電子書籍の市場には、出版関連の専門家のみならず、出版にはまったく縁の無かった素人も、少なからず参入しています。
プロの作家やイラストレーターや写真家でなくても、誰もが自分の作品を世に出すチャンスを与えられているのです。
いっぽう、紙の書籍の場合は(自費出版や自主出版は別として)、著者が単独で本をつくることはまずありえません。
出版物を制作する行程には、必ず編集者が関わっています。
作品がある一定のレベルに達していなければ、編集者に認めてもらえません。
したがって、その作品が書籍という商品になることは、まず望めないのです。
●編集者という存在のメリット・デメリット
私は何度か編集者のもとに原稿を持ち込み、断られた経験があります。
と歯ぎしりする思いでした。
と思うこともありました。
ですから、今こうして自由に電子書籍を出せるようになったことがうれしくてたまりません。
しかし、うれしがってばかりもいられないのです。
自分の原稿は、はたして有料で配信する価値があるのか否か、著者自らが判断しないとならないからです。
ダウンロード価格を決めるのも、著者自身です。
Kindle Direct Publishingの場合、有料配信するなら2つのコースが設けられています。
そこまではいいのです。
問題は、そこから先です。
印税35%コースを選んだとして、最低価格の99円に設定しても、ダウンロードしてくれる読者がほとんどいないとしたら……。
その本はお金を出して読む価値がないと見なされている、ということです。
もしくは、売り方を間違えているということになります。
本の内容、または企画そのものを見直す必要があるかもしれません。
書籍タイトル、装幀デザイン、紹介のしかたも、さらに工夫を加えるべきなのでしょう。
どう見直し、どう工夫するのか。
↑これも自分ひとりで考えなければなりません。
個人で電子書籍を出す場合は、頼る相手がいないのです。
電子書籍デビューを果たしたはいいけれど、見向きもされず、どうしていいかわからないと嘆いている人は少なからずいることでしょう。
私も、原稿を書き上げたときはいくらか自信があったのに、思ったほど売れず、自信をなくしてしまうことがありました。
と落ち込みました。
●読者という存在が、すべてに答えを出す
何ヶ月もかけて書いたものが、たった99円にも値しないのか。
ただでも読んでもらえないほど、ひどいものなのか──
と今の私は前向きにとらえています。
といっても、
というような単純な話ではないのです。
紙の書籍か電子書籍かにかかわらず、良書であっても売れ行きが悪く、絶版になってしまったものは過去にいくらでもあります。
かたや、
と思うようなものがベストセラーになっていたりするのです。
しかしそれでもなお、自著を有料で配信した以上、
と私は考えています。
思うように売れないなら、その本は売り方を間違えていると思ったほうがいい、というのはすでに述べたとおりです。
読者はついたけれど評判が悪い、という場合はどうとらえるべきなのでしょう。
↑それこそが問題であり、真剣に考えるべきことだと私は思うのです。
どれだけ売れたかではなく、どんな反響があったかにより、その本の価値が示されるのではないでしょうか。
アマゾンのカスタマーレビューでは、見ず知らずの読者が読後感や意見を投稿してくれます。
それらを目にしてはじめて、著者は自分の作品の価値ないしは質、レベルといったものを窺い知ることができます。
「読者が答えを出してくれる」というのは、そういうことなのです。
●まとめ
電子書籍は、企画・取材・執筆・タイトルの決定・宣伝用のコピー作成・表紙デザイン・価格設定まで、すべてを自分自身で行う必要があります。
表紙デザインは専門業者に依頼することができますが、「これでいこう」と最終決定を下すのは著者自身です。
そのデザインを見た人がどう感じるか、買ってみようという気になってくれるかどうか、そして、読んでくれた人がどう評価するかがわかるのは、本を出したあとなのです。
編集者と二人三脚で本を出す場合は、そもそも企画の段階で、編集者から客観的な意見を聞かせてもらえます。
編集者不在の状態で作業を進めると、さまざまなデメリットが生じます。
「編集者なんか邪魔だ、いなくなればいいのに」なんて言ったら、罰が当たりますね。