思いませんか。
だから目指すは商業出版!! と私は考えています。