前回は「商業出版のすすめ」について書きました。
「商業出版のすすめ」
せっかく本を出すのですから、自費出版よりも商業出版を目指したほうがよいですよ、という内容でした。
そして今回は──
「どうすれば自分の原稿を出版社に見てもらえるか」
「出版社に認められて本にしてもらうにはどうすればよいか」
と悩んでいる方々のために、少しでも役立つ話をしたいと思います。
小説ならば、文学新人賞に応募
あなたの書いたものが小説ならば、文学新人賞に応募するというのが最も正統的なアプローチ方法でしょう。
「公募新人賞」をキーワードに検索すると、120近くもの公募新人賞がヒットします。
そうした新人賞をすべてリストアップしたサイトもありますから、その一覧表をよく見てみましょう。
純文学、ライトノベル、ボーイズラブ、ティーンズラブ、エンターテイメント、推理ミステリー、ホラー小説、アダルト、歴史小説、時代小説など、さまざまなジャンルに新人賞が設けられていることがわかります。
その中から自分が最も狙いたい賞を選び、公式サイトにアクセスすれば、応募方法などの詳細を知ることができます。
そして作品を練り上げて応募し、運良く受賞することができれば、たいていは商業出版へとつながります。
持ち込み原稿は無視される
しかし、新人賞受賞の幸運を掴むのは、年にたったひとりだけ。
応募者が2000名いれば、2000分の1の確率です。
新人賞を獲る以外にも作家としてデビューする方法はあるでしょうが、「これ読んでください」と出版社に原稿を送りつけても、日々の業務に忙しい編集者はまず読んではくれません。
たとえどれほど熱心にお願いしても、見ず知らずの人から送られてきた原稿を読んで返事をしなければならない義理はないのですから、編集者は無視してしまいます。
その分野の専門家でなくても本は書ける
小説などのフィクションもの以外、つまりノンフィクション原稿の場合も、単なる持ち込み原稿は編集者に見向きもされない、という点はほぼ同様です。
しかし、本は次々と生み出されています。
毎年、約75000もの新刊書が発売されているのです。
話をわかりやすくするために、Amazonの図書カテゴリー一覧を見てみましょう。
文学・評論
人文・思想
社会・政治
ノンフィクション
歴史・地理
ビジネス・経済
投資・金融・会社経営
科学・テクノロジー
医学・薬学
コンピュータ・IT
アート・建築・デザイン
趣味・実用
スポーツ・アウトドア
資格・検定・就職
暮らし・健康・子育て
旅行ガイド・マップ
語学・辞事典・年鑑
教育・学参・受験
絵本・児童書
マンガ
写真集
楽譜・スコア・音楽書
といったように、本には多種多様なテーマがありますが、それを書いているのは必ずしも専門家ばかりではありません。
プロの作家でない人にも小説が書けるのと同じように、音楽家でない人が音楽について書いた本というのは、おおいにあり得ます。
建築家でない人が書いた建築の本、ビジネス経験は浅いけれど独自の方法で事業を成功させた人が説く成功哲学の本というのもあります。
いずれの場合も、自分独自の経験や知見をいかに巧みに伝えて読者を惹きつけるかが成否の分かれ目です。
著者と編集者は二人三脚
小説ならば、作者が書き上げたものを編集者が精読し、改善点などを指摘して、よりすぐれたものに改稿していく、という手法が用いられることが多いでしょう。
それ以外の場合は、企画の段階から編集者と著者が話し合いを重ね、取材・執筆・推敲といった全てのプロセスにおいて、協力しあうことが求められます。
なぜかと言えば、より多くの読者に訴えかけ、より多くの収益を獲得するためです。
何事も、1人よりも2人、2人よりも3人の知恵を集めたほうがうまくいきます。
ですから、編集者不在のまま著者が爆走し、独りよがりの本を作ってしまうことのないように防止策がとられている、とも言えます。
自著を商業出版したい人は、まず何をすればいい?
・商業出版をするには、出版社で働く編集者と二人三脚で作業を進める必要がある。
・しかし、単なる持ち込み原稿は編集者に見向きもされない。
↑この2点を覚えておいてください。
そして、ではどのようにすれば出版社で働く編集者と縁をつなぎ、二人三脚の態勢をつくることができるのか。それを考えていきましょう。
日本に出版社は約3000社あるとされています。
その中から「わたしはこの会社から本を出したい」と狙いを定め、編集部宛に挨拶状、著者プロフィール、出版企画書、サンプル原稿を送付してみましょうか。
前述のとおり、たいていは何の返事もないまま、無視されて終わりです。
電話をかけて催促しても、「ああ、あの件ですか。はい、お送りいただいたものにはきちんと目を通すようにしています。しかし今ちょっと忙しいので、すぐには対応しかねます。いずれ何らかのご連絡ができるよう努めますので、もうしばらくお待ちいただけますと助かります」などと、ちょっと気を持たせるようなことを言われるかもしれません。
それでまた期待をふくらませて待ってしまうのですが、相変わらず返事はありません。
「この会社じゃダメだ。ほかを当たろう」と新規まき直しをはかっても、そこでもやっぱり結果は同じ。
そんなことの繰り返しでほとほと疲れてしまった、という人は多いのです。
営業代行業者の力を借りよう
では、どうすればよいのか。
私の経験から言って、最もよい方法はこれです。
すでに数多くの編集者と縁をつないでいる出版コーディネーター、出版プロデューサー、出版コンサルタント、出版エージェントなどの力を借りる。
「出版コーディネーター」
「出版プロデューサー」
「出版コンサルタント」
「出版エージェント」
上記のそれぞれをキーワードに検索してみてください。
コーディネーターならコーディネーター、プロデューサーならプロデューサーについて詳しく紹介しているサイトが数々あります。
その一つひとつを、じっくりと読んでみましょう。
あなたの商業出版をサポートする仕組みについて、またその費用について、きちんと明記されているはずです。
コーディネーターとプロデューサーとではどこが違うの? なんてことも次第にわかってきます。
私もコーディネーターにお世話になりました
私が自著『言いたいことが伝わる 上手な文章の書き方』を商業出版する際には、有限会社インプループという出版コーディネーターの会社にお世話になりました。
有限会社インプルーブ
出版社に売り込むコーディネートをお願いしてから、版元が決まるまでに、私の場合は約2ヶ月かかり、費用は約10万円(当時の規定価格)かかりましたが、お願いしてよかったと思っています。
だって、自力で30社もの出版社に売り込みをかけ、「企画書とサンプル原稿をお送りした者です。お忙しいところ恐縮ですが、見ていただけたでしょうか。出版させてもらえそうでしょうか」と打診をする時間と労力を考えると、そうした一切を肩代わりしてもらえるのですから、本当に楽です。
10万でも15万でも安い、と思えました。
それに何よりありがたいのは、送った書類やサンプル原稿を編集者が読んでくれることです。
出版コーディネーター、出版プロデューサー、出版コンサルタント、出版エージェントといった会社は、数多くの出版社と取引の実績があり、そこで働く編集者たちと協力関係にあって、年に何冊もの新刊書を生み出しています。
そして信頼関係を築いています。
だからこそ、編集者は貴重な時間をさいて、私たち著者予備軍の原稿を読んでくれるのです。
出版社へ売り込み開始から版元決定までのプロセス
コーディネートを依頼してからアプローチ代行と営業、そして版元決定に至るまでの経緯をかいつまんで紹介します。
・初回打合せ
(自分はどのような経歴の持ち主で、どのような本を出したいと考えているのかを、コーディネーターに伝えます)
・出版企画書、著者プロフィールの作成
(コーディネーターが用意してくれるフォーマットに沿って書き入れます。それをコーディネーターが手直ししてくれます)
・サンプル原稿の作成
(この時点ですでに書けている原稿の中から、最もインパクトが強いと思われる箇所を抜き出し、サンプル原稿として仕上げます)
・出版社への売り込み開始
(コーディネーターが日頃取引のある約30社へ売り込みをかけます)
・良い反応のあった出版社と面談
(編集者、著者、コーディネーターが顔を合わせて会談を行ない、企画書やサンプル原稿だけでは伝えきれなかったことが伝わるよう、質疑応答形式で話し合いをします)
・版元決定
(良い反応を示してくれた出版社の中から、最終的に残った1社と出版の取り決めをします)
それから後、著者は編集者と相談しながら原稿執筆と推敲を行ない、本1冊分の原稿を完成させます。
本文レイアウト、ブックデザイン、書名、帯に記載する惹句の作成などは、編集者主導により進行します。
そして、いよいよ本が完成し、書店に並ぶ日がやって来ます。
その先に待っているのは、著者自身による販売促進活動で、これがけっこう重要です。
そのことについては次回の記事でお話ししましょう。