【2005 May】
K君──<サバサバ>
5月1日に岩手の映画が終わるや、角○春樹事務所のネットシネマに突入し、6月15日アップしました。
企みとしては、面白いものがありました。
角○春樹って人、オレは結構好きなんです。
☆☆
○○書房の本は、もう一度、<直し>をやります。
ハウトゥ本としての体裁の問題だと思います。
☆☆
今年いっぱい、『実録鬼嫁○記』って奴をプロデュースすることになりました。
これは、日活再生を巡る物語の中での因果から、やる。
状況は、すこし元気になりました。
少なくとも、オレを必要としているわけですから。
誰でもいいわけじゃなく、オレなのだから。
☆☆
T子さんのデビュー作、待ち遠しく思っています。
技巧より、シチュエーションでしょう。
横須賀を書けば、と思います。
もう、いいんじゃないかな。
あの時代の、あの場所を残せる人、いないよ。
前の時代と今の時代の間、植民地みたいな場所のティーンエージャー。
あなたしかいないだろう。
『OHARA』を書け、と思う。
それが世界史的な意味での、「作家」であると思う。
『上海ベビー』の女の子もいる。
リービ英雄もいる。
K・イシグロもいる。
T子の登場を待つ。
角田光代じゃないんだ。
覚悟があるよな。
追いかけますよ。
きみと出会った。
多分、その出会いすら、<文学>だったのだ、と思う。
オレはオレで、追いかける。
早くデビューしてくれ。
映画というものをやってしまった以上、オレは私小説というわけにはいかぬ。
計算が必要だ。
オレの私小説は、オレが死んだ後でいい。
☆☆
山口百恵、平山美紀。
♪遊び上手なハルオにゼンタ/トモコの彼もスイングしてる/わたしの好きなあの人は/ひとりで海をみていたわ/ラララララ ビューティフルなお話ね

●T子──<律儀にお返事します>
オハラを書け、とあなたは言うが、私は私小説はイヤなんだってば。
私生活エッセイというのも好まない。
48歳の私から16歳の私に向けて、時空を超えた手紙を書く。
当時の私が今の私を知ったなら、きっと仲良くしたいと思うだろうから。
もう少し大きくなって仕事を始めたときには、「いったいどうすれば、そんなふうに仕事に恵まれるの?」って、必死に食いついてくると思うから。
さらには、我々中年の中に生き続ける「16歳」に向けて書く。
これは、自分の言葉で哲学を語り直す試み。
同時に挑発であると認識します。
角田光代(?)とか誰かみたいにダサくなるなんて危惧せんといて。
カッコいいやり方を私が示す。
☆☆
そのいっぽうで、「時代の狭間にぽっかり浮かぶ植民地みたいな場所に惹かれる」というあなたの感性に共鳴します。
ドブ板は、小説にも映画にも向く題材だと思う。
だから、あなたがやればいい。
ぜひやってほしいと願う。
☆☆
少しばかり、ネタを提供しようか。
あのダニーも見かけによらず、単純なアメリカン野郎ではなかったよ。
彼は、独りぼっちのコスモポリタンだったよ。
エコール・ド・パリの一員だったロシア人バレエダンサーのニジンスキーに憧れて、故郷静岡での若き日はベレエ帽かぶってバレエのレッスンをしてたんだ。
ダニーの実家というか姉さんの家に遊びに行って、さんざん昔話を聞かされたよ。
写真も見たよ。
だけど、そういうダニーでさえ日本的な狭量さがあり、アメリカの男にいたぶられたおばちゃんたちに同調しては、若い娘(私)をよく脅かした。
「Tちゃんみたいな女は幸せになれない。もっとストイックでずる賢くなけりゃ男を取り逃がす」だと。
それはその通りだったけど、そういう余計な脅しがどれほど未来を悲観させたことか。
で結局、ドブ板にいてもつまらなくなった。
ド田舎から逃げ出したいと本気で焦った。
あなただって、そうでしょう。
☆☆
私はその後、母の故郷である横浜に根をおろし、この土地の開放感とロマンチシズムに救われた。
当然、石黒ケイにも反応を示し、周囲のみんなには理解されないながらも、「私はこういうのが大好きなのっ」と言い張った。
レストラン経営者に無理を言って、石黒ケイのディナーショーを開いてもらったことさえある。
それとは直接関係ないけど、横浜で見つけた恋はいつも、石黒ケイのサウンドに彩られていたよ。
樋口修吉の描く世界を懐かしむ男たちにもプラトニックな愛を注いだ。
☆☆
だけどさあ、あなたは『上海ベイビー』に反応したのかな。
『上海ベイビー』とか日本の山田詠美とかって、私はあまりピンとこないのよ。
彼女たちの快楽世界が陰核的じゃないからかな。
その点、石黒ケイのところでは、2匹の猫にクリちゃんとリスちゃんと命名していたそうよ。
いいねっ。
☆☆
リービ英雄については、最近やっと知りました。
まだ何も読んでいないので、これから接近してみます。
ほらね、私って相変わらず律儀でしょ。
何か言われると、必ず返事せずにはいられないの。
末筆ながら、映画プロデューサーとしての復活を心から祝福します。
よかったよね!!

●K君──樋口修吉の『ジェームス山の李蘭』は好きだった。
植民地といったが、権力の空白というか、本音では権力なぞ信用していない、自分の頭と肉体のみで生きていかなければならない場所が好きなのだ。
ベトナム戦下の沖縄。
そして永遠に上海。
そして、幻の満州。
☆☆
角田光代が好きなわけない。
☆☆
どっかで、クレオール的であって、<マルチニークの少年>みたいなモンだな。
そこで、出自ということを考えるのだ。
大和言葉を母語とする自分を。
アイデンティティー。
☆☆
1975・4・30から2001・9・11。
この時間軸なのかな。
あいだで、ソ連が崩壊した。
☆☆
船が好きだな。
船旅はいい。
最後は、船旅で終わりたいな。
☆☆
うん、ブンガクの話をするのは楽しいよ!
エイガの話も楽しい。
しかし、創るのは『闘争』だよ。
オンガクもいい。
でも、これは自分でやったらもっと楽しい。
ドブ板=Do Be It かしら。
☆☆
戦後の保土ヶ谷とか天王町とか鶴見市場とか、久保山、藤棚、白楽といった地名にも思い入れがある。
また、話をしよう。